Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

呪縛

2016-02-21 01:00:00 | 雪3年4部(二度目の闇~線の中)


雪がキョトンとして見つめる先に、河村亮が立っていた。

亮もまた、目を丸くしたまま二人の方を見ている。



次第に雪は、その場に立ち尽くす亮の手に、木の棒が握られているのに気がついた。

ひっ!



雪は白目になりながら、ブンブンと首を横に振る。

ダメダメダメダメ!河村氏ダメ!下ろして下ろして!






そんな雪の仕草を見て、淳は彼女の視線の先を目で追った。

そしてそこに立っている男を見て、あからさまに顔を顰める。



「行こう」「はい‥」



淳は亮については何も言わず、そしてその表情を見ていた雪もそれには言及せず、二人はこの場を後にした。

少し歩いた後で雪だけは、チラと亮の方を振り返る。







一瞬二人の視線は交差するが、すぐに雪は前を向いて淳と共に歩いて行った。

その場に立ち竦む亮を残して、二人の背中が遠くなる。







雪が握り締めた淳の手には、この距離からでも分かるくらい血が滲んでいた。

その光景を見ている内に、全身から嫌な汗が吹き出し始める。



ドクンドクンと心臓が大きく跳ね、指の先から血の気が引いていくようだった。

亮は二人から視線を外し、淳の行動について自身の結論を出す。

いや‥アイツがどうしようが知ったこっちゃねぇ‥



雪を助けたのが淳だろうと、その後自分が睨まれようと、問題はそこではない。

今重要なのは、守ると決めた彼女が、

一歩間違えば大怪我をしていたかもしれないということーー‥。




亮の視線の先には、先ほど雪を突き飛ばした巨体の男が居た。

男は柳や佐藤から叱責され、必死に言い訳か何かを口にしているようだ。

その横顔を見ている内に、亮の胸に轟々とした怒りが湧き上がる。

あの野郎‥



あの野郎殺す‥女を掴んで揺さぶるなんて‥



亮は木の棒を握る手に一層力を込めると、男に向かって一歩踏み出そうとした。

しかしその前に、再び雪と淳の方をチラと見る。






寄り添いながら、この場から去って行く二人。

ヒヤッとした感覚が、全身に走る。



二人から視線を外し、亮は再びあの巨体の男の方を見た。

男はこちらに気づいてはいない。今攻撃すれば絶対に復讐出来る‥。



「‥‥‥‥」



しかし燻る胸中とは裏腹に、亮は一歩も動けなかった。

足は地面にへばりついたように固まり、全身が強張って身動きが取れない。

カラン!







亮は木の棒を投げ出すと、そのまま膝に手を付いた姿勢で俯いた。

嫌な汗が滝のように流れ、心臓は未だ大きく跳ね続けている。

ドクン ドクン ドクン



脳裏に、先ほどの淳の姿がフラッシュバックする。

あからさまに顰めた顔。剥き出しのその嫌悪‥。



以前淳と殴り合った時に言われた、あの言葉が蘇った。

お前に何の関係がある?



淳の前にある、一本の線。

その線を超えることがどんなに恐ろしいことか、過去の記憶が亮に警鐘を鳴らす。



心の奥底に仕舞ってあったそれが、不意に顔を出した先日の出来事。

オレの感情‥



真正面からぶつかって来た彼女を前にして、思わずそれが溢れそうだった。

握り締めた彼女の細い腕、自分を見上げるその透き通った瞳‥。



感情は時に理性を忘却させ、決められている線が曖昧にしか見えなくなることがある。

そのことを、先程の淳の手を目にしてハッキリと思い出した。







輝く未来へと導いてくれるはずだった十本の指が、無残にも砕け散るあの音。

あの衝撃。あの痛み。

おそらく生涯、忘れることは出来ない。



亮は両膝についた自身の手が、今も動かないような錯覚に陥った。

まるで呪縛のように、自身を過去に縛り付ける。

亮は確かめるようにぐっと、左手に力を込めてみた。



確かに力は入った。

入ったけれど、指先は冷たく震え、思うように身体が動かせない。



記憶の彼方に、満足そうに笑っている高校時代の自分が見えた。

いつか本当の家族になれるんじゃないかと、甘い夢を膨らませていたあまりにも無垢な自分がー‥。





あたしたち三人で




頭の中で、声がする。

あれは甘い夢へと誘う、若き日の姉の声。







あたしたち三人だけで‥





亮の記憶は、深く深く沈めたあの事件へと潜って行く‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<呪縛>でした。

遂に‥遂にここが亮の左手事件への入り口なのですね‥!

長かったですね‥。

健太直美健太健太直美健太‥の過去問騒動の後だから余計にスリリングに感じます!笑


さて次回は<<亮と静香>高校時代(21)ー向けられた背中ー>です。

カテゴリは<河村姉弟3>に入ります。


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7 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ありす)
2016-02-21 01:41:45
いつも本当に訳ありがたいです。

毎日楽しみにしてますU+1F606

いつも更新ありがとうござります
返信する
うひょー (まさこ。)
2016-02-21 02:58:12
うわぁぁぁぁ

ついに。左手の。。
待ちに待ったような
知りたくないような、
でもやっぱり知りたい。

あたしたち3人で…か…
じゅんちゃん、ゆきちゃん、河村亮さん
の3人
にはなりえないのが哀しいです…
返信する
しあわせそうな笑顔が (ふう)
2016-02-21 07:51:37
河村さんの、しあわせそうな笑顔のひとコマがすごく切ないです。彼のこれまでの人生を思うと…。
誰でも将来に「大きな希望」を持てる高校時代。正義にも燃えて、友達に篤く、自信とすこしの傲慢と。そんなのが全部つまってる顔でした。
返信する
そういえば静香の理想の未来には会長はありませんね。 (CitT)
2016-02-21 17:24:53
静香は弟よりは人を見る目があったかも?
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辛いよ (めぐめぐ)
2016-02-21 20:02:14
この先が知りたいような知りたくないような、、、
太一くんが男前過ぎる、、、二人の関係が良い方に進展しますように、、、
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Unknown (Unknown)
2016-02-22 00:10:14
更新お疲れ様です!

りょうさんの中の雪ちゃんへの想いが健在で安心しました...やっぱりりょうさんは雪ちゃんの味方であってほしいです( ; ; )

次回も楽しみにまってます!
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Unknown (Yukkanen)
2016-02-25 11:16:24
ありすさん
コメントありがとうございます!
こちらこそ、いつも読んで下さってありがとうございます。
これからも頑張ります!

まさこ。さん
ついに!ですよね~。
本当知りたいような知りたくないような‥。
なんだか胃が痛いです(@@;)

ふうさん
風で膨らむカーテンを見ながら、本当の家族を夢見て満足そうに微笑む高校時代の亮さん‥。その先と現在を知ってるだけによりいっそう切ないですよね‥。

CitTさん
亮が会長を父親みたいに感じている家族愛よりも、静香は淳と結婚して築いていく家族の方に想いがあったのかもしれませんね。。

めぐめぐさん
そう!太一が格好良いですよね~。
二人、もう付き合ってしまえよ!といつも思っています。

Wunknownさん
咄嗟の状況の中で、本心って出るものですよね。私もやっぱり亮さんは雪を守るんだな!と胸が熱くなりました。
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