先日の掲載記事、「宗教と人生(2)熱狂的にキリスト教を信じている韓国人」で韓国の人口の29.2%がキリスト教徒で22.8%が仏教徒と書きました。統計ではこのようになっていますが韓国はやはり儒教と仏教の国だと思います。儒教と仏教は千年以上の長い間韓国の社会に根づいて来たのです。
今日は韓国はやはり儒教と仏教の国だということを書きたいと思います。
現在、韓国に行くと儒教の学校や孔子廟を見ることはありません。そういう昔のものが非常に少なくなってしまったのです。しかし韓国人の心の底には儒教があるのです。儒教は現在も韓国人の精神に大な影響があるのです。儒教は宗教ではないので、道教信者、キリスト教徒、仏教徒であっても儒教を大切にしています。
歴史的に見れば儒教は李氏朝鮮の16世紀に最盛期を迎えました。有名な二人の儒学者は李滉(1501年–1570年)と李珥(1536年–1584年)でした
二人は退渓(テゲ)と栗谷(ユルゴク)という号で呼ばれ、現在の大韓民国の1千ウォン札と5千ウォン札にそれぞれ肖像が描かれています。またソウル中心部の主要な大通りにその名が付けられています。
1番目の写真は韓国の数少ない孔子廟の一つです。聖廟の門と正殿「大成殿」(写真左奥)です。(https://webronza.asahi.com/photo/photo.html?photo=/S2010/upload/2021030600004_1.jpg )
2番目の写真は韓国済州島で秋に行われる儒教の儀式です。
3番目の写真は毎年ソウルで開催される 儒教の 孔子式です。
4番目の写真は儒教の釈奠大祭です。韓国の儒教の影響の深さを感じられる大祭です。孔子(紀元前551年~479年)の教えを学び、祭祀を行うのが釈奠大祭(ソッチョンテジェ) です。春と秋に全国で祭祀が行われます。ソウルの釈奠大祭は重要無形文化財に指定されています。香を焚いて祝文を読み、舞踊が披露され、飲福(ウムボッ)料理を食べたりします。
以上のように現在の韓国では儒教に関連した儀式や祭りが盛んに行われているのです。
それでは仏教の方はどうでしょうか?
5番目の写真は世界遺産の「仏国寺 」です。仏教芸術の最高傑作かつ国宝の寺院とされている仏国寺は理想的な彼岸の世界観が表現されております。
この仏国寺 は1982年に家内と訪問したことがあります。
6番目の写真は韓国の世界遺産は「海印寺 」です。
写真の出典は、http://www.seoulnavi.com/special/5003998 です。1200年以上の歴史があり、韓国最大の宗派である曹渓宗の寺院です。
海印寺も1982年に家内と訪問したことがあります。瓦屋根の稜線が優美に反っているのが印象的でした。
7番目の写真は海印寺 の中庭です。海印寺は韓国の11の世界文化遺産の一つです。写真の出典は、http://www.seoulnavi.com/special/5003998 です。
韓国の佛教の90%は曹渓宗です。日本の曹洞宗のような禅宗ですが日本より戒律が厳しい宗派です。その曹渓宗に朝鮮古来の原始宗教が混淆したのが韓国の佛教です。
韓国人の24.2%は仏教徒です。韓国の仏教は中国の道教の北斗七星の妙見信仰や風水と習合しています。日本の神仏混淆と同じようですが内容が異なります。 韓国では佛教に複雑に原始宗教が混淆しています。
8番目の写真はお寺の本尊様へお経を詠んできる僧侶と一般信者の写真です。
写真の出典は、http://gree.jp/dong_hun/blog/entry/595258319 です。
9番目の写真は韓国の三大祈祷院の普門寺の本堂の内部の写真です。
写真の出典は、 http://www.hikorea.jp/tour/tour_view.php?topinfo_tcode=TB1320394145 です。
それにしても韓国の佛教と日本の佛教は非常に違うのです。
(1)韓国の僧侶と修行者は絶対に結婚しない。もし結婚すれば僧侶や修行者の資格を失う。
(2)韓国の僧侶と修行者は殺生戒を厳密に守る。日本の僧侶や修行者は肉や魚を食べる。韓国では絶対に食べない。
(3)韓国の僧侶と修行者は仏教のその他の戒律を厳しく守る。
私はこの違いは非常に大きな違いだと思っています。
10番目の写真は韓国の墓地の写真です。写真の出典は、http://seoul2.blog97.fc2.com/blog-date-200908.html です。
韓国ではお墓には生花ではなく造花を捧げるのです。韓国では豊かな人は墓地用の山を買い、この山を一族又は家の共有の墓地とするのが昔の風習でした。しかし最近では企業が共同墓地を開発して分譲しています。この写真は共同墓地です。
さて最後に韓国の仏教の歴史をまとめておきます。
・・・韓国の仏教は三国時代(4世紀から7世紀)に中国から入ってきました。仏教は新羅(668年-935年)や高麗(918年-1392年)の時代に最も優勢な文化的影響力を持っていたのです。儒教も同様に中国から初期に伝わりましたが儒教は朝鮮李朝樹立までは仏教の下の立場に置かれていました。
韓国の仏教には様々な「宗派」が存在します。しかし、圧倒的大多数(90%程)の寺は曹渓宗に所属しています。ソウル中心部の曹渓寺が韓国で最も古く有名な寺で仏国寺や梵魚寺の本山です。・・・
今日は韓国の儒教と佛教の歴史や現在の実態の一端をご紹介いたしました。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
========参考資料====================
(1)立正佼成会、創価学会、霊友会など拠点も韓国に存在。
韓国には円仏教などの仏教系新宗教が存在し、立正佼成会、真如苑、創価学会、霊友会の日本の宗教法人の拠点も存在します。
(2)韓国の仏教は本堂の裏に三聖閣がある。
(http://www.bbweb-arena.com/users/hajimet/bukkyo.htm )
韓国の寺院は寺院後方、大雄殿より高いところに三聖閣という殿閣を置くことが多い。
韓国の山岳信仰と融合したものである。何を主体に祀るかで山神閣、七星閣、独聖閣などと言う場合もある。いずれも仏教以外のとこ ろから韓国仏教に融合したものである。 三聖閣という場合は、「山神」、「七星神」、「独聖」を祀り、建物は正面4本の柱、側が2本の柱で囲まれた建物となる。
(詳細は韓国仏教文化事典、仏教文化研究院編をご覧ください)