細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『50年後のボクたちは』きっといい人生を駆け抜けるだろう、という夢。

2017年07月28日 | Weblog

7月21日(金)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-082『50年後のぼくたちは』" Tschick " ( 2016 ) Studio Canal / Lago Films / Rundfank Berlin /

監督・共同脚本・ファティ・アキン 主演・トリスタン・ゲーベル、メルセデス・ミューラー <93分・ビスタサイズ> 配給・ビターズエンド

邦題が気になって、とても50年後には生きてないだろうし、と、試写室に駆けつけてみたら、何だ、原題は「チック」という、ヘンテコなロシアから移住の大柄転校生少年の名前。

ドイツでは220万部も売れたという、ヴォルフガング・ヘルンドルフの原作の映画化で、ラスト近くで、二人の少年が「・・・50年後のオレら、どうなってるかな」という会話を邦題にした。

たしかに、ただの「チック」では興味ないだろうし、「スタンド・バイ・ミー」のドイツ版、といっても大して興味は持たれないだろう・・という苦心の邦題による悪ガキ映画だ。

14歳のトリスタンは内向偏屈な性格か、クラスのはみ出しもので、級友からも敬遠されて、まともな友人もいなかったが、ある日、ロシアのど田舎で中国系のマスクをした不良が転入してきて、口きくようになった。

その不良のような東洋系な大柄少年の名前が、タイトルの<チック>で、その転入してきた変人と、トリスタンは<はみだしもの>同士で気があい、話をするうちに行動を共にするようになる。

父親の浮気外泊の末に分裂家族となった果てに、昼夜酔っぱらいの母親の面倒の末に、母は入院となり、少年も夏休みとなり、憧れの少女にもそっぽを向かれていいところない青春だったので、チックとつきあう。

という、ま、サイテーな青春の流れで・・・よくある不良少年映画の経緯なのだが、このモンゴル系の顔をして不良の「チック」が、なかなかの図太い存在感で、映画を引っ張って行く。

ドラマは名作「おもいでの夏」の不良版、という感じで、このブチ切れな不良少年二人の、まさに出たとこ勝負のような日常の行動が、夜の街や野原のキャンプという迷走ぶりがスケッチされる。

この避雷針のない夏休みの放浪が、多くの青春映画のテーマとなったように、とうとうオンボロ・カーでのドライブ放浪野宿無銭旅行となり、トリスタンは夏休みで最高の思い出に。

映画はそのドタバタな二人の少年の夏休みで珍道中で、このドラマは終るが、どの青春映画にも、自分の無様な夏休みと共通しているように、ホロ苦い印象で終わり、新学期を向かえていく・・ああ、青春。・・・。

法律とか、モラルとかルールとか常識とか・・大人になるには、誰でもこのような手錠のない夏休みの思い出があったわけで、この作品もまた、あの苦い味を思い出させてくれるが、いかにも小品。

 

■ボテボテのサードゴロを、ワンテンポ遅れた送球で一塁セーフ。  ★★★☆

●9月16日より、新宿シネマカリテなどでロードショー