goo blog サービス終了のお知らせ 

よし坊のあっちこっち

神出鬼没、中年オヤジ、いや、老年オヤジの何でも有りブログだ!

映画三昧ーThe Burning Plain

2011年05月16日 | 映画
決して大ハリウッド的映画でない作品に佳作が多い。この作品もその一つだろう。

親の不倫を引き金に多感な年頃の娘を中心に三代に渡る物語をフラッシュバックさせながら、コンテナー大草原の中にポツンとあるコンテナーハウスが燃え、男女の焼死体が発見されるイントロのシーンの謎が徐々に浮き彫りにされていく。

あの「Monster」で好演したチャーリーズ・セロンを中心に少女時代の役を、これもまた最近「Winter Bone」で好演したジェニファー・ローレンスが演じている。母親役には、久しぶりに見るキム・ベイシンガー。

この映画でよし坊の目を引くのは、ホアキン・アルメーダだ。このポルトガルの役者は、Villan(悪役)が似合う。麻薬の黒幕とか。そう、初めてこのVillanに出会ったのが、ハリソン・フォードの「Clear and Present Day」のドラッグ・ディールの悪い奴。しかし、この映画では、キム・ベイシンガーの不倫相手で、アルメーダの善人もまた良いものだ。


映画三昧 - 山本富士子

2011年05月10日 | 映画
阿佐ヶ谷大映の入り口横のスチール写真。そこにひと際目立つ大きなポスター。山本富士子とその横に佇む川崎敬三の大写しと「白鷺」の題字。山本富士子を思い出す時、この映画館の前で、観たい衝動に駆られながら、食い入るようにポスターとスチールを見ていた姿を思い浮かべる。そして、今日に至るまで、「白鷺」は観ていない。

当代随一の美女の代名詞であった彼女の主演映画は意外と観ていない。「夜の河」「墨東奇譚」等があるが、とりわけ「白鷺」は観ておきたかった作品だ。泉鏡花の作品では「歌行燈」で雷蔵と共演しており、それはそれで良いのだが、「白鷺」を観ていないのが悔やまれる。

時代劇の「人肌シリーズ」もあるが、やはり彼女には現代劇が似合う。例の五社協定騒動で映画界を去ったのは残念だが、映画斜陽の時代に差し掛かっていたので、かえってよかったのかも知れぬ。そういえば、他社出演した松竹の小津作品「彼岸花」では浪速千枝子の娘役で何とも活き活きとしていたのを覚えている。


映画三昧 - 乙羽信子と「どぶ」

2011年04月18日 | 映画
乙羽信子という女優を思い出す時、必ず頭に浮かぶのは、「どぶ」と言う映画の中の乙羽信子である。何故かこの映画の題名と女優の顔は忘れられない。

調べてみると、この映画、封切は1954年とある。と言う事はよし坊7歳である。誰と見たのか。お袋に連れられて観たに違いない。なにせ、あの岸恵子と佐田啓二の「君の名は」を映画館で記憶しているのだから。

映画の内容はよく分からないが、何やら悲しそうな映画、そんな記憶があり、何よりも乙羽信子の印象が唯唯強烈だった。そしてもう一人、記憶に残ったのが殿山泰司だ。もちろん殿山泰司だと知ったのは後年だが、あの独特のキャラクターは頭に焼きついた。

その後、乙羽信子に接するのは、いずれもお叔母さん役で出る映画の何本かであり、それ故、乙羽信子=叔母さん役の印象の方が強いが、この「どぶ」だけは別格で、もう一度観てみたい映画なのである。

今改めてあらすじを読むと、戦後のどん底の中で、身体を売りながら、男達に翻弄され、最後は哀しく死んでいく薄幸の女の物語とあるから、やはり、悲しく、そして哀しい映画であった。

映画三昧ー 小津安二郎の世界

2011年04月04日 | 映画
小津安二郎の映画には独特の雰囲気が漂う。全ての小津作品を観ているわけではないが、特に娘の結婚問題を軸にした作品群は、当時の結婚観を背景に、娘を持つ父親の心情と家族の日常をさりげなく描き出す。俳優では笠智衆が父親役を一手に引き受けている。

「晩春」では、結婚を前にした父と娘の、心の葛藤を交えた交流をシンプルにさらっと描き、「麦秋」では、早く結婚させたい父親が、年の差なんか関係ない、贅沢は言えない、と一回りも違う相手の結婚に乗り気になるが、子連れの男を選ぶと言う突然の娘の反乱に戸惑う父親が面白い。この二作は笠の父親、原節子の娘だが、「東京物語」では、原は嫁の役で、親の面倒を誰が見るのか、と言う今日的テーマを、淡々と描いている。

「秋日和」では、原節子の母親と司葉子の娘の物語に佐分利信を中心に小津の常連が顔を出す。「彼岸花」では、佐分利信の父親と有馬稲子の娘となり、有馬の友達として、山本富士子が大映からの他社出演。浪速千恵子と山本富士子の京女、速射砲のように出る関西弁が色を添えている。

山本富士子の他社出演の交換条件で、小津は、大映で「浮草」を撮っているが、鴈治郎と京マチ子を軸に杉村春子、川口浩、野添ひとみなどを配し、大映の一作を残している。

最後は、「秋刀魚の味」だ。麦秋でちょい役の岩下志摩が抜擢され、父親役は再び笠智衆だ。父親の哀歓が滲み出る。よし坊も、そんな心情に酔ってみたいのだが、わが娘二人は、さらさら結婚する気無し、で残念と言う外はない。

小津の作品は、暖かく、そして時には切なく、最後にホッと一息つけさせてくれる安堵感のようなものがある。小津が日本映画の監督ベストワンに列せられているが、頷ける。

映画三昧 - 橋のない川

2011年02月19日 | 映画
住井すゑのライフワーク、大作である。独立系で今井正がメガホンを取ったこの作品はオススメである。後年、東陽一によるリメイク作品が出て、それなりに悪くは無かったが、時代背景から来る迫力と言う点では、やはりオリジナルと言うか、今井作品を観ないと、熱いものが伝わって来ないから不思議だ。

飲んだくれの伊藤雄之助がいい。北林谷栄の御婆の味のある演技は観ている者の心を突き刺す。この映画が撮られた時代は、まだまだ、同和問題というか、差別に対する社会のフレームが荒削りであり、その雰囲気が映画作りにも自ずと映し出されたのではないかと思う。90年代に入って作られた東作品は、差別問題に対し、良くも悪くも社会全体がオブラートで包むような雰囲気の時代が影響してか、今井作品ほど切り込めていない様な気がするのだ。それにしても、北林谷栄が学校に乗り込んで、校長に向かって搾り出すセリフの場面は、涙で観えなくなる。

関東に比べ、関西は、「差別」の場面がより濃厚のような気がする。日常茶飯事とは言わないが、関西では同和問題と在日問題は、身近に、時には隣り合わせであったりする。

かつて、社内の女性から相談を受けた事がある。付き合っている男性がコリアン・ジャパニーズ、即ち在日の方だと言う。私の持論を展開して、好きなら進むべき、とアドバイスをした。恐らく本人も誰かに背中を押してもらいたかったのだろう。この女性の勇気をあらためて見直したものだ。

よし坊、歳も27となった頃、ある女性を好きになり、結婚の段取りへと突き進むのだが、ドタキャンとなり、一週間で5キロ痩せた。真相は、彼女が被差別の出身で、最後まで言えず、突然よし坊の前から姿を消したのだ。漸く見つけ出し、話し合い、よし坊は、それでも決意は固かった。よし坊は相手の出自など物ともしなかった。しかし、彼女は首を縦には振らなかった。よし坊は振られた。今となっては、何やら、ちょっぴりほろ苦く、懐かしい思い出である。




映画三昧ーCrossing

2011年01月25日 | 映画
韓国映画の話題作「Crossing」を漸く観る事が出来た。

やはり、再現された北朝鮮の日常と強制労働の過酷な実態は目を覆うばかりだ。道端に並ぶ露天商の風景は、終戦直後の日本のそれらの光景にも重ならない。もっと荒涼とした風景だ。強制労働の場面では、思わず、かつて日本社会党の「極楽黄土」の言葉に乗せられて北に渡った多くの在日の方々の行く末を見るようである。一体何人の人がその後生き残ったのであろうか。そんなことを考えると胸が痛む。

父親は密入国で中国に妻のクスリを買いにでたが、行きがかり上、不本意にも韓国に脱出する事となり、別世界を目の当たりにしてしまう。「北朝鮮は韓国より繁栄している」。この北の教育が正反対であり、その格差は途轍もなく大きいと知ったショックは計り知れないだろう。最初の尋問過程での黙秘を破る切っ掛けとなった金賢姫の思想瓦解は、自由を謳歌し繁栄するソウルの街を見た時、北での教育がとんでもない間違いだったと確信した為と伝えられている。

映画は、息子がモンゴルルートでの北朝鮮脱出行へと続く。ハッピーエンドを期待するのか、それとも悲しい結末か。そして、映画はキチンと悲しい結末で終わってくれた。いや、この映画は悲しい結末でなくてはならない。ハッピーエンドなら、最後の最後でこの映画はブチ壊れたと思う。

久しぶりに息を詰めて観た映画だった。


映画三昧 - リチャード・クレンナ

2010年12月16日 | 映画
久しぶりに古い映画、ランボーを3作続けて見た。昔観ていても20年以上も経てば殆ど忘れている。3作とも出ているリチャード・クレンナが懐かしい。

最初にクレンナを観たのは、テレビドラマの「スラッタリー物語」。日本ではまだまだアメリカ製ドラマが全盛の頃で、なかなか渋い役者がいるなと思っていた。次に見たのが、マックィーン主演の「砲艦サンパブロ」の船長役。マックィーンを観に行ったというよりは、クレンナ目当てだった。あの映画は、マコ岩松も出ていて、こんな日系の役者がアメリカにも居たのかと、思ったものだ。

クレンナは、映画よりテレビが多かった為か、滅多にお目にかかっていなかった。最後に映画で観たのは、ハリソン君主演の「サブリナ」だったか。これは、例の「麗しのサブリナ」のリメイクなのだが、ハリソン君やグレッグ・キ二アよりも、やはりクレンナが気になるのである。


映画三昧 - 球形の荒野

2010年12月07日 | 映画
前後編併せて4時間のスペシャルドラマ「球形の荒野」があるというので、楽しみに観たのだが、残念ながらすっかり裏切られてしまった。折角の清張作品が、これでもかと言う脚色で、原作の味は何処へやら、社会派ミステリーどころではなく、すっかり安物の刑事物のドラマと化してしまった。テレビドラマがドンドン面白くない方向に行っている、その一端を見せてくれたようなスペシャルだった。

後味が悪いので、次の日、早速手持ちのビデオ、松竹映画「球形の荒野」を久しぶりに観直してみた。4時間(正味3時間半位)のダラダラしたテレビ版に比べ、1時間40分の中にエッセンスを凝縮する映画の濃厚さというか、重厚さをあらためて実感する。若い竹脇無我と島田陽子を軸に、芦田伸介、山形勲、岡田英次とベテランを配しての、やはり重みのある映画に出来ている。軍人上がりの右翼の藤岡琢也も凄みが出ていて、危険な風格がある。犯罪に関わる部分では、戦後の右翼、児玉誉士夫かそれに連なる人物を連想させる役として、大滝秀治がワンシーン登場する。原作では、時代背景の重要部分として描かれているのだが、テレビ版はやたらと殺人事件を起こし、そんなものはどこかに飛んでいる。大滝秀治は若い頃は、他の映画でも凄みのあるワルを演じていて、一度観ると忘れない役者となる。

テレビドラマの方は、最後が又いただけない。お互い父であり娘である事を分かっていながら、他人を装って最後の別れをするハイライトだ。これをテレビ版はどう演ずるか。ワイフと二人で、最後まさか名乗らないよな、と期待していたら、娘に「お父さん」とアッサリ呼ばせてしまったではないか。最後の最後で、最後のがっくり。テレビドラマは所詮こんなものか。

映画三昧 - 秋津温泉

2010年11月04日 | 映画
1962年の松竹の文芸作品に、岡田茉莉子と長門裕之主演の「秋津温泉」がある。君の名は、の岸恵子の後は、間違いなく松竹の看板は岡田茉莉子だった。

脇に誰が出ていたのか、すっかり忘れていたので調べてみたが、今考えるとそうそうたる役者陣が出ていて、当時の映画は、みなこうだったんだな、と改めて実感する。男優では、宇野重吉、山村聡、殿山泰司、小池朝雄、神山繁、東野英治郎等。女優では、日高澄子、小夜福子、芳村真理、清川虹子等など。芳村真理などは、若手も若手だ。曲者殿山泰司は、いつ見てもいいね。

人生に絶望し、死に場所を求めていた男が山間の温泉場に辿り着く。出会った女は逆に生きる力を与え、そして時間が全てを変えていく。かつて男に生きる力を与えた岡田の新子が、皮肉にも自ら命を絶つ最後のシーンはやはり切ない。

この作品が忘れられないのには理由がある。この作品のお蔭で、岡山に有名な温泉郷があり、その一つの奥津温泉が映画の舞台になったのを知ってから、一度は訪れてみたいと長年思っていた。関西に居を移した時、奥津温泉が近くなったと、頭の隅が鳴った。次に思い出したのが、丁度島根県へ出張するのに、岡山からの姫新線を使った時だ。列車に揺られながら、ここから程遠くないところにあの舞台がある、そう遠くないうちに来ようと思った。

何のことは無い。今はアメリカ暮らしで、思い入れとは裏腹に段々遠のいていく。



映画三昧 - 死刑囚の映画 

2010年10月19日 | 映画
死刑囚を扱った映画やドラマでは、古くは大島渚の問題作「絞首刑」がある。又、刑務所の中を、ユーモアたっぷりに描いた、ずばり「塀の中」という映画もあった。成る程、そういう生活をしているのかと、知らない我々に見せてくれる。多少の脚色はあるのだろうが、大筋では逸脱してないのだろう。

社会派のヒューマンドラマと言うふれ込みだったから、ドラマ「モリのアサガオ」の初回を観たが、ガッカリと言うか、裁判員制度や死刑制度が注目を集めている現在、なんとも酷いドラマを作ったものだと思う。問題点は、これから出てくるであろうテーマ、心の交流ではない。ヒューマンドラマを標榜する以前に、拘置所内の生活設定が一般的に聞いている話と大きくかけ離れ、これでは実際その任に当たっている実在の職員の方々の仕事に対して失礼ではなかろうか。荒唐無稽を取り込むドンパチものの代表の刑事物ならいざ知らず、刑務所とか死刑という思いテーマに取り組むならば、もっと丁寧に作るべきだろう。考証の部分が極めてお粗末、の一言に尽きる。何も知らずに観ている一般人に間違ったメッセージを送ってもらっては困るジャンルではあるまいか。看守が房に入って、死刑囚の腰を揉まされるシーンなど、ありえないし、対面の房同士で話が出来るようには作られていないはずだ。目を覆いたくなるドラマ作りと言える。

小林薫と西島秀俊の「休暇」という映画があるが、淡々と死刑囚と看守達の生活がよく描かれている。ある種、教育的映画だと思う。それに比して、このテレビドラマは、如何なものか。全く観るに耐えない気がする。毎回駄作のテレビドラマがあり、いちいち論ずる気もない。観たくないものは観ない主義だが、この一件だけは、黙っていられない。