落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

残念日記

2014年11月01日 | movie
『悪童日記』

第二次世界大戦下のハンガリー。一度もあったことのない田舎の祖母(ピロシュカ・モルナール)のもとに預けられた双子(アンドラーシュ・ジェーマント/ラースロー・ジェーマント)。祖母は地域で「魔女」と呼ばれ、祖父を毒殺したとも噂されていた。生きぬくために学び、お互いを鍛えることを誓った双子は、冷酷な祖母にこき使われながら独自の倫理観と処世術を身につけていく。
アゴタ・クリストフの世界的ベストセラーの映画化。

この小説、日本語版は91年に出て当時かなり売れた記憶があるんですが。
ぐりも刊行直後に読んでいて、その後の続編『ふたりの証拠』『第三の嘘』、クリストフの次作『昨日』も続けて読んでいる。ハイ、ハッキリとハマってました。でも30代過ぎてから読み返したりはしてないので、内容の細かいところまではちょっと記憶に自信がない。とはいえ観る前に読み返したりもしなかったんですが。

ぶっちゃけたことをいえば、まあまあうまくまとまった作品にはなってるんじゃないかとは思う。原作そのものにはかなりえげつない表現が多くて映像化は難しいだろうと思われていたから、その手のアレな部分をうまく避けて、それでも原作通りのストーリーを忠実に再現してはいる。
なんだけど、それ以上でも以下でもないんだよね。原作ほど印象的でもない。悪くないんだけど良くもない。真面目に原作を映像化しただけで、それ以上に原作の世界観をちゃんと消化しきれてない感が非常に強かったです。
双子のキャラクターは原作通りだったんだけど、カメラワークとか照明とか美術とか編集とか、ビジュアル面で原作のビザールでゴシックな独特の暗さが再現できればもうちょっと違ったんではないかと思う。そういう映像的な工夫はぜんぜんなかったのが残念でした。べつにエグさを再現しなくてもできることはあったと思うんだけど。

ぐりの記憶にある限りでは、原作は戦争の苛酷さが子どもの目線を借りて斬新な側面から描かれた傑作だったはずなんだけど、この映画に斬新な要素はなにひとつなかった。
うまく撮れてる優等生的な映画ではあるけど、記憶に残るような作品では決してない。原作が好きだっただけにかなり残念でした。



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帝王伝説

2014年11月01日 | movie
『イヴ・サンローラン』

1957年、20歳そこそこでディオールの助手となったイヴ(ピエール・ニネ)。若くしてその後継者に指名され一大メゾンの伝統を受け継ぐ重責を負うが、1960年、故郷アルジェリアのフランスからの独立戦争に召集され、まもなく精神を病んで施設に収容される。
デザイナーとしての才能には恵まれていたものの内向的で人格的にもろく繊細なイヴを、公私ともに献身的に支え続けたピエール・ベルジェ(ギヨーム・ガリエンヌ)の視点から描いた伝記映画。

映画を観ていて、学生時代、学園祭でのファッションショーに参加したことを思い出した。
ぐりの母校は美術系で舞台衣装をベースに服のデザインを学ぶクラスがある。デザイナーはその学科の学生たち、モデルも彼らが学内でスカウトした学生、運営スタッフも学生で全員あわせると100人単位。予算も100万円単位で舞台美術や照明・音響装置やヘアメイクなどは人材育成のためにプロがサポートしてくれるという、それなりに規模の大きいものだった。ぐりは運営スタッフの中にいた。
入場料を徴収しスポンサーも募る本格的なショーとはいえ参加者は全員素人学生、毎年恒例でいくらかノウハウは引き継がれるもののメンバーも入れ替わり世の中の景気も変化するから、想定通りにいかないことばかりである。なにしろ美術系の学生でしかもファッション系といえばその当時はスポイルされ放題で奔放さだけが自慢のような子ばかりだったから、マニュアルをつくってそれを周知し守ってもらうだけでひと苦労だった。準備から残務整理までの1年近くの間、日々忍耐の連続だった。

だからファッションデザインそのものには興味はあったし、ホントにメゾンのファッションショーに行ったり、コレクションラインをまめにチェックしてた時期もある。実際にサンローランも何点か持ってました(もちろんリヴ・ゴーシュ。オークションで入手)。でもそれも10年くらい前までで、いまは着るものにもう興味はない。ファッションが好きなだけで簡単に服飾史を独学しただけだから大した知識もない。
ちょっともったいなかったのは、もしこの映画をそのころ、ファッションが好きだった若いころに観てたらすごく共感しただろうなということ。残念ながらいま観てもさほど心動かされない。映画が悪いんじゃないと思うんだけど。
逆にいえば、ファッションが好きとかサンローランが好きという人がこの作品を観ればどう感じるのかが、とても気になる。

映画はイヴという地味でおとなしい若者がパリで見いだされ若くして成功しモードの帝王と呼ばれるようになり、プレッシャーや孤独と戦いながらファッション界に革命を起こし続けた日々を、ただただ淡々とパートナー側の視点から描いている。
ファッションという華やかな世界を描いていながら、サンローランのキャラクターがストイック過ぎて、物語に盛り上がりとか色気というものがほとんどない。そのわりに視点がパートナーのピエールに限定されているのでやや一面的に偏っていて、繊細で移り気なサンローランの内面の描写にもうひとつ踏み込みが足りないような気がしてしょうがない。ピエールというパートナーがいながらこれみよがしに浮気を繰り返したり薬物に溺れたりするサンローランがいったい何を恐れていたのか、その背景がもうひとつクリアに伝わってこなかった。

サンローランを演じたピエール・ニネはメディアで見かける生前のサンローランそっくりで、その演技は確かにピエール・ベルジェのお墨付きというだけあって真に迫ってたと思う。
でも見どころといえばそこ以外にもう思い出せないのは、観てから1週間経っちゃってるからではないと思う。
サンローランとかファッションデザインのファンにとってはもっとアツく感じるのかもしれないけど、ゴメン、ぐりはもうそうじゃないからムリでした。