バスを降りてすぐの手信号を押した。
「お待ちください」との指示の後、信号はゆっく
りと完全に青になった。
別に急いでいなかったので、孫と私は一息おいて
から信号を渡ろうとした。
だが、その瞬間、私の右手は孫を激しく手前に
引っ張っていた。孫は「ばあば、何するの?」
という表情をしたが、と、同時に全ての状況を
理解してくれた。
そして二人で胸をなでおろした。
夜だったので、信号が目に入らなかったのか、
誰も人がいないと思って信号を無視したのか
とにかくライトを上向きにした乗用車が猛スピー
ドでやってきて停止線から5メートル先の横断歩道
の真ん中で急停車した。
0.1秒の差で私達二人は跳ね飛ばされるところ
だった。
その情景は想像に難くない。
私は泡を吹いて倒れ、少し離れたところに孫が倒
れていただろう。救急車が呼ばれ家には誰もいないのだから、どんな生活が待っていただろう!
「わぁー怖かった! 何がいつ起こるかわからな
い。救われた命大切にしなきゃーね」と孫と
話しあった。
それ以来、私はバッグの中に自分の名前、息子、
娘の連絡先などをはっきり書いた紙をいれている。