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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

旧友からのアドバイス

2013-08-20 01:00:00 | 雪3年1部(合コン~和解)
雪の高校時代からの親友、萌菜が雪を訪ねてやって来た。

二人は電話ではよく話すものの、顔を合わせるのは久しぶりだ。



ベンチに座りながら、まずは萌菜の近況について聞いた。



萌菜は大学を休学し、上京して来たという。知り合いの服飾関係の仕事を手伝うことになったと言う萌菜は、

色々社会の経験を積んで、またその先の進路は考えるつもりと言った。

萌菜は雪に、両親とは上手くいっているか、お父さんとの関係はどうかと、雪の家族について尋ねた。



雪は父親とは相変わらずで、最近は仕事が上手くいってないから大変みたいと頭を掻いた。

自炊だから節約もしなきゃならないし、勉強も死ぬ気でやらないと‥と言う雪に、萌菜はいい子いい子する。



二人にはそれぞれ弟や妹がいて、彼女らは姉としてそれぞれの弟や妹についての近況を語り合った。

雪の弟、蓮はアメリカにて留学生活満喫中で連絡の一つもナシ、と雪は嘆いたが、

萌菜の妹は去年バイク事故を起こしたに関わらず、またバイクを乗り回して遊んでいると萌菜は青筋を立てた。



そういえば去年の夏休み、横山とのことを相談しようと萌菜に電話した時、丁度妹がバイク事故を起こしたところで、

相談出来なかったのだ‥。





その後、雪と萌菜は共通の知り合いの話や担任の先生に子供が生まれた話など、

久々のガールズトークで盛り上がった。



すると萌菜が、「あっそうだ!」と突然声を上げた。

「私、例の青田先輩って人が超気になってたんだけど!

電話でよくその人のこと喋ってたでしょ?」




雪はタイムリーな話題にドキリとした。

ひと目見ておきたいと言う萌菜に対して、雪は「実は‥」と切り出す。



かくかくしかじかで、青田先輩はけっこう傷ついたみたいと雪は事情を説明した。



すると萌菜は、雪の予想だにしなかった答えを口にする。

「なーんだ。それってただ拗ねてるだけじゃん」「えっ?」



雪はまさか、と返したが萌菜は「話を聞く限り100パー拗ねてるだけ」と言った。

恵のことがないとも言い切れないけど、と付け加えもしたが。



続けて萌菜は言った。

今まで尽くしてあげていたのに、

自分の知らない隙に合コンになんか行かれたもんだから裏切られた気分なんでしょう、と。

「つ、尽くすって?」



雪は理解が追いついていかず質問したのだが、またしても萌菜は雪の考える斜め上の回答をした。

「あんたに気があるってことじゃない?」「はぁ?!」



その間の抜けた返答に、萌菜は雪の耳を引っ張った。

(はぁ?という間の抜けた返事は高校時代からの雪の口癖だ)



萌菜の自信たっぷりな意見に対して、雪は依然として半信半疑だ。

萌菜は雪の鈍感っぷりにやれやれと溜息を吐いたが、

「とにかくいち早く解決すべきだ」と結論を述べる。



雪は、このままだと気持ちも晴れないし‥と返答したが、萌菜は冷静にかぶりを振った。

「それより、夏休みの英語の塾代安くしてもらうことになったんでしょ? 

このままじゃ後々通えなくなるんじゃないの?」




萌菜は続けた。

雪の父親の事業が上手く行っていない今、このチャンスを逃すなんてもったいないと。



雪は考えもしなかった意見を耳にして、二の句を継げなかった。

「正直、去年あんたの話を聞いてからというもの、書類蹴ったのもそうだし、

マジでちょっと変わった人だなって思ってたんだよ」




萌菜は”青田先輩”がマジで気に食わないとハッキリ言った。

出来ればこの機会に関係を切れ、と言いたい所だと。

けれど、萌菜は雪の大学生活の方が心配だった。

”青田先輩”と険悪になれば、その後の雪の学生生活に支障が出るからだ。

「とにかく今は良くしてくれてるってんだから良かったよ。

あんまり深く考え過ぎないで、さっさと解決しちゃうべきだね」




適当にあしらって適当に繕って、あまり深入りし過ぎるなと萌菜は雪に忠告した。

雪はそんな親友の姿を、何も言えず見つめていた。



心の表面に、沢山の忠告が被せられて心が覆われて行く。



萌菜は、そろそろ行かなくちゃと立ち上がった。

雪も携帯を取りに行かなくてはならないので、後に続いた。



萌菜は新しい環境や仕事で当分忙しく、雪も期末テストが控えているので多忙だ。

また時間出来たらゆっくり話そうねと、二人は言葉を交わした。

「うん、久々に会えてよかった」



雪がそう言って浮かべた笑顔は、高校時代から何も変わっていない。

萌菜はフッと微笑って言った。

「雪、高校の時にも言ったよね?世渡り上手になれって。分かった?」



スルスルと細い道を行く狐のようにしなやかに、そして時に小狡く。

バカ正直もほどほどに、と萌菜は言った。雪の肩を優しく叩きながら。




二人はそうして別れた。手を振り合って。



小さくなる萌菜の後ろ姿を見ながら、

雪は彼女からのアドバイスをずっと反芻していた‥。








ここはA大学近くの、とあるカフェ。

河村亮は、先ほどからある人物を待っていた。



その人物が落とした携帯電話を片手に、その中身をチェックしながら。

青田淳からの何件もの不在着信、意味深なメール、並んで写した二人の写メ。

  





いつか大学で見かけた無邪気な淳の笑顔、「何の関係でもない」と言うあの女、自分の働くレストランでの合コン‥。

亮は携帯の履歴といくつかの事実とを重ね合わせて、一つの真実に辿り着いていた。

「そーゆーことねーん」



待ち合わせ時間はもう目前。

亮は口元に笑みを湛えて、携帯の落とし主が現れるのを待っていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<旧友からのアドバイス>でした。

萌菜さん男前ですね!雪が高校時代一番仲の良かった友達であります。

萌菜さんのアドバイスは確かに世渡り上手な意見です。けれどそういう心で近付いたならきっと青田先輩は見抜くだろうし、

そういう雪だったとしたらきっとここまで先輩は接近しなかったでしょう。

雪の生真面目さ、バカ正直さがよく出てる回だったと思います。


次回<俺様からのアドバイス>です。


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推測

2013-08-19 01:00:00 | 雪3年1部(合コン~和解)
雪は授業が終わると、待ち合わせ場所に指定されていた中庭にて、小西恵と会った。



恵は雪の携帯に何度掛けても出なかったため、聡美に連絡してこの待ち合わせ場所を雪に伝わるようにしてもらったと言った。

彼女は、何か言いたげに黙り込んでいる。



雪が「何か用があったんじゃないの」と追及すると、ようやく恵はおずおずと切り出した。

「‥雪ねぇ、あの先輩のことなんだけど‥」



恵は青田先輩のことについて言いたいことがあったが、躊躇っていた。

雪が続きを促すと、ようやくその重たい口を開いた。




昨日、雪が出て行った後の学食での出来事だった。

青田淳は雪が合コンに行ったと恵から聞かされた後、急に黙りこくってしまった。






今までのにこやかな雰囲気は激変し、恵はその横顔に戸惑った。



二人の間には気まずい空気が流れ、恵はその空気を変えようと色々話しかけたのだが‥

「ふーん」 「さぁ」 「そうなの?」



「よく分かんない」



じきに先輩は、食欲が無いからお先に失礼するねと言って席を立った。



一緒に席を立とうとする恵に、先輩は「送ってこうか?」と声を掛けたが、恵は当然遠慮した‥。





恵はこのことを、雪に言うべきかどうかかなり迷ったという。

彼は雪の先輩だし、自分が考え過ぎているだけなのかもしれない‥。



恵は自分の過剰反応かもしれないと考えながらも、自分の勘で感じたものも捨てきれなかった。

思っていた感じと相当違う人なのかもしれないと、雪に遠慮しながらも、恵は自分の意見をそう述べる。



「どうやらあたしが余計なことしちゃったみたい。あの先輩にも雪ねぇにも‥」



恵は自分のしたことで、雪が青田先輩から何か言われたんじゃないかと心配した。

雪は慌てて否定すると、「心配なら逆に私から青田先輩に聞いてみてあげる」と言ったが、恵は遠慮した。



恵は困ったように笑うと、「もう授業に行くね」と言って美大校舎の方へ戻って行った。





雪はその後姿を見送った後、やるせない怒りに似た感情が沸き上がってくるのを感じた。



恵から聞いた彼の態度は、去年雪が散々向けられたもう一つの彼の顔だ。

恵にまであんな顔を見せるなんて‥。

雪は理解不能な状況に頭を悩ませた。

一体何でそんなに腹を立ててるわけ? 

恵を紹介したこと?ただそれだけで?‥意味不明!




雪の脳裏に、昨日の先輩の言葉が反響した。

雪ちゃんも、理由があったんだね



その台詞は強く残ったものの、その真意は計り知れなかった。

理由‥青田先輩に近付く理由?

雪はいつも学科の皆が口にしている内容を思い返した。

”そりゃ当然淳だろ?” ”先輩~!” ”先輩時間ありますか?”

 ”ご飯連れてって下さいよ~” 

”一緒につるめば自分の価値が上がるっていうか?”




理由‥。

皆が青田先輩に近付く理由は、決して純粋に彼を慕ってのものばかりではない。

下心があからさまな者も、おこぼれを頂戴しようとする者も、自己満足の為の者も‥。



けれど‥。

雪ちゃんも




‥も?


雪の心に、一つの考えが浮かび上がって来た。

まさか‥私に他の人達とは違う何かを期待して‥それで、私に接近し始めたの‥?



それは一つの仮定に過ぎなかった。

けれどその考えは雪の思考を支配して、彼女の頭を悩ませる。

???え、でも一体なんで私なんかに‥?

私のこと嫌ってたんじゃなかったっけ?どうして急にそんな気を抱いたんだろう?




確かに雪は、皆が抱くような下心は一切持っていなかった。

けれどそれは彼も雪を嫌っていただろうし、雪も彼を嫌っていたからで‥。



雪は頭がこんがらがりそうだった。大体この考え自体が合っているのかさえも怪しい。

けれど自分の行動によって誰かが腹を立てているというこの状況が、雪には気がかりでしょうがないのだ。

罪悪感にとらわれ、胸の奥が苦しいのだ‥。





そんな雪の内情はつゆ知らず、

大学の構内で雪が通りかかるのを待っている人物が居た。

その人物は雪の姿を見つけると顔を上げ、声を上げる。




‥が、雪は絶賛悩み中だったので、その声は届かない。





青田先輩を怒らせてしまった‥。

彼と雪との関係は去年こそ険悪だったものの、

今年に入っては良いものに変わったし、しかも最近は色々助けてもらった‥。



それから悶々とした雪の七変化が始まった。

勝手に私を他の人とは違うって期待した先輩が悪いんじゃん?

いや‥でも色々お世話になってるし‥迷惑掛けたらお礼するべきなのに、逆に気を悪くさせちゃったよ‥。

あー!でもわざとじゃないじゃん!!




雪はこういった自分の想像の中で他人の気持ちを推し量ることが、一番苦手だった。



脳裏には、先輩と過ごした時間がフラッシュバックする。



そして再び昨日の、氷の面のような先輩も。

雪ちゃんも、理由があったんだね



あの時のあの表情。

何かに裏切られたような、あの表情‥。



雪はまだ分からなかった。

彼がどんなつもりであんなことを言ったのか、あんな表情をしたのかー‥。

「おい!!」「ぎゃっ!!」



その時、いきなり耳を引っ張られた。

先ほどから雪を待っていた人物は、

もう何回も声を掛けてるのに一向に応答しない雪に、しびれを切らしたのだった。

「一人芝居もいい加減にしてよね。ホント相変わらずなんだから」



彼女は、雪が携帯に出ないのでずっとここで待っていたと少々おカンムリだった。

しかしその口調や表情は、雪にとってはとても懐かしい。

「え‥あれぇ?うそ‥萌菜じゃん!!」




雪の高校時代からの親友が、目の前に立っていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<推測>でした。

”自分の行動によって誰かが腹を立てているというこの状況が、気がかりでしょうがない。罪悪感に囚われて、胸の奥が苦しい”

雪が抱いたこの感情。青田先輩は持ち得ないものです。

普段は敏感すぎるくらい鋭いのに、自分のこととなると鈍感な雪は見ていて面白いですが、

世話を焼きたくなりますね。

次回<旧友からのアドバイス>にて、萌菜さんが世話を焼いてくれます^^


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弁解

2013-08-18 01:00:00 | 雪3年1部(合コン~和解)
あの散々だった合コンから一夜明けて、雪は一人大学の構内で突っ立っていた。



目の前には、青田先輩の背中がある。



雪はその背中に話しかけた。

昨日は‥と続けようとしたが、先輩はそっけない挨拶だけ残して、そのまま行ってしまった。



やはり怒っている‥。

雪はそのあからさまなまでの態度に、何も出来ずその背中を見送った。







授業開始前、聡美は雪の機嫌を取ろうとヘコヘコと雪の世話を焼いていた。



足は大丈夫?他にケガは無い?今日はとっても可愛いね、と媚びる聡美に、スネる雪。

後ろに居た太一が、

「仲の良い知り合いの友達だってのに、どうしてそんな致命的なヤツ紹介したんスか」

と苦笑しながら言うと、聡美はブチ切れた。



聡美は又斗内を紹介した男と、先ほど一波乱起こしたところらしい。

あんなヤツと二度と連絡取るかと声を荒げた。

太一が「ちょっと前までデレデレしてたくせに」とからかうと、より一層聡美の怒りボルテージは上がった‥。

「あ、私授業だ」



雪が立ち上がると、聡美は抱きついて彼女への愛を語った‥。

雪は食券10枚で許してあげると言って、そのまま授業へ向かう。



聡美はまだ謝り足りず雪に泣きついたが、太一に引きずられて違う授業に向かって行った‥。




雪はこれからの予定について、頭の中で反芻していた。



先ほど聡美から聞いたのは、”携帯を拾ってくれた人”と授業が終わってから30分後に落ち合うこと、

そしてその前に恵が会いたいと言っていたということ。

これから向かう授業は、青田先輩も取っている授業だ。



雪は先程の彼の態度を思い出した。思ったよりも怒っているみたいだった‥。

とにかく一度、しっかり謝らないといけない‥。




教室で目にした青田先輩の周りには、やはりいつも通り人が集っていた。



この授業が終わるまでに言うチャンスが無かったら、後を追いかけるしかなくて、

そうなったら色々と面倒なことになる‥。

雪はそんなことを考えたが、こんな状況に置かれてもああだこうだと迷っている自分自身を多少恥じ入った。



するとタイミング良く、周りの人達がバラバラと居なくなったので、

雪は彼に話しかけた。

「あの‥先輩」



雪は昨日はすみませんでしたと、頭を掻きながら彼に謝った。

あんなつもりじゃ‥と続けようとしたが、

先輩は「うん、分かった」と言ったきり雪から目を逸らした。



続けて恵のことを弁解しようとするも、

先輩は「俺プリント見ておきたいんだけど」と言って、視線を合わせない。



雪はそれ以上話を続けられなかった。

トボトボと自分の席に戻る途中、その様子を見ていた直美さんが話しかけてきた。

「ねぇどうしたの?二人何かあったわけ?」



「先輩怒ってるみたいだったけど‥雪ちゃん、あんた一体何やらかしちゃったのよ?」

その言葉に、雪は何と答えて良いか分からなかった。

「‥私も良くわかりません」とだけ言うと、サッと踵を返した。





授業開始時間より少し遅れて、教授が教室に入って来た。

彼はしょっぱなから、期末の課題の話を始めた。

「期末課題はグループワークだ。チームはランダムに4人1組でこちらが組んだ」



教授は続いて、特に4年生は先輩だからと手を抜かず真面目に取り組むように、

とギクリとしている柳先輩達の方を見て釘を刺した。

「当然クオリティーが高いことに越したことはないが、

私は共同体を最重視するということを忘れないように」




教授はそう言った後、チームメンバーを発表した。

学生たちは三々五々立ち上がり、チームごとにまとまって座った。





健太先輩が、わはははと豪快に笑う。



その隣に居る青ざめた雪は、健太先輩から背中を叩かれながら、

「お前と一緒なんて頼もしいな!」と言われていた。



チームメンバーはこの四人。

雪は早くも前途多難を感じていた‥。



すると隣りに座った女の子が、雪に声をかけてきた。

同じチームになれて嬉しいと言っている。



雪は口では「私も」などと言ったが、彼女の名前はおろか存在さえも思い出せないでいた。

そんな雪を見て、彼女は自己紹介を始めた。

「‥あたし清水香織。今まであんまり喋ったことはないけど‥先週挨拶したよね」



ヤバい、全然覚えてない‥。



しかし続けて彼女は言った。「去年は二人だけの秘密もあったし」と。

雪は急激に記憶が蘇ってくるのを感じた。



彼女は去年、平井和美が雪のコップに下剤を入れたのを、教えてくれた女の子だった。

その記憶の映像から、雪は彼女に「ヘアスタイル変えたよね」と声を掛けた。



会話はそのまま雪の持ってるカバンが可愛いという話になり、香織は似たようなものを持っていて、今度持ってくると言った。

すると今度は直美さんが雪に話しかけてきた。

「青田先輩とさっき何があったの?雰囲気が尋常じゃなかったよ」



雪はつい苛ついて、「本当に何でもありませんってば!」と少し強目に言ってしまった。



健太先輩と直美さんが、その微妙な空気に顔を見合わせる。

続けて健太先輩が、「そういや青田はどこのチームだ?」と言い出し、青田淳のチームを探して指差した。



青田淳のチームは、4年男子3人に、後輩女子が1人。

4年男子の中には優秀な佐藤広隆もいて、「完全に大当たりじゃねーか」と健太先輩は笑った。

「俺らも負けてらんねーぜ!頼むぜ赤山!」



いちいちリアクションの大きい健太先輩に、背後から先生が「静かにしなさい」と注意する。

雪は冷や汗ダラダラ‥。




雪は、青田先輩の横顔を見ながら思い悩んでいた。



謝ったところですぐに許してくれそうにもない‥。

だからと言って、このまま知らん顔するわけにもいかない‥。

そのままじっと彼を見ていた雪の方を、青田先輩は一瞬振り返った。



しかし雪と目が合うと、すぐに視線を逸らしてしまった。



雪はその姿に、その態度に、去年のデジャブを感じてしまう。




面倒くさそうな受け答え



興味無さそうな態度



それは最近まで雪が彼に対して抱いていた、その印象に他ならなかった。

去年の雪はその背中を見る度に、疎ましさや悪感情を感じていた。





けれど‥。



今、その背中を見つめる雪の心は、去年とはまた違う感情で満たされていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<弁解>でした!

清水香織、出てきましたね‥。彼女が波乱を起こすのはまだまだ先の事ですが‥。

先輩絶賛スネちゃま中ですね!頑張れ雪!


次回は<推測>です。



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誤解

2013-08-17 01:00:00 | 雪3年1部(合コン~和解)
青田淳は赤山雪の帰りを待っていた。



以前この辺りで車から彼女を降ろしたことを思い出し、ここに佇んで随分と時間が立った。

苛立ちのあまり河村亮に電話を掛け、その行動と生活態度に苦言を呈したが、

却ってそれは淳の心を波立たせた。



もう待っていても仕方がない。

淳は車の解錠キーを押す。



すると路地の方から、女の嘆くような声が聞こえた。

振り返ると、ボロボロになった彼女が歩いている。



手にはヒールの折れたパンプスをぶら下げ、裸足の足元は土で汚れていた。

雪は深い溜息を吐く。早く帰ってお風呂に入りたいと呟きながら。



下を向いて歩いていた彼女は、見覚えのある革靴がそこにあるのに気がついた。

雪が顔を上げると、誰かが目の前に立っている。



青田淳。

予想だにしない人物の登場に、雪は目を見開いた。

「へっ?先輩??」



淳もまた驚いていた。

数時間前に会った彼女の姿とは、まるで違っていたからだ。


雪は先ほどレストランで会った”青田淳の友達”について報告しようとしたが、淳がその言葉を遮った。

「どうして裸足なの?」



そう言われて、雪は自分の足元に目をやった。

裸足もそうだが、言われてみると今の格好もありえない‥。



恥じるような雪を前にして、淳はその手にぶら下げられたパンプスを持ち、彼女の腕を取った。

「送ってくよ」



淳は、靴を貸そうにも自分のでは大きすぎるので、

急いで帰るのが一番良いと言って、その手を引く。





暗く狭い路地に、革靴と裸足の足音がなんとも奇妙に響いていた。

その間も、先輩は何も喋らない。



雪はなんとも気まずい空気を感じていた。

チラリと見た彼の横顔は、不機嫌そのものだ。



雪は空気を変えようと、「この近くに何か用でもあったんですか?」と切り出した。

先輩は一瞬雪の方を見たが、すぐまた前を向いてしまった。

「電話、繋がらないから‥」



彼は、「一緒に映画を観に行った帰り、この辺りで降ろしたことを思い出したから」と言った。

まさか本当に会えるとは思ってもみなかったと続ける彼に、雪は困惑した。



彼が自分に会いに来たということが、信じられなかったからだ。

何か急用でもあったのか、課題のことか‥と質問しようとする雪の言葉を、先輩は途中で遮った。

「ずっと考えてたんだ。今日‥今日雪ちゃんが俺に‥」



先輩は、その続きを言わなかった。

その代わりに、最近雪が彼に対して気楽に接し、楽しそうに話してくれるようになったと思っていると彼は言った。

雪と彼との距離は縮み、二人の仲もそれなりに深まって来たと思っていたと。

けれど‥。


彼はその氷のような横顔で、ポツリとこう言った。

「雪ちゃんも、理由があったんだね」



雪は咄嗟に、「そんなんじゃ‥」と否定した。



しかし脳裏に恵の顔が思い浮かんで、その否定を続けることが出来なくなった。

「め、恵のことなら‥今日はあんな形になっちゃったんですけど‥そのことでしたら‥」



しどろもどろになった雪の弁解に、先輩は「否定しないんだね」と止めを刺した‥。





気まずいまま二人は、雪の家の前に到着した。



それじゃ、と言って去ろうとする先輩に、雪は咄嗟に声を掛ける。

しかし振り返った彼の横顔は、最近の彼のそれとは違い、冷ややかだった。



そして彼は振り返ることなく、呟くようにこう言った。

「君と一度食事することが、こんなにも大変なことなんてな」




カツカツと、革靴は高らかな足音を響かせながら遠ざかって行く。



雪はその後姿を、複雑な思いを抱えながら見つめていた。



その背中が小さくなるまで、その足音が聞こえなくなるまで‥。






同じ頃、亮は拾った携帯をポケットから出して眺めていた。

レストランで、淳の女が座っていた席に残されていたものだ。



どう見ても型の古いそれは、売っても金にはならなそうだった。

届けに行ってあの女から謝礼費でも貰おう、と亮は電源の切れた携帯をオンにする。



すると着信画面に、”不在着信七件”という表示が光った。

こいつも借金背負ってやがるのか‥と亮は何気なくその履歴を見る。

「ん?」



その履歴には、見覚えのある名前と番号が表示されていた。



”青田淳010ーXXXX”



青田淳の不在着信は四件もあった。

亮はそのままメール受信にある青田淳のメールを開く。

”気持ちは大分落ち着いた?元気だせよ!それじゃ又後で授業でな。” 
”うん、プリントは俺がもらっといたよ^^”  
”雪ちゃん、映画だけど午後のでも平気?”



その親しげなメールの数々に続けて、亮は写真フォルダを開いた。



亮の目に飛び込んできたのは、仲睦まじ気な二人の写メ。

にこやかな淳の笑顔を見て、亮は思わず叫んだ。

「ぎょええっ!なんじゃこりゃ!!」



しばし転げ回った亮だったが、しばらくすると冷静になってきた。



腕組みをして顎に手を置き、探偵宜しく今の状況を整理してみた。

淳の奴がヘラヘラいい顔しながら良くしてやってたのに、

あの女は「何の関係でもない」と言って、合コンに出た‥。




合コンに出たということは、彼女が淳のことを何とも思っていないということだ。

すると彼女の言い分は事実だったいうことで‥。

「なるほどねーん」



真実が一本の線に繋がった。

するとこれからのシナリオが、自然と見えてくるようだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<誤解>でした。

あちゃー、先輩拗ねちゃいましたね。

雪が先輩に気がついて目を丸くしているコマ、日本語版では「幽霊?」と言っていますが、

本家版では「ターミネーター?」と言っています。



ダダンダンダダン、とあのテーマが聞こえてきそうですね! ^^


次回は<弁解>です。


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不機嫌な御曹司

2013-08-16 01:00:00 | 雪3年1部(合コン~和解)
レストランの裏の路地で、又斗内と河村亮は慰謝料の交渉をしていた。



すっかり意気消沈した斗内は、亮の言うがままの条件を最終的に飲んだ。

警察も病院も介さぬまま要求通りの請求が出来たことに、亮は満足気に笑いながら彼と別れる。



すると携帯電話が鳴り、着信画面に”静香”の文字が踊った。

電話に出るやいなや、静香は出し抜けに言った。

「どうだった?クビになった?」



「あんたが接客業でバイトして、最長2日最短4時間以上もったことなんてないでしょ?

記録更新したわけ?最長は以ての外だけどもしや最短記録更新?!もう超気になってずっと待ってたんだから!

何しろあんたは土方が一番お似合い‥」




静香がそこまで言ったところで、亮は電話を切った。

ムカツクが、当たっているだけにうらめしい。



するともう一度携帯が鳴った。

亮は着信画面も確認せず、出るやいなや大声で捲し立てる。

「ひっつけーな!何なんだよ?!はいはいクビですよ!最短記録更新しましたよ!

けど絡まれた奴から慰謝料ぶんどってやったから心配すんなよ!羨ましいだろうが! 

お前も金取られたく無かったらせいぜい放っといてくれっての!このクソ女がぁ!」




一息で言い切ると、電話の向こうに沈黙が広がった。

次の瞬間電話口から聞こえてきた声は、亮が想像だにしない人物のものだった。



「俺だ」



思わず息を飲む亮。



番号は誰から‥と言いかけて、この間静香が淳にメールしていたことを思い出して、舌打ちした。

「父さん、お前が戻って来たこと知らなかったみたいだけど、

電話一本するのが筋ってもんじゃないのか?

わざわざこうして伝えないと分からないか?」




高圧な淳のその言葉に、亮は吐き捨てるように言い返す。

「俺がそっちに世話になってたわけでもねーのに、

戻ってくる度に頭下げる必要がどこにあんだ?

首突っ込むんじゃねーよ」




亮の返答に、淳は「お前は何も変わってない」と淡々と言った。

なぜ分かるのか、と亮は不思議に思ったが、すぐに合点がいった。

先ほど、静香からの電話だと思って、アルバイトをクビになった事を口にしてしまったからだ。

亮は後悔した。



しかし先ほどの静香といい、淳といい、

亮は難癖付けられるのに辟易していた。



俺に説教するとか何のつもりだ、いつから俺のことなんて気にするようになった?と突っかかると、淳は溜息を吐いた。

「まぁ俺は構わないんだけど、父さんに援助してもらってた奴がそんな素行じゃ、

こっちも黙ってはいられないんだよ」




その言葉に、思わず失笑する亮。

「いつからそんなことまで気にするようになったんだよ?

今までこんなことたっくさんあっただろうが。今更どうした?あ?」




こっちはこっちで勝手に生きていくから黙ってろと亮は言った。

しかし淳は、亮の手に負えない範囲の問題について言及する。

「あとお前の姉貴‥しっかり面倒見てくれ。姉弟で問題ばかり起こしてないで」

「‥‥‥‥」



亮の姉、静香。

それを突かれると弱い。

彼自身が姉のことを問題に思っていながらも、何一つ手を差し伸べては来なかったからだった。

「まぁ‥静香の奴もそれなりに上手くやってるみてぇだし‥。

後は就職先が見つかれば万事解決‥みてーな?違ぇか?」




亮は問題を誤魔化すように笑いながら言ったが、淳は何も言わなかった。

ようやく彼が発した言葉は、やはり「何一つ変わっていない」という事だった。

「せっかくコネ入社させてやろうと思ったのに、

資格の一つも取ろうとしない女をうちの会社が雇うと思うか?バカにしてんのか?」




亮は先ほどよりも幾らか下手の態度で淳に接した。静香のことはお前もよく分かってるだろ、と言って。

「バカにしてるとかじゃねぇよ‥。オレは男だからどうにかなるとしても、アイツは‥。

お前も気がかりだろ?ある程度人間らしくなってもらうためにも‥」




亮の言葉を遮るように、淳は強い口調で言った。

「それはお前の仕事だろ」

淳はお前ら姉弟に関しては、父親の立場上付き合ってやってるだけだと言った。

ボランティアにも程があると。底なしの瓶に水を注ぐような真似をいつまでも続けると思うのか、と。



亮はそれに対して、自分たちへの投資なんてたかが知れてる、

あれっぽっちの金が青田家の財政を逼迫する要因になんてなりようがないだろうと反発した。



淳は亮の意見に、今話しているのは金の問題じゃないと言った。

問題は労力の方なんだと。

今までは同情して気にかけてやっていたが、これ以上は労力の無駄なんだと。

「んだと?!同情?!」



その言葉に、亮は思わず声を荒げた。

しかし淳はその感情を揺るがすことなく、そして通告するようにゆっくり口を開いた。

「よく聞け」

「俺が卒業して会社の定位置に着いたら、お前らと関わる全ての後押しを切る」



「いくらお前らが河村教授の孫だとしても、父さんがお前らを可愛がっているとしてもだ。

俺も今までは敢えて口出ししなかったが、黙って見ているのも今だけだ」




淳は、もう時間もそう無いと言った。そしてそれまでに、姉弟揃ってどうにか生きる術を見つけろと。

亮は苛立った。上から目線の御曹司にも、そしてどうして自分が今こんな暮らしをしているかということにも。

「同情だって?!お前がしたことを考えてみやがれ! 

オレが!どうして!こうなったのか!オレは後ろめたいことなんて何一つありゃしねぇ!」




絶叫にも似た亮の叫びの前に、

淳は「俺だって後ろめたいことなんて無い、俺が何をしたって言うんだ」と冷静に言った。

疲れたように首を回す。

「こんないい年になるまでお前の姉貴を助けてやったんだ。これ以上何を求めることがある?

本当に結婚でもしてやろうか?お前の姉貴の口癖だろうが」




亮はそう言われて返す言葉が無かった。いつも浮ついたことを言う姉が恥ずかしかった。

淳は、欲を抱くならもっと現実的なものにしろと言った。結婚なんて絶対に有り得ないことを夢見てないで。

「身の程知らずは痛い目見るぞ」



亮は怒りのあまり、きつく握り締めた拳が震えるのを感じた。

「‥お前こそ、何も変わってねぇのな‥」



その言葉に、淳は意外にも肯定的に言った。

「そうだな。考えてみれば、どうして人間は人は当たり前のように変われるとばかり思っているんだろうな。

お前もそうだし、俺もそうだ」




とにかく現実を見て暮らせと、そう言ったきり淳は電話を切った。

亮は一方的に通告され、説教され、そして侮辱までされた通話内容に、思わず携帯を振り上げた。



が、思い直してキャップを取ると、



それを地面めがけて投げつけた。(彼は思いの外冷静だった)

淳の顔を思い浮かべながら、ゲシゲシと踏む。

「あの野郎!上から目線で来やがって!お前の金か?!テメーの親父の金だろが!!」



亮は迸る怒りが止まらなかった。ギリッと歯を食いしばると、一層の力を込めた。



「あの悪魔め!!」





悪魔は一人、夜の街に佇んでいた。



その横顔は、珍しく苛つきに歪んでいる。



携帯を操作すると、発信ボタンを押した。

画面には、”赤山雪”の文字が点滅する。



今夜電話を掛けるのはもう四度目だが、依然として彼女からの応答は無い。



彼は終了ボタンを押すと、言いようのない苛つきを抱えたまま、一人佇んだ。




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<不機嫌な御曹司>でした。

淳と亮との関係って一体何なんでしょうね。

淳父が淳の心からの友達になってくれるよう連れて来た亮と静香なのに、淳はいつまでも父親側、つまり

施す側に立っている。元々の根本というか、立ち位置が間違ってるので友達にはなれっこないんですよね。

助け合いではなく、施しや施されがある友情関係なんて成り立たないのに、それに淳父は気が付かないんですよね、

自分も淳と同じような環境で育ってきたから。

そこをなんとかしないと関係は改善しないでしょうが、時既に遅しな感じも‥。

もどかしいです。


次回は<誤解>です。


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