雪がアパートから外へ出る階段を登ると、見慣れた顔が彼女を出迎えた。
「な~に今更ビックリしてるのよ~~」
雪は連絡も無しで大量の食料を持って来た二人に、喜びながらも心底驚いた。
そんな二人の言い分はこうだ。
「授業が急に無くなった日、何をして過ごすのが正解でしょうか?
学生の本分を正し、勉学に励むのが正解だと思っていませんか?」
二人は買い物袋をガサッと持ち上げた。
「いいえ。腹を満たしてやるのが正解デス」
二人が買ってきたのは、焼肉の材料だった。
雪の一人暮らしの引っ越しパーティーも兼ねて、豪勢にいこうということらしい。
三人が家の前でワイワイ喋っていると、例の如くお隣りさんがドアを開けて顔を出した。
「ちょっと!今度は友達と力を合わせて騒音公害でも起こすつもり?!
あんたはあたしの人生をぶち壊す為に現れた悪魔なの?!」
そのインパクトに、思わず固まる味趣連。
まだ小言が続くかと思われたが、
隣人は太一の持っている肉に目を留めるとヨダレを垂らし‥。
世界で一番強い技は、相手と友達になることだという言葉がある。
果たして騒動は一件落着。
お隣さん含め四人は雪の部屋で焼肉を始める運びとなった。
隣人は久々に食べる肉に涙を流し喜び、太一は急速に無くなる肉に危機感を覚えて目一杯口に頬張る。
聡美は既に酔っぱらい、バッグからタバコを取り出して吸おうとした。
「ここは禁煙です!」
雪の手刀チョップが炸裂した。
タバコ嫌いの雪は部屋に匂いがつくからダメと注意したが、
それ以上に聡美がまだ喫煙していることに小言を言う。
聡美は雪に説教されたことが却って嬉しかったらしく、
雪に抱きついた。
雪の携帯が鳴って、彼女は電話に出た。
どうやら彼女の母親かららしい。
「お母さん?今友達とご飯食べてる。お肉をね、皆が買って来てくれたんだ‥」
聡美は雪と母親との何気ない会話を聞きながら、
その後姿をボンヤリと見ていた。
太一はそんな聡美を見ながら、聡美の母親についての記憶を思い出す。
両親が幼い頃に離婚して、母親の居ない聡美。
彼女の後ろ姿は、母親の帰りを待つ子供のように小さく見えた。
「幸せになるんだ‥」
小さくそう呟く聡美。
太一がその華奢な肩に、手を置こうとした時だった。
「聡美さ‥」
「大好きだ~!あたしのこと忘れんなよ~~!」
突然の大声に、太一の慰めは掻き消えた。
そして聡美はそのまま、”Love and Memory”という曲を歌い始めたのだった。
♪別れを後悔した時はああああ~♪いつでも私の元へ戻っておいでぇ~♪
「♪I say SATO! You say MI! Say SATO!」
「♪MI!」
息ピッタリである。太一は「ご近所さんに迷惑になりますから止めて下サイ」と冷静に言うも、
実は一緒に盛り上がっているのがそのご近所さんであった‥。
一人冷静な太一は、
「雪さん戻って来たらカラオケでも行きましょう」と提案するが、
そのテンションの低さを見咎めた聡美は、太一の頬を掴んで顔を引き寄せた。
「お姉さまの言うことを無視するバカモノ~!その顔をしかと拝んでやろーじゃないの!」
太一の目の前に聡美の顔がある。
聡美はニヤッと笑って太一の頬を撫でると、「男前~~じゃん?」と言って頬をペチペチと叩いた。
固まる太一に反して、
聡美はそう言ったきり酔いが回ったのかその場で寝てしまった。
お隣さんが、酔いつぶれてしまった聡美に
「置いてかないで~」とゆさゆさ起こそうとしている横で、太一は依然として固まっている。
ただ心臓だけがドクドクと脈を打ち、
まるで身体を何かに乗っ取られてしまったかのように、身動きが取れない。
結局そのまま聡美は夜になっても起きず、
聡美の家まで太一が彼女をおぶり、雪の介抱を得て自宅まで送り届けた。
翌日聡美は授業開始時間が迫っても、雪からの電話に出なかったという‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<集う友人たち>でした!
聡美が歌っていたのはこの歌です↓
GOD - Love and Memory [ENG SUB]
韓国語の名前の「BO!RA!」の方が語呂がいいですねw
次回は<不穏な成り行き>です。
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「な~に今更ビックリしてるのよ~~」
雪は連絡も無しで大量の食料を持って来た二人に、喜びながらも心底驚いた。
そんな二人の言い分はこうだ。
「授業が急に無くなった日、何をして過ごすのが正解でしょうか?
学生の本分を正し、勉学に励むのが正解だと思っていませんか?」
二人は買い物袋をガサッと持ち上げた。
「いいえ。腹を満たしてやるのが正解デス」
二人が買ってきたのは、焼肉の材料だった。
雪の一人暮らしの引っ越しパーティーも兼ねて、豪勢にいこうということらしい。
三人が家の前でワイワイ喋っていると、例の如くお隣りさんがドアを開けて顔を出した。
「ちょっと!今度は友達と力を合わせて騒音公害でも起こすつもり?!
あんたはあたしの人生をぶち壊す為に現れた悪魔なの?!」
そのインパクトに、思わず固まる味趣連。
まだ小言が続くかと思われたが、
隣人は太一の持っている肉に目を留めるとヨダレを垂らし‥。
世界で一番強い技は、相手と友達になることだという言葉がある。
果たして騒動は一件落着。
お隣さん含め四人は雪の部屋で焼肉を始める運びとなった。
隣人は久々に食べる肉に涙を流し喜び、太一は急速に無くなる肉に危機感を覚えて目一杯口に頬張る。
聡美は既に酔っぱらい、バッグからタバコを取り出して吸おうとした。
「ここは禁煙です!」
雪の手刀チョップが炸裂した。
タバコ嫌いの雪は部屋に匂いがつくからダメと注意したが、
それ以上に聡美がまだ喫煙していることに小言を言う。
聡美は雪に説教されたことが却って嬉しかったらしく、
雪に抱きついた。
雪の携帯が鳴って、彼女は電話に出た。
どうやら彼女の母親かららしい。
「お母さん?今友達とご飯食べてる。お肉をね、皆が買って来てくれたんだ‥」
聡美は雪と母親との何気ない会話を聞きながら、
その後姿をボンヤリと見ていた。
太一はそんな聡美を見ながら、聡美の母親についての記憶を思い出す。
両親が幼い頃に離婚して、母親の居ない聡美。
彼女の後ろ姿は、母親の帰りを待つ子供のように小さく見えた。
「幸せになるんだ‥」
小さくそう呟く聡美。
太一がその華奢な肩に、手を置こうとした時だった。
「聡美さ‥」
「大好きだ~!あたしのこと忘れんなよ~~!」
突然の大声に、太一の慰めは掻き消えた。
そして聡美はそのまま、”Love and Memory”という曲を歌い始めたのだった。
♪別れを後悔した時はああああ~♪いつでも私の元へ戻っておいでぇ~♪
「♪I say SATO! You say MI! Say SATO!」
「♪MI!」
息ピッタリである。太一は「ご近所さんに迷惑になりますから止めて下サイ」と冷静に言うも、
実は一緒に盛り上がっているのがそのご近所さんであった‥。
一人冷静な太一は、
「雪さん戻って来たらカラオケでも行きましょう」と提案するが、
そのテンションの低さを見咎めた聡美は、太一の頬を掴んで顔を引き寄せた。
「お姉さまの言うことを無視するバカモノ~!その顔をしかと拝んでやろーじゃないの!」
太一の目の前に聡美の顔がある。
聡美はニヤッと笑って太一の頬を撫でると、「男前~~じゃん?」と言って頬をペチペチと叩いた。
固まる太一に反して、
聡美はそう言ったきり酔いが回ったのかその場で寝てしまった。
お隣さんが、酔いつぶれてしまった聡美に
「置いてかないで~」とゆさゆさ起こそうとしている横で、太一は依然として固まっている。
ただ心臓だけがドクドクと脈を打ち、
まるで身体を何かに乗っ取られてしまったかのように、身動きが取れない。
結局そのまま聡美は夜になっても起きず、
聡美の家まで太一が彼女をおぶり、雪の介抱を得て自宅まで送り届けた。
翌日聡美は授業開始時間が迫っても、雪からの電話に出なかったという‥。
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<集う友人たち>でした!
聡美が歌っていたのはこの歌です↓
GOD - Love and Memory [ENG SUB]
韓国語の名前の「BO!RA!」の方が語呂がいいですねw
次回は<不穏な成り行き>です。
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