ゴエモンのつぶやき

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津波シェルター試行錯誤

2016年10月29日 01時55分56秒 | 障害者の自立

 南海トラフ巨大地震の被害想定で、津波の高さが最大34メートルに達するとされた高知県。津波の恐れがある時は高い場所への避難が基本だが、高齢者や障害者が短時間で動くのは難しい。この問題を解決しようと、県は室戸市に水平方向に避難できる全国初の「津波避難シェルター」を建設し、運用が始まっている。

  シェルターのある同市佐喜浜町都呂(つろ)地区は室戸岬から約20キロ、太平洋に面した東岸にある234人の集落だ。住民の半数近くは65歳以上の高齢者。南北の海岸線と急な斜面に挟まれた細長い平地に国道55号が走り、住宅が点々と並ぶ。県によると、都呂地区付近は、地震発生10~20分で津波の第1波が到達し、その高さは5~10メートルと予測されているが、避難タワーの建設用地がなかった。

 シェルターは、集落から高低差がない山のふもとに掘ったコンクリート製横穴(幅3メートル、奥行き33メートル)。奥には上部に向けた縦穴(直径2・5メートル、高さ23・9メートル)があり、らせん階段で山の斜面の上に出られる。建設費は約3億5000万円。2014年に着工し、今年8月に完成した。

 ●重い扉、段差も

 都呂地区の自主防災組織リーダー、竹島力さん(58)に案内してもらった。

 まず、入り口の前で目に入ったのは3本の柱(高さ各3・6メートル)。津波で流されたがれきなどをせき止め、扉を塞いだり、壊したりしないようにする工夫だ。管理用のドアを開けると、高さ約2・1メートルの四角い扉が現れた。水の浸入を防ぐ「水密扉」(ステンレス製)で、厚さは約10センチもある。扉の下から5メートル半の高さまで水が来ても水圧に耐えられる設計という。

 扉は一番早く避難した住民が開けることになっているが、記者が試してみると、密閉するためのかんぬきを動かすハンドルが、かなり重い。竹島さんが「ドアを引きながら、ハンドルに体重を掛けるとやりやすい」と説明してくれたが、何度も回す必要があるうえ、その先には同じ扉がもう1枚ある。「お年寄りだと開閉は難しいのでは」と尋ねると、「日中に集落にいるのは高齢者ばかり。その時間帯にどう対応するかが課題です」と表情を曇らせた。

 さらに、水の浸入や水圧対策のため、2枚の扉は入り口の空間部分より大きく、ふたをするような構造になっている。そのため、10センチほどの段差があり、車椅子の人が避難する場合は介助が必要。地区では今後、訓練を積み重ねていくという。

 ●手探りの開閉判断

 2枚の扉を抜けた先には、逃げ遅れている人がいないかなど、扉の外側の様子をカメラで映して確認できるモニターがあった。「集落の人は顔見知りだから、避難できたかどうかは中で分かるのでは?」と問うと、「国道を通る車からの避難も想定しています」と竹島さん。カメラが使えなくなれば、らせん階段から斜面上まで出て目視し、扉を操作する人に状況を伝える。万一閉め出された場合のために、シェルター入り口の横には高台に上がれる階段もある。とはいえ、開閉のタイミングなどは手探り状態だ。

 ●内部に畳、トイレ

 シェルターは、南海トラフ巨大地震の津波にも耐えられると想定されている。そのため、中には高齢者が横になって休めるよう畳を置き、仮設トイレもある。ダクトで換気され、かび臭さや息苦しさは感じない。竹島さんによると、入り口の南北約400メートルに住む約50人が避難対象だが、利用者が定員(71人)を超えた場合は元気な人に上部に逃げてもらうという。

 県によると、県内では他にも津波避難タワーが造れない場所はあるが、シェルター建設には適しておらず、実情に応じた避難施設のあり方を模索している。

山のふもとに造られた避難シェルターの入り口

毎日新聞   2016年10月28日


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