ルアンナムターの稲作農家の多くは、小規模ながら自宅で養蚕をしています。
高床式の自宅の軒下を網で仕切って養蚕スペースをこしらえ、棚を設えて浅い籠をいくつも置き、そこで蚕を飼うんです。
蚕は完全に人間に守られて生きる昆虫で、野生の蚕はいないそうです。
絹糸を得るために人間が5000年もの長期に渡って飼い続けた結果、人工的な環境下でなければ生きていけないようになってしまったらしい。
そう考えるとなんだか哀れにも思えますが、でもルアンナムターで見られるような小規模な養蚕は人間とカイコが寄り添って生活しているようにも見えて、ちょっとほほえましい。
桑の葉を何度となく入れ替えて幼虫を育て、その幼虫が脱皮を数回繰り返し、繭が作られると収穫です。
紡ぐ作業を見せてもらいました。
鍋にお湯を沸かし、蚕の繭を茹でます。数本の蚕糸を寄り合わせて、サッサカサッサカ紡ぎます。蚕糸は鍋からザルの上に伸ばされ、乾燥します。
へー、こんなふうに紡ぐのかー。
糸は思ったより太く、なんだか春雨みたいでおいしそう。
いや、もちろん食えないけどさ。
食欲が表情に出たのかも知れません。
食べる? と勧められたのが、蚕糸を取ったあとの繭の中身。
お、コプチャイ。
二つ三つつまんで口中に投入。噛むとブチュ!とつぶれて、まろやかな味が舌の上に広がる。
絹糸は取れるし、糞はお茶になるし、繭を茹でれば食べられる。ホント、蚕は無駄がない。
昔の日本人は「オカイコサマ」と呼んだそうだけど、その気持ちわかるなー。
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