その19「修羅の終わり」はこちら。
監督:瀧本智行 脚本:福田靖 出演:豊川悦司 石橋凌 笹野高史 井川遙 小澤征悦
「HERO」や「海猿」の福田靖の脚本があいかわらず周到。6年前、捜査官巻島(=MAXIMAのしゃれ?有能であることの象徴のような名)は部下の失策によって誘拐犯人を取り逃がし、幼児を死なせてしまう。マスコミ対応も誤り、閑職にまわされる結果となる。そんな心理的な負債を背負った男たちの復活劇。悪人や卑劣な人間はラストでキチンと断罪され、主人公のチームはそれなりに救済される。しかしテレビニュースを使って犯人を挑発する劇場型捜査はやはりやり過ぎなので、その分の救済はちゃんと差し引いてある。なるほど。しかし浪花節な展開がちょっと理に落ちすぎている気も。このへんが福田らしさか。
劇場型犯罪へのカウンターとして劇場型捜査があっていいとする発想(原作雫井脩介)はそれなりに説得力があり、ミステリとしても斬新だった。映像にするとそれ以上の効果がある。キャスターを演ずるのはなんと崔洋一監督。原作は久米宏をイメージさせたが、崔も適度に無責任な感じがいい。そういえばテレビのコメンテーターとしてもけっこう活躍していたしね。スクープほしさに体を“売る”片岡礼子のあせり具合もなかなか。彼女はTBSの回文が趣味の変なアナウンサー(祝第二子出産山内あゆ)にそっくりなので、なおさらリアリティあり(笑)。
豊川悦司の指の美しさは、この映画でもちゃんと描かれていてうれしい。しかし実際に挑発するならもっと冷静にやった方が犯人はのってくるはず。最初の怪文書の掌紋の謎など、巻島は冷静に判断していただけにちょっと惜しい。原作では、閑職にいるうちに思いきり長髪にするなど、警察体制への懐疑をあからさまにするような、有能なだけの男ではなくなっている変貌がよかったのに……
BADMANを名のる犯人もミスはしている。そのミスに乗じてラストで強引なローラー作戦にうってでるのは、ことが幼児誘拐だからまだしも、実際にやったら警察は総スカンだろう。まあ、そうなってもかまわないような結末になっているので仕方がないわけだけどね。すっかり演技派になった小澤征悦は、やけにリップクリームを使うなど小憎らしいキャリアをあざとくやってます。あいつにはこんなレベルで満足してもらっちゃ困る……と思っていたら大河「篤姫」の西郷隆盛役はおみごと。
次回は「アンフェアthe movie」