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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

女優の仮面

2014-09-05 01:00:00 | 雪3年3部(彼を待つ~窮地と逆上)


雪は一つ深く息を吐くと、覚悟を決めた。女優の仮面を被る覚悟である。

雪は顔を上げ、キョトンとした表情で横山にこう言った。

「横山‥アンタ一体何やらかしたの?」



は?と目を丸くする横山に向かって、尚も雪は続ける。

「あの女の人、私の知り合いよ?

一体何をしたら、大学にアンタを殴りにまで来るのよ?!」




雪の話に、横山は目を剥いた。

すると横から直美が彼を押し退けて、雪の話に食いついた。

「えっ本当?!本当に雪ちゃんの知り合いなの?!」



雪は頷くと、溜息を吐きながら話を進める。女優の仮面を被りながら。

「はい。あの人、先輩の幼馴染みなんです。頻繁に会いますし、うちの店にも結構来てるし」

「えー‥じゃあ結構仲良し?」

「うん。先輩が紹介してくれて、私とも親しいのよ」



雪は演技を続けた。教室に居る皆もそれに聞き入っている。

「元々スキンシップの多い人で、私に対しても結構腕組んだり‥。

それでこの間先輩と私に「彼氏出来た」って報告してくれて」




そして雪は横山の方に向き直り、呆れたように息を吐いて見せた。

「まさかそれがアンタだったとはね。

アンタって奴は直美さんが居ながら一体どうして‥」




すると横山は、怒りの形相で雪に食って掛かった。

「何言ってやがる!お前があのキ◯ガイ女とどうやったら知り合いになるってんだよ!

明らかにお前‥!」




すると雪はキョトンとしながら、

「明らかに何?」と切り返した。



横山は言い返すことが出来なかった。

雪と静香がコンタクトを取ったのは、横山の携帯を雪が奪い彼女に電話を掛けた時としか考えられないが、

それを説明するには話が長くなる‥。



雪は小首を傾げながら、続けて演技に興じる。

「それで何なの?先輩とあの人が浮気してそれを私に隠すために、

あの人が演技したってこと?一体誰がそんな狂人じみた演技をするってーの?」




演技してるのは自分だけど‥と雪は心の中で思いつつ、依然としてしらばっくれた。

横山は徐々にイライラして来ている。

「だからアイツはキ◯ガイ女なんだよ!

ハッタリこいてんじゃねーぞ!どの口がなんも知らねぇフリ‥」




横山が言い終わらない内に、雪は鋭い眼差しで彼を見据えると、厳しい口調でこう言った。

「謝りなさいよ」



は?と言って顔を顰める横山に、雪は彼に指を差しながら続けた。横山は憤慨する。

「よく考えて。今のアンタは、根も葉もないウソを吐いてる場合じゃないと思うけど。

私にもあの人にも先輩にも、謝るべきなんじゃないの?」


「次から次へとよくもそんな嘘‥!」「直美さんにもちゃんと謝んなさいよ!」



雪と横山のその言い合いを、直美は怒りに震えながら黙って聞いていたが、

とうとう彼女の堪忍袋の緒が切れた。

「‥もういい」



雪と横山が目を丸くして直美の方を見ると、彼女は目を吊り上げて声を上げた。

「謝る必要なんて無いわ!こんな奴と付き合ってたなんて、マジで気が狂いそう‥!!」



そのまま涙を流しながら友人の元に駆けた直美を、横山はオロオロしながらも追いかけた。

しかし肩を震わせて泣く直美を庇いながら、彼女の友人は彼を罵倒する。

「直美さん‥!違うんだマジで‥」

「横山マジこっち来んな!ウソは止めてよ!今この場で謝れよ!」



取り付く島もないその現状に、横山は為す術もなく黙った。

怒りでプルプルと細かく震えている。



すると雪の元にも友人が集い始め、横山の方を見て皆顔を顰めた。

「雪、こんな奴の相手するの止めなよ」 「もう放っとこー」

 

雪を授業へ促す友人達の間で、雪は厳しい視線で横山を睨んだ。瞳の奥で燃える憎しみは、決して演技ではない。

「授業始まるから戻るわ。あんな奴の顔も見たくない」



雪はそう言い捨てて、横山に背を向けた。

すると早足で歩く雪の後ろから、横山は小走りで追いかけてくる。

「お、おい赤山‥!」



雪は怒りのあまり白目になりながら、今追うべきは直美さんの方だろと心の中で毒づく。

彼を無視して歩く彼女の後ろから、ようやく追いついた横山が雪の肩に手を伸ばす。

「お前マジ‥!」



しかし雪は彼の手が肩に掛かったその瞬間、強い力でそれを振り払った。



そして雪は振り返った。嫌悪感を顔全体に表しながら。

先ほどまで被っていた女優の仮面は、その憎しみでとうに外れている。



横山は雪の眼力に一瞬慄いた。

両手を上げて、無意識に無抵抗を示す。



しかしそれきり雪が俯いたので、横山はニヤリと笑いながら皮肉を呟いた。

「なんだよ。んな風に睨んだって‥」

「クズ。」



低い声でそう言い切った雪の言葉に、横山は目を丸くした。

雪は目に紅い炎を宿しながら、横山に対する本音を口に出す。

「あんたは救いようのないクズ野郎よ。二度と私に近寄らないで」



そして雪は横山に再び背を向けた。

その心からの嫌悪感が、横山の足を止める。



横山はその場から動けず、小さくなっていく雪の後ろ姿をただ呆然と眺めていた。

そんな彼の後ろから、先輩達が駆け寄ってくる。



そして彼等は横山の肩に手を掛け、先ほどの出来事にダメ出しを始めた。

「おいおいプレイボーイもいいけど、これはちょっとなぁ‥ほどほどにしとけって~」

「女の子達困らせやがって‥お前もう授業でも行けー」



そして先輩の一人が、横山にこう言った。

「どうして去年と何も変わってねーのよ?」



その一言に、横山がキレた。声を荒げて、彼等の手を振り払う。

「お前らに‥お前らに俺の何が分かるっ?!」

 

突然キレた無礼な後輩に、先輩達はたじろいだ。

そして全てを振り切るように、横山は廊下を走り去って行った‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<女優の仮面>でした。

とうとう直美さんが横山に匙を投げましたね~。

というか、あの写メ↓がある時点でダメだろう‥^^;




次回は<見えない相手>です。


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イタチの弁解

2014-09-04 01:00:00 | 雪3年3部(彼を待つ~窮地と逆上)
翌朝雪が目覚めて最初にしたのは、携帯をチェックすることだった。

寝ぼけ眼に涎を垂らしながら、光る画面に目を落とす。



するとそこには、ようやく彼からメッセージが届いていた。

昨日は突然仕事が入って、大学に行けなかったんだ。ごめん。

またすぐ連絡する




雪は歯磨きをしながら、一人悶々と考えていた。

ただスネてるだけなのか、まさか本当に何かあったのか‥



鏡に自分の姿を映しながら、雪は自分がどう振る舞うべきか決めかねていた。

なんだか心配になって来た



雪は胸の中に不安のモヤモヤが広がるのを感じていたが、

必死に自らに「大丈夫、何も無いって」と言い聞かせた。しかしなんだか胸騒ぎがする‥。




けれど、本当に先輩が心配しなければならないことは他にあってー‥





「これ見てくれよ!これを!」



大学では、ただ今イタチが必死になって弁解中だった。

淳と静香の映った携帯を翳しながら、横山翔は直美に対して自己の正当性を訴える。

「これ、青田があの女と浮気してる現場なんだって!この女、昨日の変な女だろ?!

自分たちが浮気したから俺に矛先が向いて、俺のこと脅迫しようと先手を打ってきたんだ!」




横山は血相を変えて事の顛末を説明するが、直美は冷ややかな顔で友人達と顔を見合わせた。

皆、疑惑の眼差しを横山に向ける。



横山は直美に縋り付きながら、更に説明を続けた。

「あの女の昨日のアレは全部演技なんだって!直美さん、本当だよ!俺はそんな男じゃない‥!」



だけど‥と口にしながら未だ横山を信じられない直美に、横山は必死の形相で迫った。

「最近俺がそっけなくて、直美さんの心を傷つけてたってことは分かってる。

けど人として、こんなことに騙されちゃ駄目だ!」




横山は皆の方に向き直り、同学科の人達に対しても言葉を掛けた。

「騙されて、みんなバカにされてんだ!俺は悔しいんだよ!」



横山の話を聞いて、「まさか青田先輩が」と口にしている人達の中にも、

「じゃああの写真は一体何なんだ」と疑問を口にする人がチラホラ現れた。

昨日現れた女性はサングラスで瞳こそ隠れていたが、なかなかの美人だったと皆口々に囁く。

横山は希望の光が見えた気がした。

彼等の中に青田淳を疑う気持ちが少しでもあれば、そこから形勢逆転を狙うことが出来る。

「見ただろ?!青田ってやつはマジで浮気野郎‥」



しかしそれ以降横山は言葉を続けられなかった。突然背後から声を掛けられたのだ。

「アンタ何やってんの?」



横山はヒッと息を飲んで携帯を落としそうになった。

振り向いた先に、自分を睨む赤山雪の姿がある。



雪は横山を鋭い視線で睨みながら、低い声でこう問うた。

「先輩が何だって?」



横山は口元を歪めながら、「よぉ。来やがったな」と口にする。



雪は横山を真っ直ぐに見据えながら、早速先ほど彼が皆に見せていた写真について切り出した。

「私にも写真送りつけて騒いで‥またこんなことやってるの?」



雪は呆れた様にそう口にするが、横山は悪びれない。「事実を事実と言って何が悪ぃんだよ」と口にして雪の方を睨んだ。

あーマジ勘弁だわ‥



雪はそう思いながらも、腹の奥から怒りが沸々と沸いてくるのを感じた。

そして雪は横山の方を指差しながら、皆の前で彼を非難し始める。

「アンタ一体どういうつもり?!

万が一先輩が二股してたとしても、アンタがこんな風に写真撮ってあちこちバラ撒く権利がどこにあるワケ?!」




雪の追及に対して、横山は居直りながらこう言った。

「お、俺だって好きでやってんじゃねぇよ!お前だけにコッソリ教えようとしたけど、

あのキ◯ガイ女が昨日クソふざけたことしやがったから、皆に説明せざるを得なくなっただけだ!」


「‥?は?」



不意に出たその話題に対し、雪は目を丸くした。

すると次の瞬間、直美が横山をふっ飛ばして事の顛末を話始める。

「昨日その女が乗り込んで来て、「翔に捨てられた」「アンタなんてセコンド女」って‥!

雪ちゃん何か知らない?!おかげであたしまで濡れ衣着せられてるんだけど!」




雪は直美の話にキョトンとした表情を浮かべた。まるで予想外の話だ。

昨日河村静香がここにやって来て、大暴れしたというのか‥?



雪は不信を露わにしながら、直美に向かって質問する。

「昨日‥ですか?」 「そうよ。写真と同じ女。その女が翔をビンタして、もう大騒ぎ」

「てかその女、どうして青田先輩と一緒に居るの?あの写真何?」



同期の一人が雪に、淳と静香の写真のことを聞いた。しかし雪としては、未だに静香がやらかした話が信じられない。

??‥一体どういうこと?突然あの人が‥



横山と‥??



雪の脳裏に横山と静香の2ショットが過るも、非現実的過ぎてすぐに消えた。

雪は瞬時に頭の中で今の事態を整理する。その間およそ0.5秒。

どうして?あ‥あの時横山の携帯に‥あの時番号が入ったのか?

横山ならどんな女にも引っ掛かるから‥。でもまさか本当にあの人が横山に騙されて酷い目に合った‥わけないか‥。

そういえばあの人なら、「自分は誰々の彼女だ」って言うことも珍しくないのかも‥




雪の脳裏に、電話で「淳の彼女だけど」と言っておきながら、「それは冗談よ」と否定した静香の声が蘇る。

事実と真実と想像の狭間で、雪はグルグルと考えた。

「‥‥‥‥」



鋭い眼差しで空を睨みながら、雪は自分がここでどう振る舞うべきかを考えた。

そして一つの結論が出る。



雪は深く一つ息を吐くと、心を決めて顔を上げた。

横山に向かって、雪が口を開く‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<イタチの弁解>でした。

横山の往生際の悪さ‥。

そして何気に強い力で横山を押しのける直美さんがおかしかったり‥^^




さて修羅場は続きます。

次回<女優の仮面>です。


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恋愛と友情(2)

2014-09-03 01:00:00 | 雪3年3部(彼を待つ~窮地と逆上)


雪は先ほど亮から言われた一言に、目を丸くしてしまっていた。

「オレら、ダチだもんな?」と亮は、雪に向かって言ったのだ‥。



そのまま黙っている雪に対し、亮はもう一度聞いた。

「どーした?ダチじゃねーのか?」



当然のようにそう口にする亮を、雪はじっと眺めていた。

雪は幾分驚いていたのだ。亮の口から先にその言葉が飛び出したということに。



しかしやがて雪はニッコリと笑顔を返し、亮からの質問に頷いて見せた。

「いえ‥友達ですよ~?」 「だーよなー?」



亮は続けて、自分達は「友達」なのだからそんなに難しく考える必要は無い、と彼女に言った。

雪は頭を掻きながら、「河村氏は気を使わなくて大丈夫ですよ。この問題はちゃんと先輩と私で解決しますから」と亮に言う。



そう言って笑顔になった雪を見て、亮はホッとした。

彼女の笑顔を見れるこの「友達」という距離が、彼女の傍に居ることの出来る最短距離だ。



亮は暫し雪のことを見つめていたが、不意にとあることを思い出してジャケットのポケットに手を突っ込む。

「あ、そーだ!ではオレ様がお友達にこれをくれてやろう」



ハテナマークを頭に浮かべる雪に、亮は包装紙で包まれたそれを差し出した。

「ほら、受け取れ」



「何ですか?これ」と問う雪に、亮は「見りゃ分かるって」と中身を見ることを促した。

包みの中を覗き込んだ雪は、思わず「へぇ‥」と声を漏らす。

 

すると亮は、まるで説教するように雪に注意を始めた。

「いや、変な奴がお前を追っかけ回してるみてーだし、お前夜間授業も多いだろ?

こんな武器一つくらいは常備しとくべきだろ。煉瓦で頭かち割る奴もいるこんなポイズンな世の中‥。

変態野郎のことにしてもそうだけどよ、あれ以来例えば防犯ブザーみてーなもんとか‥何か持ち歩いてねーの?」




亮の説教に対して雪は、「考えてみたこともなかった」とキョトンとして言った。

「一応レコーダーは買ったけど」と雪は付け加えたが、

亮は「そんなものはコトが起こってからじゃ何の意味も無い」と言って怒る。



亮は腕組みをしながら、幾分呆れたような表情でこう続けた。

「現に危ない目にも合ってんのに、

用心深くなるどころか輪をかけて無茶しようとするからよぉ‥」




雪は亮からの心配を受け取りながら、少し微妙な表情で彼を見ていた。

その心配の裏にある、彼の本心をなんとなく察しながら。



そしてやがて雪は、素直に「ありがとうございます。使わせてもらいますね」と笑顔で言った。

しかしその言葉を聞いた亮は血相を変える。

「はぁぁ?!使うってなんだ使うって!まず用心しろって言ってんの!

じゃなくてもあんなキ◯ガイ野郎、オレが‥!」




とそこまで言いかけて、亮は口を噤んだ。

先日雪を追い掛け回していたイタチ男に暴行したことを、彼女は知らない‥。



亮は幾分キョドりながら、「い‥いや気をつけろよな。あんな小物野郎‥」と言って言葉を濁した。

雪は亮の言葉の意味がよく分からなかったが、とりあえず頷いて見せる。



そして二人は店に向かって歩き始めた。

横山に対しては自分も対策はしていると言う雪に、亮がもっと威力のある武器を用意しようかと申し出る。

雪は首を横に振ってそれを断ったが、彼の気遣いに感謝した。



二人の間に流れる空気は気安く、そして気取らない温かな雰囲気だった。

雪の心から心配の種を取り除く、それは自分の役目だと亮は思う。



そして亮は、その話題を自分から切り出した。

「あ、それとよ‥淳の野郎はオレが目障りだろーから、

大学でオレと居るとこ見つかれば、またスネて喧嘩して大騒ぎなんじゃねーか?」




目を丸くする雪に、亮は気取らぬ態度で提案した。

「勉強は一人でやることにするわ。わかんねーとこあればそこはまた聞くから」

「え?それは‥」



雪は思わずその否定を口にしかけたが、じきに俯いて亮の提案に頷いた。

「わ‥かりました‥」



そんな雪を見て、亮はニッコリと笑う。

「おう!」



雪は心がチクチクと痛むのを感じた。

私の方が先に話さなきゃって悩んだことを‥



言いにくいことを先に切り出してくれた亮に対して、雪は申し訳無さでいっぱいだ。

しかし亮は気安い態度で接してくれる。

「‥なんかすいません。言い出しっぺは私の方なのに‥」

「あ~いいってばよ。お前グチグチうるせーから、集中しようったって出来なかったからな」



亮は「てか英語は蓮の方がお前よりデキるし」と言って笑った。

「なんですって?!」と雪の顔が思わず引き攣る‥。



そして雪と亮は、再びいつもの憎まれ口を叩きながら共に歩いた。二人肩を並べながら。

「てかこの顔で英語まで出来た日にゃあ、パーフェクトすぎて困っちまうな~!

今まではこの顔で英語が出来ねぇってとこのギャップが、多くの女をキュン死させてきたってのによぉ」


「なーに言ってんだか‥」



そして亮は雪に向かって、再度夜の帰路には気をつけろと念を押す。

連絡すれば、蓮か雪の父親が迎えに来るからと。



「友達」という距離を保って、亮は雪の隣を歩く。

雪はそんな彼の横顔をチラリと見ながら、共に初冬の夜道を歩く。



心の中に、様々な感情が浮かび上がって来た。

河村氏にも、先輩にも、申し訳ない気持ちが募る夜だ。

恋愛でも、友情でも、家族でも、関係がほつれた場合、繋ぎ合わせることは本当に難しい。




そしてその関係のほつれを間違えて縫い付ければ、

どれだけ大きな代償を払わなければならないか、痛いほど分かってる。




その圧迫感とその重みを、私はずっと感じてきたから‥



雪は家に帰って、じっと携帯を眺めていた。

未だに彼からの連絡は無い。雪は無言で携帯を見る。



彼との関係のほつれは、どうやったら縫い付けることが出来るのか。

そして自分が思うその方向に縫い付けることが、果たして正解なのだろうか‥。


沈黙する携帯を眺めながら、雪は再び悶々と一人で思いに耽っていた‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<恋愛と友情(2)>でした。

この<恋愛と友情(1)(2)>で亮さんの株急上昇‥。

言い出しにくいことを先回りして言うこの優しさ!ふざけながらも雪ちゃんを心配するこの優しさ!

亮派の皆様の太鼓の音が聞こえるようです‥。いい男ですね、亮‥。


さて次回は‥<イタチの弁解>です。




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↑再び一位に返り咲きました‥!皆様ありがとうございます!!

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恋愛と友情(1)

2014-09-02 01:00:00 | 雪3年3部(彼を待つ~窮地と逆上)
雪は一人、家路をトボトボと辿っていた。

寝不足と精神的疲労で、ゲッソリとやつれた顔をして。



雪は俯いて歩きながら、もう一日が終わろうとしている今を嘆く。

ほらね‥。大学来なかったじゃん‥。連絡も無いじゃん‥。



携帯には相変わらず電話もメールも来ていない。

雪はイライラした気持ちをぶつけるように、道端に転がっている空き缶を蹴っ飛ばした。

一日中集中出来なかった‥先輩のことだけ悶々と考えて‥。

頭の中がメチャクチャだよ!何考えてるか教えることすら出来ないってか?!あぁ本当にご立派だこと!




今日は大学に来ると言っていた彼は結局現れず、連絡も未だに無い。

雪は沈黙した携帯を何度も見て、廊下に彼の姿を探して、授業もろくに頭に入らなかった‥。



雪はウサを晴らすように、よく拗ねる彼についての文句を言いながら歩く。

「もう!!スネ夫!スネスネスネ夫!!」



その後携帯が震え、雪はすぐにポケットからそれを取り出して見るも、それはくだらない出会い系メールだった。

こうして雪は一日中彼からの連絡を待ちわびて、振り回されている‥。



少しのことで気持ちが上がって、下がって、背を向けた彼の心情を想像して、分からなくて、また落ち込んで‥。

雪は深く溜息を吐く。

恋愛って本当に疲れる‥。



以前萌菜から、「そんなに神経質でどうやって恋愛をするっていうの?」と言われたことがある。

沈黙する彼の前で自分は、ずっと彼のことを考えて気を揉める‥。



ふと雪が顔を上げると、店の近くに亮が立っているのが見えた。

誰かをじっと待っている。

 

亮は雪に気がつくと、彼女の方へすぐさま駆け寄って来た。

「ダメージお前、昨日店にも顔出さず何してんだよテメー!」「あ‥それは‥」



雪は口ごもりながら、昨日のことを思い出す。

そうだよね‥昨日は河村氏の目の前であんなことに‥謝るの忘れてた‥。



血相を変えてこちらに向かってくる亮を見て、雪は自分が亮の前で淳と揉めたことと、店までサボってしまったことに、

腹を立てているんだと思った。雪は俯きながら、モゴモゴと小さな声で弁解する。

「昨日は‥遅くまでゴチャゴチャ考えてて‥すいませ‥」

「おい、お前らあの後出てって喧嘩したんだろ?どうなったんだ?!」



雪はその亮の言葉が予想外で、思わず顔を上げた。彼は腹を立てているのではなく、雪のことを心配していたのだ。

「くそっ‥なんか申し訳なくてよ。オレのせいだろ?現場見なくても、何があったかくらい分かるっつーの。アイツ心が狭ぇからよ‥。

おまえらの喧嘩の真っ最中に、無駄にオレがメールとか電話したらもっと揉めるかと思って、しなかったんだよ」




亮は雪のことを心配するばかりか、二人がもっと揉めないよう気を使っていたのだった。

その細やかな気配りを知って、思わず雪は少し赤面する。



そのまま黙っている雪に、亮は幾分意地悪い表情を浮かべてこう質問した。

「どーしたよ?オレと遊んでるとでも思われたか?」



亮のその一言に、雪はなんと返して良いか迷って口ごもった。

しかし亮は両腕を大きく開きながら、首を横に振るジェスチャーでそれを否定する。

「んだよ!オレらが浮気でもしたか?変な関係でもねーじゃんか。

やましいことなんて何もねぇだろ?」




亮は雪の気持ちを軽くしようと、更に話を続けた。

「アイツなんて高校の時彼女がいても、女の子とホイホイ遊んでたんだからよ。静香とだって‥」



そこまで言いかけて、亮は慌てて口を噤んだ。

淳のプレイボーイ伝説に、雪が白目で沈黙している‥。

 

亮はゴメンと謝りつつ、自分の口をグーで殴った。余計なことを言ってしまったと、彼は反省しながら雪に向き合う。

雪は息を吐きながら、亮に向けて口を開いた。

「河村氏は何も悪くないですよ。私のせいですから‥」



自分の責任だと口にする雪を見て、亮は昔自分が彼女に対してとっていた態度を思い出した。

”オレが持ってやるよ”と頼まれてないのにテキストを持ち、自分に気を向けさせようとしたり(勿論淳への復讐が目的だ)

”愛嬌を振りまくれ”とウソのアドバスをしたり、一人では死にたくねぇ‥!と淳に一泡吹かせたくて上京したり‥。



雪から責められても仕方が無い自分の過去‥。

亮は急に彼女に対して申し訳なくなり、取り繕うように明るい態度で彼女に話し掛けた。

「おいダメージ!そんなに凹むなって!

お前の彼氏もお前の人間関係をコントロール出来るわけじゃねーじゃん?お前の人生なんだからよ!」




亮はそう言ってくれるが、雪は自分からそれに頷くのに躊躇いを感じた。そんな雪に、亮は言葉を続ける。

「それじゃお前と会わねーために店辞めるか?大学にピアノも弾きに行くなって?んなの嫌だぜー」



そして亮はこう口に出した。雪と亮をくくる、絶対的なその関係を。

「オレら、ダチだもんな?」



それは奇しくも、亮から雪への二度目の問いかけだった。

「じゃあオレは?お前の友達?」



夏休み後半の塾での一コマ。

あの時雪は急に言い出した亮のその一言に、目を剥いて聞き返した。

「えっ?!」



そして今回も雪は目を剥いて固まった。

しかし前回の時とは少し異なる感情が、胸の中を揺蕩っている‥。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<恋愛と友情(1)>でした。

亮‥いい奴‥(T T)

心から雪のことを心配してくれている‥。手に入れたいわけじゃなく、彼女の幸せを願って‥。

そんな亮が自分から言い出した「オレらダチだもんな?」‥。

次回はその台詞から始まります。

<恋愛と友情(2)>です。


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現れた虎

2014-09-01 01:00:00 | 雪3年3部(彼を待つ~窮地と逆上)
横山翔は、授業終了と共に勢い良く教科書を鞄の中に仕舞った。

一秒でも早く、赤山雪と話がしたいのだ。



そんな横山の姿を見ていた太一が、雪と聡美の背中を押して先を急ぐ。

「早く行きましょう早く~。あーお腹が減って死にそうデス!

あー来た来た近寄ってきた~早く早く~」




事情を知らない雪と聡美は、空腹だと言って先を促す太一に疑問を持った。時刻はまだ昼にもなっていないのだ。

すると太一は背を屈め、二人にしか聞こえない声で耳打ちする。

「横山先輩、今日ちょっと変ですから早く行きましょう。さっきから時々こっちを睨んでまス」



太一からの情報に雪はげんなりし聡美は怒ったが、とにかく今は彼の言う通りに教室を出て行くことにした。

「ブランチに行きましょー!」



そう言いながら、太一は二人を庇うようにして出口へと急ぐ。

そんな中、雪は何か違和感を感じて後ろを振り向いた。

 

扉から、何かがチラチラと覗いているような気になったのだ。

しかし特別変わった所は何もない‥。

気のせいか‥



雪は再び前を向き、聡美と太一と共に教室を出た。

胸の中には何か不穏なモヤモヤが、依然として漂っていた‥。



「翔!」



横山は突然後ろから腕を掴まれ、反射的に荒い声を返した。

「はぁ?!んだよ!」



しかし振り向いた横山は「しまった」と思った。

そこには、横山の声に怯えた直美が目を剥いていたのだった。



横山は取り繕うように笑顔を浮かべると、直美からの質問に答える。直美はまだ若干戸惑っているようだ。

「あぁ‥直美さん」「‥一人でどこ行くの?」「あ‥はは。ちょっと急用が出来てさ」「急用?」



だから今日はこの辺で‥と横山が別れの挨拶を続けようとすると、直美の表情が変わった。

横山の服を掴み、不安な気持ちを彼にぶつける。

「ねぇ、なんか最近変じゃない?時々急用急用って、一体何の用なの?!」



のらりくらりと横山がかわそうとしても、直美はここぞとばかりに彼に詰め寄った。

昨日路上で人を殴った噂も聞いたと、横山にその真偽を迫る。



しかし横山は早く雪を追いかけたくて仕方なかった。その為彼はぞんざいな態度で直美と接し続けた。

「俺マジで行かなきゃなんだって。後で話すから‥」

「今話してよ!」



しかし直美は横山を離さなかった。必死な面持ちで彼に迫る。

「あんた最近本当におかしいよ。もしかして何か困ってるの?家で何あったの?ねぇ、答えてよ!」



直美は横山の服を掴む手をぎゅっと握り締めると、「じゃなきゃ、他に女が‥」と小さな声でポツリと言った。

横山はしつこい彼女に腹を立て、直美が言い終わる前に強引にその腕を振り払った。

「クッソ!いい加減にしろよ!マジでムカつくんだよっ!

嫁気取ってんじゃねーぞ!!」




その大声に、ギャラリーの目が一斉に横山の方へと注がれた。

乱暴なその言葉に、皆が何事かと二人に注目する。



横山は再び「しまった」と思ったがもう遅かった。

直美は今や顔面蒼白で呆然としている。そして小さく震えながら、信じられないといった表情で口を開いた。

「い‥今なんて‥ど‥どうして‥」



横山の顔は引き攣っていた。己の失態を悔やみながら、直美に向かって弁解する。

「あ‥直美さん‥そうじゃなくてー‥」



しかし横山が言い終わる前に、突然とんでもない出来事が起きた。

一人の女性が横山の方へツカツカと歩いて行き、彼の頬に思い切りビンタをかましたのだ。

「そうよぉ!よくもこんな仕打ちしてくれたわね!!」



バキッと、ただの張り手では出ないような音が教室内に炸裂した。

横山は何が起こったのか分からぬまま、激痛が走った頬を押さえてたたらを踏んだ。女は仁王立ちでその場に佇む。

「この最低男!天罰だわ!」



直美が顔を青くして横山に駆け寄り、教室内は騒然とした。

血の滲んだ口元を庇いながら、横山が女の方を見る。

「な‥?!!」



そこで横山が目にしたのは、”ニセ青田”こと河村静香だった。

静香は涙を流しながら、横山に向かって叫ぶように声を上げる。

「このチ○カス野郎‥ううん、この最低男‥!!あたしを放って浮気して‥!

あたしだけだって言ったくせに!あんたそれでも人間なのっ?!」




涙を流しながらそう捲し立てる彼女を前にして、横山はまるで理解が出来ずに固まっていた。

静香は続けて直美の方を指差して、横山の浮気疑惑を更に主張する。

「最近怪しいと思ってこっそり来てみれば!やっぱり居るじゃない!セカンド女が!」



自分が二番目と言われたことに、困惑する直美。耐えかねた横山は立ち上がり、思わず静香のジャケットの襟を掴んだ。

「お前何なんだよ!バカじゃねーの?!」



しかし静香はまるで怯まず、更に暴れながら言葉を返した。

「そうよあたしはバカな女よ!あたしの周りもみんなそう言うわ!

あんたのせいでね!!」




そう言って静香は手の平で再び横山の頬を叩いた。

そしてふらつく彼に、今度は逆側の頬に強くビンタをする。

「あんたが何度も何度も浮気を繰り返すからよ!!」



グフッと咳き込みながら、横山は再びたたらを踏んだ。

先ほどまでは血が滲むだけだった口元から、今や血液がポタポタと垂れている。



今や教室中の学生が三人を囲んで騒然としていた。

横山は皆に聞こえるように「こんな女知らない」と弁解し、静香は俯きながら横山の浮気を責め続ける。

そして直美は、顔を青くしながらも横山を庇うようにして、静香の前に両手を広げて躍り出た。

「な、何してるんです?!あなた一体誰ですか?!私が翔の彼女です!私に話して下さい!」



横山はそんな直美に便乗し、「こんな狂った女見たことも無い」と大声で言った。

静香は顔を顰めながら、ポツリと呟くようにこう口を開く。

「知らんぷりってわけね‥」



そして静香はポケットから携帯を取り出すと、二人の前にかざしてこう言った。

「これを見ても同じことが言えるかしら?」



二人の目にまず飛び込んで来たのは、静香と横山のメッセージのやり取りだった。

俺が慰めてやるよ 本当に?あたしに会いたいの?

当たり前だろ~早く会おうぜ!



続けて、静香のセクシーショット。

あんたも送ってよ。あたしも送ったんだから



そして最後に映っていたのは、横山のセクシーショット(?)だった‥。

お前の真似ww最近ジム行ってんだ



それを見た横山は、顔面蒼白した。

そして酷いくらい狼狽しながら、直美に対して必死に弁解する。

「い‥いやこれは俺じゃない!全部コラ画像‥!」



しかし直美は騙されなかった。歯噛みしながら、震える声でこう口にする。

「携帯番号も‥ほくろの位置も全部同じじゃない‥」



そして直美は、屈辱と怒りの渾身の一撃を横山にお見舞いした。

「この最低男!!!別れてやる!!」






二発殴られた上に渾身の一撃を受け、横山はそのまま地面にひっくり返った。

そんな横山を見て、静香はニヤリと嗤っている‥。



静香は手で目元を覆いながら横山に背を向けると、泣き真似をしながらその場から立ち去った。

「あたしも別れてやるぅぅ!うわああん!」



その横では直美が大声で泣き崩れ、彼女を直美の友人達が囲んでいる。

教室内はカオスだったが、当事者の横山本人は未だ事の成り行きが理解出来ず、呆然としていた。

周りのギャラリーのヒソヒソ声が、横山の耳に入って来る。

マジで? クズじゃん! え、どーなってんの?? よ‥横山が‥あんなセクシーグラマラス美女と浮気を‥?やるなアイツ‥



侮蔑、好奇、関心、疑問‥。人々は好き勝手なものさしで事態を判断し、その感想を口にした。

横山は暫し呆然とした後、猛烈な怒りが沸いてくるのを感じた。



その怒りに横山が咆哮している頃には、静香はもう建物のエントランス付近を上機嫌で歩いていた。

その美貌とスタイルに、道行く男子学生は皆静香の方を振り返って行く。

「あたしもいい加減相手するのがムカついててね~ん」



そして静香は舌を出しながら、後ろ手にピースをした。

「この先制攻撃はあたしからのサービスよん。

淳ちゃんはあたしに超~~~感謝してクレカを差し出さなきゃダメだわね~ん」




そう言って静香は、甲高い笑い声を上げながら大学を後にした。

虎はやにわに現れて、イタチをひと噛みしてまた去って行く‥。


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<現れた虎>でした。

怒涛の展開でございました。静香さん三発も横山にお見舞いしましたね‥^^;

直美も一発殴りましたし、横山はチートラ内での「殴られNO.1」だと思います‥

ふと気になったので二人の身長調べてみますと、静香の方が横山より2センチ高いんですよね。

 

+ヒール履いてるので、かなりの攻撃力‥。


そして衝撃だったのはこの人のこの言葉‥。

「携帯番号も‥ほくろの位置も全部同じじゃない‥」



か、身体のほくろの位置を知っているというということは‥。やはりこの二人、結構深い関係だったのか‥と白目でした。

願わくば横山が、直美さんの初めての男じゃありませんように‥。


次回は<恋愛と友情(1)>です。


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