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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

路地裏のスパイ(2)

2015-11-09 01:00:00 | 雪3年4部(鍵の行方~多大なる勘違い)
「ーーーーー‥」



先輩からの着信を受けた雪は、一瞬息を飲んだ後コソコソと会話を始めた。

「先輩?」「うん。もう着きそう」



青田淳は雪の家への道を辿りながら、手土産の話を持ち出した。

「何買って行こうか?」「あ~いえ‥大丈夫ですよ」

「何言ってんの。きちんと‥」



先輩は喋りながらどんどん歩を進める。

雪の居る路地裏までもう少しー‥




「アイスクリームッ!」



堪らず雪はそう声を張った。

「ん?」



そう聞き返した淳に、雪はその理由を捲し立てる。

「私アイスが食べたいです!アイス買って来てもらえないですか?」

「アイスクリーム?今日寒いのに‥」

「あ~!先輩と話してたら急に思い出しました!ボンボン!アーモンドボンボン!

あれっ?先輩~??」
「ん?あぁ、分かったよ」



淳はそう言うと、くるりと踵を返して今来た道を戻って行った。



‥これで先輩が河村姉弟と鉢合わせするのは回避出来たであろう。

ミッション成功、である。

ふぅーーーーっ



ガックリと膝を付いて、雪は大きく息を吐いた。

なんとか終わったか‥と一人ごちると力が抜ける。



と同時に、自虐的な笑いが込み上げて来た。雪はハハハ‥と笑いながら一人呟く。

「ハハ‥一体何やってんの私‥?コソコソして‥」



起きて五分で家を出て、気がつけば路地裏のスパイ‥。

しかもどうやら、ここでゆっくりしてる暇はなさそうである。

そうだ、私も先輩と同じ方向に行かなきゃ‥繁華街の方へ‥






タタタ、と小走りで先輩の後を追う雪。

狭い路地を抜けて、大通りへと足を踏み入れた時だった。




ヒィィィッ!!



まるで待ち構えて居たかのように、そこに河村亮が佇んでいた。

雪はたじろぎながら、言葉にならない声を漏らす。

「あっ‥あ‥!」



二人の間に落ちる沈黙。



雪は上を見上げながら、ここがどこだったかを思い出した。

あ、そうじゃん。ここ叔父さんの‥



気づかぬ内に、亮が向かうであろう叔父のカフェの前に出てしまったらしい。

キョロキョロと辺りを見回す雪に、亮は訝しげな視線を送る。



亮は何も言わない。

雪はぐっと口元を結んで生唾を飲み込んだ。



「こんにちは‥」



首元を掻きながら、雪はとりあえず挨拶を口にするも、

亮はやはり何も言わずに雪のことを凝視している。



「‥‥‥‥」



雪は軽く会釈した後、亮から背を向けてコソコソと逃げ去った。

「それじゃ‥」



小さくなる彼女の後ろ姿。



亮は一言も発さぬまま、ただその背中をじっと見つめていた‥。











小走りしながら、亮から遠ざかって行く雪。

その心の中は、モヤモヤと微かに煙っている。



チラ、と叔父のカフェの方を振り返ってみた。

河村氏はあそこでこれから、ピアノコンクールのための練習をするんだろうか‥。

 

すごく良いことだ。

指の調子も良さそうだと、叔父も言っていた。

けれどどうして今自分は、こんなに彼のことを気にしているんだろう‥。



そう思いながら、前を向いた時だった。

目の前に、再び先輩の姿がある。

「!!」



繁華街の方向へアイスクリームを買いに行ったはずの彼が、未だ路地裏に居た。

彼は雪には気が付かずに、そのまま真っ直ぐ進んで行く。



心の中で、思わず叫んでしまった。

あーーーもうっ!



路地裏のスパイは、未だ任務を解けずに再び影へと身を潜める‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<路地裏のスパイ(2)>でした。

雪ちゃんが先輩にリクエストしたのは、31の「アーモンドボンボン」



ミルクアイスにチョココーティングされたアーモンド。

美味しそうですね~~。寒くても食べたい‥!


次回は<逃げまわる兎(1)>です。

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路地裏のスパイ(1)

2015-11-07 01:00:00 | 雪3年4部(鍵の行方~多大なる勘違い)
じぃーーーーーーーーーっ



雪が凝視しているその先には、ターゲット・河村亮の背中があった。

彼は後ろで身を潜める雪には気づかずに、一人目的の場所へと歩いて行く。



少し広い通りに出たので、雪は周りを見回してから行く道を決めた。

横の路地に入ろ



路地裏へと入り、亮と同じ方向を目指す雪。

 

聞こえる足音に耳を澄まし、

キョロキョロと辺りを窺いながらターゲットの後をつけた。



目立たないように、手で顔の側面を覆いながら、

チラチラとその背中を目で追う。



亮は尾行に気づいていない。

少し俯き気味に、ただ歩いて行くだけだ。



「‥‥‥‥」



雪は室外機の影に隠れながら、ふぅと軽く息を吐いた。

変な状況だが、なんだか少し愉快な気がする。

なんか007みたいじゃない?



そう、私は路地裏のスパイ。

一人クスクスと笑いながら、亮の後頭部を見ていた時だった。




バッ!!





「‥‥‥」



恐ろしい形相で、亮が突然振り返った。

咄嗟に雪は室外機の後ろに隠れ、一人息を殺している。

亮はその気配を感じながらも、決定的な証拠は掴めず眉をひそめた。

「‥‥‥‥」



暫く辺りを窺っていたが、

やがて胡散臭そうな表情を浮かべながら、そのままゆっくりと前を向く。



そして亮は再び歩き始めた。

それと同時に雪の頭からキャップが外れ、地面に落ちる。



雪はその場にへたり込みながら、ブルブルと震える手でキャップを掴んだ。

心臓が口から飛び出そうな程にドクンドクンと鳴っている。



ふぅーーーーっ‥



雪はキャップで顔を覆いながら、大きく息を吐いた。

今の自分の状況を省みて一人呟く。

「てか私何やってんだろ‥」



飛び起きて5分で家を出て、スパイごっこして隠れて‥。

現状を憂いていると、聞き覚えのある声が聞こえて来た。







道の先から、見覚えのある長身の女性が歩いて来るのが見える。

‥河村静香である。

「だから~あの時は悪かったってばぁ。知ってんでしょ!あたしの性格~」



静香は風呂へ行く様な格好で、誰かと電話中だ。

「え?お金はもう無いってば~。え~?それどういうことぉ~?」



雪は両手で顔を覆いながら、絶望的な気分で静香の声を聞いていた。

そうですか‥この人も居るんですか‥



ホホホホ、と高らかに笑う静香を睨みながら、雪は予想出来る最悪の結末について思いを巡らせる。

三人がぶつかれば宇宙が爆発‥!  「あら?あいつ切りやがったわね」



雪の脳内で繰り広げられる地球滅亡説。

そんなことなど知る由もない静香は、いつの間にか相手から切られていた電話を睨みながら、

また別の相手へと電話を掛け始めた。

「あ、会長~お元気ですか~?

え?合格するまで電話してくるなって?はーい、それじゃそれまでお元気で‥」




しかしそれも上手くは行かなかったらしい。

静香は通話を終えると、携帯を睨んで舌打ちをする。



ハンティング失敗。静香は面白くなさそうに独りごちる。

「クソ、汚えんだよマジ‥。あの大学生、一度引っかけてみっかぁ」



「あたしのポリシー的に、大学生にはノータッチなんだけど‥。

広隆にしても、もうちょっと金持ちっぽいと思ってたんだけどなー」




聞けば聞くほど、胸がムカムカする内容だ。

静香の声が遠ざかったところで、雪は顔に青筋を立てて呟いた。

「前からあの人‥一体何なのマジで!あまりにも酷いんじゃ‥」



そう言って静香の歩いて行った方向とは反対方向を向いた時だった。

雪は思わず目を見開く。







スタイル抜群の長身の彼が、こちらに向かって歩いて来るところだった。

手に持った携帯に視線を落としながら。



サッ、と雪の顔が青くなった。

「え?」



まるで目の前の光景がスローモーションの様に見える。

彼は握っていた携帯電話を、ゆっくりと耳元に持って行く。



次に起こるであろう展開は‥。

そう思い至る前に、着信音が鳴り始めた。



広い通りに淳、そして路地裏に雪、その先に静香。

その危機的状態で、着信音が鳴り響く。

パン♪パン♪パン♪パン♪パン♪パン♪




バッ!!



雪は咄嗟に通話ボタンを押した。

突然音が止み、静香が「?」を浮かべて振り返る。



青田淳も思わず目を見開いた。

どこかから聞こえていた着信音と、雪が電話に出るのがほぼ同時だったから。



しん‥



辺りは静まり返っていた。

着信音が鳴り響いた携帯を持ってる主の姿は見えない‥。

何?



静香はガムをクチャクチャと噛みながら暫く周りを見回していたが、

ま、いっか



やがてくるりと背を向けて歩き出した。

路地裏のスパイの姿を、誰一人目にすることの無いまま‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<路地裏のスパイ(1)>でした。

河村姉弟の野生の勘(笑)

雪ちゃんはスパイには向いてないでしょうね‥。すぐにバレそうです^^;


次回<路地裏のスパイ(2)>へ続きます。


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大遅刻

2015-11-05 01:00:00 | 雪3年4部(鍵の行方~多大なる勘違い)
「うわああああっ!!」



午後1時21分、赤山家の一室で叫び声がこだました。

先程までの微睡みなど微塵も吹っ飛んで、雪は携帯片手にブルブルと震えている。

「うわああああっ!!うわぁっ?!」



先輩の携帯が留守電になってることに焦り、その画面を見ている最中に電話が掛かって来たことにビビり‥。

パニック状態の雪は掛かって来た電話を取ると、先輩に向かって思い切り動揺する。

「すすすすすすすいません先輩!どーしてアラーム聞こえなかったんだろ?!

マジやらかしちゃったよ!!ど、どうしよ‥先輩今ドコ‥?!!」




ギャアアと叫びながら通話する雪とは対照的に、電話の向こうの先輩は冷静だ。

「今雪ちゃんの家の近くまで来たとこ。あと10分ほどで到着すると思う」



突然そう言われて、雪の叫びがピタと止まる。

「へ?なんですか?10分?



「‥?!?!」



‥このままだと10分後に、この荒れ果てた部屋に先輩が‥?

「先輩、ちょっと待ってーーーッ!!」



「い、家じゃなくて店の方に!店の方にお願いしますっ!!店の方にっ!!」



雪はバタンバタンと音を立てて用意を始めた。

猶予は僅か10分程‥。




「はっ‥はっ‥」



身支度を5分で整えて、雪は家を飛び出した。

はぁはぁと息を切らしながら、店の方へとダッシュで向かう。

「み‥店に来る‥」



一体全体どうしてこんなことになったのか‥。

雪は頭を抱えて現状を嘆いた。

「あーもうマジありえない!最近ホントたるんでるって!」



待ち合わせ時間を二時間近くオーバーする大失態。

けれどそれを受けての先輩の行動に、雪は少し鳥肌だ。

しかしすぐに家に来るとは‥ゾゾゾ



隙のない彼の幽霊さ加減には未だに慣れない‥。

!!



すると道の先に、見知った後ろ姿が歩いているのが目に入った。

「あれ?河村氏‥

 

この先には、「麺屋赤山」があるのだが‥。

何だろ?今日出勤日だったっけ?



そう思いながら彼を見つめていると、亮がピタと立ち止まった。

その場からどこかをじっと見つめている。

 

視線の先には、麺屋赤山の中で忙しそうに働く雪の両親と蓮の姿があった。

もうすっかりエプロン姿が馴染んだ社長や蓮が、こちらに気づくことは無い。






暫し立ち止まっていた亮が、ふと顔を上げた。

店に向かって、歩き出そうとする素振りも。



けれど足を一歩踏み出す前に、再び彼は俯いた。

そしてそのまま、店へと続く道を外れる。






雪は亮の一連の動きを見ながら、彼が一体どこへ行こうとしているのかを推測した。

頭の中に、昨日蓮が言っていた言葉が蘇る。

「ピアノに集中してるかと思って、敢えて連絡せんかった」



そうだった。

河村氏は今ピアノコンクールの準備に専念してるんだから、店で働きはしないはず‥。






雪は彼が踏み出した方向に視線をやり、合点がいった。

あ‥あっちは叔父さんのカフェがあるんだっけ。やっぱりピアノ弾きに行くのかな?



それならこれから河村氏は、繁華街の方面に行くことに‥。

はっ!



すると雪の頭の上で、雷級の衝撃が走った。

てかあっちは先輩が来る方向じゃないの?!また二人ぶつかるってことじゃん?!



まさしく犬猿の仲のあの二人が、再び睨み合う場面が想像出来る‥。

「こないだつかなかった決着、今つけっかぁ?!」「喜んで」



それはまさしく最悪の事態‥。

「‥‥‥‥」



雪は頭を抱えた後、決意した。

ピンクのスニーカーがすぐさま一歩踏み出す。

ダメだ!その前に先輩を阻止する!



そして雪はひっそりと身を潜めながら、亮の後をつけて行ったのだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<大遅刻>でした。

亮さんの後ろ姿に哀愁が‥。



切ない‥。


しかし雪ちゃん身支度5分でよく出られましたね!

↓この中でも行きていけるかも‥雪ちゃん‥




次回は<路地裏のスパイ(1)>です。

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それぞれの役割

2015-11-03 01:00:00 | 雪3年4部(鍵の行方~多大なる勘違い)
ゴトンゴトンと地下鉄が揺れる。

雪は今、帰宅途中の電車の中。



膝の上にはノートが開かれている。

期末試験はもう目の前だ。



しかし雪はそれに目を落とすことはなく、遠くを見るような目で空を見つめていた。

地下鉄の揺れに身を任せながら。



頭の中で、細い細い糸が徐々に張り巡らされる気持ちがした。

糸は数々のファクターを経由して行き、彼女の意図へと繋がって行く。







そんな雪の意識を引き戻したのは、一件の着信だった。

ポケットからそれを取り出してみる。



着信画面に、”先輩”の文字が表示されていた。

雪は数秒間、その画面を見ながら固まる。




ん?

先輩から着信‥?

‥‥‥‥。


あっ!そうだった!先輩!!



雪は思わず目が飛び出るほど驚いた。(隣のおじさんも思わずビックリした)

昼間授業中に先輩から電話が掛かってきて、それきりになっていたのだった。

 





雪は慌てて通話ボタンを押すと、ヒソヒソ声で先輩と会話する。

「はい!はい!先輩、明日十二時に行きます。前売り買ってくれたんですか?

うう‥大学で思い出す余裕なくて‥ごめんなさい先輩、はい、はい!では明日!はい~!」




雪は一息でそう話し終えると、電話を切って息を吐いた。

周りの人は引き気味で雪を見ている‥。(ビックリさせられた隣のおじさんは舌打ちだ‥)









小一時間後、ようやく帰宅した。

しかし家の中は静かだ。リビングにも誰もいない。



いつもなら皆帰宅している時間なのに‥。

「?」



不思議に思った雪は、母親に電話してみた。

「もしもしお母さん?どうして家に誰もいないの?」

「それが‥今日はどこかでお祭りでもあったのか、

こんな時間までお客さんでいっぱいなのよ。閉店の時間一時間延ばすことにしたから、先に寝てなさい!」




母はそれだけ言うと、すぐに電話を切ってしまった。

忙しそうに話す母親の後ろから聞こえた、ガヤガヤとした喧騒ー‥。








ネオンの明かりが鈍く反射した空の元、雪は再び外へ出た。

街は未だ多くの人で賑わっている。

「ねーちゃん!」



そして店に入るやいなや、蓮が驚いた顔をした。

「どーして来たの?!」「忙しそうだから手伝いにだよ。河村氏は?」

「今日は出勤日じゃないから‥」



蓮は、亮を呼びつけはしなかったらしい。

「ピアノに集中してるかと思って、敢えて連絡せんかった」



「急にこんななって、呼びたかったけどさ‥代わりに友達一人呼んじったさ



雪はエプロンを身に着けながら、店の様子を眺めていた。

忙しそうに働く両親。



すると後ろから、蓮がこう言う。

「ま、ねーちゃんは帰んなよ!テスト近いんでしょ?勉強しな、勉強。べん!きょ!」



数日前から蓮はずっとこんな調子だ。

姉ちゃんは勉強に集中しなよと、未だ言われ続けている‥。



雪は蓮に背を向け、店内へと踏み出した。

「私、やるよ。自分の仕事だからさ」







姉が今言った言葉。

それが、蓮にはどこか腑に落ちなかった。

「何だよ‥誰が何だって‥?」



蓮は首を捻りながら、忙しく働く姉の姿を見ていた。

が、すぐにお客さんに呼ばれて行き、その疑問は宙ぶらりんのままだ。



夜更けまで、店はガヤガヤと騒がしかった。

蓮の疑問は解決しないまま、次第に暗くなる空に溶けて行く‥。









翌日。青い空に鳥の声が響く。

雪はただ今、爆睡中だ。



口の端から涎を垂らしながら、気持ちよく眠っている。

「うう‥ん」



すると不意に、ベッドの上の携帯が震えた。

雪は「うう‥」と小さく唸りながら、布団の中でモゾモゾする。



ゆっくりと手を伸ばし画面に触れると、パッと光ったそこに数字が見えた。

01:20



‥‥‥。

雪は、再び瞼を閉じた。

なんだ、メールが来てるわけじゃなし‥。



でも何か見えたな。

あの数字なんだろう。

01:20‥。



01:20‥。



01:20‥?



嫌な予感がして、薄目を開けてみた。

そこに表示されている数字が何の意味を持つのか、ようやく理解する。

01:21。

「え‥」



ただ今の時刻、午後一時二十一分。

「え‥?」



「え‥?」



これは白昼夢だろうか?

自分の声が、白い天井に溶けて行く‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<それぞれの役割>でした。

興味深い回ですね~。

雪ちゃんがどんなに忙しくても店の仕事を手伝うのは、それが自分の役割だから。

その考えが、蓮君にはどうにも腑に落ちないようです。

姉のことや店のこと、両親や亮のことには気が回るようになった蓮ですが、

まだ自分自身のことには向き合ってないからなんでしょうね。

マジメな姉の姿を見て、蓮も自分の役割に気づいてもらいたいですね^^


そして雪ちゃん‥大大大遅刻‥

文字通り次回は<大遅刻>です。


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風向き

2015-11-01 01:00:00 | 雪3年4部(鍵の行方~多大なる勘違い)
プルム館にてランチ中、柳楓がこう言った。

「ぶっちゃけ俺、佐藤のこと見直したわ!」



突然の褒め言葉に、佐藤広隆はゴホゴホと咽る。

「今まではプライドばっか高くて鼻持ちならねーヤツだと思ってたんだけどなー」



柳はクククと笑いながらも、尚も佐藤を褒めた。周りも柳と同意見らしい。

「秘めたる闘志!意外にも中身はイケメンなんだな」「だよな。俺も驚いた」



「褒めてんのかけなしてんのか‥」と呟く佐藤。

彼の目の前で、紅一点の雪が皆の意見を肯定する。

「そうですよー。佐藤先輩はイケメンです」



かぁぁ‥



みるみるうちに、佐藤の顔が赤くなった。

なんという微笑ましい純情さ‥。

う‥もうヤメテ



佐藤は真っ赤になって俯く。

すると”イケメン”に反応したのか、柳が急に格好つけ出した。

「問題になってる過去問、俺が個人的に淳に頼んで一度見せてもらおうか?

貰えると思うんだけどね‥。俺も一度くらいは脚光浴びたいぜ‥




そんな柳の突然のイケメンキャラからの‥

「貰ったら見せてくれよ」

「金取んぞ」



バッサリ守銭奴。

柳のイケメンキャラ定着せず‥

すると佐藤はウンザリとした顔で、今学科を賑わせている過去問について言及した。

「もういいよ。そんなの無くたって自分でなんとかすればいいんだ」



「手に入れられなきゃ勉強を頑張りゃいいし、

貰いたければ人脈でも何でも駆使して、貰えるよう努力すればいい。

けど健太先輩と糸井は変に皆を煽って、ストレスを増加させてるだけだ」




佐藤は今の経営学科の皆の状況をそう解釈していた。

同期の中には「それでも過去問を持ってればそれに越したことはないけど‥」と返す人間も居たが、

柳は佐藤の意見に、サムズアップで同意する。

「っかー!これぞ佐藤!そのプライドの高さも今じゃイケて見えるぜ~~惚れちゃう

 

そう言って肩を組む柳に、佐藤は「うおっ」と言って仰け反った。

雪は昼食を食べながら、そんな二人のことを見つめている。

打倒・柳瀬健太! 打倒って何するんだよ?そんなことより就活を頑張れ、就活を!



今までどちらかと言えば不仲だった佐藤と柳。

しかし知らぬ間に風向きは変わり、今二人はこうして肩を組んでいる‥。





「あら、雪ちゃん!」



すると不意に、後方から声を掛けられた。

振り向くと、そこには品川さんをはじめとした助手さん達の姿がある。

「こっちこっち」



品川さん達は雪の座るテーブルの方へと歩いて来た。

「ここでランチしてるの?」「こんにちは」

「久しぶり~」



雪と彼女らは、夏休みに共に仕事をしたメンバーだが、

柳や佐藤らは助手達に対して、少々苦手意識があるらしい。

「助手さん達か‥ちょっと気まじぃな」「プルム館に結構来るみたいだよ」

「一緒に食べましょ~」「はい、どうぞ!」



しかし柳は立場上NOとは言えず、彼らは共にテーブルを囲むことになった。




「あー、夏休みに一緒に仕事してたから親しくなったんすね」

「そうそう」



雪と品川さん達が親しい理由を聞いて、柳は納得した。

しかしこの二人は、並ぶとなぜか同族拒否感‥。

「そうだ柳君、あなたロッカーの鍵返却してよ。使用料払ってないじゃない!」

「うわ~‥とりあえず見逃して下さいよ~すぐに払いますから!」



学生と助手との関係は、やはり学生同士とは違って少し距離がある。

しかし夏休み、同じ空間で同じ時を過ごした雪と彼女らは、まるで友達同士のように会話が弾む。

「あーなんだかますます寒くなったわよね。遠藤君から貰ったビタミン剤は飲んでる?」

「はい、もうほとんどなくなりましたけど」「えー?何の話ー?」



そして昼食休憩が終わる時間まで、彼らは暫しお喋りに興じた。

彼らの話し声が、ガヤガヤと喧騒に溶けて行く‥。











同じ頃。

都内某スタジオにて、撮影はまだ続けられていた。

「残りあと一セット!」「OK」



テキパキと仕事をこなす萌菜。

すると視線の端に、彼女の姿が映った。



ビクッ!



不意に萌菜と目が合った聡美の身体が、思わずビクッと強張った。

聡美は青い顔をしながら、分かりやすく目を逸らす。



瞼の裏に、先ほど目にした光景が焼き付いていた。

萌菜の耳で光っていたのは、自分が欲しがっていたあのピアスー‥。







嫌な予感が拭えない。

ずっとソワソワと落ち着かない。

そんな聡美の様子を見て、萌菜は「へぇ‥」と声を漏らした。



萌菜は聡美の方へと近付くと、彼女に声を掛けた。ポンポンと軽く肩を叩きながら。

「見てると面白いでしょ?」「はい?えぇ‥」「なーによかしこまっちゃって」



すると萌菜は「あっ!」と何かに気づき、小走りで駆けて行く。

「太一!ちょっと待った!」



「後ろ、しわになっちゃってるじゃん」

「スンマセン」



萌菜が駆けて行った先には、太一の姿があった。

しかし‥気のせいだろうか。

二人の距離が、前より近くなっている気がするのは。



そして聡美は、何よりも先程萌菜が口にした彼の呼び名が気になっていた。

「た‥”太一”‥?」



まるで彼氏を呼ぶように、自然に呼び捨てた。

聡美は二人から視線を逸らせない。



萌菜がコソコソと耳元で、太一に向かって何かを話すと、

二人は目を見合わせてクスクスと笑った。



そう、まるで、恋人同士のように‥。





スポットライトに当たる二人と、それを影から見ている自分。

心の声が、延々と漏れ続ける。

「あ‥あああ‥ああ‥」



風向きはいつから変わっていたのだろうか?

彼の心を開ける鍵が、風に吹かれて遠ざかって行く‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<風向き>でした。

遠藤さんと佐藤先輩‥同族嫌悪なんですねw 確かに二人だけじゃ全然話が弾まなさそう‥笑

そして遠藤さんからビタミン剤貰ったのとか‥懐かしすぎる。



物語の中では三、四ヶ月前でしょうが、読者的には三年前です‥ゴーン‥。


次回は<それぞれの役割>です。


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