期末テストの準備や課題に追われているこの頃の雪の部屋は、とっ散らかっていた。
しかし今日も掃除をしている暇はない。時刻はもう夜9時。チャットミーティングの時間だった。
いよいよ明日は発表。なんとしてでも今日中にレポートをまとめなければならない。
お風呂上りの雪は、急いでPCの前に座った。
「‥‥‥‥」
しかしチャット場には雪以外、まだ誰もオンラインになっていない。
雪は皆が来るまでに資料の整理でもしようとノートを開いた。
それから時計は、カチカチと長針が一周した。
まだ誰も、チャット場には現れない。
3人に電話を掛けてみたが、誰も電源が入っていないか音声案内につながるかだった。
「ふざけんなぁーーー!!」
雪は携帯を布団に向かって投げると、頭を抱えた。
有り得ない事態が起こっている。
結局資料も雪がほとんど探して、しかも今のままでは分析も自分一人でやらなければならない。
発表前日にこんなことになるとは‥。雪はそのまま机に突っ伏した。
ハッキリ言ってやりたくない。マジでやりたくなさすぎる。
疲れもストレスも溜まってるし、もう夜も更けた。このまま寝てしまいたい‥。
もう明日の発表は、このまま皆でバックれだ‥。
ぼんやりとした眠気が襲って来て、雪の意識が遠くなっていく‥。
♪Wow Wow Yeah Tonight Tonight♪
いきなり大音量で流れた着メロに、雪は驚きのあまり飛び起きた。
急いで先ほど投げた布団の上の携帯を取り、着信画面を見る。
すると画面には、予想だにしない人物の名が点滅していた。
「はいもしもし?」 「姉ちゃん?俺だけど!」
電話口から聞こえてきたのは、久しぶりに聞く弟、蓮の声だった。
アメリカに留学中の蓮は、時差を考えるのを忘れてこの時間に電話してきたようだ。
「あんた元気してんの?」 気の抜けた雪は、そのまま壁にもたれて通話を続けた。
蓮は相変わらずだと答えた。そして雪に、姉ちゃんは最近忙しいのかと聞いてきた。
「昨日母さんと電話したんだけどさ、
オレもそうだし姉ちゃんも家出てからなかなか連絡よこさないって寂しがってたからさぁ」
だからたまには実家に連絡しなよ、と蓮は言った。
雪は弟からのいきなりの説教に、開いた口が塞がらなかった。
悪いけどお互い人のことを言える立場ではないと雪は言った。しかも雪は期末を控えて多忙な身なのだ。
けど俺はちゃんと電話したぜ?と蓮の主張は続いた。
最近親父の事業もうまくいっていないみたいだ、とも言った。
「俺はアメリカだから行ってやれないけどさ、
姉ちゃんたまには実家帰って母さんのこと気遣ってやんなよ」
蓮は「頼んだよ」と言うと、そのまま電話を切った。
その一方的な通話を終えて、雪は頭を抱えた。
言っていることは的を得ているのだが、自由奔放に生きている弟に言われると癪に障る‥。
雪は暫し家族の問題を思って頭を悩ませた。
しかしふと視線を上げた先に、まだ未完成のレポートがあった。
そのままノソノソと机まで這って行く。ともかく今は明日の準備に取り掛からなければ‥。
徹夜は確定。
なんとか良い成績を取らなければ、一人暮らしまでした意味が無い。
いつまでも腹を立ててもしょうがない。今大事なのは成績よ!
雪は腹を決めると、メラメラとした意欲を燃やして目の前の仕事に取り掛かった。
行くぜ!!
午前1時過ぎから資料分析、3時半前から発表のカンニングペーパー作成、そしてパワーポイントの編集‥。
気がついたら空が白んでいた。
スズメの鳴く声が聞こえる。
「出来たぁーーー!!!」
雪は思わずバンザイをした。窓から差す朝日の光が、神からの祝福のように見えた‥。
レポートのグループとメンバー名を書く欄を見て、雪は沸々と怒りが沸いてきた。
私の名前だけ書いてやりたい‥。お前らが何をしたってんだ‥。
キーボードに指を置いた所で、耳の奥から幻聴が聞こえた。
あ、忘れてるみたいだからもう一度言うけど、
課題はグループの共同作業を重視するって言いましたよね?
教授が妖精となって雪の周りをブンブン飛ぶ。
全員で協力し合い、発表もまた自分が任された部分を各自発表してもらいます。
すなわちグループ全員で課題に取り組み発表をすること!
完徹の雪の頭の中はカオスだったが、
脳内教授のお陰で、発表するのにも皆がその内容すら知らないことに思い至った。
雪は残り少ない時間を使って、発表の台本を大急ぎで作成した。
出かける数十分前にようやく出来上がり、急いで身だしなみを整えると、また屍化した隣人も構わず学校へとダッシュした‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<徹夜の発表準備>でした。
今回出てきた着メロはこちら↓
Lisa - Tonight (feat. Dynamic Duo)
実は去年の夏休みの横山からの着信の時に、この着メロ出てきてました。↓
雪は着メロをどうやって使い分けしてるんでしょうね。
テンボルは‥ってもう止めます。^^;
次回は<損な生き方>です。
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しかし今日も掃除をしている暇はない。時刻はもう夜9時。チャットミーティングの時間だった。
いよいよ明日は発表。なんとしてでも今日中にレポートをまとめなければならない。
お風呂上りの雪は、急いでPCの前に座った。
「‥‥‥‥」
しかしチャット場には雪以外、まだ誰もオンラインになっていない。
雪は皆が来るまでに資料の整理でもしようとノートを開いた。
それから時計は、カチカチと長針が一周した。
まだ誰も、チャット場には現れない。
3人に電話を掛けてみたが、誰も電源が入っていないか音声案内につながるかだった。
「ふざけんなぁーーー!!」
雪は携帯を布団に向かって投げると、頭を抱えた。
有り得ない事態が起こっている。
結局資料も雪がほとんど探して、しかも今のままでは分析も自分一人でやらなければならない。
発表前日にこんなことになるとは‥。雪はそのまま机に突っ伏した。
ハッキリ言ってやりたくない。マジでやりたくなさすぎる。
疲れもストレスも溜まってるし、もう夜も更けた。このまま寝てしまいたい‥。
もう明日の発表は、このまま皆でバックれだ‥。
ぼんやりとした眠気が襲って来て、雪の意識が遠くなっていく‥。
♪Wow Wow Yeah Tonight Tonight♪
いきなり大音量で流れた着メロに、雪は驚きのあまり飛び起きた。
急いで先ほど投げた布団の上の携帯を取り、着信画面を見る。
すると画面には、予想だにしない人物の名が点滅していた。
「はいもしもし?」 「姉ちゃん?俺だけど!」
電話口から聞こえてきたのは、久しぶりに聞く弟、蓮の声だった。
アメリカに留学中の蓮は、時差を考えるのを忘れてこの時間に電話してきたようだ。
「あんた元気してんの?」 気の抜けた雪は、そのまま壁にもたれて通話を続けた。
蓮は相変わらずだと答えた。そして雪に、姉ちゃんは最近忙しいのかと聞いてきた。
「昨日母さんと電話したんだけどさ、
オレもそうだし姉ちゃんも家出てからなかなか連絡よこさないって寂しがってたからさぁ」
だからたまには実家に連絡しなよ、と蓮は言った。
雪は弟からのいきなりの説教に、開いた口が塞がらなかった。
悪いけどお互い人のことを言える立場ではないと雪は言った。しかも雪は期末を控えて多忙な身なのだ。
けど俺はちゃんと電話したぜ?と蓮の主張は続いた。
最近親父の事業もうまくいっていないみたいだ、とも言った。
「俺はアメリカだから行ってやれないけどさ、
姉ちゃんたまには実家帰って母さんのこと気遣ってやんなよ」
蓮は「頼んだよ」と言うと、そのまま電話を切った。
その一方的な通話を終えて、雪は頭を抱えた。
言っていることは的を得ているのだが、自由奔放に生きている弟に言われると癪に障る‥。
雪は暫し家族の問題を思って頭を悩ませた。
しかしふと視線を上げた先に、まだ未完成のレポートがあった。
そのままノソノソと机まで這って行く。ともかく今は明日の準備に取り掛からなければ‥。
徹夜は確定。
なんとか良い成績を取らなければ、一人暮らしまでした意味が無い。
いつまでも腹を立ててもしょうがない。今大事なのは成績よ!
雪は腹を決めると、メラメラとした意欲を燃やして目の前の仕事に取り掛かった。
行くぜ!!
午前1時過ぎから資料分析、3時半前から発表のカンニングペーパー作成、そしてパワーポイントの編集‥。
気がついたら空が白んでいた。
スズメの鳴く声が聞こえる。
「出来たぁーーー!!!」
雪は思わずバンザイをした。窓から差す朝日の光が、神からの祝福のように見えた‥。
レポートのグループとメンバー名を書く欄を見て、雪は沸々と怒りが沸いてきた。
私の名前だけ書いてやりたい‥。お前らが何をしたってんだ‥。
キーボードに指を置いた所で、耳の奥から幻聴が聞こえた。
あ、忘れてるみたいだからもう一度言うけど、
課題はグループの共同作業を重視するって言いましたよね?
教授が妖精となって雪の周りをブンブン飛ぶ。
全員で協力し合い、発表もまた自分が任された部分を各自発表してもらいます。
すなわちグループ全員で課題に取り組み発表をすること!
完徹の雪の頭の中はカオスだったが、
脳内教授のお陰で、発表するのにも皆がその内容すら知らないことに思い至った。
雪は残り少ない時間を使って、発表の台本を大急ぎで作成した。
出かける数十分前にようやく出来上がり、急いで身だしなみを整えると、また屍化した隣人も構わず学校へとダッシュした‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<徹夜の発表準備>でした。
今回出てきた着メロはこちら↓
Lisa - Tonight (feat. Dynamic Duo)
実は去年の夏休みの横山からの着信の時に、この着メロ出てきてました。↓
雪は着メロをどうやって使い分けしてるんでしょうね。
テンボルは‥ってもう止めます。^^;
次回は<損な生き方>です。
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今回特にそう思います。
みんな雪ちゃんに責任を押し付けていて、さらに雪ちゃんなら何とかしてくれることがわかってる感じがします。
みんな雪ちゃんに甘えていますよね。
雪ちゃんも育った環境もありますが、家庭・友人・恋人・勉強等全ての面で優等生を求められてそれに応えるように努力してるのが、また・・せつない(T_T)
せめて、先輩が恋人の面で頼りになればよいのですが、物理的には良いのですが肝心な精神面がずれてます。
先輩、本当に根本的な面で頑張ってほしいです(:_;)
たぶん、次回も<損な生き方>だから、関連してくるのでしょうか?
それでも雪がひねくれずに育っているのは、お母さんとは仲が良いし、大事に思ってくれる友達も沢山居るからですよね。
先輩ともこれから波乱の予感ではありますが、精神的に助かったところは多々あると思います。
(就活相談の後のケーキ屋や、父親の事業が倒産した後のベンチでの会話など。同じ塾の女の子‥近藤みゆきちゃんだったかな?と揉めた時も、一番に先輩に悩みを聞いてもらってましたね)
ちょっと話はずれますが、河村さんは根が真っ直ぐで信頼出来る人だと思いますが、雪の境遇や生き方とリンクするかというと、その接点があまりないように感じるんですよね。
その点は、先輩との方が共通点が多く(学業の面で頼られたり、父親から愛情をあまり貰えないまま育ってきた過去など)、今まで期待ばかりされてきた雪にとっては、同じような境遇の人間に初めて会ったんじゃないのかな、と感じています。
先輩が心を開いて互いに歩み寄っていければ、これ以上良いカップルもいないと思うんですけどね~。
頑張れ、先輩!
>河村さんは根が真っ直ぐで信頼出来る人だと思いますが、雪の境遇や生き方とリンクするかというと、その接点があまりないように感じるんですよね
河村さんについては、「かっこいい~!」と単純に思ってただけなので深くは考えてなかったです。
確かに、雪ちゃんと河村さんって遠慮なく本音でポンポンと言いあえて楽しそうだし、雪ちゃんが本気で落ち込んでたりしたらギュっと抱きしめて力技で癒してくれそうですよね。
あっ!河村ピアノの繊細バージョンもありか。
とにかく、根が素直だから本気の言葉がすんなり届きそうではあるのですが、それだけでは雪ちゃんは満足できないような気がします。
あまりにも価値観がリンクしないですものね。
その点、先輩なら生い立ちの共通点があり、社会からずれない生き方を選択する価値観も似てますしね。
なるほど。なるほど。
新たな視点を教えていただいて頭がクリアになりました。
もうちょっと河村さんについても色んな観点から考えてみたくなりました♪
雪ちゃんの成長過程において先輩はよい教材だけど、先輩が今のままなら、似てるのに価値観を共有出来ないのは痛い。似てるし、先輩が同族と思ってるだけにタチが悪い。
よく結婚の理由に「価値観」てのがあるけど、
あ、出社時間だ!また後ほどー!
一般論ではなく、私個人の結婚の感想としては、共通のモノはなくても相手を尊重して理解しようとしてくれるコトが重要かなと。理解までしてくれるにこしたことはないんだろうけど、日々楽しく過ごせて老後も楽しみに出来るような人であれば十分だなーと。
例えば私は結婚前から病気持ちで、満足に働けないし、子供も作れないかもよ、と夫には伝えてあったけど、彼はそれでも私を受け入れてくれたし、今でも私の体を気遣ってくれてる。
病気って、なってみないと分からないモンじゃないですか。彼は分からないなりに理解しようと努力してくれるワケで、もし彼が私と同じような病身を抱えてたとしたら生活が成り立たないワケで。
ちと例が違ったかもだけど、私の周りの冷め切った夫婦を見てて、つくづく私が恵まれてると感じるのが、夫が妻を理解しようと努めてくれているコトです。
先輩は雪ちゃんと口論する時、「もうこの話はやめよう」って中断させようとしたり、「なかったコトにしよう←でた!w」って言ったりしますよね。
私の経験上、そういう男とは同じような口論を何度も繰り返すんです。争いが嫌いなのは結構だけど、結局面倒くさいだけだろって思います。何度も同じコトで腹を立てる自分に嫌気がさすし、何度も言わせる相手にも腹が立ちます。
これまたちと例が違ったかもだし、先輩も大分腹を割るようになってきたのでまぁいーですが、一緒に生活するならバカでも真っ直ぐで正攻法で楽しい男がいいです。
話が通じない利口な男はイヤです。ピントのズレが、ごく身近な問題であり些細な程難しいと思います。
長文駄文失礼しました~。
経験談からのお話、すごく説得力があります。
ちょびこさんのご主人、とても素敵な方ですね。お話を拝聴する限りお若いのに包容力があるというか、お優しいというか。。きっとお互いを思いやっておられる素敵なご夫婦なんだろうなぁと感じます(*^^*)
チートラのことに話を戻すと、雪と先輩が上手くいくかどうかは、先輩が変われるかどうかにかかっていると思います。レポート紛失時件の時に雪から「先輩の考え方は変ですよ」と言われ、先輩はあの時初めて「俺は変なのか?」と自問自答してましたよね。結局彼は認めなかったし、何一つ変わってないんだけど、3部でこれから起こるであろう波乱の中で、彼がそれを認めて変わることが出来たなら未来は明るいかな、と思います。
出来なければゲームオーバーでしょうが‥(^^;)
何度も雪に「泣いてる?」と聞いてきた先輩が実際に雪の涙を見たら、変わるんじゃないかなぁ。変わってほしいなぁ、というのが望みですが、どうなるでしょうかねぇ。
作者さんインタビューで「最終回は決っているが、そこまで奇想天外なものではない」と仰っていたので、2部の終わりみたいな最終回なのかな~と勝手に想像してるのですが。
どちらにせよ皆がHappyだと嬉しいですけどね~
この漫画は本当最後まで安心出来ないわ。。
なんだかつぶやきのような長文、失礼しました。。