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「社会的地位」の落とし穴

2019年09月10日 | ビジネス横丁こぼれ話
人は「社会的地位」で人物を計ろうとする。社会的地位が無い人は地位のある人物の知己を得てのし上がる。これを悪用したのがジェフリー・エプスタイン。今年7月二度目の逮捕で過去の罪状暴露が期待されたが突然Jail内で自殺した。有名下着ブランドに入り込み巨万の富を得て社交界に地位を築き、その陰で長年未成年少女を食いものにしてきた男である。

舞台は有名ブランドのビクトリア・シークレット(以下VS)。 金融業界で仕事をしていたエプスタインは1986年にVS会長のレスリー・ウェクスナーに取り入り、経営コンサルタントとして会社の中枢に入り込み、会長の厚い信任のもと、1991年にはほぼ全権を任される。1993年に起きた全米史上最大のTower Financial Corpを舞台とした出資金詐欺事件にも関与を疑われたが何故か司法をすり抜けている。1996年にはVS社内で性的嫌がらせ事件を起こし、VS幹部達は会長にエプスタインへのレッドカードを上申したが、会長は一笑に付した。この隠蔽された事件がその後の一連の性的事件の始まりのようである。

最初の逮捕は2005年。フロリダの社交界で現大統領のトランプ等と派手な交流を続ける一方、VSとの関係を悪用し、”モデルスカウト”の触れ込みで未成年少女達を毒牙にかけ、更にセレブ達に性的斡旋をしていた。2006年、フロリダ司法当局は5つ以上の罪状で起訴したが、不思議なことに2008年の結審時には突然罪状2つで軽い刑となった。時のフロリダ検察官アレックス・アコスタ主導のもと、罪状2つを認めさせ残りはチャラにしてしまった。今年7月二度目の逮捕でトランプ政権の労働長官であったアコスタは、当時の疑わしい処理を掘り起こされ、あえなく辞任に追い込まれている。後にアコスタは当時ワシントン方面から”エプスタインは大事な人物だから上手く扱え”との圧力が有った事を認めている。

2011年、NY司法当局は周囲の反対を押し切ってエプスタインを生涯ついて回るSex Offenderとして登録したところまではいいのだが、Sex Offenderに課せられる様々な制約の違反を野放しにしていた実態が明らかになり、見えざる手の闇の深さを感じる。そして、今年の7月二度目の逮捕で、家宅捜索したところ、新たにオーストリア国籍の偽造パスポートが発見され、1980年代から偽造パスポートを使って出入りしていた事が分った。エプスタインの実像は、巧みな話術で相手を騙す稀代の詐欺師にしてSex Monsterなのである。

VSのウェクスナーが漸くエプスタインと袂を分かったのは2008年、フロリダの判決が出る頃である。1996年最初の事件でウェクスナーが何らかのアクションを取っていればこの様な事件にはならなかったかも知れない。「社会的地位」のなんと危ういことか。

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