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落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

ラブゲーム劇場

2009年09月23日 | movie
『クヒオ大佐』

弁当屋をきりもりする女社長・しのぶ(松雪泰子)の恋人はアメリカ軍のパイロット。父親はハワイの王族、母親はエリザベス女王の縁戚という由緒ある家柄に生まれたというクヒオ(堺雅人)だが、「秘密の任務」といってはしのぶに車で送り迎えをさせたり、ウェディングドレスの内金といっては大金を払わせる。若いうちから苦労ばかりで恋愛に慣れないしのぶは、求められるがままに会社の金を流用してまで貢ぐのだが・・・。
実在の結婚詐欺事件をモチーフに描かれた小説『結婚詐欺師クヒオ大佐』の映画化。

この事件、なんとなーく、うすらぼんやりとですが記憶にあって。
報道番組じゃなくて、たぶんワイドショーかなんかでトンデモネタみたいな扱いだったのをチラッと観たかな~?観ないかな~?みたいな。
まーそーだよねー。フツーに考えたら、そんなセレブが一般の女性から結婚をエサにお金をせびるなんてあり得ない話だ。でも実際に被害に遭った女性側からすれば、お金や結婚なんて本当はどうでもよかったんじゃないかとも思う。ただただ彼の愛情をつなぎとめたかった。自分の愛情をどんな形であれ証明してみせたかった。だからクヒオの求めに応じてしまったんじゃないかと思う。自分でも荒唐無稽な話だとはどこかでわかっていながら、それを認めたくなかったのではないだろうか。
結婚詐欺ってそもそもは愛を求める人間の心理につけこんだ犯罪なんだろうと思う。誰でも被害に遭う危険性があるというのはそういう点だろう。

映画はおもしろかったです。前作『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』ほどではなかったけど。まあまあ笑えた。
このストーリーの独特なとこって、クヒオが描いた虚構の世界にクヒオ自身がどっぷり巻き込まれちゃって抜けられなくなってるとこなんだよね。彼は女性を騙すために“クヒオ”をつくりだしたんじゃなくて、自分で“クヒオ”になりたかったんだと思う。お金をとったのは、“クヒオ”の存在にお金を払わせることで、その実在を確認したかったんじゃないかな?“クヒオ”という幻想を女性と共有していることを確認するために、彼は信じ愛してくれる人を欺かずにはいられなかったのだろう。憐れな人だ。ある意味ビョーキだと思う。
そうまでして彼が自分ではない嘘の人物になりたかったのはなぜなのか、映画ではイメージでしか描かれていない。おそらくその解釈は小説や映画というフィクションとしての解釈なんだろうけど、そのつくられた嘘=フィクションの部分に、戦後日本のしょっぱさがにじんでてイタかったです。

笑いの分量は期待したほど高くなくて、爆笑って感じではなかったかな?
思うんだけど、この映画コメディなのにヘンにまとまりが良すぎたのがよくなかったんじゃないかなあ?とくにキャスティングがあまりにもハマりすぎてて隙がないんだよね。逆にいうとシャレになんないくらいそのまんま。
何考えてんのか意味不明ないかがわしさでは堺雅人の右に出る者は昨今ちょっと見当たらないし、深刻さがイタい年増といえばこちらも松雪泰子か中谷美紀かってところでしょう。満島ひかりと 中村優子はぐりはよく知らないんだけど、ふたりともすごくキャラに会ってました。つーかマジで学芸員と銀座のホステス以外の何者にも見えない(笑)。
ぐり的に一番おいしかったのはやっぱ新井浩文。このヒト最近こーゆーヤな役ばっかやってんだけど、もうこれしかないってくらいピッタリなんだよね(笑)。うまい。でもホントはもっとかっこいい役とかもやってほしい(ちょっとファンです)。
本筋とは関係ない役で出て来た内野聖陽もおもしろかった。実をいうとぐりはこの方あんまし好きくないんですけれども、こーゆーシュールな役はすごいハマるなーと思い。

最近の日本映画にはこーゆー舞台っぽい作品がやたらに多いけど、これってやっぱ予算がないから?それとも流行なんでしょーか?
個人的にはこの手のって嫌いじゃないけど、どれもこれもこんなになっちゃったりするとつまんないから、ほどほどにしてよねー(何様)。