中国市場が年始早々、大暴落している。習近平政権は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の本格始動と、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)採用で人民元の国際通貨化を狙っているが、冷や水を浴びせられた格好だ。
だが、2016年、世界経済の覇権奪取を画策する習政権にとって、これは悪夢の始まりかもしれない。さらなる大暴落が襲い、AIIBも失敗に終わる-。中国事情に精通する評論家の宮崎正弘氏がリポートする。
4日に中国市場が大暴落したように習政権を待ち受ける大波乱は、主に経済の分野が震源となる。
世界経済が大混乱に陥ったリーマン・ショック(08年)の引き金=サブプライムローン問題と、中国市場の抱えるリスクとは、構造が酷似しているのだ。
サブプライムローンは、返済能力の乏しい低所得者にまで高額の住宅ローンを貸し出して破綻をきたした。
中国の場合も、金融機関が、返済の見込みのない企業や個人にまでむちゃな貸し付けを行うことで投資を促進している。
「中国経済が従来通りの経済の高成長が維持する」という前提で行われているハイリスクな“錬金術”だが、この前提はすでに崩れている。
中国経済の失速を象徴するのがGDP(国内総生産)成長率の鈍化だ。
毎年、3月の全人代でGDPの達成目標が発表されるが、昨年は、当初目標の7%を達成できずに終わる可能性が高い。今年はより激しい悪化に見舞われることが予想される。
そもそも現段階でも政府発表の数字は水増しされている疑いが濃い。
中国の企業側が発表した統計によると、成長していれば、伸びるはずの電力消費や貨物輸送量が、ともにマイナスを記録している。このことからも偽装は明らかだ。
こうした実情を知り、すでに外国企業や個人資本家がこぞって中国市場から資金を引き揚げており、その流れは止められない段階にきている。
いまは「為替管理」という強行策により危機は先送りされているに過ぎない。短期的にはやや楽観的に状況が推移してゆくだろうが、中期的には悲観的となり、長期的展望は絶望が広がる。
安定的に株高を維持するための個人投資家が消えた。今は政府機関がなんとか買い支えしてもっている状態だ。ただ、その資金はせいぜい半年ぐらいしかもたない。
07年に米大手投資銀ベアー・スターンズの危機が顕在化して、ちょうど1年でリーマン・ショックが起きた。これと同様に昨夏の「上海ショック」が、その予兆となる。
習政権肝いりのAIIBも不安要素が多い。工事資金の貸し付けを行うための起債に応じる国家や機関投資家が見つかっていないのだ。
現在、中国とタイの首都バンコクを結ぶ高速鉄道や、中国からラオスの首都ビエンチャンに至る高速道路の計画があるが、資金のメドはついていない。
韓国が引き受けに名乗りを上げているものの、国内経済の逼迫(ひっぱく)によって資金がそこに回せるか疑問符が付く。計画の大幅な延期や破綻が続発する懸念がある。
チャイナマネーの終焉(しゅうえん)で何が起こるか。外貨準備は激減し、中国人観光客による爆買いは“突然死”を迎える。これまで断続的に起きていた暴動や労働争議が急増し、治安は一気に悪化することになる。
習体制も盤石とは言い難い。腐敗撲滅をうたった「反腐敗運動」が続き、相次ぐ粛清で官僚らは戦々恐々となっている。その影響で行政がまひしているため、経済は沈滞の一途である。
また、実権を掌握したといわれる人民解放軍も面従腹背だ。表立った反乱の芽はなくとも、不満は爆発寸前。とても「軍権を掌握した」とはいえない状態である。むしろクーデターの可能性が高まったとみるべきだろう。
胡錦濤前国家主席率いる「団派(中国共産主義青年団)」の動きも気になる。経済の失速によって、民衆の不満が爆発し、社会的擾乱が起きるタイミングで、習政権と微妙な距離を取る彼らの反撃が予想されるからだ。
いずれにしても、16年の中国に激震が走ることは間違いなさそうだ。
■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。
国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書に『2015年 中国の真実』(ワック)、『「中国の終わり」にいよいよ備え始めた世界』(徳間書店)など。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160106/frn1601061140001-n1.htm
世界的に悪材料が揃いすぎた今週、暴落も已む無しという気もしますが・・・。
中国は原則は確実であるものの、ハードランディングかどうか。落ち込むことは確実で落ち込み方が問題では。
だが、2016年、世界経済の覇権奪取を画策する習政権にとって、これは悪夢の始まりかもしれない。さらなる大暴落が襲い、AIIBも失敗に終わる-。中国事情に精通する評論家の宮崎正弘氏がリポートする。
4日に中国市場が大暴落したように習政権を待ち受ける大波乱は、主に経済の分野が震源となる。
世界経済が大混乱に陥ったリーマン・ショック(08年)の引き金=サブプライムローン問題と、中国市場の抱えるリスクとは、構造が酷似しているのだ。
サブプライムローンは、返済能力の乏しい低所得者にまで高額の住宅ローンを貸し出して破綻をきたした。
中国の場合も、金融機関が、返済の見込みのない企業や個人にまでむちゃな貸し付けを行うことで投資を促進している。
「中国経済が従来通りの経済の高成長が維持する」という前提で行われているハイリスクな“錬金術”だが、この前提はすでに崩れている。
中国経済の失速を象徴するのがGDP(国内総生産)成長率の鈍化だ。
毎年、3月の全人代でGDPの達成目標が発表されるが、昨年は、当初目標の7%を達成できずに終わる可能性が高い。今年はより激しい悪化に見舞われることが予想される。
そもそも現段階でも政府発表の数字は水増しされている疑いが濃い。
中国の企業側が発表した統計によると、成長していれば、伸びるはずの電力消費や貨物輸送量が、ともにマイナスを記録している。このことからも偽装は明らかだ。
こうした実情を知り、すでに外国企業や個人資本家がこぞって中国市場から資金を引き揚げており、その流れは止められない段階にきている。
いまは「為替管理」という強行策により危機は先送りされているに過ぎない。短期的にはやや楽観的に状況が推移してゆくだろうが、中期的には悲観的となり、長期的展望は絶望が広がる。
安定的に株高を維持するための個人投資家が消えた。今は政府機関がなんとか買い支えしてもっている状態だ。ただ、その資金はせいぜい半年ぐらいしかもたない。
07年に米大手投資銀ベアー・スターンズの危機が顕在化して、ちょうど1年でリーマン・ショックが起きた。これと同様に昨夏の「上海ショック」が、その予兆となる。
習政権肝いりのAIIBも不安要素が多い。工事資金の貸し付けを行うための起債に応じる国家や機関投資家が見つかっていないのだ。
現在、中国とタイの首都バンコクを結ぶ高速鉄道や、中国からラオスの首都ビエンチャンに至る高速道路の計画があるが、資金のメドはついていない。
韓国が引き受けに名乗りを上げているものの、国内経済の逼迫(ひっぱく)によって資金がそこに回せるか疑問符が付く。計画の大幅な延期や破綻が続発する懸念がある。
チャイナマネーの終焉(しゅうえん)で何が起こるか。外貨準備は激減し、中国人観光客による爆買いは“突然死”を迎える。これまで断続的に起きていた暴動や労働争議が急増し、治安は一気に悪化することになる。
習体制も盤石とは言い難い。腐敗撲滅をうたった「反腐敗運動」が続き、相次ぐ粛清で官僚らは戦々恐々となっている。その影響で行政がまひしているため、経済は沈滞の一途である。
また、実権を掌握したといわれる人民解放軍も面従腹背だ。表立った反乱の芽はなくとも、不満は爆発寸前。とても「軍権を掌握した」とはいえない状態である。むしろクーデターの可能性が高まったとみるべきだろう。
胡錦濤前国家主席率いる「団派(中国共産主義青年団)」の動きも気になる。経済の失速によって、民衆の不満が爆発し、社会的擾乱が起きるタイミングで、習政権と微妙な距離を取る彼らの反撃が予想されるからだ。
いずれにしても、16年の中国に激震が走ることは間違いなさそうだ。
■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。
国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書に『2015年 中国の真実』(ワック)、『「中国の終わり」にいよいよ備え始めた世界』(徳間書店)など。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160106/frn1601061140001-n1.htm
世界的に悪材料が揃いすぎた今週、暴落も已む無しという気もしますが・・・。
中国は原則は確実であるものの、ハードランディングかどうか。落ち込むことは確実で落ち込み方が問題では。
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