まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

久しぶりに多摩ニュータウンへ

2011-08-15 18:58:43 | 建築まち巡礼東京 Tokyo

久しぶりの休み。

家内と二人、車で多摩ニュータウンに出かけてみました。

途中で御嶽塚古墳の整備後の姿を見るため西府駅前に車を停車。

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6,7世紀頃の上円下方墳とのこと。円は宇宙あるいは天上の世界、方形は地上世界を象徴していると聞いたことがあります。

頂上付近にはかわいい小さな祠がおかれています。聖なる場所であることを、目立たない小さな祠とそれを優しく覆う木々がシンボライズしています。

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関戸橋で多摩川を渡り、まずはH団地へ。

近隣センターの商店街に車を止めます。商店街は、お盆の故か人気がありません。シャッター街でなければいいのですが。

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正面に見える足場は建設中の老人ホーム。H団地は多摩NTの中でそれほど古い団地ではないと思いますが、NT全体の高齢化はこういうところでも感じられます。

隣接する図書館へは人の出入があります。が、ご高齢の方々が多そう。

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あまりに暑いので私たちも中で一休み。やはり、ご高齢の方々の施設が中心にあります。

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さて、多摩NTは歩いて暮らせる広がりを想定し、その広がりの集合としてまちをつくった典型的な事例です。日常生活の暮らしの広がりの中にはできるだけ車をいれず、施設の配置も歩行圏を前提として組み立てられています。

まず、住宅地の外周部を走る幹線道路があります。地形を巧みに活かして通過交通の多い道路を丘の住宅地と分離しています。ここにはバス停もありますが今となってはこの段差がきついかもしれません。

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こういった道路から住宅地内に引き込まれる道路は少しずつ歩行者のスケール感を持っていきます。

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更に住区の中央部分は車から完全にわけられた歩行者専用道路です。生活に必要なお店や公益的施設もこの歩行者専用道に面して配置されています。

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いまや樹木も豊かに育ち、大変快適な散歩道です。

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セミの天国のようです。

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この道をたどっていくと先ほどのセンター商店街に出ます。

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車社会の進展で、歩いてアクセスすることを前提につくられた近隣センターの衰退が指摘されて久しくなっています。しかし、高齢者にとっては、歩いていけるところにお店や図書館、郵便局があるということは暮らしのために不可欠の条件になります。いま、どのように使われているのか、今度はお盆ではない、週末に来てみる必要がありそうです。

      

このあとN団地のセンターにも立ち寄りました。

ここの商店街もお盆休みでした。

商店街と公園が隣接しているため、買い物のあとちょっと休憩ということもできそうです。

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ところで、話しが飛びます。

      

都市計画家や建築家から酷評されたアメリカのレービットタウン。ひたすら車に便利なようにつくられ、当時の近隣住区理論や歩車分離の計画理論とも無縁でした。玄関からすぐに車に向かい、まちで歩くこともなく、人と出会うこともない、ライフスタイルは近隣生活のない寂しく孤独な人々の住宅地を生み出すはずでした。しかし、必ずしもそうとばかりはいえないようで、建設後50(?)年を経た緑豊かな住宅地では近隣コミュニティもしっかりと形成されているという報告もあります。

      

翻って、レービットタウンとは対極的に、コミュニティの形成や歩いて暮らせる快適性をきめ細かく考えてつくったH団地のようなニュータウン。皮肉なことにこちらは、車社会をあまりにも無視した「歩いて暮らせる近隣」をつくろうとしたことが、近年問題として指摘されてきました。

      

確かに必要な施設や機能は変わる、また人の付き合い方も変わる。しかし、丁寧につうられた都市基盤のしっかりしたこの町は、きっと新しい社会のいれものとしても十分上手く機能していくのではないか。・・緑豊かな歩行者専用道路沿いにつくられているデイケア施設や老人ホームの仮囲いに沿って歩きながら、そんなことを考えていました。