今日のことあれこれと・・・

記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

「金属バット殺人事件」の有った日

2006-11-29 | 歴史
1980年の今日(11月29日 )は、 「金属バット殺人事件」の有った日。
1980(昭和55)年11月29日、神奈川県川崎市のベッドタウンに住む20歳の予備校生の男性が、両親を金属バットで殴り殺した。
予備校生(事件当時)は、16歳の時、都内から事件が発生した住宅地へ引っ越した。野球が得意で、母親からは手間のかからない子供といわれた。父親は上場企業の支社長で、東大卒ということもあって厳格な性格であった。兄も事件の前年に早稲田大学を卒業後に上場企業に入社している。高校入学時から成績が落ち始め、早稲田大学などの受験に失敗、予備校へ通うが成績は伸びなかった。このため二浪していて、精神的負担が増大し、レコードを買うために父親のキャッシュカードを無断で使用したり、飲酒をするようになる。両親の銀婚式が取り行われた事件前夜にこの行為が両親に見つかり、父親に叱責、足蹴にされる。そして、父に「明日中に追い出してやる」と言われ、自分の居場所を失ったと感じた予備校生は数時間後の翌朝未明、酒を大量に飲んだ上で両親を金属バットで撲殺した。予備校生は、犯行後、強盗の仕業にみせかけるために金属バットや血の付いた衣服を隠すなどの偽装工作を行った後、朝が明けてから警察に通報、「強盗による殺害」と証言した。しかし、犯行の翌日、親類からの追求によって、犯行を肯定して、親類から警察に通報され、逮捕された。逮捕後は、犯行を素直に認め、自ら詳細を供述した。・・・と言うものであった。原因は、受験戦争、父や兄への劣等感(学歴コンプレックス)、家庭内でのコミュニケーション不足が原因とされ、マスコミ各紙も、この事件は加熱した受験戦争、偏差値教育を象徴する事件として、大きく報道した。
思えば同じ1980(昭和55)年の10月、三重県の尾鷲中学で、多数の生徒が教師たちに暴力をふるって負傷させ、学校の要請で警察官が出動、24人の生徒が検挙されるという事件が発生し、社会的に衝撃を与えた。1979年から国公立大学共通一次試験がスタートし、これを契機に一次試験の広域データーを握る大手予備校への進学指導依存が強まり、大学の序列化が進んだ。こうして、受験戦争が一層激化するなかで、戦後教育の歪みが集中的に現れたのが当時の公立中学校であった。この頃から教師への暴力や校舎破壊などの校内暴力が荒れ狂った。
前に、私のブログ今日(11月20日)は、「世界のこどもの日(Universal Children's Day)」の中でも簡単に触れたが、戦後の「第一次少年犯罪多発期」(「貧しさ」ゆえの少年犯罪多発期)から、第二次少年犯罪多発期」(共稼ぎ、核家族化による「寂しさ」ゆえの少年犯罪多発期)経て、第三次少年犯罪多発期」(「落ちこぼれ」ゆえの少年犯罪多発期)を迎えたのが、1983(昭和58)年である。この年は戦後の中で、最も学校での非行・犯罪が多発した年だった。校内でのいじめ、暴力行為、器物損壊など、全国各地で学校が荒れた。日本は1970年代中頃から、高度経済成長も軌道に乗り、「一億総中流」といわれる時代を迎えた。この経済的な安定の中で多くの親たちが、「教育ママ」「教育パパ」と化し、又、その多くの親たちが我が子を少しでもいい学校に入れ、少しでもいい会社に就職をと血眼になった。そして、「受験戦争」を迎えた。本来、子どもたちは無限の多様な可能性を持った存在であるはずだが・・・。この頃から、人間をはかる物差しが、学力や知識量に偏重してしまった。その結果、学業の成績の悪い子は「落ちこぼれ」にさせられ、その子どもたちが、学校内を中心に非行・犯罪を繰り広げたのがこの時期であった。そのような中、」この頃、武田鉄也主演の学園ドラマ『3年B組金八先生」が10代の子どもを中心に子を持つ親まで、幅広い層の支持を集めていたのを覚えておられるだろう。
「金属バット殺人事件」の話から、今年(2006年)、奈良県田原本町の医師(47)方で6月に母子3人が死亡(医師の母親と小学2年の弟、保育園児の妹が死亡)した放火殺人事件を思い起こされる人もいるだろう。殺人と現住建造物等放火容疑で逮捕されたのは、16歳の長男(当時高1)であった。
容疑者の少年は、小学校時代から成績は優秀で、スポーツも得意、性格も明るい人気者であった。小学校の卒業文集では、医師である父親にあこがれ、自分も大きくなったら医者になりたいと語っている。小学校卒業後、関西でも有数の進学校である奈良市の中高一貫の進学校に入学した。しかし入学後は、学校内では中程度の成績にとどまり、教育熱心な父親からたびたびしかられていたという。父親は夜遅くまで「集中勉強室」で少年の勉強を指導しており、時に体罰を与えることもあったそうだ。警察の調べによれば、少年は、「成績が下がると父親はすぐ殴ってくる」「父親の暴力が許せなかった」と語っている。少年は両親と同じ医師になることを過度に期待され、プレッシャーを感じ、家庭内で孤立感を強めた結果、異常な破壊衝動に至ったと考えられている。
いずれにしても、父親の暴力が原因となっているように見えるが、実際には、もっと深い家庭内の要因があるだろう。
これらの事件は、いずれもその一因として、受験戦争の問題があるが、最近は、どうしてと思われるような「親殺しや子殺し事件」が頻繁にマスコミによって報道されている。この「親による子殺し事件」も恐らく基本的には、「子どもの親殺し事件」と共通したものなのだろう。
このような悲惨な事件が異常に増えている気がするのはテレビなどが発達し、マスコミの情報合戦、スクープなどの影響で、 犯罪事件をより身近に見られ、また感じ取る事が出来る様になったためと思われるが、増えてきつつあるのは事実だろう。
その最大の要因は、教育、道徳や一般常識の欠如、自分本位の考え、親子間のコミュニケーション、住民の横のつながり、我慢ができない、政治と社会、などが上げられ、原因は多様で、一言でどうのこうのと言える簡単な問題ではないが、共通している事は、目の前にある快楽に惑わされ、何でも手に入る時代になり、それが満足できないと我慢できない。そして、金さえ出せば何でも簡単に手に入る事から、物事を軽視してしまうことにありそうだ。
以下参考の「東京の児童相談所における非行相談と児童自立支援施設の現状。― 子どもの健全育成と立ち直り支援の取組 ―」の中の「はじめ」にも以下のように書かれている。
”フランスの思想家J・J・ルソーは、その著書「エミール」の中で、「子どもを不幸にする一番確実な方法は、いつでも何でも手に入れられるようにしてやることだ。」と記述しています。
 戦後の社会的混乱と経済的貧困の中から、日本は「奇跡の経済復興」を成し遂げ、豊かな社会を実現しました。大量消費社会と高度情報社会の中で、子どもたちの周りには、様々な「もの」と「情報」が氾濫し、お金さえ出せば欲しいものは何でもすぐに手に入るようになりました。しかし、こうした世の中で子どもたちは本当に幸せになったのでしょうか。
 近年、小学生や中学生による特異な事件が世間を騒がせておりますが、その背景には、子どもたちの規範意識の希薄化や家庭、学校、地域社会における教育力の低下、子どもを取り巻く環境の悪化などの要因が複雑に絡み合っていると考えられています。」・・・”と。私もその通りだと思っている。
1960年代から始まった高度経済成長期が終わり、緩やかだが、確実に発展する経済成長期を向かえ、豊かになった日本では生活様式も大きく変化し、大家族から核家族へ、地域との接触もなくなり、個別化、個室化を求める生き方の時代に入っていった。そして、他人と係わると必要以上にストレスを感じ、自分と同年齢、同じ趣味、同じ考え方の人としか、最小限度の人との係わりをもてない人が増えた。そして、今では、「隣の人は何をする人?」から「互いに顔を合わせない配慮」をするまでに変わってきている。そして、、家族の個食化も進み、同じ家に住みながらまるで擬似家族のようなスタイルまでもが生み出されていると言っていいだろう。そのような中で、いくら困ったことがあっても話し合える相手も世話を焼いてくれる人もいなくなっており、我慢の出来ない子どもやそんな子どもの延長線上の大人が、すぐに、プッツンと切れて、考えもできない犯罪を犯してしまうのである。
戦後の誤った自由の考え方と無責任主義、・・・これを治そうと教育基本法を改正しようとしているが、戦後70年も誤った事をしてきたものは、これから70年はかけないと元には戻らないだろう。もう、私の人生も先は長くないが、孫や子どもにだけは殺されたくないね~。
(画像は、Amazon.co.jp: 「金属バット殺人事件―戦後ニッポンを読む」佐瀬 稔 :著)
参考:
神奈川金属バット両親殺害事件 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E5%A5%88%E5%B7%9D%E9%87%91%E5%B1%9E%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%88%E4%B8%A1%E8%A6%AA%E6%AE%BA%E5%AE%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6
岡山金属バット母親殺害事件 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A1%E5%B1%B1%E9%87%91%E5%B1%9E%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%88%E6%AF%8D%E8%A6%AA%E6%AE%BA%E5%AE%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6
参議院会議録情報 第151回国会 文教科学委員会 第16号
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/151/0061/15106280061016c.html
犯罪心理学:心の闇と光
http://www.n-seiryo.ac.jp/~usui/news/hannzai.html
奈良・田原本町の放火殺人:中等少年院送致を決定 家裁、未必の殺意を認定
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20061026dde001040019000c.html
東京の児童相談所における非行相談と児童自立支援施設の現状
― 子どもの健全育成と立ち直り支援の取組 ―平成17年3月・東京都福祉保健局
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/syoushi/hikou/0/index.html
Category:平成時代の事件 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/Category:%E5%B9%B3%E6%88%90%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E4%BA%8B%E4%BB%B6
今日(11月20日)は、「世界のこどもの日(Universal Children's Day)」
http://blog.goo.ne.jp/yousan02/e/9d17c19e74171090871f3379de605cde
金属バット殺人事件への解釈--倫理学的な問題としての少年犯罪
http://www.ethics.bun.kyoto-u.ac.jp/kato/juvenile.html



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2 コメント

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時には貧乏も (Linda)
2006-11-29 10:42:56
よーさん、お早うさんです。
娘達は自分の部屋を与えませんでしたし、塾にもやりませんでした。学校から帰ったら僕の横で宿題をしていました。高校も能力に会った公立高校でクラブ活動(水泳部)を一杯楽しんだようです。勉強するのは好きじゃないと言いますので大学にもいかず就職しました。今は2人ともエエお母ちゃんになっています。
親父が貧乏で塾や個人の部屋を与える余裕がなかったこともエエことがあるなあと実感しています。
個室 (よーさん)
2006-11-30 09:24:40
Lindaさん、それは良かったと思いますよ。近年、家は洋風化し、プライバシーがどうのこうのと言って、小さな子どもにまで個室を与えるのはどうかと思います。我が家も、残念ながら、個室を与えてしまい、部屋の内側から鍵をかけて何をしていたのか・・・?
後悔しています。

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