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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「グリーン・ナイト」デイヴィッド・ロウリー&デヴ・パテル

2022-11-27 09:23:50 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「グリーンナイト」を映画館で観てきました。


映画「クリーンナイト」はデイヴィッド・ロウリー監督による騎士への道を目指すアーサー王の甥であるサー・ガウェインの成長物語「スラムドッグミリオネア」奇蹟がくれた数式デヴパテルの主演である。

元東大総長蓮實重彦デイヴィッドロウリー監督を新書本「見るレッスン」の中で絶賛していてセインツ他2作を観た。今回も作品情報で推奨コメントをだしている。それに加えて、デヴ・パテルの過去の出演作は自分とは相性がいい。ダークファンタジーのジャンルは苦手だけど映画館に向かう。思いがけず観客が多くおどろく。男性陣の一方でインテリと思しき熟年女性も目立つ。

高校の世界史「アーサー王物語」は騎士道物語として暗記したことがある。当然、内容までは知らない。アーサー王の甥であるサー・ガウェインはアーサー王物語の主要人物だ。もちろん架空の人物である。この映画の原作「サー・ガウェインと緑の騎士」は長きにわたり伝承されてきた騎士道物語の一つだ。


アーサー王の宮殿で円卓を囲むガウェイン(デヴ・パテル)の前に、全身緑ずくめの騎士が現れる。首を切ってみろという騎士の首を切ると、騎士はその首を持って「1年後のクリスマスの日に仕返しするぞ」とその場を去る。そこから1年後までまだ騎士になりきれないガウェインが彷徨う話である。物語ではガウェインがさまざまな人に出会う。まさに中世の暗いムードを象徴するようなダークファンタジーだ。


自分には馴染みづらい映画であった。
映画を見始めてしばらくしてウトウトしてしまう始末だ。ガウェインが苦境に陥る場面で目が覚めてあとは最後までもつ。溝口健二の「雨月物語」を観た時のような夢か現実か分からない人物が登場する。ガウェインにもこの世のものとは思えない登場人物たちだ。時には高貴なご婦人(アリシア・ヴィキャンデル)から誘惑まがいの状況となり、白い精液のようなものも映し出す。


いつ死んでもおかしくない状況に何度もなるが、そのまま生き延びる。そして緑の騎士に再会する。緑の騎士は岩陰からの登場の仕方を含めて、大映映画の「大魔神」を連想する。映画館にいるインテリと思しき女性たちは、英国古典文学のうんちくを語れるような淑女たちだったのか?自分には到底行きつかない境地かもしれない。
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映画「ザ・メニュー」レイフ・ファインズ&アニャ・テイラー=ジョイ

2022-11-19 20:57:44 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ザ・メニュー」を映画館で観てきました。


映画「ザ・メニュー」は孤島にある予約のとれない高級レストランの一夜で起きる一部始終を描いたサスペンスグルメ映画である。英国映画界ベテランのレイフファインズがカリスマシェフ役で、Netflix「クイーンズギャンビッド」から人気急上昇のアニャ・テイラー=ジョイが主要顧客の1人を演じる。予備知識なしで観に行く。

人気シェフのいる孤島のレストランに船に乗って向かう12人の中には、情婦を連れた芸能人、料理評論家を連れた編集者、富豪の夫妻、よからぬ取引で金儲けした男たちとタイラー(ニコラスホルト)とマーゴ(アニャ・テイラー=ジョイ)が乗船していた。1人あたり1250ドルの高い料理だ。もともと乗船予定だった女性と代わったマーゴに女性給仕長は怪訝な視線を向けたが、全員オープンキッチンを目の前にしたテーブルにつく。そして、シェフであるジュリアン・スローヴィク(レイフ・ファインズ)が登場して、牡蠣の料理からスタートする。


ここまでは、普通のグルメ番組と変わらない展開だ。
ただ、メニューは普通ではない。それに対して、顧客が注文をしても女性給仕長がすべてはねのける。ムードが徐々に険悪になるが、コース料理は進む。しかし、マーゴが反発する。料理に注文をつける。マーゴは客席の雰囲気とシェフの態度に何か違うものを感じる。

この映画の感想もむずかしい。何を言ってもネタバレになりそう。主役の若い女性が周囲の雰囲気に1人違和感を感じて物語が動く。直近で観た「ドント・ウォーリー・ダーリン」と展開が同じである。だいたい映画の半分程度まで進んだ時からあっと驚くようなハプニングが続く。これは全部自分の予想外の展開だ。


出される料理は美しい盛り付けがしてある。「ボイリングポイント」というレストランの一夜をノンストップの一筆書きで描いた作品があった。よくできている映画だった。しかし、この映画ほど料理の美的感覚を感じなかった。この映画でプレゼンされる料理は、料理界をにぎわせ、映像にもなったレストラン「ノーマ」の料理にアナロジーを感じる。しかも、それを通り越したものすごい料理が給仕される。グルメ映画のジャンルではかなりレベルの高い料理だ。ここではネタバレで言えない。


レイフファインズは、名作「イングリッシュペイシェント」の頃と比べると、怪優としての存在で認知されるようになってきた気がする。この映画もそうだ。孫のようなアニャ・テイラー=ジョイはここでも大活躍だ。「ラストナイトインソーホー」は数多い2021年の映画の中でも3本の指に入る怪作だった。アニャは主役として、力量を発揮するタイプだと思う。脇にまわった「キュリー夫人」「アムステルダム」ではそこまでよく見えない。将来的にはスカーレット・ヨハンソンのような存在になりそうだ。今が世代交代の時期かもしれない。

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映画「アムステルダム」クリスチャン・ベール&デヴィッド・O・ラッセル

2022-11-06 08:27:52 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「アムステルダム」を映画館で観てきました。


映画「アムステルダム」はクリスチャンベール主演の1930年代のアメリカを舞台にした作品だ。クリスチャンベールがアカデミー賞助演男優賞を受賞したファイターデヴィッド・O・ラッセルが監督をつとめる。ここで驚くのが出演者の豪華なことだ。ブラック・クランズマンジョン・デヴィッド・ワシントン「スキャンダル」マーゴット・ロビーだけでなく主演級をゴロゴロ集める。いったいギャラはどれだけになるだろうと思ってしまう。

1933年のニューヨーク、第一次大戦の復員兵の戦友会でスピーチすることになっていた元将軍が突然亡くなる。将軍の部隊にいた医師バート(クリスチャンベール)と弁護士のハロルド(ジョン・デヴィッド・ワシントン)の元に将軍の娘リズから解剖の依頼がくる。そこで胃の中に異常を発見する。その後でリズが群衆の中で誰かに道路へ押されて交通事故に遭い亡くなるが、いつの間にかリズのそばにいた2人がやったことにされてしまう。陰謀を感じた2人は身を隠す。

やがて、自分たちの身を守るために富豪のトム(ラミマレック)の家に向かうと、1918年フランスの戦場でバートとハロルドと行動を共にして、その後アムステルダムで過ごした元看護師のヴァレリー(マーゴット・ロビー)がいた。ヴァレリーがトムと同居する妹だということがわかる。改めて3人が一緒に動くことになる。


デヴィッド・O・ラッセル監督のアメリカンハッスル世界にひとつのプレイブックがもつコメディ系のタッチが映画を通して流れている。クリスチャン・ベールが演じる義眼の医師も「できる」男ではない。ドタバタしながら行動する。それなりにおもしろいし、最後まで飽きない。でも、両手をあげていいという訳ではない

ハリウッド映画らしくポストプロダクションや美術のレベルが高い。しかも、撮影は三回もアカデミー賞を受賞したエマニュエルルベツキだ。ロバート・デニーロや「ボヘミアンラプソディ」のラミマレックも含めてアカデミー賞受賞者をここまで集めた映画はないだろう。

自分が感じるに、コミカルにストーリーは進んでもマジメな意味で3つの題材がある。1つは人種差別、2つ目が復員兵、もう一つがナチス躍進に伴う陰謀である。

⒈黒人と白人の恋と人種差別
主役3人がもともと仲がよかったわけではない。第一次大戦末期にフランス戦線で知り合った時は、バートは軍医でなく戦闘で目をつぶされる単なる白人兵士、ハロルドは黒人の待遇が悪いと不平不満たらたらの黒人兵士、ヴァレリーはフランス語に堪能で、銃撃を受けた兵士の身体から銃弾を取り除く優秀な看護師だ。みんなはヴァレリーをフランス人だと思っていた。

3人を結びつけたのが、今回解剖をすることになった将軍だ。黒人にも融和的だった。ここで戦闘の最前線で真っ先に危険エリアに送り出される差別をクローズアップする。昔の映画であれば、それだけで終わってしまったであろう。ここでは、黒人男性のハロルドと白人女性のヴァレリーが恋に落ちる設定だ。医師のバートも解剖の名手である黒人看護師と恋心を持つようになる。

実際に白人女性と黒人男性の恋って1930年代にあったであろうか?こんなところを南部出身の白人に見つかったら大変だなんてセリフもある。最近の多様性重視でこんな恋の設定がアメリカ映画に目立つ一環かもしれない。


⒉第一次世界大戦の復員兵
戦争で活躍して国の英雄になり勲章をもらうのが最高の名誉だとするセリフがある。激戦と今でも言われる第一次世界大戦からの復員兵に対しては、当時、大きな敬意を表していたのであろう。映画から感じられる。ロバート・デニーロが演じるのは大戦で活躍した将軍である。その将軍が発する言葉の影響力は非常に強い。彼をどう取り込むのかというのが陰謀を企むグループと保守派の駆け引きにつながる。この映画の大きなテーマだ。

第二次世界大戦という大きな戦争があり、アメリカに関してはその後も朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争と戦争が続く。映画でもその退役兵の苦しみを描いた作品が多い。随分と観た。名作「西部戦線異状なし」でもわかるように第一次世界大戦は過酷な戦争だったと言われるが、最近は「1917」以外は取り上げられていないので新鮮な題材である。

⒊ナチス躍進に伴う陰謀
復員兵の戦友会でスピーチすることが決まっていた将軍が何かの陰謀で殺されて、その死亡原因を追う娘が殺される。しかも、娘に依頼された主人公2人がはめられる。そんな構造は早い段階でわかった。でも、この陰謀って一体何なんだろう?徐々に外堀を埋めていき、最終的にはナチスドイツも絡めた陰謀だということがわかる。映画では優生学に伴うナチス戦略に近い状況も織り込まれる。そして、意外な人物が大きく関わっていることがわかるが、ここでは言わない。

ただ、この設定に少し疑問もある。映画の設定は1933年、ヒトラーが政権を握ったのが1933年1月である。ケインズ政策を戦前最も効果的に実行したのはナチスドイツであり、高速道路アウトバーン建設をはじめとした公共事業で600万人いた失業者をほぼゼロにしてしまう。それによりヒトラーは民衆から支持を高める。でも、政権を握ってすぐ着手したとはいえ、米国経済界に大きな影響力を持ったとは思えない。この映画の一部の場面設定が強引な設定にも見えてくる。


⒋1933年のニューヨーク経済
1929年から大恐慌が始まったことは普通に学校で歴史を勉強した人なら誰もが知っているだろう。ただ、その後の株価の推移を知っている人は少ない。今も続く米国ダウ平均は1929年に381をつけた後、何と1932年に41まで下落しているのだ。本来金融緩和をすべきところを、当時金本位制だったことも影響してか、むしろ連銀が引き締めていたことで恐慌が終焉しなかった。

ミルトンフリードマンの研究が有名だが、恐慌時の逆方向にカジをとったリーマンショック後の金融緩和政策により、今年のノーベル経済学賞をバーンナンキ元FRB議長が受賞した。当然だろう。アベノミクスにも大きな影響を与えた。

1933年の米国株式市場はルーズベルト大統領の登場で若干回復の兆しを見せる。50前後だったダウ平均も100を超えるくらい大きく戻している。そんな時期のニューヨークの姿を映し出す。悲痛な姿はこの映像にはない。財閥の主というべき経営者たちが映し出されている。でも、1933年では経済は回復しきっていない。そんな状態だ。ニューディール政策ではアメリカ経済はさほど良くなってはいない。結局アメリカ経済を復活させたのは戦争だった。
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映画「アフターヤン」 コゴナダ&コリンファレル

2022-10-23 06:51:11 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「アフターヤン」を映画館で観てきました。


映画「アフターヤン」は近未来の時代設定で、AIロボットのベビーシッターをめぐる家族の物語。中米の美しい街コロンバスを舞台にした映画「コロンバス」コゴナダが監督コリンファレルがロボットヤンのご主人様である。手塚治虫の「火の鳥」に出てくるロボットのような人間とほぼ変わらない家庭用ロボットに焦点をあてる。でもむずかしい映画ではない。

茶葉の販売店を営むジェイク(コリン・ファレル)、妻のカイラ(ジョディ・ターナー=スミス)、中国系の幼い養女ミカは、慎ましくも幸せな日々を送っていた。しかしロボットのヤン(ジャスティン・H・ミン)が突然の故障で動かなくなり、ヤンを本当の兄のように慕っていたミカはふさぎ込んでしまう。


修理の手段を模索するジェイクは、ヤンの体内に一日ごとに数秒間の動画を撮影できる特殊なパーツが組み込まれていることを発見。そのメモリバンクに保存された映像には、ジェイクの家族に向けられたヤンの温かなまなざし、そしてヤンがめぐり合った素性不明の若い女性の姿が記録されていた。(作品情報 引用)


しっとりとした肌合いをもつ映画だ。
AI、近未来という設定に一瞬尻込みしそうになる。でも、そういった要素はほとんどない。時代の進歩を感じさせるのはロボット以外になく、家のインテリアから感じられる生活感は現代そのものに近い。

家族同様に暮らしていたロボットが故障すること自体が一種の喪失で、突然誰かが蒸発するパターンが多い村上春樹の小説のような展開だ。激しくこちらの末梢神経を刺激する場面はない。白人の夫、アフリカ系の妻、中国人の養女という構成は最近の多様性を強調する映画のしばりが強いものと感じる。

⒈小津安二郎のファンのコゴナダ監督
コゴナダ監督の前作では、たぶん一生行くことはないだろう美しいコロンバスの街のモダン建築を中心とした美しい映像で目の保養になった。コゴナダ監督は小津安二郎監督を敬愛しているという。小津の影響が強いのは、この映画の映像を見れば一目瞭然である。

白人の夫とアフリカ系の妻の会話を、小津作品得意の「切り返しショット」で映し出す。その手法が映画で何度も繰り返される。しかも、ほぼ真正面でそれぞれの人物を映すショットも一緒だ。

あとは、誰もいない部屋の内部空間を映すショット小津安二郎監督作品ではよく見られる。自分の好きなカラー作品「浮草」は大映作品で名カメラマン宮川一夫が、小津流で撮る。その時のいくつかのショットにアナロジーを感じる。決してパクりではない。これはこれで悪くない。


⒉秀逸な音楽とインテリア
小津安二郎流で映し出す主人公の家のショットが映えるのも内部のインテリアのセンスの良さが際立っているからだ。前作でもコロンバスのモダン建築に焦点を当てたコゴナダ監督は建築に造詣があるのではないか?コゴナダはコリア系だが、ここで映し出されるインテリアはアジアンというよりジャパニーズテイストと言っていい。和風の障子を多用したり、内部造作の木の使い方に日本のテイストを入れているので、親しみが持てる。外部の緑を強調した樹木の見せ方もうまい。


そんな美しい映像のバックで流れる音楽のセンスが抜群にいい。坂本龍一のテーマ曲は別として、音楽担当Aska Matsumiya 優しいピアノ基調の音楽に快適な気分を感じる。映像の基調は解像度が高いものではなく、薄暗いテイストだ。紆余曲折あるストーリーの強弱で魅せる映画ではない。やわらかいストーリーとともにしっとり快適な時間を過ごせる。
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映画「渇きと偽り」エリックバナ

2022-09-23 20:18:09 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「渇きと偽り」を映画館で観てきました。


映画「渇きと偽り」エリックバナ主演のクライムサスペンス映画である。「ミュンヘン」「ハルク」などのエリックバナが久々に母国オーストラリアに戻って主演を張る作品だ。ベストセラー小説「the dry」ロバートコノリー監督で映画化した。余計なことだが、「秘密の森、その向こう」が大外しのつまらなさで、違ったテイストで選んだら、想像以上におもしろかった。

映画がはじまり、町の上空から広大な大平原を映す。これがアメリカといわれても誰も疑問に感じないであろう。キエワラの町は年324日晴れていて乾燥しきっている。火災が起きやすい状況になっている。観光大国のように見えるが、実はまさにdryなエリアということがわかる。

オーストラリアの連邦警察のエリートであるアーロンフォーク(エリックバナ)は、高校時代の友人ルークの葬儀に出席するために故郷のキエワラに帰郷する。ルークは妻子を殺してそのまま自殺した。言葉も話せない乳幼児だけ残してルークが自ら死んだのかルークの両親も信じられない様子をみて、警察官の職務としては休暇中にも関わらず真相を知りたいと動き出す。


高校時代の女友達グレッチェン(ジュネヴィーヴ・オーライリー)はアーロンを歓迎してくれたが、キエワラの町の人はアーロンをよく思っていない。それは、20年前に川で水死したルーク、アーロンの共通の友人エリーの死にアーロンが関わっている疑いが当時あったのだ。アーロンは父とともにそのとき町を離れている。エリーの死の真相も探りながら、ルークが本当に家族と心中を図ったのか地元の警官レイコーとともに調べていく。


謎解き要素が強いストーリーで徐々に引き込まれる映画だ。
結局2つの謎解きに付き合う。20年前の水死の真相と今回の一家心中の真相だ。ここでは、謎を追うアーロン自身が最初の水死事件の犯人とも疑われてもおかしくない状況にある。水死の前にエリーにアーロンが渡した「川で逢おう」というメモが遺品としてあったのだ。エリーの親や親類にいやがらせをうける。ルークにも水死事件の犯人になってもおかしくない振る舞いがある。


この映画では、映画の進行とともに、いろんな登場人物のうち誰が殺しをやってもおかしくないと観客が推理するような場面をいくつもつくる。これがうまい。自分も途中で、ある人物が犯人で決着するのかと思った。その推理をはずしながら展開するので画面から目が離せない。やっぱり、ミステリータッチのクライムサスペンスは良いねえ。

上映館は少なく、観客も少なかった。
でもおすすめのサスペンスである。
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映画「NOPE」ジョーダンピール&ダニエルカルーヤ

2022-08-30 19:36:58 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「NOPE」を映画館で観てきました。


映画「NOPE」「ゲットアウト」でB級映画を大ヒットさせアカデミー賞脚本賞まで受賞したジョーダンピール監督がまたその創作力を発揮しているようだ。キモイ映画かと一瞬迷ったが、映画館に向かう。意外になじみやすい

ハリウッド映画に登場する馬を調教している牧場で、いきなり空から降ってきた物が牧場主の頭に当たる。目の前にいた息子OJ(ダニエルカルーヤ)が病院に搬送するが死亡する。OJと妹のエメラルド(キキパーマー)が牧場の跡を継いだが、馬が映画スタッフを蹴ってしまい出演話はながれてしまう。やむなく近くの西部劇テーマパークに馬を売ろうと行った時、経営者(スティーブユアン)が子役だった時の逸話を知る。


父親の事故の時に飛行体(UAP)が空を飛行するのを目撃していることもあり、2人は実際に撮影して動画にすれば儲かると企む。家電ショップでカメラを購入して牧場にセッティングする。その時から奇怪な現象が起きていくという話だ。


これからの話はさすがに言えない。
映画の途中から何かよくわからない不穏なムードが流れていく。どぎついシーンはさほど多くない。「遊星から物体X」のようなスプラッター的要素があると一気に引くがさほどでもない。怖さは徐々に増す。それでも、映画の進行に素直に身を任せていくと不快感なく観れていく映画だ。

⒈映画の格
低予算映画の「ゲットアウト」がウケたせいか、予算もふんだんにもらえたのではないだろうか?ヴィジュアル的にハリウッドの腕利きスタッフを起用しているのが映画を観てわかる。撮影にはホイテ・ヴァン・ホイテマという名カメラマンを起用する。音楽も洗練されており、映画の格は上がっている。

ゲットアウトのダニエル・カルーヤの起用はもちろん成功、ひょうきんな感じがいい。しばらくして、こいつ観たことあると感じる東洋人が出てくる。村上春樹原作の韓国映画バーニングで強い印象を残したスティーブ・ユアンだ。現地育ちの流暢な英語を話す。主人公の妹役のキキ・パーマーよくしゃべるせわしない黒人という感じが親しみもてる。メジャー俳優はいないけど、みんないい感じだ。


⒉謎を残す
最初にチンパンジーが出てきて、女性が倒れているシーンを見せる。横にはなぜか靴が立っている。その直後に牧場主が突如倒れるシーンが映し出される。これってどういうこと?と思いながら、映画が進行していく。その後も少しづつ謎が増えていく。冒頭のチンパンジーの事件については、映画内で詳細に伝えられる。

でも、映画を見終わっても、それぞれのシーンの意味がよくわからない。ネタバレサイトを観たら、いろんな解釈がでてくる。なるほどと思う反面、そこまで大それたことなの?と思ってしまう。どうにでも解釈できるように、やんわりとエンディングまで持っていく。


異類への遭遇(軽いネタバレ)
映画の中で語られるが、今はUFOと言わずにUAPと言うそうだ。「ジョーズ」のサメのように、映画が始まってしばらくはその姿を現さない。空を見上げるとずっと動かない雲があって何かおかしい。雲の中から、水族館にいるエイのような物体が姿を見せる。最終的には異類が出現する。スリラーから途中で怪獣映画のような展開になる。それぞれの登場人物を映すカメラワークが抜群にいい。かたずをのんで観ていく。
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映画「ブライアンウィルソン 約束の旅路」

2022-08-16 17:16:12 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ブライアンウィルソン 約束の旅路」を映画館で観てきました。


映画「ブライアンウィルソン 約束の旅路」ビーチボーイズのブライアンウィルソンの往年の映像と直近のインタビューを中心に描いたドキュメンタリー作品である。個人的な2015年の映画ベストは、ブライアンウィルソン自身をポールダノとジョンキューザックが演じたラブ&マーシーで大好きな作品だ。ビーチムードあふれるサウンドで人気を集めたビーチボーイズの人気絶頂の時に、バンドの中心人物だったブライアンウィルソンが薬物に溺れて凋落していく姿を描いた。

今回のドキュメンタリーでは、年老いてまだ現役のブライアンウィルソンが自ら出演すると同時に、昔のビーチボーイズの映像も観られるようだ。早速映画館に向かう。驚いたのが、男性おじさん率が95%を超えるということ。お盆休みだからなおさらかもしれないが、一部若い男性音楽ファンがいてもカップルはほとんどいない。公営ギャンブルやプロレス会場並みの男性率の高さは映画館では近来稀に見る。

ブライアンウィルソンは、ビーチボーイズのウィルソン兄弟の長兄で作曲兼プロデュースの実質リーダーであった。1960年代に南カリフォルニアのムードを基調にしたサウンドでヒット曲を連発させた。徐々に精神に異常をきたして行き、長らくメンバーから抜ける時期もあった。数々の苦難を経ていまだミュージシャンとして現役である。


気難しいブライアンと気心が通じている音楽雑誌ローリングストーン誌のジェイソンファインが、自ら運転するクルマにブライアンを乗せ、想い出の場所を走り回る。すでに亡くなったブライアンの2人の弟の想い出を語ったり、強引なステージパパだった父親との確執やブライアンの主治医が薬漬けにした話なども混ぜていく。ブライアンウィルソンのファンであるエルトンジョンとブルーススプリングスティーンの2人の大物のインタビューも織り交ぜる。超一流のプロがここまで絶賛すると、ブライアンウィルソンの凄みも増す。聞き手の引き出し方も絶妙だ。


この映画も居心地のいい映画だった。
夏にはビーチボーイズというわけではないが、めったに乗らない車を運転すると、アルバム「エンドレスサマー」で初期のヒット曲を聴いている。映画が始まりモノクロで映る初期のビーチボーイズの姿にウキウキしてしまう。精神と体調を崩したブライアンウィルソンの最悪期を映画ラブ&マーシーほど触れているわけではない。あの映画は本来暗い題材なのに不快な感情がなかった。この映画も同様である。しかもブライアンは回復している。カラッとしたビーチボーイズのハーモニーがバックに流れているおかげで気分良く過ごせる。



ペットサウンズを聴きかえす。
名作アルバムと言われる1966年の作品である。歴史的にも評価が高い。ラブ&マーシーでもブライアンウィルソンがサウンド作りに凝りに凝って精神に支障をきたす姿を映し出す。この映画を観たのがいいきっかけなので、久しぶりに聴いてみる

サイケデリックロックなんて言う人もいる。でも、むずかしい曲が並ぶわけではない。あくまでビーチボーイズ特有の美しいハーモニーが基調である。曲の長さも一曲あたり3分台までで収まり簡潔だ。このリズムを聴いて「ペットサウンズ」なくして山下達郎や大滝詠一の存在があり得たのかとも思ってしまう。

スタートは「Wouldn't It Be Nice」で始まる。数多いビーチボーイズの曲の中でも大好きな曲だ。三木孝浩監督陽だまりの少女でテーマ曲として使われたのも記憶に新しい。その後に続く曲のメロディラインが美しい。映画の中でブライアンが「Caroline, No」を歌っていたのが印象的だった。アルバムをじっくり聴くと、アレンジに凝っているのがわかる。多彩な楽器が使われている。4ヶ所のスタジオで収録したなんてセリフもあった。まだシンセサイザー利用となる前の時期で楽器の音質の組み合わせを模索してひたすら音にこだわる。


ビートルズの「ラバーソウル」に影響を受けたという。初めてシタールが使われて、「in my life」ではプロデューサーのジョージマーチンが弾くバロック調のハープシコードの音色が流れる。多彩な音をバックに使うというのもテーマの1つなのだ。

こうやって「ペットサウンズ」を聴くと、ビートルズの「サージェントペッパーズ」に影響を与えたという世評はまんざら大げさでないのがよくわかる。アナロジーを多くの曲で感じてしまう


観客は男ばかりといったが、映画館を出ようとすると、数人の女性に出くわした。もちろん白髪混じりで迫力がある。音楽雑誌の元記者風か?共〇党を応援するバアさんとちょっと違うワル風で、この映画マイク・ラブのこと触れていないよねなんて話していた。確かにそうだ。このあたりの確執はむずかしいねえ。
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映画「あなたと過ごした日に」

2022-07-25 20:28:10 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「あなたと過ごした日に」を映画館で観てきました。


いい映画やっていないなあ。週末はスルーかと思いながら、日経新聞の映画評で「あなたと過ごした日に」が気になったので、公開劇場は少ないけど観に行く。これが大当たりだった。ツイている

映画「あなたと過ごした日に」は、アカデミー賞外国映画賞を受賞したことあるスペインのフェルナンド・トリエバ監督コロンビアを舞台にある医師の家族について描いた作品である。昨年末MONOSというコロンビアのゲリラ部隊を扱った映画を観た。評価は高かったが、自分にはイマイチだった。

コロンビアにはコーヒーの原産地であるイメージやバリーシール」、「ブロウなどの麻薬映画の舞台というイメージしかなかった。「MONOS 」で、コロンビアで反体制のクーデターが長年続いていることを知った。

コロンビアのメデシンで公衆衛生が専門の医師であるエクトル・アバドゴメス博士(ハビエル・カマラ)は、妻と女5人男1人の6人の子供たちと大きな邸宅で幸せに暮らしている。大学で教鞭をとるゴメス衛生状態に問題のある町の改善に取り組んでいる。同時に、既成の組織に反発した反体制の発言で保守派にマークされているという話を息子エクトルの視線を中心に1971年、1983年、1987年の3つの時代から眺める。

フルボディのワインを思わせる重厚な味わいをもつ傑作である。
個人的には本年公開のシリアスドラマ系でいちばんよくみえる映画を観たという実感がもてる。小説化されたとはいえ、実話に基づくノンフィクションである。でも、ドキュメンタリー的なつくり方はされていない。人権擁護の話となると、反体制知識人が出てきて思想的要素が深まり暗いムードになるが、そうはならない。ラテン系の陽気な一面が暗部を打ち消す

コロンビア史の暗部に注目しているとはいえ、改めて歴史背景を予習する必要はない。あくまで人間ドラマとしての見どころをもっているから知らなくても大丈夫だ。物語の肝になる博士役のバビエル・カマラが緩急自在の演技をする。これにはうまいので唸った。


⒈エクトルアバドゴメス博士
公衆衛生が専門の医師である。階級による格差に疑問を提起しているので、周囲にアカだと思われ、自宅に「共産主義者」といたずら書きされる。しかも、カールマルクスが「宗教は民衆のアヘン」と宗教信仰を否定するのと同じように博士もキリスト教嫌いなので、なおのことそう思わせる。神学校に入った息子にも天地創造の絵はウソだと教えている。

でも、共産主義者ではない。博士はマルクスも読んでいないし、関心もない。ただ、自由平等を主張するだけなのだ。早口で自由を訴える博士が誤解されても仕方ない。博士は実際に心の暖かい人だったと想像する。愛情あふれるシーンが数多く用意されている。ハビエル・カマラのハートフルな人柄がにじみ出る。いい感じだ。

⒉モノクロとカラーの組み合わせ
映画は1983年にイタリアのトリノにいる息子のエクトルが帰宅した時に、父親の記念講演があるという留守電を聞くところからスタートする。そしてエクトルが帰国して父親と対面するまでがモノクロだが、時代が1971年に遡るとカラーになる。

歴史を感じる崇高な建物が数多く立ち並ぶメデシンの街で、子どものエクトルを中心にカメラは大家族の生活に密着する。家族が住む邸宅も美しい姉たちが着飾る姿も色鮮やかに映し出す。海辺のシーンなどでは衣装、小物を含めていかにもラテン系の国だとわかる色使いだ。そこでもいくつか事件が起こるが、さほどでもない。カラーの映像の時代は平和に展開する。


1983年エクトルが大きくなった時、モノクロに戻る。反体制運動を含めていろんな事件が起きていく。エクトルと妹以外は同じ配役で年齢の移り変わりを色を落として表現する。父親の行動は政治にも足を突っ込んでエスカレートする。エクトルが父親に反発する場面も出てくる。エレジーの香りも徐々に強くなる。この切り替えはうまい!

⒊時代を感じさせる音楽と劇中映画
基調になる音楽のセンスはいい、緊迫感ある最終局面まで安定している。美しい姉たちはラテンステップのダンスをしたりお嬢様モードたっぷり。1971年の時代背景を示すようにキャロルキングの「きみの友だち」が流れる。アルバム「つづれおり」は全米ヒットチャート1位に長らくあった。シングル「イッツトゥレイト」が5週連続1位で、その後でジェームステイラーがカバーした「きみの友だち」が全米ヒットチャート1位となる。コロンビアでも流行ったのであろう。名曲だ。

エクトルが父親と映画を観にいく。子どもにはまだ意味がわからず、ウトウトしてしまう。グスタフ・マーラーの交響曲5番が流れるので、ヴィスコンティの「ベニスに死す」を観ていることがすぐわかる。エクトルが大人になった時、自宅のTVでもう一度同じ映画が映し出される。マーラーをモデルにしたと言われる主人公が映る。あの時は子どもで意味がわからなかったとエクトルが懐古する。


でも、映画情報を読むと、フランソワ・トリュフォー監督の作品と書いてある。ちょっと待ってよ映画関係者、マーラーの5番が鳴り響いて、海辺に座る主人公を演じるダークボガードが映ったら「ベニスに死す」しかないでしょう。しかも1971年を代表する映画だよ。すごくいい映画なのに事務方はどうしたの?


⒋手洗いのススメ
映画に入場しようとしたら、ノベルティをもらった。それも「キレイキレイ」の試供品だ。何かの間違いかと思いながら、こんなのもらうの初めてとびっくりした。父親は衛生が専門だからというわけではないが、子どもに「手には汚いものがついているから、この歌を歌い終わるまで洗いなさい」と指導する。印象的なシーンだ。感染症を予防するために、予防接種を推奨する。息子にはいの一番で試しうち、街で一般の人に予防接種させる時には娘たちに最初にうたせる。


この映画コロナが蔓延する前にできた映画だけど、なぜか時流にあってしまう。だからか?ライオンが協賛したので試供品をもらえたのだ。でも、コロナ以前自分は今のように手洗いしていたっけかと思う。お陰でこれまで年に一度程度は風邪をひいたが、まったくひかなくなった。手洗いは大事なんだね。

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映画「ボイリング・ポイント / 沸騰」

2022-07-18 17:26:55 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ボイリング・ポイント」を映画館で観てきました。


映画「ボイリング・ポイント/沸騰」はロンドンの人気レストランのある一晩を描いたグルメ群像劇である。監督のフィリップバランティーンはシェフの経験があるという。90分ワンショットという宣伝文句が気になり映画館に向かう。有名な俳優はでていない。クリスマス前金曜日の人気レストランでのシェフと厨房、フロアスタッフがお客さんと関わる裏話が盛りだくさんで、手持ちカメラがずっと登場人物を追い続ける。

お見事!レストランやシェフに焦点をあてた映画で、こんな作品観たことない。
スピード感あふれる最後まで目が離せない映画だ。必見!

ともかく90分を疾走しつづける。エピソードはこれでもかという感じに盛りだくさんで連続していく。一筆書きタッチのにはバードマン」や「1917 命をかけた伝令といった名作がある。いずれも、ここまで短時間の出来事を描いているわけでない。一定の時間の話を編集でつなげているわけだ。この映画も当然軽い編集はされているはずだが、短時間に起こる出来事を映画の中に充満させる。

個人的には、室内セットのみの映画って閉塞感があって好きでない。この映画はレストラン内がほとんどで、一部レストランの外に出る場面があるだけである。でも、息が詰まらない登場人物のプロフィールをわずかな時間で浮き彫りにした上で、手持ちカメラが厨房側、客席側をひたすら追う。静的でなく動的だ。緊迫感を高める。目が離せない。

ただ、よだれがでるような料理の逸品が映像に映るグルメ映画でない。その期待をもっている人は裏切られるだろう。むしろ自分には食材を雑に扱っているように見えるので悪しからず。


⒈登場人物
ここに出てくる登場人物はお客様だけでなくスタッフも偏屈な奴が多い。ほとんどが共感の気持ちが入りにくいメンバーだ。しかし、ドラマらしくする葛藤を生むためには仕方あるまい。どんな業界でも、営業サイドと技術部門との葛藤ってある。ここでは、厨房内とフロアスタッフの葛藤で大声のケンカも絶えない。

フロアをまとめるマダムは、レストランオーナーの娘だ。一生懸命やっているように見えるけど、周囲から必ずしも好かれていない。シェフ(スティーヴン・グレアム)を助ける女性の副料理長カーリー(ヴィネット・ロビンソン)に、客が無理強いでオーダーしたメニューにないものを頼むけど、当然拒否する。言い合いの中でカーリーの愚痴が叫びになる。給料あげてくれってカーリーはシェフを通じて頼んでいる。ダメなら他にも行けるので、逆らっちゃう。そういうありがちな話もたくさん盛り込まれている。


⒉いくつかのエピソード
いきなり衛生管理局の監察官が来て、手洗いのことや冷蔵庫の温度設定など矢継ぎ早に厨房内でヒアリングをして、気がつくと衛生の評価が5から3に落ちる。シェフのアンディは家のゴタゴタで開店寸前の出勤だ。監察官の嫌味っぽい聞き込みでこの先の面倒な展開が予測できる。

シェフが以前いた有名店のオーナーシェフが突然グルメ評論家を連れてきたり、フォロワーが5万いるという自称インフルエンサーがメニューにないビーフステーキを頼んだり、黒人女性スタッフがワインを注ごうとすると人種差別傾向があると思しき顧客がケチを付け 肉の焼き直しの要求が理不尽で厨房が大騒ぎになったり、小さな逸話が盛りだくさんだ。


⒊グルメ(料理)映画
グルメ映画の最高峰のデンマーク映画バベットの晩餐会だけでなく、映画「シェーン」のグルメ版とも言える伊丹十三タンポポなども含めて、1人のシェフがクローズアップされることが多い。昨年公開のフィンランド映画世界で一番幸せな食堂も中国人シェフが助っ人に来る設定で似たようなテイストを持つ。

ここでもレストランのシェフであるアンディを中心にストーリーは動く。しかし、主役はいれど、厨房内外、来訪する客のそれぞれにプロフィールを持たせたロバートアルトマン的な群像劇である。こんなグルメ映画は過去には観た記憶がない。過去のグルメ映画にも厨房内部のスタッフは当然画面に出ているけど、TVドラマでなく、短時間の映画に各スタッフの動静を凝縮して映す作品は見当たらない。それだけに新鮮な感動を与えてくれる。


どうもコロナ前に撮られたようで、マスク姿は皆無である。でも、裏方とは言え、調理とは関係ないおしゃべりを厨房スタッフがこんなにしていいのかしら?初っ端から衛生局の監察官による実査があるけど、監察官もマスクしていない。え!衛生的に大丈夫と思わず感じる場面は多い。
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映画「リコリス・ピザ」ポール・トーマス・アンダーソン

2022-07-03 17:25:10 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「リコリス・ピザ」を映画館で観てきました。


映画「リコリスピザ」はポール・トーマス・アンダーソン監督の青春映画である。ダニエルデイルイスの引退作ファントムスレッド以来4年ぶりの新作なので,すぐさま映画館に駆けつける。若い主演2人は知らない俳優だ。映画を見終わって初めて,主演の若者がフィリップシーモアホフマンのせがれだと知る。相手側3人姉妹のロックバンド・ハイムのボーカルだ。応援にショーン・ペン,ブラッドリー・クーパーとメジャー俳優が駆けつけている。


1973年15歳の子役俳優ゲイリー(クーパー・ホフマン)が学校に写真撮影に来ていた写真館のアシスタントのアラナ(アラナ・ハイム)を好きになり,いきなり付き合ってくれと告白する。25歳でずっと年上なので冗談でしょうと取り繕わない。ところが、接触をもつ機会が増えていつの間にか2人の関係は進展していく。その恋愛の紆余曲折が語られる。

わかりやすい英語のセリフなので,頭の中に内容が入って来やすい。この時代のゲイリーの年齢は自分に近い。ただ、「ごった煮」といった感じで,様々な題材がごちゃまぜに映画に収まっている印象を受ける。いつもより構成力が弱い気もする。好き嫌いは分かれるのではないだろうか?映画を観ていて、途中で頭が整理つかなくなる時もあった。


⒈ポールトーマスアンダーソン監督
新作が出るとなると見逃せない監督である。「マグノリア」で最終場面に向けて空からカエルが降ってくる場面に仰天した。「ブギーナイツ」「パンチドランクラブ」はどちらかと言うと青春ものでこの映画もそのテイストを持つ。でも、作品群では、人物を描いた「ゼアウィルビーブラッド」や「ファントムスレッドの方が好きなのかもしれない。

ポールトーマスアンダーソン着想が豊かである。頭の中に数え切れないような映画の題材の構想があるのではないだろうか。それをじっくり数年にわたって頭の中で醸成させて、映像表現に置き換えてこの映画を作ったのがよくわかる。リコリス・ピザというのは当時西海岸エリアにあったレコードショップの名前である。西海岸で育った人は1973年当時を思い浮かべて感慨にふけるのかもしれない。音楽のセンスは抜群だし、雰囲気自体は心地よい。



⒉ごった煮のいくつか
ザ・マスターの後でインヒアレントボイスは、映画を観ていて正直訳がわからない状況になった。この映画もどちらかというと似ているかもしれない。結局,友達の延長にすぎない単純な2人の恋物語で、たくさんのネタがあっても、ストーリーに根幹があるわけでない。伏線にこだわらないし,何かがあると思わせる人物を登場させても結局曖昧な存在になることもある。

1973年といえば、世界中を震撼させたオイルショックの年である。映像にあるようにガソリンスタンドに行っても大行列で給油できない車が続出する歴史的背景もキーポイントになる。同性愛が今ほど認められていない時期に、選挙候補が男の恋人に迫られ戸惑っている姿にもまだ保守的な70年代のアメリカを感じさせる。

主人公のゲイリーは、俳優業をやっているとしても15歳の少年である。それなのにウォーターベットの販売をしたり,ピンボール場のオーナーになったりする。この年でこんなことできるの?と思ってしまうが,ポールトーマス・アンダーソンのインタビューを見ると、実際に監督が同じようなプロフィルだった実在の人物に出会っているらしい。さすが自由主義経済の本場アメリカはちがうねえ。日本じゃありえない。

荷台が大きく、サイドミラーでしか後が見えないガス欠のトラックで、ヒロインのアラナが坂道をバックで走らせるシーンなどの見どころもあるけど、小コントを繰り返しているだけにも見える。すげえなあと思うシーンは少ない。


アラナに俳優の卵になるような設定をさせてショーンペンやブラッドリー・クーパーを絡ませる寸芸という感じのワンシーンがあるけど、存在感はある。日本料理屋の経営者の妻役で日本人女性が出てくるシーンが2つ出てきて、毒っ気のある日本語のセリフを話すシーンにはびっくりした。
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映画「エルヴィス」 トムハンクス&オースティン・バトラー

2022-07-02 18:27:36 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「エルヴィス」を映画館で観てきました。


映画「エルヴィス」はエルヴィスプレスリーの生涯を描いた華麗なるギャツビーの監督バズ・ラーマンの新作である。エルヴィスプレスリーと敏腕マネジャーとして有名だったパーカー大佐との関係を中心にして、めずらしくトムハンクスが悪役を演じるところが見どころでもある。

カントリー歌手のマネージャーだったパーカー大佐(トムハンクス)が、メンフィスで人気上昇のエルヴィスプレスリー(オースティン・バトラー)の噂を聞きコンサートに向かうと熱狂の渦だった。早速エルヴィスのマネージャーとして契約を結ぶと、辣腕を振るい、エルヴィスは全米で大人気となる。

しかし、腰を振った歌い方や黒人音楽によりすぎだとクレームがつく。兵役に向かったりした後で、パーカー大佐が映画会社と結んだ契約でコンサートに60年代後半まで出演することはなかった。TVで再度歌った時にエルヴィス復活と評判となり、ラスベガスのステージに長期で出演する。これにはパーカー大佐の強欲とギャンブル好きが絡んでいたという話だ。


凄まじい高揚感で序盤戦から引っ張る。期待以上の興奮をもたらす。
かなりお金がかかった映画だと思う。美術設計では定評のあるバズラーマン監督は、その時代に応じたセットを巧みに作り上げてリアリティを感じさせる。
オースティン・バトラーはエルヴィスになりきり、歌も上手だ。デビュー当時から晩年までその時々のエルヴィスの歌い方を見事にマスターする。歌手の伝記映画は、アップダウンがつきものだ。そこには常にマネージャーであるパーカー大佐の強欲が絡んでいく。悪役になることがあったのかと思うくらいのトムハンクスが結局エルヴィスの儲けの半分を横取りしているパーカー大佐の暗部を見事に演じた。トムハンクスの芸が広がった印象を持った。


⒈デビューまもないころの興奮
ここがもっとも興奮する。「That’s all right」が若者の間で評判になっていた。その噂を聞きつけてパーカー大佐が見に行ったコンサートのシーンが圧巻だ。ピンクのスーツで現れて、腰を振りながら歌い出す。最初はシーンとしていた観客を映し出す。徐々に若い女の子たちがプレスリーを見ながらしびれきって、金切り声を上げる。この高揚感がすごい!

ここのシーンは大画面で観ると実にエキサイティングだ。バズラーマンの手腕を感じる。これを観るだけでも行く価値がある。


⒉黒人音楽からの影響
デビュー曲That’s all right. もHound dogもオリジナルの黒人が歌うネットリとしたブルースの原曲がある。それぞれの黒人歌手が歌うシーンがすごくいい。プレスリーが黒人音楽から強い影響を受けたのがわかるシーンが続く。当時のメンフィスを再現したセットもよくできている。そこでBBキングと語り合うシーンもある。リトルリチャードがプレスリーも歌っているTutti Fruttiを歌うシーンもノリがいい。

しかし、あくまで南部エリアであり、人種差別が激しい中で、プレスリーにも逆風が吹くのだ。


⒊ステージ復活
自分の実家は商売をやっていて、昭和40年代まで住み込みの従業員がいた。その1人が映画雑誌をずっと読んでいて、時おり自分ものぞき見した。そこにはアンマーグレットと一緒に写るエルヴィスプレスリーの写真がずいぶんとあった記憶がある。気がつくと、映画スターになっていたわけだ。そこにパーカー大佐が映画会社と結んだ契約があったことを初めて知った。


それが、TVショーのライブで歌ったことで人気が再燃して、ラスベガスのステージで歌うことになる。この経緯もこの映画で語られる。1969年11月にSuspicious mindが久々の全米1位になる。この年はビートルズのget backやローリングストーンズのhonky tonk Womenなどが1位になっているが、プレスリーがトップになった11月にビートルズのcome together とsomethingのEP両面ヒットが1位となっている。そういう良き時代だ。

⒋1971年の暑い夏とエルヴィスオンステージ
子供の頃に知っていたプレスリーは映画スターとしての存在であった。ラスベガスのステージで復活したのは日本でもかなりの話題になっていた。1971年の夏「小さな恋のメロディー」「ある愛の詩」などが流行っている中で、「エルヴィス オン ステージ」がかなりのロングランヒットであった。自分も有楽町の日劇横の映画館に観に行った。そこにはエルヴィスのTシャツを着た若者たちがかなりいた鮮明な記憶がある。日本では「この胸のときめきを」が大ヒットしていた。この映画でやらなかったのは少し残念。

ステージで興奮した女性とキスするシーンがこの映画の後半で映る。思春期の自分には女性たちが興奮する意味がよくわからなかった。でも年月を経て再度この映画を見ながら,その女性の気持ちもわからなくないような気もしてきた。


この映画を見てプレスリーファンで有名な湯川れい子さんはどう思うんだろうなと考えていた。映画のエンディングロールで最後に字幕監修で湯川れいこさんの名前を見て妙に感動してしまった。
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Netflix映画「レスキュードッグ ルビー」

2022-06-19 09:21:01 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「レスキュードッグ ルビー」は2022年のNetflix映画


レスキュードッグルビーはアメリカ映画で実話に基づく警察犬を扱う警官の物語だ。直近映画館で観た難民の物語「FLEE」は自分に合わず、感想が書けない。ドロドロした人間関係が続く韓国ドラマを見た後で、ほのぼのした映画を求める。勧善懲悪というよりも、悪人がいない作品で心を暖めてくれる映画を求める人にはおすすめだ。

警察犬部隊への入隊試験に7年連続で不合格だったロードアイランド州の警察官ダニエル・オニール(グラント・ガスティン)が、保護犬施設でなつかないので7回も返却された1歳のメス犬・ルビーを引き取る。ダニエルの家で警察犬に仕立てようと訓練しても、思い通りに行かないが、ルビーが徐々に才能を発揮し始めるという話である。

ロードアイランド州といってもピンと来ないだろう。マサチューセッツ州の隣で人口100万程度しかいない小規模なところだ。ダニエルは警察官で人の良さに満ち溢れているような20代の好青年である。今でも妻とはラブラブでヨチヨチ歩きの男の子と暮らしている。正直と粘り強さが取り柄だ。仕事は任務をきちんとする気のいい男だけど、勉強は大の苦手。警察官部隊に入隊できるのは30歳までで最終局面に入っている。


警察犬は1万ドルもするらしい。それなりに飼育するための経費もかかるからであろう。警察ではもう用意する余裕がなく、保護犬施設で賢いと勧められたルビーを引き取る。ただ、誰もが飼うのをあきらめたルビーは、ダニエルの家に行っても同じようなものだ。何度も予備テストで不合格になった後、本を読むことも苦手なダニエルが教則本を使って懸命に個人指導していく。


成長物語にありがちな清々しさと達成感が得られる。あとは、妻との仲が良く、かわいい子供もいて幸せなアメリカンファミリーといったところも心休まるのかもしれない。犬とヨチヨチ歩きの赤ちゃんの取り合わせも相性がいい。最後に向けて、思いがけないハプニングが起こる。実話というが、これが本当だとするとビックリだ。まさにgood girlだ!

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映画「君を想い、バスに乗る」 ティモシースポール

2022-06-12 18:48:27 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「君を想いバスに乗る」を映画館で観てきました。


映画「君を想いバスに乗る(英題: Last bus)」は名脇役として数々のメジャー映画に出演してきたティモシー・スポール主演の英国縦断の旅に出る老人の話である。クライム系の映画が続くと疲れ気味で暖かい映画をカラダが欲している

若い人からパワーをもらいたいと思っているので、もともと老人主体の映画は敬遠気味である。ただ、老人の一人旅というと、いつも悪夢に満ちた作品が多い奇才デイヴィッドリンチ監督が例外のようにつくったロードムービー「ストレイトストーリー」が好きだ。もしかして同じような暖かいテイストをもった映画ではという期待を込めて映画館に向かう。

期待は裏切らなかった。映画全体にやわらかいムードが流れる心やさしい映画である。
映画ポスターを見ると、主役の老人の顔が気難しそうでこわい。たしかに映画でも、我を通して頑固な男である。でも、亡き妻と結ばれた60年以上前の2人の姿を映し出し、現代の映像に織り交ぜるのが効果的に効いている。周囲に支えられているのもひしひしと伝わる。

90をすぎて、愛妻と死別したトム(ティモシースポール)は妻とのある約束を果たすために、スコットランドから以前住んでいたイングランドの西端ランズエンドまで1350キロの旅に出る。路線バスをつないで行くわけだが、行く方々で数々の困難にぶつかるロードムービーである。

妻との約束は最後まで語られない。2人はランズエンドで結ばれて新婚生活を送っていたが、ある事情があって1952年に出来るだけ遠いところに行きたいという妻の希望スコットランドの北部の離れたところに引っ越したのだ。

⒈綿密な計画と数々の困難
トムはどのバスに乗ってどこまで行き、乗り換えるという綿密な計画を手帳に書き綴っている。行き当たりばったりに1350キロの旅に出るわけでない。自分も旅行は計画のディテールにこだわって実行していくタイプなので気持ちはわかる。

しかし、全部が筋書き通りにはいかないものだ。大事にしているアタッシュケースを盗まれそうになったり、バスを乗り越してしまってその日の目的地を通り過ぎて野宿をせざるを得なくなったり、混雑したバスの中で人種差別発言をする男に注意して絡まれたりする。絶えず計画の修正を余儀なくされる。ちなみに撮影時は侵攻前だったけど、ウクライナの移民も出てくる。


それでも、周囲との交わりの中で、老人が1350キロの旅をしていることがSNSで一般に周知されて良いように捉えられる。応援する人たちが出てくるのだ。人との出会いっていかに運をよくするかという見本のようなストーリーの流れがでてきて難題もこなせるようになる。


⒉ティモシー・スポール
1957年生まれで現在65歳、この映画を撮ったときは63歳くらいだろう。ティモシースポールはその年で90代の老人を演じている。不自然さはない。さすがだ。元自動車整備士で、正義感が強くまじめというのがトムだ。しかも、長年連れ添った妻への愛情に満ちあふれている。妻からの頼まれごとをなんとかこなそうという強い意思も感じられる。


映画を見終わり、ティモシースポールのキャリアを調べると、「ハリーポッター」や「ラストサムライ」などをはじめとして英国王のスピーチではチャーチルを演じている。名作と言われる多数の作品に出演していることがわかる。個人的には否定と肯定ホロコーストはなかったとする学者を演じて、レイチェルワイズと対決する悪役に徹した演技が印象深い。たしかに、映画ポスターを見て、一瞬この主人公の性格が悪そうだから観るのをどうしようと思ったくらいの人相だ。

それでも、往年のチャールズロートンを思わせる緩急自在の演技は天下一品である。観てよかった。
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映画「トップガン マーヴェリック」 トムクルーズ

2022-05-28 21:00:29 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「トップガン マーヴェリック」を映画館で観てきました。


映画「トップガン マーヴェリック」は1986年の「トップガン」の30年後の姿を映し出したトムクルーズ主演の新作である。待ちに待った無冠の帝王トムクルーズの登場で、早速映画館に駆けつける。ここから映画ブログへの復帰を図る。

出世を拒み、パイロット人生を全うしようと大佐にとどまり続けたマーヴェリック(トムクルーズ)が、敵国への侵入飛行でのミッションを果たそうとするエリートパイロット養成所(トップガン)にいる10名のパイロットの指導にあたるという話である。


これは最高だ!文句なしの5つ星である。
低予算の日本映画を見続けた後に、たまに金がかかったハリウッド作品を観るのはいいものだ。娯楽映画の最高峰だ。ストーリーは単純に見えてそうではない。いくつもの起伏を作り、常に逆風がトムクルーズやトップガンのパイロットたちに吹き荒れる中で、前回の「トップガン」で亡くなった仲間の息子が訓練生にいて、トムクルーズとの葛藤をみせる。敵国との交戦シーンは出来すぎという部分はあっても、ハラハラドキドキでおもしろい。

今回の続編は、今から36年前の公開作を観ているかどうかは関係ない。当然前回からのファンは中年の域を超えている。そのファンだけの映画ではない。前作を観ていない若い映画ファンが観ても十分楽しめる快作だ。


⒈トムクルーズ
千両役者の登場である。姿を見ると、思わず声をかけたくなってしまう。現役のパイロットに固執して、マッハ10(音速10倍)の飛行に挑戦する男である。教官になると言っても、実際に戦闘機に乗って隊列の周囲で指導するというわけだ。

もちろん、戦闘機内の操縦席での映像が多く「ミッションインポッシブル」のような激しいアクションが多いというわけではない。でも、実際に飛行機の操縦をしてしまうトムクルーズだけにリアル感がでている。戦闘機の操縦には、ずば抜けた体力が必要だというのも我々に教えてくれる。


カッコいい場面だけでなく、ドジな場面を用意して笑えるムードもあるのにも娯楽映画を知り尽くしたトムクルーズ映画ならではの楽しさがある。誰もが知っている「トムクルーズ走り」で手を振りながら走るシーンもあり、思わず声を上げたくなる。

⒉ジェニファーコネリー
トムクルーズとは旧知の仲で、航空基地の側にある訓練生たちが通うバーの経営者という役柄だ。軽い恋の場面がある。ここまでメジャーな役柄は久しぶりではないだろうか?若いころの「ロケッティア」は好きだったし、アカデミー賞作品の「ビューティフルマインド」での数学者の妻役が自分にとっては印象に残る。


アレ?前作出ていたっけか?とふと思ったけど、でていない。あの時のヒロインは別だった。ヒロインはさすがに50歳ともなれば、往年の美貌も衰えるが、今回の起用は成功だと思う。若けりゃ良いってもんじゃない。年相応の魅力ってある。

ジェニファーコネリーの子どもが友人の家に行って今日は泊まってくる時に、トムクルーズが家に遊びに行って戯れているときに、娘が突然帰ってきて大慌てするシーンは場内の笑いを誘っていた。

⒊前作の流れを踏襲するミュージック
映画が始まり、マッハ飛行に挑戦するトムクルーズを映し出す。いきなりテーマ曲とも言える「デンジャーゾーン」が流れるだけで、背筋がゾクッとする。「キター!」と叫びたくなる。「トップガン」には大ヒットした「take my breath away」をはじめとして、信じられないくらい名曲が多い。多分映画を見たことない若者でも知ってる曲が多いんではないだろうか?


前作と変わらずジェリーリールイスの「火の玉ロック」が流れるだけで、ウキウキする。エルトンジョンがコンサートでよく歌っていたロックンロールの名曲だ。亡くなった仲間がピアノで歌っていたのと同様に息子が歌っている姿を見てトムクルーズがジーンとするシーンもいい感じだ。

久々に映画の醍醐味を味わえた。自分は映画館原理主義者ではないが、大画面で観るべき映画である。
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映画「カモン カモン」ホアキン・フェニックス

2022-04-24 16:54:53 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「カモン カモン」を映画館で観てきました。


カモンカモンはジョーカーホアキンフェニックスの新作である。ジョーカーで世界中をアッと言わせたホアキンフェニックスがやさしいおじさんを演じる。「20センチュリーウーマン」マイクミルズ監督の脚本監督作品である。ここしばらく観に行きたい映画がないのと、会社の社内飲み会再開で会合が連続して続き、飲み過ぎで映画もブログもご無沙汰だった。

ジャーナリストのジョニー(ホアキンフェニックス)は、妹ヴィヴから偏執症で心の病を患っている夫の面倒をみなければならないので、9歳の息子ジェシー(ウッディノーマン)をしばらく預かってくれと頼まれる。取材で全米をまわるジョニーは、ロスで引きとった後にニューヨークからニューオリンズとジェシーを帯同する。旅する2人が行き先々で心のつながりを深める話だ。


ジョニーは行く先々で、取材する子どもたちに、自分の未来について語ってもらうように、インタビューする。いきなり映し出されるデトロイトでは街が沈滞する不安を持ちつつ未来を語る子どもが出てくる。結局、最後のエンディングロールまで現代の子供たちが未来を語る言葉が出てくるという映画だ。

米国メジャーレベルでは普通。圧倒的におすすめという映画ではない。
ジョーカーで世界中を震撼させたホアキンフェニックスが次のワイルド路線に向けて中継ぎのようにやさしくまとめた感じである。ただし、全米の各所で撮られた風景を含めた2人を映す映像コンテは完璧といっても良い。ニューヨークのプラザホテルを借景にして雪のセントラルパークで2人がたたずむきれいなショットやおなじみブルックリン橋などでのショットのセンスの良さはピカイチである。


モノクロ映画であるが、高い撮影技術に支えられると映画ってこんなにレベルが高くなるのかという良い見本である。バックを流れる音楽の選曲も抜群だ。

⒈ホアキンフェニックスとウッディノーマン
満を持して登場したホアキンフェニックスが悪いわけがない。伯父とおいの優しい関係を見せつけるこれまでとちがう役柄である。派手な動きは皆無だがこれはこれでいい。9歳のおいであるウッディノーマンは、よくこんなセリフ話せるなあという難しい会話をこなす。

兄と妹は弱っていた母親の介護で、意見を対立させながら面倒をみていた経緯がある。音楽が専門であるインテリで理屈っぽい妹は夫ともども精神が不安定である。ロスアンゼルスでなく、夫はオークランドに住んでいるので、回復するように付きっきりになる必要がある。妹も兄を頼りにするしかなかった。結局、ジョニーにおいの面倒をみる事情があったのだ。

⒉ませた子ども
先日観たベルファストの主人公の少年とおいのジェシーは同じ年代だ。でも、全然違う。「ベルファスト」はアイルランドの地方都市で、暴動事件こそ起きるが本人は「サンダーバード」のTVキャラクターに魅せられた純情な少年である。同年代時の自分と同じ目線で好感がもてる。

このジェシーは親の影響で、オペラまで聴くませた少年周囲に友人はいないし、大人としか話さないという。正直、脚本がやりすぎでは?と思うくらいのませたセリフだ。人混みで姿を消してジョニーを何度も戸惑わせたり、行きたくもないのにタクシーに乗っている最中に排便したいと言って困らせるのは恋の駆け引きをする面倒な女性を連想する。


映画にいまいち乗り切れなかったのは、年齢のわりにジェシーがませすぎなのと、観念的とまでいかないけど、インタビューに答える子どもたちのセリフが難しすぎて肌に合わないからだと思う。自分が9歳の時、すなわち小学校4年の頃は、こんなむずかしい言葉は話せなかった。叔父という身内に対して、こんな駆け引きもできるわけがなかった。ただ、ウッディノーマンが名子役だというのは確かだ。
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