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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ベルファスト」ケネス・ブラナー

2022-03-31 06:02:15 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ベルファスト」を映画館で観てきました。


映画「ベルファスト」は、監督兼俳優のケネス・ブラナーが幼少期に北アイランドに住んでいた時の思い出を綴る作品である。アカデミー賞の発表の前にとりあえず観てみた。その後、脚本賞を受賞でいいオチどころだった。

モノクロ映画であるが、最初だけカラー映像で北アイランドにあるベルファストを俯瞰する。日本でいえば、下町の長屋の風景みたいなものかなあ。映画が始まり、住人たちが仲良く暮らす平和な風景をモノクロ映像で映し出した後に、プロテスタントの連中が大暴れしだす。ごく普通のベルファストに住む家族が、キリスト教のプロテスタントとカトリックの騒乱に巻き込まれる。ロンドンに出稼ぎに行っている大工の父親の勧めで、引っ越そうとするけど、名残惜しさで家族みんなが戸惑うストーリーだ。


作品的に飛び抜けて良いとは思えなかった。いわゆる5点満点で4点の感動しかない。とにかく、宗教って面倒くさいなあ、嫌だな。そう思わせる映画である。クリスマスを祝った後で、神社や寺に初詣する日本人はある意味、宗教が染み付いていない。欧米や中東諸国はこのあたりが違う。自分はいわゆる「アカ嫌い」だけど、宗教についてはマルクスの「宗教はアヘン」という考え方を支持する。

主人公のバディ少年がかわいい。舞台となる1969年の自分よりもすこし小さい。ここでは祖父が病床についている話で、ちょうど自分の祖父、母方の祖母が亡くなった年で、設定に親近感が湧く。映画を観ながら、同じころ自分はどうだったんだろうと思い起こす。

⒈町を出たくなかったのに
カトリック教徒を狙い撃ちにするプロテスタントの暴徒が大暴れする。学園紛争の出来の悪いアカ学生みたいだ。祖父母の時代から住み着いている北アイルランドのベルファストにいても良いのかと思う。ロンドンに大工の出稼ぎに出ている父親は家も提供するよと雇い主に言われて、母親に相談する。父母いずれも子どもの頃から住み着くこの地を離れたくない母親はロンドンに行ったら、アイルランド訛りをバカにされるとばかりに絶対イヤだとごねる。父親は無理じいはしない。少年も泣いてごねる。


それなのに、暴徒の動きは止まらず、ついに母親も呆れかえるのだ。そんな心境の変化を起こさせる宗教のいやらしさが顕著に表現される。

⒉サンダーバード
観ていて楽しいのが、バディ少年を取り巻くオタク文化だ。1960年前後生まれは、大塚英志に言わせれば日本ではオタク第一世代だ。自分もそうだ。1958年にマガジン、サンデーが発行され、TVが普及され1963年にはアニメの鉄腕アトムが始まる。オタク文化は日本だけの世界だと思ったら、そうでもなさそうだ。1966年NHKで始まった英国発のサンダーバードには興奮した。人形劇とは思えぬリアル感、サンダーバード1号から5号やジェットモグラなどの補助的な救助機は夢があふれていた。

サンダーバードのご兄弟が着る制服と帽子をクリスマスプレゼントでもらったバディ少年が身につけるシーンがある。この制服は日本では売っているのを見たことがない。うらやましいなあと思った。

あとは、「チキチキバンバン」の実写場面が映る場面、ここもカラー映像になる。これって当時の東京で、至る所でポスターを見た。でも観ていないんだよなあ。海にむかって崖から飛び込んでもうダメと思った瞬間に、クルマが浮かび上がる。幼児から見て興奮するシーンを家族で楽しむ。いい感じだなあ。


⒊おもしろいおばあさん
バディ少年には祖父母がいる。特におばあちゃんが個性あふれる。毒舌で自分の思い通りに生きている。自分には、青島幸男の「意地悪ばあさん」に思えた。

でも、ラストでつぶやくのがいい感じだ。それにしても、エンディングロールでジュディディンチの名前を見て驚いた。さすがの貫禄である。

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映画「ナイトメア アリー」 ブラッドリークーパー&ケイトブランシェット&ルーニーマーラ

2022-03-27 17:37:38 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ナイトメアアリー」を映画館で観てきました。


映画「ナイトメアアリー」はギレトモ・デル・トロ監督の新作である。nightmareすなわち悪夢という響きには何かありそうと公開を首を長くして待っていた。ブラッドリークーパー主演で、ケイトブランシェットにルーニーマーラと人気俳優が出演している。先入観なしで映画館に向かう。

1939年の世界大戦寸前のアメリカ、野生のような男を獣人としてショーを行う見世物小屋があるカーニバル(移動遊園地)に1人の流れ者スタン(ブラッドリークーパー)がたどり着く。芸人のジーナ(トニコレット)に気に入られ職を得たスタンは読心術を学んだ後で、芸人のモリー(ルーニーマーラ)を引き連れて大都会に向かい、ショーで読心術を披露しながら成功を夢見るという話である。


おもしろく観れたのには違いないが、ギレトモ・デル・トロ監督の名作シェイプオブウォーター」ほどの感激はなかったスリラーの要素は思いのほか少ない。

最初の1時間は、ブラッドリークーパーが流れ着いた見世物小屋での話が続く。まずはカーニバル内の美術のきめ細かさに驚く。日本の縁日あたりで昔見た見世物小屋は、もっと稚拙でアバウトな絵柄、文字で作られている。ギレトモデルトロ監督がディテールにこだわっているのがよくわかる。「上海からきた女」でオーソンウェルズとリタヘイワースが紛れ込む遊園地場面を思わず連想する。ウィレムデフォー、ロンパールマンをはじめとした脇役陣が映画を引き締める。


ニューヨークに行ってからは、ハイセンスな映像に一変する。洗練されたインテリアのセンスがいい。1940年前後の都会のネオンがいい感じで映し出されている。


⒈ブラッドリークーパー
大草原の中の家で、ブラッドリークーパー演じるスタンが放火をする場面からスタートする。見始めてすぐは情報が少ないので、「何なの?」と思いながら、見世物小屋のシーンに移る。どうやら流れ者のようだ。単なる観客だったのが、いつのまにか旅まわり一座のメンバーに加わる。

男前なので、トニコレット演じる読心術の芸人に気に入られる。風呂に入っているブラッドリークーパーのアソコにトニコレットが手を伸ばすシーンは中年女のエロチシズムを感じる。

トニコレットは呑んだくれのオヤジと読心術のコンビを組んでいた。オヤジの持っているアンチョコのような手帳には芸の秘密が隠されていて、それを会得したブラッドリークーパーは一気に一座で存在感を示すようになるのだ。


この映画でブラッドリークーパーが引き立つシーンが2つある。カーニバルに立ち入り調査に入ってきた警察との頭脳的立ち回りとケイトブランシェットがトリックを見破ろうとする時の立ち回りである。この危機脱出場面はいずれも絶妙なトークで楽しませてくれる。

⒉ルーニーマーラ
旅まわりの見世物小屋では読心術のサインの連携と、電気ショックに耐える感電ショー担当だ。「ドラゴンタトゥの女」ではかなりはじけた女を演じたが、その後はカワイイ系で通している。ブラッドリークーパーに口説かれ、一座を離れ大都市に向かう。


キャロルの時はキュートなファッションが可愛く、タータンチェックの帽子が印象的だった。ここでもニューヨークに行ってからは、ユダヤ帽のように頭にちょっとのせただけの帽子をかぶっている。かわいい。今回は「キャロル」の時と同様にケイトブランシェットが共演、2人が揃う場面にはあの時のレズビアンの関係を思い出しゾクゾクしてしまう。

⒊ケイトブランシェット
ニューヨークに進出したスタン(ブラッドリークーパー)とモリー(ルーニー・マーラ)がナイトクラブで読心術のショーをやっている。ショーに来ている街の有力者が持つ家族の秘密を読み取り、喝采を浴びている。その有力者に同伴しているのがリリス(ケイトブランシェット)だ。ケイトもいい歳だが、登場すると華がある。さすがの貫禄だ。そして、スタンのインチキを暴こうと食い下がる。この対立が見せ場だ。


実はリリスは博士号を持つ心理学者だった。ショーでの対立を経て、2人がコンビを組むのだ。彼女が以前カウンセリングした金持ちに取り入ろうとする。ある意味事前情報を得た上で、読心術を使う八百長みたいなものだ。そこには罠もあったのだ。そんな感じの騙し合いの構図はおもしろいが、ここに来るとスタンのパワーが落ちる。最終のオチは良いのだが、それまでのラストの展開にはちょっと疑問。
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映画「林檎とポラロイド」

2022-03-18 17:28:15 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「林檎とポラロイド」を映画館で観てきました。


林檎とポラロイドはギリシャの新人監督クリストス・ニクの作品だ。リチャードリンクレイターの名作「6才のボクが大人になるまで」で助監督もやっているので素人ではない。主人公が突然記憶喪失になり、回復のためのリハビリ過程で今までやった事もない課題をこなしていくという話だ。初老の域に入り、これから自分の記憶がどうなっていくのかに関心がある。記憶喪失の回復というテーマに好奇心で見てしまう。

作品情報を引用する。

「お名前は?」「覚えていません」──。バスの中で目覚めた男は、記憶を失っていた。覚えているのはリンゴが好きなことだけ。治療のための回復プログラム“新しい自分”に男は参加することに。


毎日リンゴを食べ、送られてくるカセットテープに吹き込まれた様々なミッションをこなしていく。自転車に乗る、ホラー映画を見る、バーで女を誘う…


──そして新たな経験をポラロイドに記録する
ある日、男は、同じプログラムに参加する女と出会う。言葉を交わし、デートを重ね、仲良くなっていく。毎日のミッションをこなし「新しい日常」にも慣れてきた頃、買い物中に住まいを尋ねられた男は、以前住んでいた番地をふと口にする…。(作品情報 引用)

一種の寓話である。いくつもの小話を積み上げていく。それぞれの小話は変化に富んで趣きがある。同じような治療をしている女の子と連んでいる姿は感じがいい。バックに流れる音楽はオールドファッションでいずれも懐かしい。パーティでtwistがかかるし、Sealed with a Kiss(涙のくちづけ)が流れる。当時はよく聴いたものだ。監督がアナログ世界を意識しているという発言通りだ。


ただ、映画の内容をセリフに頼らず、映像で見せるというのに頑固になりすぎている印象を持つ。状況説明は最小限にといわゆる映画本の脚本理論でよく言われること。これでいいとする人もいるかもしれない。でも、自分レベルの観客では、目の前の映像がどう流れていくのか訳がわからなくなる。もう少し説明してくれてもいい。期待して見に行ったが、評判ほどまでいいとは思わない。

主人公は林檎が好きだ。街路にある果物屋に立ち寄ってりんごを買おうと紙袋に入れている。その時店員が「りんごを食べると、記憶力が良くなりますよ」と言った。突如動きを止め反対の動きを始める。袋に入れたリンゴを一個づつ取り出し、元に戻すのだ。


おもしろいシーンだ。こういうシーンで「何かを察しろ」という部分があるかもしれない。記憶が甦るのを主人公が恐れているのを示している気もする。でも、もう少しわかりやすくして欲しいなあ。


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映画「THE BATMAN-ザ・バットマン」

2022-03-13 20:40:57 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「THE BATMAN-ザ・バットマン」を映画館で観てきました。


映画「バットマン」はロバートパティンソンがバットマンを演じる新作である。バットマンことブルースウェインのルーツにも踏み込むストーリーだという事前情報だけで映画館に向かう。ジョーカーも含めて、このシリーズは絶対に見逃せない。ちょっと3時間は長いなあとそれだけが心配だ。思ったほど観客が多くない。3時間に怖気付いたのでは?

ゴッサムシティの市長選候補が覆面をした謎の何者かに殺される。悪の親玉ペンギンや盗人女のキャットウーマンも事件現場の周囲をうろうろしている。そして、ブルースウェインの自宅にバットマン宛の小包が届くと爆弾が仕掛けられてウェイン家の執事が重傷を負う。自分に狙いを定めていることがわかって、バットマンは犯人を追う話である。


ちょっと期待ハズレかな?
前半戦は自分の理解力も弱いせいもあるかもしれないが、固有名詞が連発しているセリフで、人間関係がよくわからない子どもが見たら絶対理解できないんじゃないかな?意味不明と思っているうちに、いかにもバットマンシリーズらしく高らかに音楽が鳴り響くのにウトウトして目が閉じてしまう。明るいエリアを映す映像がほとんどない。ずっと暗いままだ。それはそれでいいけど、ブルースウェインの父親の話も出てくる上に、ペンギンやキャットウーマンをクローズアップして登場人物が多く、頭脳の整理がつかない。

しかも長い!
ペンギンやマフィアグループの親玉やキャットウーマンそれぞれの一歩踏み込んだ話が流れる。それでもポールダノが登場するくらいには、少しづつ整理されてきて面白くもなってくる。あれもこれもになりすぎたのでは?ちょっと疲れた。観に行く人は、先にトイレに行ってスッキリしてからドリンクも飲まずに観てください。ちょっと覚悟がいる。

⒈ペンギンとジョンタトゥーロ
映画を見終わり、エンディングロールで配役を確認すると、コリンファレルが出ているではないか。しかも、ジョン・タトゥーロも。え!出てたっけかと思うくらい原型をとどめていない。ペンギンをコリンファレルが演じていたとは本当に驚いた。強烈なメイクだ。以前、「バットマンリターンズ」ダニー・デヴィートがペンギン役をいかにも異形の悪役らしく演じたのはお見事だった。今回も悪くはないが、以前ほどの役柄にインパクトがない。


悪者たちの根城であるクラブの主がジョン・タトゥーロで、その下にペンギンことコリンファレルなので、ちょっと調子が狂う。スターウォーズシリーズ同様、作品ごとに時間軸が前に後ろにスライドするので、またここで頭の整理が必要だ。

⒉キャットウーマン
バットマンの盟友ロビンは出てこない。その代わりでもないが、キャットウーマンがストーリーの肝になる。ゾーイクラヴィッツはもう少し若い頃のハルベリーの雰囲気を持つ。実は「バットマンリターンズ」にもペンギンと共にミッシェルファイファーのキャットウーマンが出ていたのを思い出す。キャットウーマンの母親が悪者の本拠地のクラブに勤めていてなんてルーツ話が出てくる。盗人女にすぎないようで、バットマンのピンチを助けたりちゃっかり活躍している。


⒊ポールダノ
ポールダノは自分の好きな俳優だ。気がつくとほとんど出演作を見ているしビーチボーイズのブライアンウィルソンを演じたラブ&マーシーがいちばん好きだな。監督作品ワイルドライフも映画館で観た。よかった。

この映画では始まってからその姿を2時間以上見せない。満を持していつもながらのポールダノのナイーブそうな表情で映像に登場する。でも、異常人物なのだ。部屋はひと時代前の宮崎勤の部屋みたいなオタクの部屋だ。感じとしては、プリズナーズで演じた変質者気味の被疑者に近い役かもしれない。不思議なもので、ポールダノが出てきてから映画が締まってきた印象をもつ。まさに適役だ。
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映画「スイングステート」スティーヴ・カレル

2022-03-09 21:36:38 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「スイングステート」は2021年公開のアメリカ映画


映画「スイングステート」スティーヴカレル主演の選挙を題材にしたコメディ映画である。スイングステートとは大統領選挙で勝負の分け目となる激戦州のことである。おもしろそうなので、気になっていた。人気がなくあっという間に終了したのでDVDスルーで見てみる。

大統領選挙でのクリントン敗北で落ち込んでいた民主党の選挙参謀ゲイリー(スティーヴ・カレル)がウィスコンシン州の田舎での退役軍人ジャック大佐(クリス・クーパー)のスピーチをYouTubeで見て、激戦区での民主党票を集めるためにもジャックを地元の町長選で当選させようと乗り込んで行き、共和党から送り込まれた女性選挙参謀フェイス(ローズ・バーン)と競い合う話である。

それなりにおもしろいという感じかな?
もっとメジャーな選挙で競い合う話は多々あるが、あくまで田舎の町長選挙である。それなのに、民主党から選挙参謀だけでなく、データストラジストを送ったり、多額の政治資金を投入したり本気ムードが満載になる。共和党もそうなると黙っていない。大勢のインテリ分析官が選挙動向をデータ分析して対策をうったりするなんて話を繰り広げる。でも、インテリもうっかり勇み足をしてしまう。


ただ、基調はあくまでコメディだ。それを承知でストーリーを追っていく。

⒈民主党、共和党が実名
スティーヴカレル民主党の選挙参謀の役である。日本だったら、実際の党に似た党の名前をつける場合がほとんどだ。ましてやライバルの共和党の美人選挙参謀まで出てくる。トランプ贔屓のFOXニュースを使ってさらに揺さぶりをかけてくるなんて構図は日本の町長選挙じゃありえないでしょう。
対立と葛藤は物語の基本要素だけど、いかにもリアルな戦いで本気モードを面白おかしく作り上げるのがすごい。


⒉いったいどっちが勝つの?
共和党の美人選挙参謀がCMを流すと、民主党の支持者の前にクリスクーパー演じるジャック候補が入って、資金援助を得る。お互いに富豪の応援者も探してくる。おいおいいったいどっちが勝つの?

映画界には反トランプが多いので、民主党が勝つのかな?とずっと見ていき、投票日を迎える。勝敗は見てのお楽しみ。


退役軍人ジャック・ヘイスティングス大佐の名前を見て、世界史のヘイスティングスの戦いを思い出す。ノルマン人が英国に入ってきて、ウィリアム1世が生まれる1066年の戦いだ。これって固有名詞にこだわって何かを意識しているのかな?
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映画「選ばなかったみち」ハビエル・バルデム

2022-02-27 16:11:23 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「選ばなかったみち」を映画館で観てきました。


映画「選ばなかったみち」ハビエル・バルデムが認知症患者を演じるサリー・ポッター監督作品である。主役のみならず、エル・ファニングやローラ・リニーと脇を固める共演者たちとの自分の相性はよく、観に行くことにした。ビックリするくらい不入りだった。

認知症をわずらっているメキシコ人移民の作家レオ(ハビエル・バルデム)が娘モリー(エル・ファニング)の手を借りながらニューヨークで一人で生活しているが、昔メキシコにいたころに好きだった女性との関わりやギリシャでの創作活動を脳裏で思い浮かべながら現実と空想を混在させてしまう話だ。


残念ながらおもしろくなかった。
ハビエル・バルデムは殺人鬼を演じたアカデミー賞作品「ノーカントリー」をはじめ、気味が悪いくらい強いというイメージを持つ。その一方で彼にはがんの末期患者を演じたビューティフルという傑作がある。これはよかった。ここでも同様に認知症患者を演じて、演技自体のレベルは高い。

でも、見どころがまったくない。娘との関わりを映す現実の世界、メキシコ時代に付き合っていた女性との関わり、ギリシャでの創作活動で現地で若い女性と知り合う話のどれも起伏も中身もない。一人で夜のニューヨークを彷徨うシーンもあるが、エピソードといえるものではない。ちょっとがっかり。

レオはニューヨークのループ鉄道に接する古いアパートに1人住む。誰が金銭の面倒を見ているのかわからないが、ヘルパーが面倒見ている。でも、すべてのことに反応が薄い。とても平常の生活ができる状態でない。判断能力もないし、自宅の住所さえも言えない。普通だったらどこかの施設で厄介になってもおかしくない。大けがをして入院した時に娘が連絡をして、母親(ローラリニー)が来るが、とっくに離縁しているようだ。


まあたいへん面倒な事態に陥っているようだ。自分も初老の域に達しているので、ちょっとは気になる。幸い、死んだ両親は意識を失う寸前まで頭は冴えていた。周囲には認知症の身内を抱えている人もいるので、こうはなりたくないと思ったというだけの映画か。たまにはこういう作品に出会うこともあるかな。
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映画「ドリームプラン」ウィル・スミス

2022-02-23 18:24:41 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ドリームプラン」を映画館で観てきました。


映画「ドリームプラン」はウィルスミスが、テニスのウィリアムズ姉妹の父親リチャードを演じる新作だ。原題は「King Richard」であくまで父親がメインの映画である。ウィリアムズ姉妹といえば、プロテニスに関心のない人でも知っている存在だろう。大坂なおみが初めて4大メジャーで優勝した時、決勝の相手がセリーナウィリアムズと知ってヤバイと思った日本人は多いと思う。ウィリアムズ姉妹はとんでもなく強かった。その姉妹が幼いころから父親の英才教育を受けていたというのはこの映画の存在で初めて知った。

姉のビーナス・ウィリアムズが生まれる前から、父親リチャード(ウィルスミス)は78ページに及ぶ世界チャンピオンになるための計画書にまとめて、幼少の時から妹のセリーナとともにテニスのレッスンを始める。腕を磨いた娘を有名コーチのもとに強引に押し込みながらも、自分の指導信念を貫き2人の娘を育てたという話である。


成長がテーマになる映画には高揚感がある。気分がいい。
今回は、ウィリアムズ姉妹というより頑固で偏屈で変わり者のオヤジにスポットを当てる。ジュニアの大会に出れば絶対に勝てるとコーチに言われても、父親は出場させない。映画を観ていて、誰もがオヤジのことを変な奴だなあと思うであろう。そんなシーンが次から次に続く。実はそれが映画の見どころである。


⒈ウィリアムズ姉妹の父母
父親リチャードは警備員である。両親ともに離婚をしていて妻にはつれ子がいる。ウィリアムズ姉妹以外にも女の子が3人いて合計5人姉妹だ。みんな仲が良い。一般にプロテニスプレイヤーを育てる家庭と比較すると豊かとはいえない。練習していてもエリアの不良グループがちょっかいだして邪魔しに来る。育ったのはまともなエリアではない。

リチャードはマッケンロー並みの変わり者というセリフがある。一斉を風靡したマッケンローの変人ぶりは映画「ボルグ/マッケンロー」でも映し出された。母親も夫を支えるが、あまりの偏屈ぶりに耐えきれない場面もいくつか出てくる。妻の「自分一人で育てたと思ったら大まちがいだ!」なんて我が家でも妻がのたまうセリフもあるけど、外では変人に見えるパフォーマンスをとるが、家ではやさしい。

映画「シャインで息子を音楽家にさせようとする厳格で頑固なオヤジが自分には近く感じる。「シャイン」のオヤジはともかく厳格すぎるのだ。自分の元で教育すればいい音楽家になれるという国内外からの誘いを断りまくる。結局、子どもは精神に異常をきたす。ある意味ウィリアムス家も似ている。ただ、ウィリアムズ家のいいところは、根底にやさしさがあるところだ。


⒉有名コーチ
父リチャードは娘2人のテニスの腕前が認められるようになる前から有名テニス関係者に自分の娘を売り込んでいた。でも相手にはしてもらえなかった。

ある一定のレベルまで達したので有名コーチに自分の娘を指導してもらおうとリチャードは考えた。そこで無理矢理飛び込んでいってピート・サンプラスのコーチ、ポールコーエンに自分の娘を売り込む。仕方なくテニスの腕前をコーエンが見てこれはものになると預かる。でも、オープンスタンスにこだわるリチャードとコーエンと意見が合わない。そのころからビーナスウィリアムズのテニスの腕に注目するスポンサーが現れるがリチャードは取り合わない。

そして、フロリダでテニススクールをしているリックメイシーの世話になるため移住する。プロコーチの世話になってもリチャードの信念とプランは変わらない。そんな頑固さをうっとうしくも感じるが、映画のキーポイントである。

⒊懐かしのテニスウエア
時代設定は80年代から90年代前半にかけてである。コーチが着ているFILAのテニスウェアが懐かしい。70年代後半からスウェーデンのボルグの活躍とともに日本でも流行った。大学に入って、我がキャンパスではテニス系クラブの連中がFILA のウェアを普段着で着ていてカッコよく、六本木のディスコでも目立った。テニスと関係なく自分も着てみた。スキーセーターも着たなあ。

先日北京オリンピックのオランダ選手がチームカラーのオレンジのウェアにFILAのマークがあるのを見て懐かしいと思ったところだった。あの当時、イタリアンタッチの原色が強調されたデザインが斬新に感じた。何気なく調べたら、韓国資本になっていたのね。これには驚く。


FILAとは関係ないが、ウィルスミスのテニスウェア姿はカッコいい。

⒋父と娘の交情
自分にも娘がいるせいか、父と娘が情を交わし合う映画にはついつい点数が甘くなる。熱烈指導で世界的プレイヤーになることを目指すが、リチャードは学校の勉強もちゃんとやれとうるさい。テニスだけだと後々大成しないと言い切る。本来ジュニアの大会に出るべきだが、そうしない。娘の将来を思ってのことだが、14 歳になったとき、周囲に同年齢でプロになる女の子も現れる。さすがに何とか試合をやりたいとコーチを通じてビーナスは申し出る。そこでの父娘そして母親との触れ合いも見どころだ。

ただ、自分がいちばん好きなシーンは、年長である姉がプロデビューした後、妹のセリーナがテニスコートを見てたたずんでいるのをリチャードが見て、やさしく声をかける場面だ。「セリーナのプランもちゃんと考えているんだよ」と語りかけるウィルスミスの姿がやさしくて素敵だ。
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ドキュメンタリー映画「THE RESCUE 奇跡を起こした者たち」

2022-02-17 04:37:39 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
ドキュメンタリー映画「THE RESCUE 奇跡を起こした者たち」を観てきました。


「THE RESCUE 奇跡を起こした者たち」はドキュメンタリー映画だ。タイで洞窟探検をしていた少年たち13 人が大雨で浸水して洞窟内に取り残された話はニュースで見た記憶がある。その事件をドキュメンタリー映画「フリーソロ」でアカデミー賞を受賞したエリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィとジミー・チン監督夫婦が映画にまとめた。


映画の予告編を観ていて、何気なく洞窟で閉じ込められた少年たちを救出するドキュメンタリーが放映されることを知った。予告編映像では洞窟の奥に少年たちがいることをダイバーが突き止めたところまでは出ていた。でも素潜りで水で満ち溢れた洞窟を抜けるなんてこともできないだろうし、どうやって助けられたんだろう。自分の頭で考えても方法は、水を抜いたんだろうか?穴を開けたのか?としか思い浮かばない。とりあえず観てみることにした。

これはすごい。
自分の謎がこんなにすごい脱出劇だったことにひたすら驚く。まるでスパイ映画の脱出の場面がリアルにとり行われたわけだ。想像以上に危機一髪だった。

作品情報の最初だけ引用する。

2018年6月23日、サッカーチーム「ムーパ(イノシシ)」に所属する少年12 人がサッカーの練習後、コーチ同行のもとタイ北部チェンライ県のタムルアン洞窟探検に入った。しかしその日は豪雨により洞窟が浸水し、出入り口が塞がれてしまった。少年たちは帰宅できなくなり、不審に思った家族から行方不明と報告され、捜索作業が始まった。(作品情報 引用)

ここまでは引用したが、その先に作品情報に書いてあることは違う。
現地に捜索隊が大挙して集合して捜索に難航した後に、ダイバーが呼ばれたとなっているが、映画を見る限りでは洞窟に閉じ込められていることがわかった後、早い時期に英国にいる2人のダイバーはタイに来ている。しかも、洞窟のどの辺りに13人の少年たちがいるかはその時点では想像はできても、まったくわかっていない。



タイの現地にいる海軍の特殊部隊をはじめ捜索隊の人たちは洞窟ダイバーの実力を信用していない。邪魔するなと言いたげだ。まずはダイバーたちは潜って、入り口に近いところにいる逃げ遅れた男たちを見つける。かなり難儀しながら、ボンベを口に加えさせて脱出させる。

洞窟の中をダイビングすることの難しさが捜索隊にわかって、すいすいと潜る中年ダイバーたちはここで実力を認められる。そして先頭を切って潜らせてもらえるようになる。

洞窟の地形はわかっている。しかし、奥まで進んでも少年たちはいない。酸素ボンベには容量がある。あまり先まで行ってしまうと、下手をすると戻る前に酸素不足でお陀仏だ。何度かトライした後で、無臭の洞窟で匂いを感じる。洞窟の中は基本的には無臭だそうだ。そして、13人がそこにいるのを発見し、出口に戻る。ここまで9日から10日間かかった。殉死者も出てしまっていた。


世界中に歓喜にあふれたTV映像が映る。やったー!
日本ではここまで騒いでいなかったのでは?CNNとか全米のメジャーTVとかのニュース報道がすごい。さてどうして救出するのか?

捜索隊もあとは救助隊に任せることとなった。ところが、救出案を練ってもうまくまとまらない。洞窟の中の水を出そうとしても、数センチしか水位は下がらない。仏教国だけに偉い僧侶まで来てお祈りする。シャーマンの世界に近い。
結局はダイバー2人と世界中から集められたダイバーに頼らざるを得ないことになった。一体どうなるのかは観てのお楽しみ。

実際には13 人を見つけた後が大変だった。救出途中で呼吸が止まった少年もいた。どうやるのか想像できなかったが、洞窟ダイバーたちはともかく助けねばということで知恵を絞って救出に向かう。ヒントではないが、1人医師のダイバーがいた。だからと言って容易ではないよね。日本だったら無理なんじゃないという気がした。

このダイバーたちは本当にすごい。子供の頃から内気でいじめっ子にいじめられたなんて話まで出てくる。それがなぜかダイバーに共通している。戻ったら母国英国で大騒ぎ、エリザベス女王から勲章を直接もらっている。日本だったら天皇陛下が直接授与するのかな?そんなこと考えていた。


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映画「ブルーバイユー」

2022-02-15 18:58:53 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ブルーバイユー」を映画館で観てきました。


映画「ブルーバイユー」は韓国系アメリカ人ジャスティン・チョンが自ら脚本、監督、主演を兼ねるアメリカ映画である。韓国では孤児院にいる孤児が養子縁組で外国人に引き取られるケースが多いのを韓国映画「冬の小鳥」で初めて知った。それ以来、養子縁組の題材は「バービー」など韓国映画で何度も観た。今回は国際養子縁組のその後が必ずしもうまくいっているとは限らないことを題材にしている。

幼い頃に養子縁組でアメリカに来た韓国系アメリカ人アントニオ(ジャスティン・チョン)は連れ子のいるアメリカ人女性(アリシア・ディキャンベル)と結婚した。親が移民の手続きをしていなかったせいで強制送還を言い渡され、なんとか回避しようと右往左往するという話だ。


監督兼主演のジャスティン・チョンは実にうまくまとめている。
例によって社会学者が好みそうなアメリカ下層社会が描かれる。ポータブルビデオで撮っているみたいな映像もある。養子縁組に絡んだ移民問題だけが題材ではない。複雑な家族関係に関わる題材も取り上げ、個性あふれる登場人物をチョンは映像に放つが、きめ細かに捌いている。登場人物は映画の途中で徐々に増えてくる。普通だったら、登場人物が多いと頭の整理がつかなくなることが多い。この映画は大丈夫だ。

将棋の駒の特性を知り尽くして指す棋士のようにキャストの個性をうまく活かせる監督とみた。不思議な肌合いを感じる作品だ。

腹立たしくさせる話を連発する。アントニオは窃盗団の友人などの下層レベル以下の人間と付き合い、悪いことをする。常識人が見ると、たぶん呆れるであろう主人公の行動と発言が続く。わざとだろう。観客に嫌気を起こさせるのも、これはこれで意図的なものだろう。半年ごとに里親が変わったこともあるというアントニオが普通に考えるとまともに育つはずがない。そんな嫌な感じが続いても、徐々に監督がいろんなことを計算し尽くしているのに気づき、深みのある映画だと感じるようになる。

⒈強制送還命令と反論
妻には警察官の前夫がいる。娘とはたまに会っているが、強引なので妻も娘も嫌がっている。ある時、偶然スーパーで警察官の相棒といる前夫にバッタリあったときにアントニオが逆らって大暴れ、結局留置される。その時、移民の手続きをしていなかったことがわかり、前科があって心証も悪く強制送還の命令を受けてしまう。

赤ちゃんも産まれる妻も含めて大慌て。でも、弁護士に言わせると、2000年以前に養子縁組でアメリカに来た人たちに同じ境遇の人が多いらしい。弁護費用は5000ドル、ただでさえも金のないアントニオにはすぐにだせない。そこでアントニオは暴挙にでるのだ。


⒉まともじゃない主人公アントニオ
本業はタトゥー師だ。タトゥを彫る場所を借りているけど、場代は滞納したままだ。妻が懐妊して、金が必要なので別の仕事を求職するが、前科二犯でもあり雇ってくれない。

映画を観ているあいだ、こいつ変なやつだなあと思っていた。オイオイ何でこんなことするの?と、まともな教育を受けているようには見えない。ベストセラーになった宮口幸治著「ケーキの切れない非行少年たち」に出てくるような男だ。やることなすことハチャメチャな奴だけど、妻と娘には愛情を持って接している。ここだけは救われる。


⒊アリシア・ディキャンベル
アントニオの妻役には「リリーのすべて」アカデミー賞助演女優賞を受賞しているアリシア・ディキャンベルを起用する。好演だと思う。パーティのシーンで題名になった「ブルーバイユー」を歌う。これがなかなかいい。そういえばディズニーランドの「カリブの海賊」の隣にレストラン「ブルーバイユー」があったなあ。映画では青い入り江という訳を与えていたが、ニューオリンズの街を船から眺める船上でいい感じで歌っていた。


⒋リン・ダン・ファン
金に困っているアントニオが街でタトゥーをやらないかと呼び込みをしていると、1人の上品なアジア人女性が近づいてくる。冷やかしかと思ったら本気でやって欲しいという。手首にユリの花のタトゥーを彫ってあげる。この後重要な存在になっていく。松任谷由実に似た風貌を持つ女性はベトナム生まれだ。この年になるとこういう40代女性がよく見える。

終わった後で配役を確認してリン・ダン・ファンということがわかる。これには驚いたカトリーヌ・ドヌーブ主演「インドシナ」で王女役を、フランス映画「真夜中のピアニスト」でピアノ教師役を演じていて強い印象を残した。自分も感想を残している。フランスが主戦場だけにアメリカ映画で会えるとは思わなかった。魅力的な女性だ。


⒌連れ子が恐れること
連れ子の女の子の使い方がうまい。両親に自分の妹が産まれることを恐れている。両親にとって実の子供が産まれたら自分には愛情がそそがれないのではと心配する。いくつかの場面で見せる心配そうな表情が巧みだ。荒井晴彦の脚本が冴えた日本映画「幼な子われらに生まれ」で、連れ子の少女が浅野忠信と田中麗奈演じる両親に赤ちゃんが産まれるのを恐れる設定を連想した。


最後に向けてはブライアン・デ・パルマ監督の「愛のメモリー」を連想させるシーンがでてきた。お涙頂戴の世界にも見えるが、映画の引用がうまいなということに気を取られていた。
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映画「スティルウォーター」 マットデイモン

2022-01-18 20:15:58 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「スティルウォーター」を映画館で観てきました。


映画「スティルウォーター」はマット・デイモン主演の最新作、アカデミー賞作品賞を受賞したスポットライト扉を叩く人トムマッカーシー監督作品となれば観てみたくなり映画館に向かう。オクラホマの下層労働者という設定のマットデイモンのアメリカでの映像はあるが、主たる物語はフランスマルセイユで展開する。マルセイユの海岸の映像は信じられないくらい美しい。

アメリカの石油会社で掘削労働者の主人公がフランスマルセイユで殺人罪で逮捕された娘の無実を証明するため、わずかな証言をもとに現地で知り合ったシングルマザーとともに真犯人を捜す話である。謎解きの要素もある。ただ、登場人物の誰もが容認できるキャラクターではない。みんな変な奴らばかりであり、受ける感触は良くないので不快になってしまう。


米オクラホマ州の街スティルウォーターでもともと石油掘削の仕事をしていて今は解体業をしているビル(マット・デイモン)は、留学先のフランスマルセイユでレズビアンのガールフレンドを殺した殺人罪で捕まり懲役9年の判決を受け刑務所に収監されている娘アリソン(アビゲイル・ブレスリン)の真実を訴える手紙をもとに無実を証明しようとする。

現地で知り合ったシングルマザーにも協力を求める。言葉の壁もあり、はかどらないし、意見が対立してシングルマザーとケンカして決裂する。しかし、現地の不良の一味に捕まり暴行を受けたりした後で、再度シングルマザー母娘と交情を温めてマルセイユの生活に馴染んでいくのであるが。。。


⒈社会派的色彩
これまでのトム(トーマス)マッカーシー監督の映画はだいたい観てきたし、好感が持てる作品がほとんどだ。「扉を叩く人」では難民問題に言及し、「スポットライト」では教会聖職者の性的いたずらに焦点を合わせた。いずれもドキュメンタリーではなくフィクションだが、社会派の色彩が強い作品だ。


いくつかの写真の中に犯人がいてそれを指さす場面で、普通にやるとアラブ人が選ばれるなんてセリフがある。今やフランスではイスラムが悪者になっているのだ。その辺りはエマニュエルトッドの本にも詳しい。

あとはマルセイユで親しくなったシングルマザーの友人がビルに「トランプに投票したの?」と聞くセリフもある。労働者タイプが全部トランプを支持しているように捉えられているセリフだ。今回マットデイモンはアメリカの下層労働者階級に服装も雰囲気もなりきる。フランス人インテリは哲学好きで理屈っぽいけど、え!そんなこと聞くのかと思ってしまう。

⒉マルセイユの美しい風景
地中海の香りがするスパニッシュ屋根の建物が立ち並ぶ光景は美しい。建物が連なる先には崇高な寺院が見える。過去にもキリマンジャロの雪などのマルセイユを舞台にしている映画は観ているが、船着場などの映像が中心で、ここまで街の全容を俯瞰する映像は見たことがない。それだけにその美しさに驚く。


娘のアリソンが出所後の生活に慣れるために、1日だけ外出を許可されてビルと2人で郊外をドライブする。そこで映る海岸線の風景が美しい。調べてみると、国立公園内の映像のようだ。マルセイユ観光案内の映像だと思うと、外国旅行に行けないだけに得した気分になる。まあ、こういう映画の見方もあるだろう。ただ、その裏腹に治安はかなり悪そうな印象も持ってしまう。


⒊サッカー場の熱狂⚽️
マルセイユの地元サッカーチームを熱狂的ファンが応援するシーンがでてくる。マットデイモン演じるビルがサッカー好きのシングルマザーの娘を連れて超満員のスタジアムに行くのだ。応援席の異常とも見える応援には驚く。映画では、その大勢の観客の中で、犯人と思しき男を見つけるシーンがある。思わずドキッとする。直後から子連れで男の行方を追いかけていく。これはこれで緊迫感があるシーンだ。


この娘がマルセイユでプレーしていたサッカー日本代表である酒井のことを好きだとする場面があるというが、注意不足で確認できなかった。

ストーリーよりも、美しいマルセイユの映像や熱狂的なサッカーの応援の最中に犯人を追いかけるシーンの印象ばかりが観終わって脳裏に残る。途中は登場人物のそれぞれの性格の悪さに呆れてイヤになってしまう状況だったが、最終場面に入ってのハラハラドキドキの場面のおもしろさで少しは嫌な部分がとんでいく。
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