落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

I am not a hero.

2007年08月18日 | movie
『フリーダム・ライターズ』
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ロス暴動から2年後の1994年、ロサンゼルス・ロングビーチの公立高校に赴任した新米国語教師エリン(ヒラリー・スワンク)は、幼いころから貧困や暴力や犯罪や虐待など悲惨な境遇に晒され荒みきった生徒たちに日記帳を配り、自身の声で心の叫びを言葉に綴るように勧める。初めは白人=支配階級の教師に反発する子どもたちだが、やがて互いに深い信頼で結ばれるようになっていく・・・とゆー、まあありがちな熱血教師の感動物語です。
ただしこの映画は実話に基づいていて、作中で朗読される日記は、実際の生徒の書いたものがそのまま引用されている。
完全に破綻して久しいというアメリカの教育システムだが、教育熱心で生徒に信頼される女性教師のことを「ミスG」と呼ぶ習慣は今や全米に広まっている。「ミスG」とは、この物語のヒロイン─エリン・グルーウェルのニックネームに因んでいる。

物語はすごくいいと思う。感動的だ。そこは間違いない。
けど映画としては地味すぎます。物語を効率よく再現して簡潔にまとめるだけでいっぱいいっぱい、そこからもう一歩、登場人物たちの内面に踏み込むといった表現にまでは至っていない。
話ができすぎているだけに、これでは却ってしらじらしくみえてしまうのが残念だ。
シナリオが悪いわけではない。人物の繊細な表情をきちんと観客にみせるようなライティングやカメラワークや編集などの、演出的なディテール描写の問題だと思う。たとえば生徒たちがホロコーストの意味を知らないことにエリンが驚くシーンや、エリンが高学年を教えられないことに騒ぎ出す生徒たちに困惑させられるシーン、エバ(エイプリル・リー・ヘルナンデス)が偽証を拒むシーンなどなど、人物の心の震えや揺れが画面にみえてこずに不完全燃焼感を感じる部分が多すぎる。
招待されたミープ・ヒース(パット・キャロル)が通訳なしに訛りのない英語を操るのにもガックリ。やたらに音楽を多用しすぎていて、映画全体もなんだかやかましい。

素晴らしい物語だけに、もっと丁寧につくってほしかった。
ただ、映画としてはとてもわかりやすくコンパクトにまとまってはいるので、登場する高校生たちと同世代の若者には文句なしにオススメな良作ではある。宣伝が不十分なのは配給のUIPの解散が決まってたからですかね(爆)?イヤ観客の年齢層めちゃ高かったからさあ。
衝撃だったのは、実在のエリン・グルーウェルがぐりとほぼ同世代という事実の方である。1994年当時23歳だった彼女は150人の劣等生に希望を与えただけではない。彼らにまっすぐに向きあい、ひとりひとりの言葉に耳を傾け、何事も誤魔化しもせず妥協もせず、彼ら自らがそれぞれに抱いている可能性を決して否定することなく後押しし続け、5年後にはみんなの日記を出版して「フリーダム・ライターズ基金」を立ち上げた。
彼女ひとりがヒーローだったわけではない。でも、彼女のように、相手にまっすぐに向かいあうということは、言葉でいうほどたやすいことでは決してない。若かった、純粋だった、勢いがあった、それだけのことかもしれないけど、現実に彼女がなしえた偉業は、逆にいうなら、人間誰にでもできる筈のことなのかもしれない。

I did what I had to do because it was the right thing to do.
(私はしなくてはならないことをしただけ、それが正しいことだったから─ミープ・ヒースの台詞)

今度原作を読んでみようと思いますが・・・その前に図書館で借りまくった本の山を崩さにゃー。
ところでspecial thanksにクレジットされてたドン・チードルは何やったんだろ?

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