骨折の内固定シリーズの最後に。
Equine Surgery 1st ed. にあった記述。
Gustav E. Fackleman 先生、Tuftsの外科教授にして、かのAo Principles of Equine Osteosynthesis の著者のお言葉である。
The most important aspect of intraoperative and postoperative evaluation of a case is the development of a critical nature that enables the surgeon to recognize errors and to correct them before they become much worse.
症例についての手術中と手術後の評価において最も重要なことは、より悪化してしまう前に間違いを見つけ修正することを外科医ができるようになるための重要な資質を伸ばすことだ。
Internal fixation is exacting and demanding skill. Those should be undertaken only by those who are satisfied with nothing less than a perfect restitusion of skeletal integrity.
内固定は正確さを要求される難しい手技である。内固定手術は、骨の堅牢性を完全に再構築しなければ満足しない人だけが行うべきである。
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馬の骨折治療の黎明期に活躍してこられた大先生のお言葉である。
その裏には数え切れない失敗と反省、失意と自信があるのだろう。
厳しい言葉ではあるが、胆に銘じたい。
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ただ、骨折治療の考え方も新しい展開が起きてきている。
丈夫なスクリュー・プレートを使ってしっかり固定し、手術後から荷重をかけたり動けるようにする。という考えに沿った技術の発展がこれまでの20年だったとすると、現在はいかに生体の治癒能力を妨げないように整復・固定するかという視点で治療方法が考えられ始めている。
a perfect restitution of skeletal integrity 骨格の堅牢性の完全な再構築! よりも大事なものがあるのかもしれない。
その辺りのことはまたいずれ。
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桜の下にて 春死なん
そのきさらぎの 望月のころ
ウマの骨折に関して言えばこれは無いでしょうけれども、私的には必要なことをやらないとか、いらないことをするとか依頼者に思われないようにしたいものです。
どの程度に満足するかなんてのは単純な興味とは異なる普遍的な感覚です。
混同しがちであったり、詭弁に抓まれがちではありますが。
私が今の仕事を気に入っているのは、間違いなく自分が手を出さなければもう死んでいたという馬を救ったと実感できる症例が少なくないからです。
しかし、獣医師みなが、本当にこの処置は必要か?というのは考えなければいけませんよね。