よし坊のあっちこっち

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アメリカの鏡、日本ーヘレン・ミアーズのこと

2007年05月22日 | いろいろ
ここに、「アメリカの鏡、日本」(原題名:Mirror for Americans, JAPAN)という訳本がある。

この本を求めたキッカケは、こうだ。約10年前、アメリカに来て間もない頃、年末の地域の大学の同窓会に出た折、時節柄[ニイタカヤマノボレ]の真珠湾攻撃が話題となった。毎年この時期、即ち真珠湾攻撃の日が近づくと、テレビを含むメディアが「あの日を忘れるな」と訴え、それに昂揚する一部のアメリカ人は内心で「俺達を闇討ちしたあのジャップ野郎」と瞬間憎悪の火を燃やす。そして、日本人の間では、まことしやかに「この日は外へ出ると危ないぞ」という話が伝播する。そんな時、一人の先輩が、「アメリカの鏡、日本」を是非読め、と皆に勧めてくれたのだ。

この本が凄いと思うのは、前書きにもあるように、原書が戦争の終わった1945年の早や3年後にアメリカで出版、極めて冷静かつ公平な視点で「アメリカはこの戦争で反省の上に立って多くのことを学び後世にいかさなければならない」と強烈なメッセージを自国アメリカ国民に放っているからである。読んでみると、アメリカ人から見れば相当日本を擁護しているような内容となっているので、マッカーサーが日本での訳本を禁じたのも分かるような気がする。東洋、とりわけ中国と日本に関心を持ち、戦前日本にも住んだ著者、ヘレン・ミアーズが、GHQの一員として再来日、日米の生の現場資料と接する中で、「アメリカよ、この生き方でいいのか」と大いなる疑問を呈しているのだ。又、この本は、アメリカ人が日本及び日本人をどう見ていたかを知るのに興味深いと同時に、果たして我々日本人はアメリカ及びアメリカ人をどの程度理解しているのかを考えるのにも格好の書と思う。

その後のアメリカは、ヘレン・ミアーズの指摘にも拘わらず、ベトナム戦争へ進み、そして今、イラクの終戦処理で喘いでいる。バグダッド陥落後にブッシュが言っていた。「アメリカはかつて日本で素晴らしい終戦処理統治を行い、現在の日本再生の基礎を作った。イラクでも同じような成功を収めるであろう」。全く分かってない。
ヘレン・ミアーズは、この本のお陰で表舞台から退場させられてしまったらしいが、さぞ草葉の陰で呆れて居るであろう。

懲りないアメリカ人必読の書であるが、原書は絶版になっているのが何とも惜しい。