礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

黒沼健と「濠洲囚人隠語集」

2012-06-19 05:26:35 | 日記

◎黒沼健と「濠洲囚人隠語集」

 数年前、古書目録に『世界犯罪隠語大辞典』が載っているのに気づき、すぐに注文した。この本は、大空社の「隠語辞典集成」に収録されており、閲覧は難しくない。しかし、かなりの珍本であり、今後、現物が市場に出る可能性は少ないと判断した。
 ただし、「大辞典」とあるのは多分ジョークで、実際はB6判一一二ページの小冊子である。それもそのはず、この「大辞典」は、雑誌『犯罪実話』一九三三年新年号の「付録」にすぎなかった。「付録」だからこそ、粗末に扱われ、今日、「珍品」になっているのである。
 数週間後、現物が送られてきた。覚悟はしていたものの、予想以上に見栄えのしない小冊子であった。
 しかし、中味は決して悪くない。西山光編の「犯罪隠語辞典」と黒沼健編の「めりけん犯罪隠語集成」の二部から構成されており、どちらも三段組みに、ビッシリと隠語を詰めこんでいる。この黒沼健というのは、戦後、推理作家として知られることになる、あの黒沼健のことだと思う(西山光については未詳)。
 黒沼編の「めりけん犯罪隠語集成」の末尾に、「濠洲囚人隠語集」というものが載っていた。「濠洲」というのは、オーストラリアのことである。
 このオーストラリアの「囚人隠語」がなかなか興味深い。いくつか例を挙げてみよう。

Barney Fair 毛髪。
Bees and honey 金銭。
Cain and Abel 卓子。
North and South 口。
Mother and daughter 水。
Oh my dear ビール。
Rat and mouse 家。

 卓子〈タクシ〉という言葉が古風だが、要するにテーブルの意味である。
 ここで紹介されている隠語は、「熟語」の形をとっているものがほとんどであった。それにしても、なぜ、左にある英熟語(隠語)が、右にあるような意味を持つのか。最初のうちは、全く理解できなかった。しかし、そのうち「これは、ことによると」と思えてきた。コラムの読者の中には、すでに、お気づきになった方もおられるだろう。【続きは次回】

今日の名言 2012・6・19

◎クールな頭、温かい心

 よく聞く言葉だが、これは、経済学者のアルフレッド・マーシャルの言葉だという。今日の日本経済新聞「やさしい経済学」による。執筆は、京都大学の矢野誠教授。なお、矢野教授によれば、マーシャルの思想は、「人間は誰でも利他的な心を持つ」という見方に支えられているという。日経新聞、勉強になりますね。

 

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