気ままに

大船での気ままな生活日誌

小村雪岱展 ニューオータニ美術館 

2012-10-18 11:28:10 | Weblog
ぼくが、小村雪岱フアンになったのは、比較的最近のこと。ブログを調べてみると、2010年2月7日に埼玉近代美術館で開催された”小村雪岱とその時代 /粋でモダンで繊細で”が最初の記事だ。その頃からのお気に入りである。その後、(ほとんど奇跡的に)公立図書館で小村雪岱挿絵の邦枝完二著”おせん”の初版本をみつけた。小躍りし、調子に乗って、挿絵の写真を入れて、本ブログでおせん物語の連載をしたこともある(汗)。京都清水の三年坂美術館での”小村雪岱展”と偶然、出会ったこともある。さらに、雪岱が川越出身ということなので、(川越祭りのついでだが)、そこの美術館を訪ねたが、常設展示はしてないわよと、冷たく突き放されたりもしている。

本格的な雪岱展をどこかでやってくれないかと、待ち侘びていたところ、ニューオータニさんが、じゃあと、”大正・昭和のグラフィックデザイン/小村雪岱展”を開いてくれた。ありがとうござんすと、早速、行ってめえりやした。大変、満足したでござんす。(お礼として)せめて見て貰うおいらのしがねぇブログ記事でござんす。

雪岱というと、昭和の春信と讃えられた、挿絵とそれを元にした美人画(本画や版画)が、まず思い浮かぶが、装幀家、そして舞台美術家としての名も高い。今回の展覧会では、装幀家としての雪岱に重点が置かれている。

I. 泉鏡花との出会い/花開く才能
あこがれていた泉鏡花に、はじめて依頼されて、装幀したのが、”日本橋”。いかにも精根込めて、つくったという傑作で、ぼくも一番好き。表紙は日本橋川の両岸に並ぶ蔵。無数の蝶が舞っている。装幀はこれだけではない、表裏の見返しの絵も含む。これがまた、素晴らしい。ここに日本橋の四季が描かれているが、青柳の向こうの和室に三味線と鼓だけが置かれている、春の絵なんかとくにいい。これをきっかけに、雪岱が手掛けた装幀は、泉鏡花本が28冊、そして、水上滝太郎14冊、邦枝完二、長田幹彦12冊、長谷川伸10冊など、合計133冊に上るという(ニューオータニ美術館調査による)。

この章では、そのうち、52点が展示されている。鏡花本がずらり、そして久保田万太郎、里見とんのものも多い。ぼくの好みとしては鏡花本だが、それぞれいい。雪岱以前は、鏑木清方が鏡花本の装幀を担当していた。その清方本(清方は文章家でもある)の装幀を雪岱がしている”銀砂子”も、シンプルな装幀ながら味わいがある。今のところ(まだ経験が浅いので)、ぼくは、雪岱の装幀本が、近代日本でもっともうつくしい本たちではないかと思っている。

”日本橋” 表紙と見返し






II. 舞台とのかかわり/戯曲本と舞台装置
雪岱は生涯、なんとなんと200余りの芝居の舞台装置を手掛けたという。歌舞伎をはじめとする新国劇、新派、前進座などの舞台が雪岱によってつくられてきたのだ。代表作は、長谷川伸戯曲の”一本刀土俵入り”。その舞台装置原図、4場が展示されている。そのうち、序幕第一場”取手の宿・我孫子屋の前”は、昭和6年六代目菊五郎の初演以来、現在も踏襲されているという。その他、岡本綺堂戯曲、半七捕り物帳人形つかい、真山青果戯曲の椀屋九兵衛などの舞台と戯曲本がずらりと並んでいる。

”一本刀土俵入り” 我孫子屋の前 安孫子屋の酌婦、お蔦が、相撲取りになりたいという、みすぼらしい恰好をした駒形茂兵衛に出会う場。お蔦は、巾着や櫛、かんざしまで渡し、立派なお相撲さんになっておくれよ、と励ます。涙を浮かべ、茂兵衛は立ち去ってゆく。


これが十年前に櫛、かんざし、巾着ぐるみ意見をもらった姐さんにせめて見てもらう駒形の、しがねぇ姿の横綱の土俵入りでござんす、の場面 


III. 挿絵/共鳴する画文
雪岱のはじめての挿絵は、里見とんの”多情仏心”だそうだ。そして、昭和8年、東京朝日新聞に連載された、邦枝完二の”おせん”。その後、”絵入り草紙おせん”にもなった。待ってました、おせんちゃん(汗)。そして、やはり、邦枝完二の”お伝地獄”。とくにお伝が刺青をいれている図が一番だが、展示にはなかった。稀代の悪女といわれた高橋お伝も雪岱さんが描けば、粋なねえちゃんになるから不思議。おせんとおでんが見られて最高。せんべいもおでんも好きです。谷中の大円寺に笠森阿仙乃碑、谷中霊園に高橋お伝のお墓があります。両方、お参りしています。お近くの方はどうぞ。









IV. 特集/装幀の妙
そして最後の章は、これでもか、これでもかというふうに、雪岱装幀の本がずらり、ずらりのずらりんこん。集めるだけ、集めたという感じ。60冊はあっただろうか。大満足の展覧会だった。

・・・・・
鏡花選集 表紙と見返し






遊里集 (鏡花) 表紙と見返し






愛染集 (鏡花)


長谷川伸 一本刀土俵入り


久保田万太郎 下町情話


田山花袋 柳暗花明


岡本綺堂 両国の秋

     
鏑木清方 銀砂子





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2 コメント

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佐野美術館 (siegfriedkarin)
2012-10-20 08:30:14
こんにちは。私も小村雪岱に魅せられた一人です。と言ってもまだ実物はみてなくて、掛川にある資生堂ギャラリー(工場)で絵葉書を見たのがきっかけです。さて今三島の佐野美術館でも展覧会をやっていますよ。
http://www.sanobi.or.jp/tenrankai_current/
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siegfriedkarinさま (marbo)
2012-10-20 10:12:58
コメントありがとうございます。
情報、ありがとうございます。三島ならすぐ行けます。明日行こうかな(汗)
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