まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

現代のまち並みをどう考えるのか

2011-08-27 15:32:26 | 建築・都市・あれこれ  Essay

今仕事で関わっている深谷宿中仙道の昭和30年代のまち並みです(写真は深谷郷土文化保存会『深谷の昭和史』p47)。

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 細長い短冊形の敷地割のうえに江戸時代以来ひとつの型となっている町家建築が並びます。平入りの店構え、通り土間がおくに伸び、座敷や納戸、台所などが並ぶものと推測されます。一部に立派な棟飾りを載せた土蔵造りなども見られますが、とくに豪壮ななまち並みというわけではないようです。しかし、同一の建築形式を守りながら地域の技術、地域の材料、地域の人によるバナキュラーな建築が並ぶことで美しいまち並みとなっています。

    

 こういったまち並みは決して固定的なものではなく、常に建て替えが進みつつも、基本的には地元の大工さんがつくったことでしょうから、周りと同じような建築の形式や材料が継承されていたのでしょう。

   

 また、こういった地元の大工さんがつくるものとは別に、その時代のハイスタイル建築もあったことでしょうが、それは当時は少数であった建築家により、大変丹精をこめて設計されたものであり、それなりにバランスがとられていたものと思います。   

 

 仮にうえのようなまち並み再生産の社会システムや技術、生産の体系が継承されていれば今頃日本は伝建地区(伝統的建築物保存地区)クラスのまち並みだらけだったことでしょう。

  

しかし実際にはそうなっていません。上の写真にみる昭和の中期以降どういうメカニズムがまち並みの変化に働いていたのでしょうか。