雪と河村亮が韓国料理を食べている間、聡美と太一はラーメン屋に来ていた。
聡美は雪が、先ほどの携帯を拾ったヤンキーと青田先輩、どちらとくっつくか太一に賭けを持ちかけた。
二人は思い思いの予想を口にする。
「青田先輩に酢豚10皿」「あたしはヤンジャンピ!」
二人の賭けはどちらが勝利するか‥。
その結果が出るのはもう少し先である。
雪と亮は食事を終えて外に出るところであった。
2回はおごれと亮はまだ言っている。
雪は亮の方を振り返りながら、「元はといえばあなたが絡んでさえ来なければこんなことには‥」と小言を並べている。
すると入り口から大勢のお客さんが入って来たのだが、
亮の方を向いている雪は気付かない。
亮は咄嗟に雪の髪を掴んだ。
「おい!前見ろ!!」「?!!」
間一髪、雪はガラス戸に顔をぶつけなくて済んだのだが、
それ以上に髪の毛(彼女のコンプレックスだ)を掴まれたことに雪はショックを受けた。
そして髪を掴んだ亮もまた、衝撃を受けていた。
「これが女の髪の毛かぁ?ダメージヘアーにも程があるだろ!」
「失礼な!!」
昼下がりの食堂に、雪の怒号が響き渡った‥。
店から出ても、まだ雪は頭に血が昇ったままであった。
そのまま去ろうとする雪に、亮は無傷だったことに感謝しろよと舌打ちした。
そして雪は、背後から「おい、ダメージヘアー!」と呼び止められた。
雪が青筋を立てながら振り向くと、亮は言った。
「淳の奴と仲直りしたんだよな?」
雪は亮の言わんとしていることが分からず、口を噤んだ。
亮はそんな雪を見ながら、トラップを仕掛けた。
俺が親切に忠告してやる、と前置きをして。
「アイツには気をつけろ」
今みたいに特別扱いされてるうちは、特に気をつけろと亮は言った。
最後に、聞くか聞かないかはお前の自由だと突き放したけれど。
「あと2回、忘れんなよ!」
亮は食事への言及も忘れずにそう言うと、雪の元から去って行った。
仕事場へ向かいながら、先ほどのトラップに思いを巡らせた。
脳裏には、昔の淳の姿が浮かんでいる。
そして不明瞭だが、彼の元カノ達の姿も。
‥気がつきゃ女共がしつこく取り入って、チヤホヤしやがるけど‥。
あの女は、結構目ざとくて勘も鋭そうだな‥
亮は小さくなっていく赤山雪の後ろ姿を、チラリと振り返った。
あれくらい言えば、少しは淳のことを怪しむだろう。
あの女は気づくだろうか。
淳の本性に。
その、冷酷な闇に。
亮は彼から受けた被害の甚大さを持って、雪へのトラップを仕掛けた。
彼女が淳を疑い、その背を向けたならば‥。
そうすりゃいくらか公平になるってもんだ‥
世の中全てが、アイツの思い通りになると思ったら、大間違いだ。
「‥‥‥‥」
雪は先程の亮の言葉を、反芻しながら歩いていた。
あの人‥友達っていうより‥。二人の間に何かあったのか?
前からちょっとおかしいと思ってたんだ‥
去年の雪ならば、先ほど聞いた言葉を迷わず怪しんでいただろう。
けれど‥。
雪の脳裏に、今年に入ってからの先輩の笑顔が浮かんできた。
そしてこの間意外にも知った、彼の素直な一面も‥。
去年の私なら、素直に信じて、怪しんでただろうけど‥
そう考えてはみたが、真実は闇の中だ。
考え始めたら、思考の迷路は道が増えるばかり。
とりあえず、雪はこれ以上考えるのを止めた。
やることやしなければならないことが、山ほどあるのだ。
グループワークの発表が間近に迫っている。
雪は同じグループのメンバーにメールを一斉送信した。
明日の午後9時までに各自ファイルを送って下さい。それと9時にミーティングをします。
チャットでお会いしましょう。最後まで頑張りましょう!
雪は肩を回した。疲れのあまりポキポキと骨が鳴る。
「うう‥疲れた‥」
結局皆の調査は不十分で、ほとんどの資料は雪が探した。
それでも文句を言わずに頑張ったのは、期末の成績がかかっているからだ。
「あ~もう!だからそんなんじゃないってば!!」
雪は突然聞こえてきた大声に、ビクッと身が震えた。
壁の向こうから、隣人の通話の声がそのまま聞こえてくる。
「何回言わせれば気が済むの?!電話してどうするつもりよ?!
同じ大学なのに自分で自分の墓穴掘ってどうするのよ!だから嘘じゃないってば!」
前は雪に対して近所迷惑だのなんだのってうるさかったくせに‥と雪は半ば呆れ気味だった。
すると雪の携帯が、続けて三件鳴る。
直美さん、健太先輩、清水香織の3人ともが、了解の旨のメールを送ってきていた。
こんなに早く返信してくれたことに、雪は手放しで喜んだ。
すぐに、こんなことで喜んだ自分に微妙な気持ちになりつつも、
なんとか見えてきた光明に向かって、雪は意欲を燃やして課題に励んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<忠告>でした。
聡美の賭けた「ヤンジャンピ」とは‥野菜や海老・ナマコ・イカ・卵白・卵黄を回りに飾り、
中には春雨のようなゼラチン質のヤンブンピを飾る。
高級中華料理として韓国ではメジャーなメニュー。
だそうです。
これは聞いたことなかったですね‥。あえて言うならクラゲサラダ的な?
勉強になりました。
次回は<刻まれた記憶>です。
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聡美は雪が、先ほどの携帯を拾ったヤンキーと青田先輩、どちらとくっつくか太一に賭けを持ちかけた。
二人は思い思いの予想を口にする。
「青田先輩に酢豚10皿」「あたしはヤンジャンピ!」
二人の賭けはどちらが勝利するか‥。
その結果が出るのはもう少し先である。
雪と亮は食事を終えて外に出るところであった。
2回はおごれと亮はまだ言っている。
雪は亮の方を振り返りながら、「元はといえばあなたが絡んでさえ来なければこんなことには‥」と小言を並べている。
すると入り口から大勢のお客さんが入って来たのだが、
亮の方を向いている雪は気付かない。
亮は咄嗟に雪の髪を掴んだ。
「おい!前見ろ!!」「?!!」
間一髪、雪はガラス戸に顔をぶつけなくて済んだのだが、
それ以上に髪の毛(彼女のコンプレックスだ)を掴まれたことに雪はショックを受けた。
そして髪を掴んだ亮もまた、衝撃を受けていた。
「これが女の髪の毛かぁ?ダメージヘアーにも程があるだろ!」
「失礼な!!」
昼下がりの食堂に、雪の怒号が響き渡った‥。
店から出ても、まだ雪は頭に血が昇ったままであった。
そのまま去ろうとする雪に、亮は無傷だったことに感謝しろよと舌打ちした。
そして雪は、背後から「おい、ダメージヘアー!」と呼び止められた。
雪が青筋を立てながら振り向くと、亮は言った。
「淳の奴と仲直りしたんだよな?」
雪は亮の言わんとしていることが分からず、口を噤んだ。
亮はそんな雪を見ながら、トラップを仕掛けた。
俺が親切に忠告してやる、と前置きをして。
「アイツには気をつけろ」
今みたいに特別扱いされてるうちは、特に気をつけろと亮は言った。
最後に、聞くか聞かないかはお前の自由だと突き放したけれど。
「あと2回、忘れんなよ!」
亮は食事への言及も忘れずにそう言うと、雪の元から去って行った。
仕事場へ向かいながら、先ほどのトラップに思いを巡らせた。
脳裏には、昔の淳の姿が浮かんでいる。
そして不明瞭だが、彼の元カノ達の姿も。
‥気がつきゃ女共がしつこく取り入って、チヤホヤしやがるけど‥。
あの女は、結構目ざとくて勘も鋭そうだな‥
亮は小さくなっていく赤山雪の後ろ姿を、チラリと振り返った。
あれくらい言えば、少しは淳のことを怪しむだろう。
あの女は気づくだろうか。
淳の本性に。
その、冷酷な闇に。
亮は彼から受けた被害の甚大さを持って、雪へのトラップを仕掛けた。
彼女が淳を疑い、その背を向けたならば‥。
そうすりゃいくらか公平になるってもんだ‥
世の中全てが、アイツの思い通りになると思ったら、大間違いだ。
「‥‥‥‥」
雪は先程の亮の言葉を、反芻しながら歩いていた。
あの人‥友達っていうより‥。二人の間に何かあったのか?
前からちょっとおかしいと思ってたんだ‥
去年の雪ならば、先ほど聞いた言葉を迷わず怪しんでいただろう。
けれど‥。
雪の脳裏に、今年に入ってからの先輩の笑顔が浮かんできた。
そしてこの間意外にも知った、彼の素直な一面も‥。
去年の私なら、素直に信じて、怪しんでただろうけど‥
そう考えてはみたが、真実は闇の中だ。
考え始めたら、思考の迷路は道が増えるばかり。
とりあえず、雪はこれ以上考えるのを止めた。
やることやしなければならないことが、山ほどあるのだ。
グループワークの発表が間近に迫っている。
雪は同じグループのメンバーにメールを一斉送信した。
明日の午後9時までに各自ファイルを送って下さい。それと9時にミーティングをします。
チャットでお会いしましょう。最後まで頑張りましょう!
雪は肩を回した。疲れのあまりポキポキと骨が鳴る。
「うう‥疲れた‥」
結局皆の調査は不十分で、ほとんどの資料は雪が探した。
それでも文句を言わずに頑張ったのは、期末の成績がかかっているからだ。
「あ~もう!だからそんなんじゃないってば!!」
雪は突然聞こえてきた大声に、ビクッと身が震えた。
壁の向こうから、隣人の通話の声がそのまま聞こえてくる。
「何回言わせれば気が済むの?!電話してどうするつもりよ?!
同じ大学なのに自分で自分の墓穴掘ってどうするのよ!だから嘘じゃないってば!」
前は雪に対して近所迷惑だのなんだのってうるさかったくせに‥と雪は半ば呆れ気味だった。
すると雪の携帯が、続けて三件鳴る。
直美さん、健太先輩、清水香織の3人ともが、了解の旨のメールを送ってきていた。
こんなに早く返信してくれたことに、雪は手放しで喜んだ。
すぐに、こんなことで喜んだ自分に微妙な気持ちになりつつも、
なんとか見えてきた光明に向かって、雪は意欲を燃やして課題に励んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<忠告>でした。
聡美の賭けた「ヤンジャンピ」とは‥野菜や海老・ナマコ・イカ・卵白・卵黄を回りに飾り、
中には春雨のようなゼラチン質のヤンブンピを飾る。
高級中華料理として韓国ではメジャーなメニュー。
だそうです。
これは聞いたことなかったですね‥。あえて言うならクラゲサラダ的な?
勉強になりました。
次回は<刻まれた記憶>です。
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www.dailymotion.com/video/xqajal_running-man-ep-92-preview-jy-park-chun-jung-myung_shortfilms
自身も歌手で、2PMなどの所属事務所の社長でもあるパクジニョン、通称JYPが、「ヤンジャンピ」呼ばわりされて吹き出す場面。
この時の「ランニングマン」は、「ジャジャン麺配達レース」という内容でしたから、この単語が出てきたんでしょう。
リンク先拝見しました!
ランニングマン‥。面白そうな番組ですね~(^^)
ハングル勉強しなきゃ‥!
LINE漫画で漫画自体は読んでいたのですが、昨日このサイトを見つけて一から一気にここまで読んでしまいました!
いままで気づかなかったそれぞれの視点の思惑が知れて、チーズイントラップの魅力にさらにハマりました、ありがとうございます!
先輩ならまたもや体触って「気をつけて」ですよね。
あと二回といいつつ、指が三本おっ立ってるのが気になります。
管理人のYukkanenです。ようこそいらっしゃいました♪このブログを通してチーズインザトラップがより楽しくなれば、これほど嬉しいことはありません(^^)!
ここのコメント欄にて、いつもチートラファンの方々が熱く語り合っていらっしゃいますので、よければえりこさんもお時間ある時でも、遊びに来て下さいね♪おまちしてます~!
ちょびこさん、髪わしづかみは亮のワイルドさが出てますな!
先輩は後ろハグかもしれませんよ!リメンバーあすなろ白書!
ほんとだ指3本立ってますね。。全部で3回って意味‥?うーん‥。
あの髪の毛つかむ場面、私もけっこう好きです。行動はガサツだけど、気配りは細やかで優しいというギャップがいいですねー。で、最初は乱暴でガサツなばかりだと思っていたところで意外な一面に気づいて、だんだんその人のことが気になっていく、と。
ケトル(犬っ毛)という呼び方も、決して褒め言葉ではないのですが、だんだん慣れてくるとそう嫌でもなくなってくるわけですしね。
ですよねー♪
ガサツなようで、ちゃんといつも守ってくれてるし、デリケートな部分は気づいてくれて間を取り繕ってくれるし、河村さんのこと、雪ちゃん、数少ない心を許せる友人として好きになってますもんねー。
雪ちゃんと河村さんの、いつも喧嘩腰のやり取り大好きです。雪ちゃん、こんなに素直に怒りや文句を表現出来るじゃーんって。
私も例の動画拝見いたしました。韓国のバラエティって、すごく日本と似てますよね。違うかな。私がYouTube等で見た印象では、テロップとかくだらなさ加減とかが、日本人にも違和感なく見れるなーって。
河村さんも先輩に負けずと暗い生い立ちと挫折があるのに根がまっすぐですよね。
ご両親が亡くなる前は愛情をたっぷり注いでもらってたのかな?
指を故障してからは荒れたようですが、でもやっぱりどこか育ちの良さというか悪になりきれてないですね。
先輩があんなに根暗なのは外国に行ったきりの母親や根本的には自分たちが施す側で他人を見下してるような帝王学をみっちり教え込んだ父親のせいなのか。。。
雪ちゃんは勘が鋭い子だから河村さんの本質が優しいことをわかってるんでしょうね。
逆に、先輩がどんどん見抜かれていってますね。。
あのコソ泥野郎と先輩の会話、なんか切なかったです。先輩は雪ちゃんと自分が同じだと思ってて、でも、あんな社会のゴミみたいなヤツに色々指摘されて、挙句、あんたは彼女ではなく、俺と同じだと言われる始末。
先輩、頭いーのに何故あーもトンチンカンなんだろー。
なんか、先輩がうまい具合にトンチンカンなので、どこから切り込み入れるのかが難しい中、作者さんはうまく話を進めますよね。
本家次週の雪ちゃんのコメントが気になります。
そしてケトル、「犬っ毛」だとなんとなく可愛らしいですね。最初の日本語訳、「カツラ」よりは遥かにましです。。
河村さんの株が急上昇ですね~!
ちょびこさんもteaさんも言う通り、亮の温かさというか根の真っ直ぐさというか、いい意味で単純なところが先輩には無い親しみを生みますよね。
そしてちょびこさん、いきなりなぜその場面を(笑)
あのシリアスな「雪と同族だとカン違いしている」ところを「うまい具合のトンチンカン」って!笑笑
先輩が変態コソ泥をけちょんけちょんにした後、雪ちゃんが口を押さえて震えるところも、何だか悲しいですよね。雪ちゃんも結局先輩に対する不信感が未だ拭えないんでしょうね~。
唯一自分を分かってもらえると思ってる人にあんなに怯えられたら、先輩不憫だな~と思いました。
雪ちゃんの立場に立ったらそれはしょうがないことなんだけど。
本当の先輩を知った時、雪ちゃんはどーすんのかなぁ。。