むかし勤めていた学校のメンバーたちと、三ヶ月に一回食事会をもっている。えーと正確に言うとわたし以外の面々は全員アルコール分解酵素をもっていないので、彼らはまさしく『食事会』で、ひとりわたしだけは焼酎やウィスキーのボトルを入れてちびちびやるので『飲み会』になっている。すみませんまた不正確でした。デロデロになるまでいつもガブガブ飲んでます。
場所は“あの事件”が起こるまでは「ゆず」という店だった。地元の食材をいかしたヌーベル・キュイジーヌの店。それはもうたいそう繁盛していたのに、店主の痴情放火未遂によって閉店に追いこまれてしまったのである。
そこで、次善の策として選ばれたのが「富重」(本町3丁目)。ここもなかなか予約がとれない店として有名。値段はリーズナブルだし海鮮料理は新鮮かつ味付けもくどくない。しかも食べ応えがある……というか食べきれないほどのお料理が供されるのが常だった。
ところが、食事会の会場に選んだあたりから、“まるで『ゆず』のような”メニューが並ぶようになったのである。盛りつけに凝り、食器も上品なものに変わった。味もくっきりと自己主張するように感じられたのだった。
でも先日訪れて驚いた。昔のように癖のない味付けに戻っていたのである。わたしとしては歓迎。途中で店員がやってきて
「あのー、ついさっき船からあがったばかりのボタン海老が入ったんですけど、お出ししてもいいですか?」
それだと追加で500円増しになるのだ。みんなハイテンションなので「そりゃあぜひ」とオーダー。
「お持ちしましたー」
げ。ボタン海老ってこんなに大きかったっけ?
「ホントにとれたてなもんですから、死後硬直が……」
みんなひっくり返る。鮮度の説明に死後硬直はないだろ(笑)。
海老もおいしかったが、いっしょに出てきた『カヤカリ』(酒田以外でなんと呼ぶかは不明)の刺身が絶品。
ずいぶん前に勤務していた中学校の卒業生がこの店にいるので
「うまかった。すげーうまかった。また来る」
とお大尽みたいに言えた幸せな夜。
次回特集は「久村」