映画「バレリーナ」を映画館で観てきました。
映画「バレリーナ:The World of John Wick」はジョンウィックシリーズのスピンオフにあたる新作である。シリーズの世界観を派生させて女性の主人公を登場させる。監督はレン・ワイズマンだ。本音を言うと、最初は観ていたジョンウィックの新作も観る気持ちはなくなっていた。映画館にあるポスターを見るとカッコイイ女性がメインでキアヌ・リーブスは控えめになっている。主演はアナ・デ・アルマスだ。なんか気になる作品で映画館に向かう。
暗殺教団によって父を殺された身寄りのない少女イヴは、同じような境遇の子どもたちがいる暗殺者養成組織「ルスカ・ロマ」で表向きはバレリーナの訓練、裏では格闘術を仕込まれる。やがて、成長したイヴ(アナ・デ・アルマス)は殺し屋として活動するようになった。ある殺しの仕事の途中で父親を殺した暗殺教団の手首にあった傷を倒した敵に見つけて驚く。そして復讐の道を歩みむことを決意して教団の拠点での危険な戦いに身を投じる。
手を変え品を変え繰り出されるアクションに圧倒される。
終わったと思ったらまだまだ続くアクションに末梢神経を刺激されっぱなしだ。若干疲れ気味だが十分楽しめた。ともかく主演のアナ・デ・アルマスの頑張りがすばらしい。「ジョン・ウィック」でマンネリを感じていた観客にも、新鮮さを提供して久々に楽しめるアクション映画となったのはうれしい。
⒈多彩なアクション
とにかく最初から最後までアクションだらけだ。目まぐるしく動くシーンを観ていてアクションの設計が緻密だと感じる。冷静になって観ると、すべての動きが「セリフのよう」にセッティングされているようだ。対決する相手との優勢劣勢が絶えず変わる格闘の動きが計算されている。どれも観客を飽きさせない工夫がある。
スタントコーディネートのジャクソン・スピデルの手腕だろう。主演のアナ・デ・アルマスは期待に見事に応えている。アクションのアイデアを本作でかなり出し尽くしたので、もし続編を作るなら舞台や設定を変えるしかないだろう。
⒉印象に残るシーン
女性中心のアクションだ。タイガーマスクの「虎の穴」のような暗殺者育成所では柔道着を着て大男に立ち向かう。正々堂々と戦うよりも「ズルでも生き残る」ことを叩き込まれるのだ。最初はやられっぱなしでも、男性へのチン蹴りなどズルをしてでも勝つコツを掴んでいく。冷徹な養成所のディレクター(アンジェリカ・ヒューストン)は黒柳徹子みたいな厚化粧で威圧感がすごい。格闘好きのジョンヒューストン監督の娘らしい。
復讐する拠点に向かい、雪景色の何気ないカフェで女性店員との女性同士の死闘は観ていて割れた食器の中で倒れてケガをしないのか逆に心配になってしまう。相手の火炎放射器攻撃にイヴがホースを持って放水で立ち向かう場面は思わず吹き出す。日本の戦争特集でアメリカ軍に火炎放射器攻撃でやられる日本兵を見るのはつらい。水圧の強いホースや消火用の噴射は、火炎放射の炎を押し返すだけでなく、視界を奪ったり敵のバランスを崩す効果があるんじゃないだろうか。「機転で逆境を覆すイヴの戦い方」を象徴する場面だ。
殺しのひと仕事を終えてスポーツカーで立ち去ろうとした時に、唐突にクルマをぶつけられて不意にコワモテの男に攻撃を受けるシーンには驚いた。「終わったと思ってもさらに続く」のだ。当然イヴは相手を退治するわけだが、緊張のリズムを落とさないように見事にアクションが設計されている。ここにはすごいと思った。
⒋アナ・デ・アルマス
最初から最後まで出ずっぱりでアクションを見せる。スタントも使っているだろうが、かなりの部分は本人だ。この撮影をこなすには生傷も絶えないしかなり体力がいるだろう。アナ・デ・アルマスの頑張りを讃えたい。最後に向けてジョンウィックが登場してイヴと対峙する。この話はネタバレなので置いておこう。
アナ・デ・アルマスはキューバ出身で現在37歳だ。もともと「ナイヴス・アウト」(2019)や「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(2021)でアナ・デ・アルマスを観ている。自分のブログで振り返ると「ナイヴスアウト」では登場人物が多い群像劇の中でただの脇役でない看護師役として評価していた。「007」ではエロっぽいドレス姿が印象的だ。今後の幅広い活躍に期待したい。