落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

子ども映画まつり

2007年07月15日 | movie
『月の子供たち』

『タイヨウのうた』などで知られるようになった難病・色素性乾皮症の子どもを描いた青春映画。
12歳のリザの6歳の弟パウルは、太陽光にあたると悪性黒色腫を発症するため、日中外に出て遊ぶことができない。リザは毎日パウルに「あなたは別の星からやってきた宇宙飛行士なのよ」と空想した物語を聞かせて遊ぶ。あるときリザは宇宙工学に詳しいジーモンというクラスメイトと親しくなり、徐々に家を空けることが多くなっていく。
ストーリーそのものは悲しいが、リザとパウルが共有している宇宙の物語がファンタジックなCGアニメで表現されており、全体の雰囲気はそれほど重くはない。先天性の不治の病を描いていても、物語にはちゃんと希望もある。決してお涙ちょうだいの難病メロドラマにはなっていない。一見ストーリーラインとは直接関係のなさそうなディテールが繊細に描かれていて、登場人物たちの環境や心情がごく自然に表現されている。
難病はモチーフのひとつであり、メインのテーマは思春期を迎えたリザの成長である。小さな弟の世話にかいがいしく明け暮れる姉といえばいじらしく聞こえるが、彼女はそんなしおらしいだけの娘ではない。家庭環境や不安定な年頃のために自分の殻に閉じこもりひとり「悲劇のヒロイン」ぶるのに、弟の世話はいい口実なのだ。彼女を100%信じ甘える弟の存在が彼女の支えにもなっている。互いに依存しあい閉じた関係に満足していた姉弟だが、姉には大人への準備=思春期がめぐってくる。弟ほどではないにせよ彼女を必要とするボーイフレンドの存在が、ふたりを人生の先の段階へと導いていく。
ところでこの色素性乾皮症、確か去年公開されたドイツ映画『みえない雲』にもこの病気の子どもが登場したので(そーだったと思う。違うかも?)ドイツでは有名な難病なのかと思いきや、ドイツにも患者が30人くらいしかいなくて全然知られてないらしい。監督は撮影にあたって数人の患者に取材をしたそうだが、何度も皮膚ガンを切除している患者の中には容姿が変わってしまっている人もいて、かなりつらかったという。
『名もなきアフリカの地で』や『ビヨンド・サイレンス』など子ども映画というジャンルでは定評のあるドイツ映画だが、映画産業そのものが発達していないため子役の数は少ないらしい。今作の出演者も14校の学校を3ヶ月かけてまわってみつけたそうだ。

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