「この近所、暗すぎるだろ!!」
亮の叫びが、暗く細い道に響き渡った。
物騒な事件が起こったので、雪の家まで送って行くとついてきた亮だが、これは予想外だった。
続けて「税金払ってるんだから街灯でも設置したらどーなんだ!!」と大きな声を出す亮を、
雪は必死でなだめる。なんて恥ずかしいんだろう‥。
雪の家へと向かう道は、暗く細く狭い上に静まり返っている。
ただでさえ女性のひとり歩きは危ないというのに、これでは毎日危険と隣り合わせだ。
「お前も大変だな。学校の為に実家出てこんな所に住まなきゃなんねーなんて。
バイトして勉強して帰りも遅い上に、女だぜ?」
そう言って彼女を労う亮に、雪はお決まりの台詞で返す。
「本来皆そうでしょう」と。頑張ってるのは私だけではないと。
亮は下宿の仲間達や雪が苦労しているのを見る度、なんだか悲しい気持ちになった。
でもその一方で、認めたくはないが感心していたのだ。
なぜなら職を転々とする自分もそうだが、それ以上にヒドイ怠け者が肉親にいるからだった。
「それでもうちの姉貴が、お前の半分でもその考えがあればなぁ」
そう言って溜息を吐く亮に、雪はなぜかと聞いた。
彼は姉の姿を思い出して、幾分苛立ちながら言葉を続ける。
「アイツはあまりにも本能に忠実すぎんだよ。すぐに怠け癖が出る」
そして亮は、自分の正直な気持ちを口にした。彼女に対する、客観的な見解を。
「正直オレはお前のことからかってばっかいるけど、お前はすげー誠実だよ。
何やっても、きっと上手くいく」
心配いらねーよ、と亮は自信を持った口調で言った。
雪は急に褒められ、思わず赤面する。
「そりゃ!何度も言ってますけど、皆と同じように私だって努力しようと‥必死ですもん~」
褒められることに慣れてない雪は、ぎこちない素振りで謙遜した。
話題を変えるように、雪は亮の姉がすごく綺麗な容姿をしていることについて触れた。
芸能人かと思ったと雪は続けたが、亮は動物的な感覚で異変を感じている最中だったので、その話題は全く耳に入らなかった。
ゆっくりと辺りを見回す。
耳を澄まし、目を見開いて、心がざわめく音に感覚を傾ける。
ダッ!
次の瞬間、亮は駆け出した。
いきなりのその行動に、雪は驚きを隠せない。
亮はそのまま、すごい勢いで不審人物が居るところへと突っ込んで行った。
拳を握り、めいっぱいその男の顔を殴る。
二人はもつれ合ってその場に倒れこんだ。
亮が男の胸ぐらを掴みながら、お前は何者だと詰め寄る。
自分たちの後をつけてくる気配を、先ほどから亮は感じていたのだ。
怒れる亮に組み敷かれた男は、必死に誤解だと言い続け、助けてくれと悲痛な声を上げた。
その騒動に雪が近づき、抑えこまれた男を見た時、思わず目を丸くした。
!!
亮が不審者だと思って取り押さえた男は、隣に住む秀紀だった。
そうとは知らない亮は、彼を変態だと言って離さない。
「あ、あんた!」
秀紀が雪に気付いて、咄嗟に呼びかけた。男性はあまり使わない”あんた”という呼び方を使って。
雪も「おじさん!」と呼びかける。それは親しみを込めての彼への呼び方だった。
亮は二人が顔見知りだったことを意外に思ったが、隣人が変態なんて、と尚の事疑いを深めていった。
男のくせに女言葉を使うのにも違和感があるようだ。
三人はしばしその場で揉めていた‥。
雪の必死の弁解で、ようやく亮は秀紀を解放した。
しかしまだ心から信用したわけじゃないようで、訝しそうな表情で秀紀の方を見ている。
恨めしそうな顔をしながら、秀紀は雪の方を向いて口を開いた。先ほど掴まれた胸元が苦しそうだ。
「あんたこんな男と付き合ってるの?!完全にチンピラじゃないの」
雪が慌てて否定する中、亮は罵倒されたのが癪に障り、またもや秀紀の胸ぐらを掴んで凄んだ。
やはり秀紀が女言葉を使うことに抵抗があるようだ。
秀紀も秀紀で、変態呼ばわりされたことに憤慨していた。自分の口調がどうであれ亮には関係のないことだし、
先程も別に後をつけていたわけではないと弁解する。
暗い夜道でわぁわぁと言い争っている内に、いつのまにか周りに人だかりが出来ていた。
変態‥捕まった‥などヒソヒソと囁く声が聞こえてくる。
秀紀は思わず俯き、亮に倒された時脱げたキャップを拾って目深にかぶり直した。
しかし野次馬は目ざとく秀紀の顔をジロジロと見ると、「あの人この前自治体に連れて行かれた人じゃない?」と噂した。
秀紀があれはただの検問だと弁解しようとするが、彼女らは聞く耳持たない。
ヒソヒソと、しかし秀紀に聞こえるように噂を続けた。
あの人さっきから聞いてたら口調もオカマみたいだし‥。 この前なんて服装も悪趣味でさぁ
スーパーでまゆげ整えてるのも見たことあるわ マニキュアしてたこともあった 男なのに? うわ‥
ジロジロと、無数の好奇の目が秀紀に注がれる。
あんた達に関係ないでしょという彼の呟きも、彼らの中の誰かが言った一言の前に、消え去った。
「キモ!」
野次馬は散り散りに去って行った。しかし秀紀は俯いたまま動けない。
その様子を見ていた亮が、ほれみたことかと秀樹を責めた。
「ほらな?マニキュア?自治体~?」
どう疑わずにいられるんだと亮は続けようとしたが、咄嗟に雪がその腕を掴んだ。
言葉には出さず、首を横に振って亮にストップをかける。
亮は舌打ちをしつつも、雪の言う通りそれ以上秀紀を責めるのを止めた。
雪がフォローしようと、秀紀に声を掛ける。
「あ、おじさん‥あの、ですから‥」
しかし雪は言葉に詰まった。
秀紀は俯いたまま、何も言わない。その横顔に、掛けられる言葉なんて無かった。
すると秀紀は無言のまま、地面に落とした包みを拾うと家とは反対方向に向かって歩き出した。
思わず雪は、何処へ行くのかとその背中に問いかける。
しかし秀紀は「関係ないでしょ」と言い残して去って行った。
その後ろ姿を心配そうに見つめる雪と、胡散臭そうに訝しがる亮。
彼の背中が見えなくなると、また辺りは静寂に包まれたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<疑われた彼>でした。
秀紀さん可哀想に‥。野次馬達、スーパーで眉毛整えてるとかマニキュアしてるとか、秀紀のこと見過ぎ‥(T T)
そして今回個人的に笑ってしまったのは、ここのコマ↓
三人が揉めてるコマですが、雪の下辺りに手書き文字がありますね。
本家版では「オクシンカクシン」、いざこやゴタゴタという意味の言葉が書かれてますが、
日本語版。
「やっさもっさ」!!(すいません、ちょびこさん画像お借りしました!)
やっさもっさ‥。私初めて聞きました。揉め事や騒いだりすることを表す言葉なんですってね!
翻訳者の方、一体おいくつ位の方なのか改めて謎に感じた表現でした‥。
やっさもっさ‥。
そして記事には関係ないですが、チートラドラマCDの宣伝パート2,私見たことなかったので、
もし同じような方がいたら‥と思って載せます~(^^)
cheese in the trap2_cm.wmv
亮の声‥イケてる!
そして「週末時間ある?映画行かない?」の先輩の台詞が聞ける‥!(*^^*)
どうぞ萌えて下さい(笑)!
次回は<最悪なタイミング>です。
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亮の叫びが、暗く細い道に響き渡った。
物騒な事件が起こったので、雪の家まで送って行くとついてきた亮だが、これは予想外だった。
続けて「税金払ってるんだから街灯でも設置したらどーなんだ!!」と大きな声を出す亮を、
雪は必死でなだめる。なんて恥ずかしいんだろう‥。
雪の家へと向かう道は、暗く細く狭い上に静まり返っている。
ただでさえ女性のひとり歩きは危ないというのに、これでは毎日危険と隣り合わせだ。
「お前も大変だな。学校の為に実家出てこんな所に住まなきゃなんねーなんて。
バイトして勉強して帰りも遅い上に、女だぜ?」
そう言って彼女を労う亮に、雪はお決まりの台詞で返す。
「本来皆そうでしょう」と。頑張ってるのは私だけではないと。
亮は下宿の仲間達や雪が苦労しているのを見る度、なんだか悲しい気持ちになった。
でもその一方で、認めたくはないが感心していたのだ。
なぜなら職を転々とする自分もそうだが、それ以上にヒドイ怠け者が肉親にいるからだった。
「それでもうちの姉貴が、お前の半分でもその考えがあればなぁ」
そう言って溜息を吐く亮に、雪はなぜかと聞いた。
彼は姉の姿を思い出して、幾分苛立ちながら言葉を続ける。
「アイツはあまりにも本能に忠実すぎんだよ。すぐに怠け癖が出る」
そして亮は、自分の正直な気持ちを口にした。彼女に対する、客観的な見解を。
「正直オレはお前のことからかってばっかいるけど、お前はすげー誠実だよ。
何やっても、きっと上手くいく」
心配いらねーよ、と亮は自信を持った口調で言った。
雪は急に褒められ、思わず赤面する。
「そりゃ!何度も言ってますけど、皆と同じように私だって努力しようと‥必死ですもん~」
褒められることに慣れてない雪は、ぎこちない素振りで謙遜した。
話題を変えるように、雪は亮の姉がすごく綺麗な容姿をしていることについて触れた。
芸能人かと思ったと雪は続けたが、亮は動物的な感覚で異変を感じている最中だったので、その話題は全く耳に入らなかった。
ゆっくりと辺りを見回す。
耳を澄まし、目を見開いて、心がざわめく音に感覚を傾ける。
ダッ!
次の瞬間、亮は駆け出した。
いきなりのその行動に、雪は驚きを隠せない。
亮はそのまま、すごい勢いで不審人物が居るところへと突っ込んで行った。
拳を握り、めいっぱいその男の顔を殴る。
二人はもつれ合ってその場に倒れこんだ。
亮が男の胸ぐらを掴みながら、お前は何者だと詰め寄る。
自分たちの後をつけてくる気配を、先ほどから亮は感じていたのだ。
怒れる亮に組み敷かれた男は、必死に誤解だと言い続け、助けてくれと悲痛な声を上げた。
その騒動に雪が近づき、抑えこまれた男を見た時、思わず目を丸くした。
!!
亮が不審者だと思って取り押さえた男は、隣に住む秀紀だった。
そうとは知らない亮は、彼を変態だと言って離さない。
「あ、あんた!」
秀紀が雪に気付いて、咄嗟に呼びかけた。男性はあまり使わない”あんた”という呼び方を使って。
雪も「おじさん!」と呼びかける。それは親しみを込めての彼への呼び方だった。
亮は二人が顔見知りだったことを意外に思ったが、隣人が変態なんて、と尚の事疑いを深めていった。
男のくせに女言葉を使うのにも違和感があるようだ。
三人はしばしその場で揉めていた‥。
雪の必死の弁解で、ようやく亮は秀紀を解放した。
しかしまだ心から信用したわけじゃないようで、訝しそうな表情で秀紀の方を見ている。
恨めしそうな顔をしながら、秀紀は雪の方を向いて口を開いた。先ほど掴まれた胸元が苦しそうだ。
「あんたこんな男と付き合ってるの?!完全にチンピラじゃないの」
雪が慌てて否定する中、亮は罵倒されたのが癪に障り、またもや秀紀の胸ぐらを掴んで凄んだ。
やはり秀紀が女言葉を使うことに抵抗があるようだ。
秀紀も秀紀で、変態呼ばわりされたことに憤慨していた。自分の口調がどうであれ亮には関係のないことだし、
先程も別に後をつけていたわけではないと弁解する。
暗い夜道でわぁわぁと言い争っている内に、いつのまにか周りに人だかりが出来ていた。
変態‥捕まった‥などヒソヒソと囁く声が聞こえてくる。
秀紀は思わず俯き、亮に倒された時脱げたキャップを拾って目深にかぶり直した。
しかし野次馬は目ざとく秀紀の顔をジロジロと見ると、「あの人この前自治体に連れて行かれた人じゃない?」と噂した。
秀紀があれはただの検問だと弁解しようとするが、彼女らは聞く耳持たない。
ヒソヒソと、しかし秀紀に聞こえるように噂を続けた。
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しかし雪は言葉に詰まった。
秀紀は俯いたまま、何も言わない。その横顔に、掛けられる言葉なんて無かった。
すると秀紀は無言のまま、地面に落とした包みを拾うと家とは反対方向に向かって歩き出した。
思わず雪は、何処へ行くのかとその背中に問いかける。
しかし秀紀は「関係ないでしょ」と言い残して去って行った。
その後ろ姿を心配そうに見つめる雪と、胡散臭そうに訝しがる亮。
彼の背中が見えなくなると、また辺りは静寂に包まれたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<疑われた彼>でした。
秀紀さん可哀想に‥。野次馬達、スーパーで眉毛整えてるとかマニキュアしてるとか、秀紀のこと見過ぎ‥(T T)
そして今回個人的に笑ってしまったのは、ここのコマ↓
三人が揉めてるコマですが、雪の下辺りに手書き文字がありますね。
本家版では「オクシンカクシン」、いざこやゴタゴタという意味の言葉が書かれてますが、
日本語版。
「やっさもっさ」!!(すいません、ちょびこさん画像お借りしました!)
やっさもっさ‥。私初めて聞きました。揉め事や騒いだりすることを表す言葉なんですってね!
翻訳者の方、一体おいくつ位の方なのか改めて謎に感じた表現でした‥。
やっさもっさ‥。
そして記事には関係ないですが、チートラドラマCDの宣伝パート2,私見たことなかったので、
もし同じような方がいたら‥と思って載せます~(^^)
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心配してヒョンを見返る雪ちゃんの横で亮さんはアクビしてるんでしょうか。まだなにか言ってんでしょうか。私はアクビしてると思ってた(笑)
亮の声いいですねー。雪ちゃんの声は、高くて相変わらずシックリきません。ナレーターの声もなんか…(笑)
本家の方では口から何か出してる(エクトプラズム?)亮さん、日本語版ではそのエクトプラズムが消えてるんです!
何故ですか、師匠ーーー!(かんぼーちょー!ふうに)
久々の細かいクラブだ~!よく気づかれましたね姉さま~。
アレはあくびなのか何なのか‥。江戸っ子風に「かぁッ」とタン吐き出してたりして‥笑
私あります。山の手線大崎駅のホームで。
目の前で。
さすが江戸っ子!と思うより先に、何だ今のは?!
と、一緒にいた先輩と呆気にとられた後で爆笑しました。
亮くんならかーっぺっとやっても手鼻かんでも
ダブルOKな気さえしてきます。
既婚者としては、そういうところも含めて
亮くんがいいんです。
先輩がトイレから出た後の臭いとか、屁でも
こかれた日にゃ…
それって江戸っ子っぽい仕草だったのかぁ。。と妙に納得。
で、ココですよね~。
雪ちゃんが素直に亮くんの申し入れを受けたので、思わず亮くんも素直になって雪のことを褒めるという。
私、このふたりは鏡のようだと思うんですよね。
片方が心を開けば、もう片方も開く。そうやってどんどん近づいていくという。。。あぁステキ。(*´Д`*)ポポンッ
それにー、(とくに)姉さま~~ちょっと想像してみてくださいよ~。
正しい三角関係、つまり先輩と亮くんが対等になるためにはですよ?亮くんにはやらなければならないことがあると思いませんかー?
それは・・・雪ちゃんとの・・・
(* ´З`*)(*´ε` *)CHU~♪ですよ!!
そのうち絶対あるはず!とソワソワして待っているのですが、さて、いったいいつ!?どんなシチュエーションで!?
時々その妄想が止まらなくなるさかなでございます~。
フフフ…。
ところで話は全然変わりますが、亮くんが突然走り出すときの、やけにヒザが高く上がった前掲ポーズに吹き出しちゃうのは私だけでしょうか。
ココと、あとずっと後の、ピアノの先生から逃げ出すところだったかな。
走り出す瞬間にここまでヒザ上がる?どんだけ全力!w
んなわけないすよね。やっぱ重箱かと。
ヒデ兄、もうこの時期には荒みきって限界にきてますから、呼ばれるままに実家へ顔出すようになったんじゃないかなぁと思います。
重箱を返しに行って…また中身つめて帰ってくるのかな。笑
さかなさん、わたしもよくひとりコメント祭してます~
ではお仲間にいれて下さい
重箱て、
わたし重箱に下着が入ってたのかと…!
ってりんごさん………(爆)
さすがの超回答。。いやなかなか真似できないわ~ww
じゃああの中に雪のパンツも!(笑)
おさかなさん…!ついにやっちまいましたね…ははっ(ノ∀`)σ
誰もが一度は通る道です!
いやぁ。今さっき出直して来ました。重箱問題…。
わたしナゼか下着入っていると思ってまして…。
風呂敷に包まれた重箱、泥棒から受け取ったのだと…。
そして重箱から下着出てきたと思ってましたが、そんなコマなかったですわ~。
じゃあ、あの重箱てなんなんでしょう…!
なんてこった~さかなさんのダブリのコメとともにわたしの勘違いも消してもらったほうがよいですね…。はは!