Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

あの日の彼女

2016-03-20 01:00:00 | 雪3年4部(二度目の闇~線の中)


項垂れながらベンチに座る聡美に、太一は缶ジュースを差し出した。

しかし聡美は頭を下げたまま、一向にそれを受け取ろうとはしない。

太一は缶を持ったその手を、ゆっくりと引っ込めた。



あと一歩でケガをしていたかもしれない雪の姿が、聡美の脳裏に何度も浮かんでいた。

聡美は重たい胸の内を持て余しながら、ポツリとこう口を開く。

「あたし、雪が健太先輩ん所に話しに行ったことさえ知らなかった‥」







寂しそうにそう呟いた聡美の顔を、太一は何も言わずに見つめていた。

すると彼女は、突然太一のマフラーを引っ張りながら声を上げる。

「ていうか、どうしてあの子あたしに何も言わないの?!ねぇどうして?!」

 

しかし太一が口を開く前に聡美は自分でその理由に気づき、息を吐いた。

「ううん、違うよね。あたし、知ろうともしてなかった‥」



頭を抱えながら、眉を寄せ俯く聡美。太一はそんな彼女をじっと見つめている。

「最近テンパってて‥。あたし、この頃変なの」

 

その表情は、幾分何かに怯えているようにも見える。

「雪のことどうでもよくなっちゃったのかな」



「ううん、そんなこと無い‥絶対‥」



聡美は何度も頭を横に振りながら、そのまま目を閉じた。

瞼の裏に、去年のあの日の光景が浮かんで来る。







「雪!!!」



泣きながら彼女の名を呼ぶ聡美の声が、廊下に響いた。

太一におぶられた雪に向かって、聡美は大きな声で呼びかけている。

「死なないでぇぇ!あたしを置いて死んじゃイヤァァ!」

「死にませんヨ。とりあえず病院に‥」「いや‥病院はちょっと‥」



パニックになる聡美とは対照的に、太一と雪は冷静だった。

特に雪は、先ほど腹部に激痛を覚えて倒れたというのに、自身の体調を冷静に客観視してこう口にする。

「ちょっと寝てれば良くなるからさ‥」

「それじゃ保健室に行きまスか」



自分の身体は自分が一番良く分かってる、と雪が言うので、

太一は行き先を大学病院から保健室へと変更した。

しかし保健室で横になっても尚、雪は苦悶の表情を浮かべて苦しんでいる。

「どうしてこんなことになっちゃったのぉ‥」



聡美は雪の傍らに座りながら、ポロポロと涙を零して声を震わせた。

「最近なんかやたら大変そうだなと思ってたら‥アンタって子はもう‥!」

「俺、ちょっと温かいもの買って来まスね!」



太一はそう言って保健室を出て行ったが、聡美の耳には何も入っていなかった。

辛そうに喘ぐ雪。聡美は彼女の額に手を当てる。

「熱あるじゃん!」



「ここって薬は‥」



そう言って立ち上がりかけた聡美だったが、いつの間にか握られていた手に引き止められた。

布団の間から出た雪の手が、聡美の手をぎゅっと掴んでいる。



心配そうに覗き込む聡美に、雪は掠れる声でこう声を掛けた。

「いいからもう授業行きな。私は一眠りすれば治るから‥」



「でも‥」「聡美」



雪は力なく微笑みながら、聡美に温かな言葉を掛ける。

「優しいね。どうしてそんなに泣くの」



「私は大丈夫だから」



「本当に大丈夫だからね‥」



瞳を涙で潤ませる聡美のことを、雪は熱に浮かされたぼんやりとした顔で見つめていた。

この時のことを、聡美はこう回想している。

手を繋いでいたのに、どうして一人ぼっちで居るみたいに感じたんだろう‥



あの日の雪は、あたしには温かい言葉を掛けておきながら、



雪は一人、ぺしゃんこになっているように見えた



その姿が‥









「全然「大丈夫」には見えなかった。あんなに熱があったのに、氷みたいに手が冷たかったの」



あの日の彼女のことは、まるで昨日のことのように思い出せる気がした。

胸が潰れそうになるあの思いも、熱で朦朧とした雪の顔も、繋がれたその冷たい手も。

「だからあたしは誓ったの。雪の傍にいるって、絶対一人きりにしないって。なのに‥」



胸の中に、後悔の波が押し寄せては自身を責めた。

聡美はぎゅっと目を瞑りながら、懺悔するように言葉を紡ぐ。

「雪が健太先輩にああされてた時に、あたし‥太一と喧嘩なんかしてたよ‥」



「そうだよ、雪は何度も話そうとしたのに、あたしは他のことに気を取られて‥もおっ‥あたしっ‥!」

「落ち着いて」



取り乱す聡美に、ようやく太一が声を掛けた。

彼女の肩を両手で掴みながら、真っ直ぐに瞳を見つめてこう話す。

「雪さんはいつも一人で乗り越える人です。今はあの時よりも、もっと上手に乗り越えてる」



「だから聡美さんが毎回心配する必要はありませんよ。

それは別に雪さんを一人きりにするって意味じゃないと思います。

それに今は青田先輩もいることだし‥」




「だから大丈夫です」



「本当に」



太一の言葉は、まるで魔法のように聡美の気を落ち着かせる。

聡美は真剣な太一の顔をじっと見つめながら、彼の話す言葉を静かに聞いていた。

「あと‥俺も、一人で乗り越える派の人間です。

恋愛に関しても、自分で決めますから‥」




太一はそう言って、改めて聡美のことを見つめた。

互いの間に絡んでいた誤解を乗り越えた今、正直にその気持ちを言葉にする。

「恋愛に関して、俺は、」



「俺は、上手くやって行ける自信があります」



「あとはもう、聡美さんの気持ちだけです」



そして太一は、真っ直ぐに彼女が抱えるその問題を口に出した。

「何がそんなに怖いんですか?」






太一のその真剣な眼差しの前で、聡美の胸はぎゅっと押し潰されるように鳴った。

今まで避けてきた問題とその答えの在り処を、彼は心から知りたがっている。






暫く太一と目を合わせていた聡美も、やがて目を逸らして俯いた。

怖い。

口に出して、全てが壊れてしまうのがすごく怖い‥。



それでも聡美は決心した。その真実を口にする決心を。

ぎゅっと自身の手を握った後、再び太一の方を見上げる。

「あんたが‥」








気がつくと、聡美は太一の胸の中に居た。

ドクンドクンと、彼の高鳴る鼓動を感じる‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<あの日の彼女>でした。

太一と聡美、盛り上がって参りましたね~~!

このまま幸せになってもらいたい!!頑張れ太一!!



そして今回回想で出て来た場面は、「去年雪がストレスで倒れた」時ですね。

時系列では「私休学する」の前になるのかな?



そして雪のこの言葉‥

「私は大丈夫だから」



手を怪我した時の先輩と一緒ですね。

「俺は大丈夫だから」



雪にそう言われた聡美の表情と、先輩にそう言われた雪の表情も被ります。

 

で、今気づいたんですが「私休学する」の時のコートと泣きそうな雪の着てるコート、一緒ですね。

 

しかしこうして見ると絵柄、結構変わっていますね~。もう連載開始から6年ですもんね。

月日の流れるのは早い‥。


次回は<彼と彼女・保健室>です。

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4 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
太一がかっこよすぎる件!! (nossy)
2016-03-20 21:17:48
いつもの後輩キャラじゃない、男の太一を見ました!!!なんだよこいつかっこよすぎじゃないか!!!!(興奮)
好きだとか、そういう言葉が出てこないのに、お互い分かりあってる感じが、なんともたまりません。(笑)
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おおっ (むくげ)
2016-03-21 18:30:03
太一勝負に出ましたね
ほんと色々ぐちゃぐちゃ重いのでここはもつれた糸がほどけるようにうまく行って欲しいですね
にしてもそうなるとモナのピアスはなんだったのか説明が、ほしいですね

そして、六年も経ってるのかー
全然チートラの時間は経ってないのにー(笑)
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太一!!! (ぽぽろ)
2016-03-22 23:42:13
思わず太一のカッコよさにつられて初コメです。
いつもありがたく読ませていただいてます。
二人の気持ちが通じ合うのは本当に待ちわびた瞬間でしたー!
太一に胸キュンしましたU+2661
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Unknown (Yukkanen)
2016-03-24 22:17:55
nossyさん
漢の太一に興奮してらっしゃる!笑
分かり合ってる感じ、良いですよね!
もうこの二人、恋人飛び越えて結婚しちゃえば良いのにと思う私!

むくげさん
チートラ内の時間経過が遅すぎて白目ですよね。現実ではもう今年雪ちゃんは29歳ですよ。じゃあ健太は‥えっ35?!となってビックリした私です。きっと全然変わってないんでしょうけど 苦笑

ぽぽろさん
太一のかっこよさにての初コメ、ありがとうございます!!
やっと二人の関係に光が‥!と思ったのにまた次から主人公カップルの話になりますが‥(@@)早く聡美と太一のハッピーエンドが見たい!!
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