礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

血盟団事件と血液型

2012-05-27 21:13:07 | 日記

今日のコラム 2012・5・27

◎血盟団事件と血液型

 必要があって、『日本医事新報』のバックナンバーを調べていたところ、その第八三八号(一九三八年)に「血液型と気質の関係について」という論文が載っていた。書いたのは、昭和初年に、「血液型と気質」相関説を唱えたことで知られる古川竹二(一八九一~一九四〇)である。
 同論文には、いくつか興味深いデータが紹介されているが、特に「第一表」の「右傾者」一四名の血液型に関するデータが目を引く。古川竹二は、この「右傾者」の実体について明言を避けているが、本文で「先年驚天動地の事件を巻き起こした人々」と述べていることから、おそらく「血盟団事件」で逮捕された一四名を指しているものと思われる。
 この事件は、一九三二年(昭和七)、井上日召が率いる「血盟団」のメンバーが、「一人一殺」をスローガンに、政財界の要人を暗殺した事件である。二月に前大蔵大臣の井上準之助(立憲民政党幹事長)が小沼正〈オヌマショウ〉によって射殺され、三月には三井合名理事長の團琢磨が菱沼五郎によって射殺された。血盟団が作成した二〇名の暗殺リストの中には、犬養毅(首相)・若槻礼次郎(元首相)・池田成彬〈シゲアキ〉(三井銀行筆頭常務)・西園寺公望(元老)・伊東巳代治〈ミヨジ〉(枢密顧問官)などの名前があったと言われている。
 この事件で逮捕されたのは、井上日召・古内栄司・小沼正・菱沼五郎・黒沢大二・池袋正釟郎・四元〈ヨツモト〉義隆・星子毅・森憲二・久木田祐弘・田倉利之・田中邦雄・須田太郎・伊藤広の一四名だった。
 古川が「三井、塚田」から提供を受けたというデータには、パーセントしか示されていないが、これを人数に直すと、O型七名、A型二名、B型五名、計一四名となる。日本人の血液型頻度は、A型四割、O型三割、B型二割、AB型一割と言われているが、それに比べるとO型とB型の割合が突出しているのは、偶然だと言い切れないような気もする。
 古川竹二は、「団体活動性指数」(O型とB型の和を分子とし、A型とAB型の和を分母として求める)という指数を提唱し、民族や団体の活動性は、この指数によって判定できるとしていた。血盟団一四名の団体活動性指数は、六・〇で、これは、日本人の団体活動性指数(一・〇九)の、実に五・五六倍となっている。ただし、「右傾者」が本当に血盟団関係者を指すのか、その血液型のデータが信頼できるのか、古川の言う「団体活動性指数」に科学的な根拠があるのかなどについては、今、判断を保留しなければならない。

今日の名言 2012・5・27

◎登りたい山に一つずつ登ってきただけ
 ヒマラヤ8000メートル峰全14座を日本人として初めて制覇した登山家・竹内洋岳〈ヒロタカ〉さんの言葉。謙虚な人柄があらわれている。読売新聞2012年5月27日記事による。なお、『聞き書き 築地で働く男たち』(平凡社新書、2010)の著者・小山田和明さんから以前聞いたところによれば、小山田さんは、竹内さんと同い年で、高校も大学も一緒だったという。つまり、右記事には記載がなかったが、竹内さんは、都立一橋高校から立正大学に進んだようである。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 5月26日の名言 | トップ | 古畑種基と冤罪事件 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事