「古都逍遥 京都・奈良編」「花の詩」「日常のこと」や花や風景写真

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「聖林寺」(しょうりんじ)

2012年04月26日 18時19分32秒 | 古都逍遥「奈良篇」
 真言宗室生寺派の寺院「聖林寺」は、山号を霊園山(りょうおんざん)と称する。
桜井市街地の南方、北方に奈良盆地を見下ろす小高い位置にある。伝承では和銅5年(712)に妙楽寺(現在の談山神社)の別院として藤原鎌足の長子・定慧(じょうえ)が創建したという。

 聖林寺の近世までの歴史は不明の部分が多いが、日本最古の神社とされる大神神社(おおみわじんじゃ)とも関連が深い寺院であったようで、江戸時代に性亮玄心(しょうりょうげんしん)が三輪山の遍照院を移して再興したという。
また、元禄期(1688-1703年)に、文春諦玄という僧が女性の安産を願って各地に勧進し、本尊となる「子安延命地蔵菩薩像」を造立、安産・子授けの祈祷寺としても栄えたという。その脇に「掌悪童子」「掌善童子」が並んでいる。

 明治の神仏分離令を前に、慶応4年(1868)大神神社の神宮寺であった大御輪寺(だいごりんじ)より木心乾漆十一面観音菩薩立像(209cm・国宝指定)が移された。明治時代に来日した哲学者、美術研究家のアーネスト・フェノロサがこの像を激賞したことで知られるようになったという。また、和辻哲郎も『古寺巡礼』(大正8年・1919年刊)で気高いその姿を絶賛し、天平彫刻の傑作「国宝・十一面観音立像」が安置されている寺として知られている。均整がとれ量感にみちた姿、指先までの柔らかくて優美な造形や、穏やかでいながら引き締まった表情、蓮型の台座も美しい。切れ長の目が永遠を凝視するかにみえる悠遠な表情が、心をとりこにしてしまう。

 どこから見ても田舎の小さな山寺ではあるが、山門をくぐって本堂に入ると、下界の喧騒の世界を忘れさせてくる穏やかな世界に包まれる。

 所在地:奈良県桜井市下692。
 交通:JR・近鉄「桜井駅」より、奈良交通バス談山神社行「聖林寺」下車、徒歩3分。
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