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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

砂の城(4)ー崩落ー

2014-07-05 01:00:00 | 雪3年3部(砂の城~性分)
今、この事件の”渦中の人”は完全に赤山蓮から清水香織に移行してしまっていた。

今や教室中の人々が清水香織を見て呆然としている。青ざめながら震える、その主人公に。



蓮の”本当の彼女”、小西恵はキョトンとした顔で彼女を見つめ、

我知らず先ほどまで話題の中心だった赤山蓮は、訝しげな表情で彼女を見ている。

 

唯一の味方であると思われた直美も嘘を吐かれたことで愕然とし、

元々彼女をコマとして利用しようとしか思っていなかった横山は、見るからに呆れていた。



そしてギャラリーの中でも一際冷たい視線を送っていたのは青田淳だった。

まるで罠に掛かった動物を観察するかのような、冷淡な蒼い瞳で。



そして暫し無言のまま香織と相対していた雪だったが、次第に事態が把握出来てきた。

「あんた‥」と口を開きかける。



しかし次の瞬間、香織は凄い形相で雪へと手を伸ばした。

「返してよ!なに人の携帯勝手に見てんの‥?!」



香織は雪が持っている携帯を取り戻そうと、力の限り雪の手に爪を立てた。

雪は困惑しながらもそれに応戦し、暫し二人はその場で揉み合う。香織の爪が雪の指に食い込み、雪は痛さに顔を歪めた。



雪はそこで、これまで抑え溜め込んで来た怒りが完全に限界を迎えたのを感じた。

ブチッと、頭の奥で何かが切れる音がする。膨れ上がる憎しみにまかせて、大声で捲し立てた。

「あんたこそどういうことよ!」



携帯を投げ捨てると、床にぶつかって電池が外れた。どうなろうともう、どうでも良かった。

脳裏に、いつか見た不吉な夢の風景が浮かぶ。



自分の周りに居る大切な人達が、彼女によって奪われるかもしれないという不安が、色濃く映った心象風景。

そして今その不安な予感は的中し、彼等の中でも最も親しい、いや自分の家族が侵されようとしている。




雪は叫んだ。

胸の中で煮え滾る怒りと共に、背筋を凍らせるような恐怖に全身を震わせながら。


「嘘にも限度ってもんがあるでしょ?!うちの弟の写真で何しようっての?!」



「私の弟!私の弟なのよ!」



「どうして人の弟を‥!」



「何考えてんのよっ‥!!」



恐ろしいまでの剣幕だった。

普段とは全く別人の雪の姿に蓮は当惑し、相対する香織も完全に気圧されてしまっている。



水を打ったように静まっていたギャラリーも、暫く経つと徐々にヒソヒソと囁き始めた。

香織は脂汗をかきながら、苦し紛れの言い訳を口にする。

「あ、あれは‥ただの似た人で‥」



馬鹿の一つ覚えのようなその言い訳に、同期の女子が「プッ」と吹き出した。

その子の隣に居た同期は、思わず笑った子をたしなめていたが。



その嘲笑で我に返った香織は、突然カッと赤面した。

今自分が置かれている状況が、徐々に客観的に把握出来てしまいそうになっているのだ。



足がガクガクと震えていた。

固い地面に立っているはずなのに、まるで高く積まれた砂の城の上に立っているかのように足元が覚束ない。



土台の無い砂の城の上は、あっけないほど簡単に崩れて行く。

嵐に壊されるまでもなく、自分の震えでそれはガタガタと崩落して行く。



そしてそれに抗うかのように、鼓膜の奥で響いてくる声があった。

クスクスと聞こえて来るのは、自分に対する幻の嘲笑だった。



厳しい現実を突きつけられた時、いつも彼女は妄想する。

それは自らに虚像の暗示を掛けて来た彼女が無意識で発揮する、防衛本能のようなものだった。



物や人の良い所ばかりを掬い取り、その光の部分しか見て来なかった彼女の愚かな癖。

妄想の世界で完結してしまい、厳しい現実と向き合うことが出来ない弱き彼女ゆえの癖。


そして今回もまた彼女は思い込むことで、責任の所在を他人に押し付けることで、闇雲に自分を守ろうとしていた。


「‥満足?」



香織は俯いたまま、低い声で口を開いた。

「あんた知ってたんでしょ?全部知ってて‥それで私を‥」



「皆の前で晒し者にしようと‥あんた‥」

 

そして香織は雪のことを鋭い視線で射るように睨んだかと思うと、いきなり飛びかかって大声を上げた。

「あんたわざとやったんでしょおっ?!!」



雪は突然襲い掛かって来た香織と、髪の毛を引っ張られる激しい痛みに驚愕した。

すぐに蓮と太一が二人の元へ駆け寄ったが、香織の叫びは止まらなかった。

「発表の時も!新しい服着て来た時も!」



「一体いつまで!いつまで私を困らせる気なのおっ‥?!」



香織の瞳孔は開き、狂ったように雪の髪の毛を掴む手に力がこもる。

自らによって自分の城が崩れ無残な姿に成り果てるのを、雪の非にするため香織は無我夢中だった。



雪は掴まれた手の合間から、顔を上げて真っ直ぐに香織を見据えた。

彼女が口にした主張を現実的に受け止め、真っ向から反論する。いや、応戦する。

「誰がよ?!」



雪は香織と同じく彼女の髪の毛を掴むと、その勢いで二人は床に倒れ込んだ。

ギャラリーは騒然とし、どよめきの声がいくつも上がる。



マウントポジションに位置した雪が、床に倒れた香織を上から睨みつける。

瞳の奥に紅い炎が燃えていた。香織は瞬きも出来ぬまま、じっとその瞳と相対する‥。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<砂の城(4)ー崩落ー>でした。

激しい展開になって参りました‥。

さて、香織の城はあっけなくも崩落。残すは雪の城のみとなりました。


次回は<砂の城(5)ー本音ー>です。




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砂の城(3)ー渦中の人ー

2014-07-04 01:00:00 | 雪3年3部(砂の城~性分)
無言で睨み合う雪と香織の周りを、ギャラリーが取り囲んでいる。

その中には無論、青田淳の姿もあった。



女は怖いねぇ、と笑う柳の横で淳は、一人腕時計に目を落とす。

そろそろ”彼”が来る頃だ、と。






瞬きもせず香織を睨み続ける雪に向かって、とうとう香織が口を開いた。

「な‥無いわ!無いわよ!マ、マジで呆れるわ本当!もうこんなこと止めてよ!」



自分に非などないと、香織はそう言って雪に背を向けた。他の子達も「もううんざり」と言って、教室を出て行こうとする。

すると聡美が怒りながら香織を引き止め、雪と香織を中心とする揉め事は更なるゴタゴタへと発展しようとしていた。

そんな中、遂に”彼”が教室に顔を出した。

「我らが淳さん、どっこかな~~?」



渦中の人‥赤山蓮は鼻歌交じりに教室を覗き込んだ。その後ろには恵も居る。

しかし中を窺った蓮はその雰囲気に異変を感じた。何やら誰かが揉めているらしい。



ケンカか?と呟きながら中を見回した蓮は、ギャラリーの中に淳の姿を見つけた。

大きな声でその名前を呼び、恵の手を引っ張って彼の元へと駆け寄る。

「淳さ~ん!俺らメール貰ってすっ飛んで来ました!

めちゃうまな店に連れてって下さるって~!」




淳と蓮が交わした「二人が付き合い始めた記念にご飯を奢る」という約束を、

昨日の今日で実行に移してくれて嬉しい、と蓮は笑って言った。先ほど淳が、その旨のメールを蓮に送ったのだった。



ふと青田先輩の方へ視線を流した直美は、ハッと息を飲んだ。

隣の子の腕を掴み、見覚えのあるあの男の子の方へ指を差す。そして二人はコソコソと会話し始めた。

「ねぇちょっと‥アレ香織の彼氏じゃない?」「え?マジで!さっきの写真の子だ!」

「でしょでしょ?」 「ねぇアンタも見てみて!」



隣の子がその隣の子に伝え、またその隣の子が隣の子に伝え‥。渦中の人、”香織の彼氏”が来たことは、

みるみるギャラリーに伝わって行く。

「ってか香織の彼氏が来たってことは、もっと事が大きくなるんじゃ‥」

「てか青田先輩と知り合いなの?マジで?」



教室の中心で騒ぎを起こしている雪と香織の他に、”香織の彼氏”を発見した直美達の方でも静かな騒ぎが起こっていた。

そんなことなど露ほども知らない蓮は、キョロキョロと辺りを見回しながら口を開く。

「ところで何かあったんすか?何でこんなザワザワ‥」



蓮が耳をそばだてると、ギャラリーの話し声が聞こえて来た。

あれ見てみろよ、ケンカだとよ、今あの二人が言い争ってんだ、と。



そして中心に居る二人を目にした途端、蓮は目を見開いた。

何を考えるより先に、大きな声で叫んでいた。

「姉ちゃん!」



ひときわ大きなその声に、雪と香織は振り返った。雪は目を丸くし、香織は顔面蒼白だ。

 

蓮は雪の方へ近づくと、ゴキゲンな様子で姉に話し掛けた。

「なんだよ~!一緒の授業だったん?ってか何してんだよ~」



蓮は淳と雪が一緒の授業だったことを知らなかったので、嬉しそうにそう言って微笑んだ。

けれど喧嘩をしていたことには顔を顰め、小さな声でボソボソ言う。

「まさかケンカ?亮さんの話はマジだったのか‥」



蓮は、亮からしばしば聞いていた姉の武勇伝を今回実感し、本当だったかと言って一人頷いた。

雪はなぜいきなり蓮が現れたのか分からず、終始不思議そうな顔をしている。

すると蓮は雪と肩を組み、気楽な調子で話し始めた。

「も~止めようよ!てか姉ちゃんも一緒に行くっしょ?早く行こうぜ~!」



雪は眉を顰めながら、一体なぜここにアンタが居るのよと聞いた。蓮は軽い調子でそれに答える。

「え?俺? 俺は淳さんがご飯ご馳走してくれるって言うから来たんじゃ~ん!

姉ちゃんがくれなかった祝パン!キンカンと俺が付き合うこと、淳さんに話したんだ~」




キンカンも来てる‥と続けようとした蓮だったが、

ふと姉弟は変な空気を察して黙った。切れ長の大きな瞳が四つ、後ろを振り返る。



そこに広がっていたのは、奇妙な光景だった。しんとした空間の中、ギャラリー全員が雪と蓮のことを見ている。

皆不思議そうな顔をして、無言で二人に視線を送っているのだ。



二人はそんな光景の中心で揃って目を丸くした。

”渦中の人”赤山蓮は、今まさに文字通り中心に居る‥。



なんだか怖くなった蓮は、思わず姉にしがみついた。

「ななな何?!何でいきなり皆こっち見んの?!姉ちゃん、この人達俺に何か用かな?!」

「わ、私も分かんない‥。皆、何で見てんの?」



ギャラリーがざわめき始めた。姉ちゃん? 姉ちゃんって? と皆しきりに囁いて顔を見合わせている。

そんな中、目を見開いた柳が淳の肩を興奮気味に叩いて言った。

「えぇ?!あの子が赤山ちゃんの弟?!マジで?!」



それに対し淳は、「うん、どうして?」とキョトンとした表情で答えた。

すると柳は、学科中に響く声でこう言ったのだ。

「どうしてって!清水っちの写真の、あの子の彼氏じゃん!

ってことは、赤山ちゃんの弟と清水っちが付き合ってるってこと?!」




柳のその言葉により、教室中の視線が清水香織に注がれる。

白かった香織の顔が、更に一層青ざめた。



雪も蓮も、何が何やら意味が分からなかった。すると蓮の隣に居た恵が、低く震える声で蓮に問う。

「ちょっと蓮‥これは一体どういう‥」



全く身に覚えの無い疑いを掛けられた蓮の目玉は飛び出した。

蓮は、そこに居る全員に見えるよう自分の本当の彼女の肩に両手を掛け、大声で弁明する。

「どういうことすか!清水っちって誰っすか?!人違いじゃないっすか?!

俺の彼女はここに居ますよ!皆さん変なこと言わないで下さいよ!」




蓮は更に弁明を続けた。自分は初めてここに来たし、あの人が誰なのかも全く知らないと。

蓮は最後に「そうでしょ姉ちゃん?!」と言って、姉に同意を求める。



次第にザワザワと騒がしくなっていく空気の中で、清水香織はブルブルと震え始めていた。

視線は宙を彷徨い、明らかに動揺している。そんな中、直美が香織に声を掛けた。

「香織、これは一体どういうことなの?」



香織は直美と視線を合わせぬまま、「ちち違う‥!あれはただの似てる人で‥」とどもりながら言い張った。

あんたまさか‥と言いながら、直美は香織に訝しげな視線を送る。



雪はつかつかと香織に近寄ると、香織の鞄を奪い携帯電話を探した。

制止しようとする香織を振り切り、強引に画像フォルダを検索する。



そして表示された写真を見て、雪は目を見開いた。蓮は携帯を覗きこむやいなや、大きな声を上げる。

「うえっ?!なんだこりゃ!俺じゃん!」



「‥‥本当にあんたなのね?」

「そうだよ!これ俺の服!アメリカで買った!」



ガタガタと、香織の震えは今や目に見えるほど大きくなっていた。

指の先から血の気が引いていく。



そんな香織の姿を、赤山姉弟はキョトンとした顔で見ていた。言われてみれば二人はそっくりだった。

切れ長の大きな四つの瞳が、その真実を真っ直ぐに映し出す。



目の前が白く歪んで行くのに、香織は目を見開いたまま浅い呼吸を繰り返していた。

嫌な汗が背中を伝う感覚が、スローモーションのようにゆるりと感じられる。







ギリギリまで積まれた砂の城に、大きな嵐が近付いて来ていた。

崩れるのは雪の城か、香織の城か、それとも両者か。


けれどそれを予測することは出来ないのだ。実際に嵐を迎えるまでは‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<砂の城(3)ー渦中の人ー>でした。

柳の「清水っち」呼び、オリジナルで考えてみたんですがなかなかいいんじゃない?と自分では思っていたり‥。^^;

日本語版ではどうなるんですかね~。


さて砂の城シリーズも佳境に入って参りました。

次回は<砂の城(4)ー崩落ー>です。


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砂の城(2)ー許せないことー

2014-07-03 01:00:00 | 雪3年3部(砂の城~性分)
今、この教室の中の主人公は、間違いなく清水香織だった。

香織の彼氏の写真を一目見ようと、大勢の人が彼女の携帯の元に集っている。



見終わった柳は淳に、「見ないの?」と質問した。

淳は、「俺はいいや」と首を横に振る。



健太は興味はあったが、人が沢山居すぎて面倒くさくなり、見るのを止めた。

かくして蓮の顔を知っている青田淳と柳瀬健太は、

淳は故意によって、そして健太は偶然の悪戯によって、その写真を見なかった。

この布石が、やがて来るその時へと事態を進行させて行く。


「ほらもう席就け!試験始めるぞ!」



暫し騒いでいた皆も、遠藤助手が教室に入って来るやいなや席に就き始めた。

雪は回答用紙を受け取ると、浮かない表情でペンを握る。



テストを解き始める前に、今の状況と自分の気持ちを改めて整理する。

科の雰囲気は良好、試験期間中に騒ぎを起こすのは好ましくない。

だけど‥これはもうしょうがない。




雪は斜め前方の席でテストを受ける、清水香織の後ろ姿を睨んだ。

瞳の中で紅い炎が熱く燃える。

今回のことは到底許せない。‥いや、許さない。



盗んだ人形を踏みつけ、傷つけ、バカにしたように笑った。

あの顔が脳裏から離れない。



雪は一つ息を吐くと、とりあえず頭を切り替えてテストに向き合った。

この試験が終わったら、戦いが待っている‥。





一方清水香織はというと、先ほどの騒ぎにまだ心を囚われていた。ガリガリと爪を齧りながら考え事をする。

直美さん‥何で突然皆に写真を見せたりしたのよ‥。もしバレたらどうすれば‥?

で、でもどうせ皆も一度見た写真のことなんてすぐに忘れるわ。それにあの男の子は美大に通ってるっぽいし、

ここに来ることなんてまず無いよね‥?




そこまで考えたところで、先ほど目にした光景がパッと脳裏に浮かんだ。

あの男の子と笑い合う、赤山雪の姿だ。



香織はヒッと息を飲み、顔を青くして竦み上がった。

赤山‥!赤山と知り合いじゃないの‥!

それならここに来ることもありえるよね‥?!ど、どうしよう‥?!!




その後香織は最悪なケースを想定しては否定し、爪を噛んでは俯いてを繰り返した。

試験中であるということも忘れ、頭の中にはあらゆる想像が膨れ上がる。



不意に、遠藤助手が口を開いた。

「あと10分!」



その声でようやく正気に戻った香織は慌ててテストに取り掛かるも、

じきに試験終了のチャイムは鳴った。

席を立つ学生達の間で、香織は苛立たしい気持ちで歯噛みする。

ダメ‥終わった‥。無駄に赤山に気を取られて‥



香織はくさくさした気持ちでいっぱいだったが、

とりあえず問題の種である、あの男の子の写真を消そうと携帯を取り出した。



しかし消去ボタンを押す前に、背後から大きな声で名前を呼ばれた。

「清水香織!」



ビクッと大きく身を竦ませた香織に、雪は「ちょっと顔貸して」と険しい表情で声を掛けた。

香織は携帯を両手で隠しながら、アタフタと幾分慌てている。



香織は暫し狼狽していたが、心を決めると腕組みの姿勢で応戦の態度を取った。

「ど、どうしたの?何よ?」



雪はつかつかと香織の前まで進み出ると、目の前にあのライオン人形を勢い良く突き付け、こう言った。

「あんた、私に言いたいことがあるんならハッキリ言って」



「盗んだのならそこで終わらせるべきでしょ?踏みつけて行くなんてどういうことよ!」



盗まれたことだって、本来ならば許せない。けれど今回の悪意に満ちた彼女の振る舞いは、もっと許せない。

雪は厳しい表情で、香織からの回答を待つ。



しかし香織は、ジットリとした目つきで睨み、ゆっくりと雪に近付いた。

「は?またその話? あんた被害妄想にでも駆られてんの?

あんたと同じ物持ってたら無条件で盗んだことになるっていうの? 笑わせないで」




その香織の態度にキレたのは、雪ではなく聡美だった。疑わしい事実を確認するように口に出す。

「はぁ?!あんたがカワイイって言った後で人形が失くなって、

あんたその翌日すぐに持って来てたじゃんか!偶然の一致にも程があるっての!

あんたが買ったって店に行ったらかなり前から生産中止だって言われたし、一体どうやってそれを買ったっての?!」




的を得ている聡美の主張だが、香織は怯むことなく言い返した。

「だから私が盗んだってワケ?随分容易く人のことを変人扱いするのね?

証拠も無いのに、私のことが嫌いだからって意地を張るのは止めてくれる?

皆試験期間中だっていうのに喧嘩売って‥。それってどうなの?」




いつの間にか、ギャラリーは三人を取り囲むようにして彼女らの騒ぎを見ていた。

香織の言葉に、直美を始めとする同期達が同調して口を開く。

「雪ちゃんも大概ね。今度は何につっかかってるの?」「そうよ。試験期間中なんだから止めてよ」



前回のレポート盗作事件以来、雪と香織のいざこざは周知の事実となり、周りは”またやってる”という目で見ていた。

けれど雪の中では何一つ解決していない。周りの声に対しては沈黙を貫き、鋭い視線を香織に投げかける。



雪は暫し香織の方をじっと睨んでいたが、やがて低い声で口を開いた。

彼女の心の内を問い詰める、剥き出しの言葉を。

「あんた本当に‥私に対して悪いと思ってないの?」



それこそが、雪が本当に”許せないこと”だった。それを追及する雪の表情は厳しく、瞳には確固たる意志が宿っている。

けれど、その恐ろしいまでの形相の中に、ほんの僅かに哀しさが見え隠れする‥。



雪の表情に気圧された香織は、彼女の前で黙りこくった。

その大きな瞳から、目が逸らせない‥。







確固たる決意を持った雪が立つのは、強い土台が築かれた砂の城だ。

土台を覆う砂など、多少こぼれても構わない。

それを差し置いても、許せないことを許せないと言う覚悟が雪にはあった。


香織と雪の砂の城が、今無言で相対しているー‥。



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<砂の城(2)ー許せないことー>でした。

最後の雪ちゃんの台詞

「あんた本当に‥私に対して悪いと思ってないの?」



この台詞は、夏休みに平井和美から形だけの謝罪をされた時にも言いましたね。

「あんた本当に、私に対して一つも悪いと思ってないんだね」



やはり雪ちゃんにとって、ここがネックのようですね。。


そして、記事には載せれなかったけれど気になったコマ。



「恐ろしい子‥!」と今にも言い出しそうな香織。。実際には「(試験)オワタ‥!」という感じ?/(^o^)\


そして同期女子達の会話。

「そういえばヨンジュ(誰?)の彼氏は?」「あ~あの子の彼軍隊行ってる」「そうだったのー?」



てな感じの会話してます。ここにも軍隊遠恋のカップルが‥!

ヨンジュさん‥誰だか存じませんが、お幸せに‥。



次回は<砂の城(3)ー渦中の人ー>です。


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砂の城(1)ー主人公ー

2014-07-02 01:00:00 | 雪3年3部(砂の城~性分)
中間考査五日目。試験最終日である。その日、朝から伊吹聡美は吠えていた。

「今テストなんて受けてる場合?!今日こそ捕まえてシメなくっちゃ!

あの子マジで頭どうかしちゃってるんじゃないの?!何で無駄にケンカ売られなきゃいけないのよっ!」




ペンケースを握り締めつつ憤慨する聡美とは対照的に、雪はライオン人形を握り締めたまま沈黙を守っていた。

聡美のように声を上げて怒りたい気持ちは山々だが、今はその怒りを爆発させるべき時ではない。

「あの子のおかしい所はねぇ、一度は嘘まで吐いて盗む程欲しがってたくせに、

どうしていきなり踏み潰して行くのかってとこよ!マジで呆れるわ本当!」




香織の人形への仕打ちに対して聡美はずっと文句を言っていたが、
(そして女同士のそんなやり取りを太一は怖いものでも見るかのようにじっと窺っていたが)

雪は「落ち着いて。とりあえず試験受けよ」と口にして押し黙っていた。




すると後方の席から、柳先輩の明るい声が教室に響いた。おはよ、と誰かに挨拶している。

振り返るとそこに、予想通り彼が居た。



淳は雪と目が合ったと思うと、その視線をじっと彼女に留まらせた。

何か含みがあるような、意味深な表情で。



彼が、雪が握り締めていたライオンの人形を目にしたかどうかは定かではない。

けれど彼はどこか気になる気持ちを雪にもたらし、そのまま背を向けて柳が座っている席へと歩いて行った。

 

今は試験と清水香織のことでいっぱいいっぱいなのに、この上彼のことにまで気は回せない。

雪は深く一つ息を吐くと、目の前の勉強に集中しようと気持ちを切り替える。



すると教室の出入口から、大人数の団体が室内へと入って来た。

横山翔御一行。その中には勿論、清水香織の姿もある。



聡美は香織の姿を見るやいなや腕まくりをして立ち上がりかけたが、

試験が終るまではダメ、と雪は必死で聡美をなだめた。



その拍子に香織と目が合い、

  

雪が睨むと、香織は雪を見てせせら笑うような表情を浮かべた。

香織は満足だった。雪が言い返して来ないのは、自分が勝ったからだと自負する。

まるで自分は小説の中の主人公のようだと、香織は高慢にもそう思って鼻を高くした。

ずっと憧れていた綺麗で強い主人公に、ようやく自分はなれたのだ‥。




するとそんな香織に、柳が声を掛けて来た。

「おお~清水っち~!ますます華やかになったね~!良い変化良い変化♪」



柳は今日の香織の服装を見て、「まるでお姫様みたいじゃん」と言って彼女を褒めそやした。

直美はそんな香織の肩に手を置いて、そうでしょうと言って鼻を高くする。



そして柳は、からかうように頬を染めてこう口にした。

「今日はこの後終わってからどっか遊び行くの?

て・か・彼氏出来たんだってぇ~~~??」




キャッとハートマークを飛ばしつつ、柳は大きな声で”香織の彼氏”の話題を口にした。

そして「しかも超イケメンらしいじゃん!」と柳が続けると、

香織が答えるより先に直美が大きな声で肯定し、頷いた。

予想外の方向へと話が流れて行く状況に香織はただ青ざめ、狼狽する。



すると教室に居た同期や先輩、ありとあらゆる人々が、香織の彼氏について興味を持ち始めた。

香織の彼氏~?うちらもまだ見たことなーい おっ気になる!写真ねーの?

 

しまいに柳があることないこと口にして、話はどんどん大きくなる。

「いや~マジでイケメンらしいぜ?何でもウォンビンにも引けをとらないという‥」



柳のその言葉を聞いて、感嘆の声を上げて皆が香織の元に押しかけた。

”香織の彼氏”のハードルはガンガン上がって行く。



香織は今の状況についていけず、青ざめながら動揺した。

すると人波の間から、彼が口を開く。

「ほら、皆気になってるよ。携帯に写真とか無いの?」



青田淳は、飾った笑顔と共に事態を加速させる術を発揮した。

あの日目にしたあの写真。頭の片隅にあったあの記憶が、重要な布石となって今ここで生きる。



香織は彼のその笑みを見て、その裏に隠された意図を感じ取り、竦み上がった。

あ、あの人‥!やっぱり何か知ってるからあんなこと言って‥!知ってて‥!



香織は全身に嫌な汗をかきながらガタガタと震えた。その間にも、周りはどんどん騒々しくなって行く。

香織は震える手で携帯を取り出した。

も‥もう知らない‥!ま、まずは早く写真を消して‥



すると握り締められた香織の携帯を、隣に居た直美が目ざとく発見した。

そしてそれを奪い取ると、皆に見えるように掲げて叫ぶ。

「ここに写真あるよー!イケメンイケメン!」



皆は「おおっ」と声を上げ、見せて見せてと直美の元へと集って来た。

経営学科ほぼ全員を上げてのお祭り騒ぎに、何の騒ぎよと言って聡美が憤慨する。



試験が終わってから、人形のことで香織と一線交えようとしている雪サイドとしては、出鼻を挫かれたような気分だ。

しかし怒りの声を上げる聡美に対して雪は、その騒ぎを前にした香織の表情の方が気になっていた。



”香織の彼氏”の写真を皆がワイワイ見ているというのに、香織本人は青ざめながらガタガタ震えていた。

雪はその表情の意味が解せず、一人眉を顰めて今の状況を眺める。







急ピッチで積まれた香織の砂の城は、風に吹かれてパラパラと徐々に崩れ行く。

彼女の城には土台が無かった。積み上げられたそれを支える固い土台が。

ギリギリまで積まれた砂の城は、驚くほど脆いはずだ。そこで踊る主人公を、支えることもままならない程。


それはギリギリであればあるほど、すぐに崩れてしまう




その瞬間は、ほんの刹那。





”その時”はきっともう、すぐそこまで来ている。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<砂の城(1)ー主人公ー>でした。

今回より「砂の城」シリーズ続きます~。



ウォンビン氏‥イ、イケメン‥。



柳ハードル上げすぎ‥そしてこのコマで↓



「あ~結構いいじゃん」「でもウォンビンとはちょっと違うな‥」と言われている‥笑

蓮‥



そして今回、ピンクのワンピースを着ている香織が柳から「お姫様みたい」と言われるくだりは、

去年の冴えない香織が雪を見て「お姫様みたいに飾らなくても綺麗だな」と思っていたのと対になっているんでしょうね。




次回は<砂の城(2)ー許せないことー>です。



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