ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

第1部 本人と家族の挑戦 (1)

2010年09月24日 01時15分24秒 | 障害者の自立
違いを力に -発達障害をめぐる現場から

 歴史に名を残す偉人と落ちこぼれ扱いされる人たち-。世間の評価は対極だが、そのどちらにも深くかかわるのが発達障害者だ。周りの環境によって発揮する力は大きく左右され、その環境づくりは、近年の社会問題を克服する指針にもなりうる。発達障害者支援法が施行されて5年が経過した今、発達障害を通して、人と人とのかかわり方や社会のあり方を見つめ直す。

違いを力に -発達障害をめぐる現場から
 歴史に名を残す偉人と落ちこぼれ扱いされる人たち-。世間の評価は対極だが、そのどちらにも深くかかわるのが発達障害者だ。周りの環境によって発揮する力は大きく左右され、その環境づくりは、近年の社会問題を克服する指針にもなりうる。発達障害者支援法が施行されて5年が経過した今、発達障害を通して、人と人とのかかわり方や社会のあり方を見つめ直す。
第1部 本人と家族の挑戦 (1) 2010年9月22日自己肯定感はぐくむ 「ほめる」のがカギ

 ■発明王に障害特性
 「エジソンも発達障害だったといわれています」

 発達障害児の親でつくるNPO法人「チャイルズ」(大阪市港区)の是沢ゆかり代表(44)は6月、発達障害の次男・司君(12)が通う同市西淀川区の市立西淀中で生徒に語り掛けた。

 エジソンは「apple」のスペルを学ぶ時、「リンゴはなぜ赤いのか」という質問を繰り返し、教諭を怒らせたという。「いま求められていることに自分を合わせるのが難しく、気になったことがあれば状況に関係なくこだわってしまう。これは発達障害の特徴」

 発達障害は、先天性とされる脳機能の障害で、文部科学省の調査では、小中学生の6・3%が該当する可能性が示された。

 もって生まれた力がうまく引き出された結果、発明王とまで呼ばれるようになったエジソン。一方、「保護者や本人が障害を受け入れられず、その特性に配慮のないまま周りからしかられ続けると、非行や引きこもりにつながる二次的な障害を引き起こしかねない」と是沢代表。

 ■自己評価高める
 周りの人たちはどのように力を引き出せばいいのか。是沢代表は「ほめる」を重視。「大切に思われている」などの感情を養い、自己肯定感(自己評価)を高めるためだ。

 その上で、「ルールを明確にして約束を守るよう求める」「具体的な指示を、声だけでなく文字でも示す」など、個々の特性に応じた接し方を提案する。

 こうした対応力がまず求められるのは、子どもにとって最も身近な家族。是沢代表が2003年に親の会を立ち上げたのは「知識や苦しみを共有し、障害児の子育てを孤立させないため」だった。

 かつての苦い経験が原動力となる。司君の発達に違和感を覚えたのは1歳前。言葉はなく、あやしても笑わない。相談した区役所から紹介された医師からは明確な診断が出ず、自ら探した医療機関から発達障害の自閉症と診断されたのが4歳の時。「このころが一番つらかった」

 団体設立後は、大阪市内の各区で親の会が根付き連携していけるようにと、約30団体が参加するネットワーク構築にも尽力。現在は、発達障害児が集団で起こすときの対処法を、保護者が目の前で学べる手法の開発も進める。

 ■「障害なくても」
 症状が重く知的障害もある司君は「円滑な会話や抽象的な概念の理解はおそらく一生できない」と是沢代表。

 しかし、生活能力を磨いてきた結果、洗濯や食器洗いなどは「他の兄弟よりもきっちり行う」。細かいところに注目して発見するのも得意だという。「選択肢は少ないかもしれないが、自分で決め、責任をもてる大人になってほしい」と願う。

 是沢代表は司君を含め3児の母。「一人一人の個性に寄り添う発達障害児の子育ては、障害のない子どもにもあらゆるところで生かされますよ」と笑顔を見せた。

 ■個性の延長
 淀川キリスト教病院(大阪市東淀川区)の小児科部長、鍋谷まこと医師は、発達障害を「音痴と同様、個性の延長」と総括する。

 発達障害は、大別すると(1)広汎性発達障害(2)注意欠陥多動性障害(ADHD)(3)学習障害(LD)-の3種類。先天的とされる脳機能の障害で「子育てや家庭環境の影響でなるものではない」。

 広汎性発達障害には、集団行動や対人関係が苦手▽言葉のやり取りが苦手▽想像力が乏しく興味に偏りがある-の「三つ組み」と呼ばれる要素がある。自閉症や知的障害のないアスペルガー症候群なども含む。

 ADHDは、不注意で落ち着きがないのが特徴。LDには、学習上、読み書き算数など特定の困難が見られる。鍋谷医師は「これらの症状は同時に出ることも多く、治らない。しかし、診断で個々の特徴が分かれば、時として大きな転機になる」と指摘する。

 「環境を調整すれば生きづらさを取り除ける」面があるためで、発達障害の特性があっても、問題なく暮らせれば「障害」とは言えない。

 「親のしつけがなっていない」「本人がさぼっている」などと批判され「将来に悲観的なストーリーしか思い描けなかった親子に、新しい希望のある未来の物語を提示するのが発達障害の診断」と強調する。

 ■良いところ伸ばせ
 環境調整は、「文字で簡潔に見通しを示す」「音や目に入る物など周りの刺激を少なくする」など一定の目安はあるものの、「一人一人の特徴に応じて、足りないところを補い、良いところを伸ばすのが基本」と鍋谷医師。例えば「字が書けなくてもパソコンができるので代用する」といった具合だ。

 そのためには「身近に相談できるところを探すのが重要」。広汎性発達障害は3歳ごろには分かる場合が多く、ADHDやLDは小学校入学ごろから分かってくるため「心配になったら、保健所や校医、発達障害者支援センターなどを訪ね、どう対応していけばいいか学んでほしい」。

 ただ、ADHDをはじめ、合併症のてんかんやしかられ続けるなどして表れる二次的な障害には、薬物治療が有効な場合もあり、必要なら病院に行くべきとしている。

 ■長い目で見て
 発達障害の中でも、課題を最後までやれなかったり、でしゃばりだったりと、しかられる対象になりやすいADHDの研究を先駆的に行ってきた鍋谷医師。否定的な叱責(しっせき)を繰り返しても「不注意症状が改善することは少なく、かえって二次的な問題を生じさせる」という。

 他人に手を出すなどの症状がでてもADHD元来の症状ではなく、「自己を否定的にみられ、認められないことによる自尊感情の低下や、周囲と関係が取れない孤立感などから生じる場合が多い」。

 問題行動があれば、基本的にすぐにその善しあしを伝えるようにし、しかる回数よりもほめる回数を増やす。「子どもの特性を正しく理解し、かかわることで、子どもは見違えるほど変わる。ただ、その道筋は一定ではなく、親による適切な援助と方向付けが必要」と力を込める。「親は子どもの将来を指し示す羅針盤なんです」

 【発達障害者支援法】発達障害者の自立や社会参加に向けた支援について、国と自治体の責務などを定めた法律。2005年4月に施行された。

大阪日日新聞


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