後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

一般庶民の生活の歴史を教えない学校の歴史教育の欠陥

2017年10月10日 | 日記・エッセイ・コラム
学校の歴史教育は実につまりませんでした。天皇や武士政権の権力者の名前とその交代の年号を完璧に丸暗記すると良い点数が取れるのです。
他人には言いませんでしたが、そんな教え方を内心軽蔑さえしていました。当時は先生は聖職者として絶対的な権威を持っていた時代でした。
学校で教える歴史とは権力者の歴史だけだったのです。一般庶民はどのような暮らしをして、どんな気持ちで生きていたかを教えません。その歴史的な変化を教えません。権力者へ納める税金はどのように納めていたかも具体的に教えません。長い間不思議に思っていました。
ところが庶民の生活の歴史的変化を明快に説明し、関連する道具を展示している博物館があるのです。
東京都府中市立の郷土の森博物館です。ここでは縄文・弥生時代から古墳時代に始まって、平安、鎌倉、江戸と全ての時代の歴史を権力者の歴史と一般庶民の歴史に分けて説明しています。とくに一般庶民の歴史は知らなかったことが多かったので驚きの連続です。
そこで以下に一般庶民の生活の歴史的な変化を少しだけご紹介したいと思います。
(1)平安時代になっても庶民は縄文時代とあまり変わらない掘立小屋に住んでいたのです。
平安時代の府中には京都から派遣される多数の役人と一般庶民が暮らしていました。役人の生活は贅沢でしたが、庶民は質素な食器を使い貧しい生活をしていました。

1番目の写真は庶民が使っていた食器や壺です。縄文時代とあまり変わっていません。

2番目の写真は庶民の家です。一般庶民は縄文時代とあまり変わらない掘立小屋に住んでいたのです。

3番目の写真は平安時代の農機具です。
農民が使っていた農具をよく見ると、鉄の刃は磨きながら丁寧に使っていた様子が伺えます。
(2)鎌倉時代になっても租税は京都から派遣された守護へ納めていた。
武家政権の鎌倉時代になっても庶民は平安時代と同じ掘立小屋に住み、租税は京都から派遣されていた守護に納めていました。武蔵野国では府中にある国衙政庁にいる守護職の代理人へ納めていたようです。

4番目の写真はその様子を説明しています。
そして納めた租税の何割かは鎌倉幕府へ送られた筈です。その上、地方地方の小型武力集団(国衆)へも租税を納めていた筈です。
学校で教える歴史教育では農民の租税の納め方を具体的に教えません。しかしそれこそが一般庶民の死活につながる重要な項目なのです。そのような疑問が湧いて来る説明板ではないでしょうか?
(3)鎌倉時代には天皇や貴族のための佛教から庶民のための仏教が出て来た。

5番目の写真は鎌倉時代の庶民の宗教を説明しています。
鎌倉時代の武蔵野国の農民は板碑という自分の信仰のための碑を実に多数立てたのです。
上の方に梵字が彫ってあって、庶民の土俗信仰を暗示するような異様な雰囲気を与えています。

6番目の写真はこの板碑の写真です。
器用な農民は仏像もほりました。素朴な仏像です。

7番目の写真は農民が彫ったと考えられている仏像の写真です。
現在の日本人は無宗教の人が多いのですが、鎌倉時代から江戸時代の庶民は非常に強く宗教を信じていたのです。
(4)多摩川で魚を取ることは非常に重要な産業だったのです。
現在、多摩川で漁業を営む人はいません。しかし江戸時代までは沿岸の庶民の生活にとっては死活問題だったのです。

8 番目の写真はその多摩川での漁業を説明しています。
取っていた魚はアユ、ハヤ、ウナギ、コイ、カジカ、川エビ、川カニ、などなどでした。

9番目の写真はドウという漁具です。

10番目の写真はその他の漁具の写真です。

(5)一般庶民は芸術作品を作らず生活に必要な道具を作った。
庶民は藝術作品は残しませんでした。使っていた道具を民藝作品として高く評価する人々もいますが正直言えば洗練されていません。
しかしすぐれた芸術作品を残した絵師や彫り物師はお寺の支援や保護を受けたいたことが多かったのです。そのお寺の財政を支えていたのが農民や一般庶民だったのです。
ですから、ある国の歴史や文化を総合的に考える時、一般庶民の歴史も重要だと私は信じています。
一般庶民の歴史が私の好奇心を刺激し、尽きない興味を掻き立ててくれているのです。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)

1 コメント

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初めてですが・・・ (ひとみ)
2018-08-29 01:45:00
本当に、学校では庶民の歴史を教えられませんでした。
色々知りたくて『庶民の歴史』で検索していたら、ここにたどり着きまして、他の記事も読ませて頂きました。
色々と知らない事を教えて頂きました。
ありがとうございます。
また寄らせて頂きます。
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