映画「MaXXXine マキシーン」を映画化で観てきました。
映画「MaXXXine マキシーン」はタイ・ウェスト監督がミア・ゴスと三度タッグを組んだ「X エックス」、「Pearl パール」に続く3部作の完結編だ。A24製作で舞台は1985年のハリウッド。ポルノ女優マキシーンがスターになる夢を追い求め、ホラー映画の主役の座を掴むのに周囲では謎めいた殺人事件が続発するという物語だ。
1980年代のロサンゼルスって好きな街だ。その雰囲気が観れるだけで強烈な吸引力だ。正直言って前作「Pearl パール」は自分の好みではないが、ホラーの度合いが弱まるようなので映画館に向かう。
1985年のハリウッド、ロスアンゼルス市民は連続殺人鬼「ナイト・ストーカー」の恐怖に怯えていた。そんな緊迫した状況の中、ポルノ女優のマキシーン(ミア・ゴス)はホラー映画のオーディションに応募する。監督(エリザベス・デビッキ)に選ばれて念願かなって「ピューリタンⅡ」の主役を射止めるが、彼女の女優仲間や親しい人物が一連の殺人事件で次々に殺されていく。
マキシーンの過去のことで私立探偵(ケヴィン・ベーコン)が執拗に接触してくる。その上、殺人事件の犯人がみんなマキシーンの知り合いなので刑事(ミシェル・モナハン)と相棒の刑事からマークされる。マキシーンは監督に迷惑をかけないように自ら行動を起こす。
B級映画のムードがムンムンするサスペンススリラーだ。
ホラー色は強くはなく、続編というより単発のサスペンスとしても楽しめる。ハラハラドキドキの場面が最後まで散りばめられている。
1985年当時のファッションに身を包む面々をクローズアップする。今となっては鈍臭いネオンや良き時代のディスコやレンタルビデオ屋などを背景にしてロサンゼルスの雰囲気が再現されている。基調の音楽も魅力的である。80年代のB級映画へのオマージュも随所に感じられる。セリフも粋だ。ホラー映画でハリウッドスターになったのは誰だなんていい感じだ。
「ナイト・ストーカー」は実在した犯罪者の異名で残虐な犯行にロスは震撼した。本物のヒッチコック「サイコ」の家が使用されているのにもビックリだ。
⒈強烈なミア・ゴス
ミアゴスの圧倒的な存在感が見もの。オーディションに現れたマキシーンはいかにもアバズレ女だ。ポルノ女優だったんですよねとの質問にうろたえない返答である。自信たっぷりにハリウッドの製作者や監督の前で堂々と振る舞う。そして胸を出してみてと面接官に言われて服を脱ぐ。
ここで惜しいのはバストを映像にさらさないこと。同年代で主演を張るフローレンスピューは新作でも乳首も見せてくれるのに出し惜しみだ。残念
それでも、ミアゴスは悪党と対峙するアクションシーンも多く危機一髪の状況に何度もなる。こっちもドキドキするようなシーンを堂々とこなしていくのはすごい。
⒉ハリウッドスターを目指す若者
ハリウッドスターを夢見る俳優の卵の話やハリウッドの光と闇を描いた映画は以前から数多く作られている。直近の「ラ・ラ・ランド」や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に加えて、デイヴィッドリンチ監督「マルホランド・ドライブ」も当てはまる。ハリウッドではなくブロードウェイだが「イヴの総て」も同じ類だ。映画の途中で「マルホランドドライブ」を示す道路標識も出てくる。
ただ、今回のミア・ゴスは他の新進スターたちと若干雰囲気が違う。スターダムを夢見る人々の欲望は同じでも、エマ・ストーンやマーゴット・ロビー、ナオミ・ワッツ、古くはアン・バクスターとイメージは正反対に近いアバズレぶりだ。ポルノ女優出身だと開き直っている。これはこれでいいのではないか。
⒊脇を固めるベテランスター
ケヴィン・ベーコン演じる私立探偵など脇役に曲者を揃えた。登場人物はくせ者ぞろい。まったく訳がわからない存在がいいのだ。
女性陣では、モデル出身の刑事役のミシェル・モナハン、監督役のエリザベス・デビッキはメジャー映画で主人公の恋人役などの準主役的存在だった。殺される女優役のフィルコリンズの娘リリーコリンズも「あと1センチの恋」で主役を張っている。この美女たちを脇に回させるミア・ゴスもすごいではないか。セリフにもあったが、A級のキャストなどの素材でB級映画をつくっている感じで仕上げる。
⒋抜群の選曲センス
基調となるタイラーベイツの音楽が良いのに加えて1985年のムードが充満する映像にバックで流れるミュージックのセンスが抜群だ。
フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド (Frankie Goes to Hollywood) の曲も良いし ローラ・ブラニガン (Laura Branigan) の「Self Control」は映画のムードにあっている。いかにも1980年代後半で昭和の最後のディスコの雰囲気を持つ。
エンディングロールで流れる曲がキム・カーンズ (Kim Carnes) の「Bette Davis Eyes (ベティ・デイヴィスの瞳)」なのにはむちゃくちゃしびれた。この歌詞って意味深。ベティ・デイヴィスの「男がやると尊敬される。女がやると嫌われる」という名言も、映画のテーマ性を深める映画の内容にあっている。ベティデイヴィスといえば「イヴの総て」にも出てくる最後はホラー女優で終えた大スターだ。ホラーの名手タイ・ウェスト監督もかなり意識しているな。