細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『ナミヤ雑貨店の奇跡』で逃亡青年たちの現実は救われるのだろうか?

2017年07月30日 | Weblog

7月24日(月)10-00 築地<松竹本社3F試写室>

M-083『ナミヤ雑貨店の奇跡』" The Miracles of the Namiya General Store " (2017) 角川大映スタジオ、本編製作委員会

監督・廣木隆一 主演・山田涼介 西田敏行 <122分・シネマスコープ> 配給・KADOKAWA :松竹

ちょっと2005年の、あの「ALWAYS三丁目の夕日」の郷愁を思い出させるような、懐かしい<昭和>を想起する作品かと、勝手に期待して見たのだが、それは当方の早とちり。

東野圭吾の原作による小説は、かなりの大ヒット作品らしいが、たしかに幻想ミステリー小説としての骨格に、32年も前の昭和の温もりも漂わせる、一種の人情メロドラマだ。

地方都市の広場に面した一戸建ての寂れた木造二階建て雑貨店は住む人もなく、いまでは廃墟のようになっていたが、何かヤバいことをしでかした山田青年ら3人は、逃走の果てに、その店舗に忍び込んだ。

夜中になると、その店舗の正面シャッターの郵便受けから手紙が投げ込まれたが、その短い文面には、恐らくこの雑貨店の店主だった西田に宛てた、それぞれの人生相談のような文面だった。

いまではとうに店も閉めて、その店主もどこに行ったのかもワカラナイのだが、手紙を投函したひとは、恐らく相談する相手もなく、ましてや新聞やテレビの人生相談に投稿する勇気もない人達らしい。

映画は不良少年たちの夜間逃亡の現実と、この雑貨店がまだ営業中だった1980年代の頃の、店主の西田がいろいろな客たちの人生相談に耳を貸していた時代が、交互に展開していくという寸法。

あの0・ヘンリーの原作「人生模様」のエピソードのように、その相談内容の過去の日常と現実の逃亡者たちのヤバい状況とがフラッシュバックされていくのだが、どうも編集に切れ味が不足だ。

というのも、この逃亡者たちの現実と、過去の人生相談の時代がオーバーラップしているという原作のアイデアはあるらしいのだが、この作品では、肝心の時代差が無造作に往来してしまうからヤヤコしい。

三人の不良少年たちが、この廃墟のような雑貨店のスペースで、ついに時空を越えた体験をしていくというのは、たしかに小説題材としては面白いのだが、映画となると傑作「幽霊と未亡人」のようにはいかない。

つまり、店のシャッターを境にして、現実と過去が去来するというのは、小説の上では想像しやすいが、こうして映画となると、どうも描写のウェイトが陳腐で、創造力がフォローしきれなくなる。

32年間の間に、予測されたことと、現実に起きてしまったことには、当然の誤差が生じるわけで、原作小説ではともかく、こうして映画になると「野菊の如き君なりき」のような郷愁は難しい。

 

■センターへのヒットだが、セカンドを欲張ってアウト。 ★★☆☆☆

●9月23日より、新宿ピカデリーなどでロードショー