馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

馬が敷き料を食べてしまうと

2021-12-16 | 急性腹症

牛飲馬食、という言葉がある。

牛はよく水を飲み、馬はよく食べる。という意味である。

人に飼われている代表的な草食動物をよく観察して、昔の人が言ったのだ。

実に適確に、反芻動物と、非反芻動物である馬の消化生理を表現している。

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乳牛は大量の牛乳を分泌するために、まず大量の水を飲まなければならない。

もちろん栄養分も重要で、高泌乳牛にはカロリーが不足しないように良質な粗飼料と濃厚飼料を与える必要がある。

ただ、牛はいつまでも食べ続けることはできない。

乾物摂取量に限界があり、ある時間は座り込んで反芻しなければならない。

馬は、

栄養分の劣った飼料与えると、食べ続けることで補おうとする。

馬は食える動物なのだ。

反芻する必要はない。

ひたすら食べ続ける。

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先日、季節はずれの結腸捻転馬が連れて来られた。

開腹すると、結腸骨盤曲から左腹側結腸には固めの内容が詰まっていた。

腸壁の外から触ると少しジャリジャリした触感。

しかし、砂ではない。

いつもの結腸捻転より苦労して内容を洗い出した。

が、

盲腸にも同じジャリジャリ感のある内容が入っていた。

これは自分で出してもらうしかない。

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洗い出した腸内容は堆肥場に捨てに行ってもらう。

翌日、しげしげと観察した。

乾草の繊維ではなさそうだ。

敷き料に使われている植物繊維らしい。

その空胎馬はよく食う馬だそうだ。

ときどき腹痛をしていた。

結腸便秘を起こすと、それが要因で結腸捻転を起こすことがある。重さのバランスが変わり、腸が自分で動けなくなるからだろう。

その馬の体脂肪は繁殖雌馬としては少なかった。

馬としてはもっとカロリー摂取したい状態だったのだろう。

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馬は腹が減ると敷き料も食べてしまう。

牧草を敷き料にしているなら食べてもらっても構わないが、消化し難い繊維だと便秘の原因になる。

敷き料を食べてしまう馬には、

食べても良い乾草をもっとあたえるか、

食べても良い敷き料(牧草)を敷いてやるか、

口カゴをするしかない。

毎日口カゴをされるのは精神的ストレスだろう。

少なくとも腸に詰まってしまう植物繊維を敷き料に使うのは、敷き料を食べてしまう馬にはよろしくない。

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こいつもなんでも食べてしまうヤツです

なっ?