映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

フィンランド映画「世界で一番幸せな食堂」 ミカ・カウリスマキ

2021-02-23 06:58:34 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
フィンランド映画「世界で一番幸せな料理店」を映画館で観てきました。


これは心温まる牧歌的でやさしい映画である。

映画「世界で一番幸せな料理店」はフィンランド映画の名監督カウリスマキ兄弟の兄ミカ・カウリスマキ監督の作品だ。どちらかというと、弟のアキ・カウリスマキ監督作品を追いかけているが、雰囲気良さそうなので映画館に行ってみる。これは観て心洗われる。

昔の恩人を探しにフィンランドの田舎にやってきた中国人の父子が、世話になった女主人がいとなむ食堂で、料理人としての腕をふるうとみんなに大うけするという話だ。

映画がはじまってしばらくして、料理映画なんだと気づき、料理版「シェーン」とも言える伊丹十三の「タンポポを連想する。凄腕の料理人がひなびた食堂に現れてという設定は似ている。でも、ここでは森と美しい湖に接したフィンランドの田舎に、朴訥なカントリーおじさんたちや気のいい人たちを映画に放つ。その振る舞いが誰も彼もが純粋である。クリスマス以外では滅多に見ることのないトナカイまでが登場して、自然の豊かさに囲まれて純朴な世界を映し出す。

都会の荒波に日ごろさらされている自分にはこの安らいだ世界にはいやされる。おすすめだ!

森と湖に囲まれたフィンランド北部の田舎町にある食堂へ、中国人のチェン(チュー・パック・ホング)と息子のニュニョ(ルーカス・スアン)が入ってくる。この食堂はシルカ(アンナ=マイヤ・トゥオッコ)が一人で切り盛りしていて、チェンはフオントロンという人物を探している。シルカも常連のおじさんも知らない。地元にはホテルはなく、シルカは親子に空き部屋を提供し、しばらく居候して、食堂に来る人たちにフォントロンは知らないかと尋ねるのだ。そんな食堂に中国人観光客を連れてきたガイドが入ってくる。

日ごろビールのつまみの大味なソーセージしか出していないシルカは無理と思った矢先に、チェンが自分が料理をつくってあげるという。あわててあり合わせでつくった中華料理は大受け、ガイドはお客さんを連れてくるという。また来るということで、隣町まで食材と調味料を買いに行き、絶品の中華料理をつくり、地元の常連のおじさんたちもたべるという。そうしていくうちに、フォントロンの正体がなんとなくわかっていくのであるが。。。


1.フィンランドの田舎町と素敵なショット
弟のアキ・カウリスマキ監督作品ではむしろフィンランドの首都ヘルシンキ付近を映し出すことが多い。いきなり映す湖と森がこの映画のベースになる。われわれにはクリスマスにアニメでしかその姿を現さないトナカイが森の中を悠然と歩く。そういうところにあるシルカ食堂では、すでにリタイアしたと思しき初老のおじさんたちが常連で一人でビールを飲んでいる。これがまたいい味を出している。


森の中で迷子になったチェンの子どもを、日本のスーパーボランティアおじさんのように探し出してきたり親身になってくれる。最初はこんなもの食えるかとチェンのつくる料理に口をつけなかったが、途中からおいしいと食べる。チェンをサウナに連れて行ったり、イカダのような舟の上に乗っての飲み会なんて素敵なシーンが満載だ。

弟のアキ・カウリスマキ監督作品に映る登場人物は無表情で愛想がない。しかも、これでもかというくらい不幸の谷底に突き落とす。でも、この映画に映る田舎町の人からは笑顔が常に見える。そこがいい感じだ。

2.欲のない中国人料理人
チェンがいきなり料理人だとわかるわけではない。部屋まで提供してくれて、お世話になった女性店主シルカが困っているのをみて、自分の料理の腕を見せるのだ。でも、チェンに妻がいるのか?探しているフォントロンってどういう人物なのか?一緒にいるのが本当の息子なのかもわからない。そういう謎をつくる。そういう映画の展開がいい感じである。

しかも、思いがけず大勢の中国人が入ってきてお金を落としてくれた訳なのに、報酬をうけとらない。中国人というと金の亡者というイメージを与えるが、そうは見せないのも映画のツボであろう。この映画政治的要素もないし、ここまで中国人を美化した外国映画って少ないから中国で公開したらヒットするだろうな。


この主人公初めて見たけど、永瀬正敏に似ているな。

3.料理映画の傑作
とっさに、伊丹十三の「タンポポを連想したが、影響された部分はいくつかあるだろう。料理映画の傑作デンマーク映画バベットの晩餐会も田舎町が舞台になる。ここでも腕利きの料理人が恩人に腕をふるうという設定だ。田舎のグルメ的な生活をしていない人たちが絶品料理に驚くという設定は「バベットの晩餐会」のテイストに通じるものがある。


最初は鳥をベースにした麺を観光客に出して大受けして、湖で釣った魚をベースにしたスープがおいしそうだった。中華料理というと、アカデミー賞監督アン・リーが台湾時代につくった恋人たちの食卓でのよりどりみどりの中華料理もおいしそうだったなあ。エンディングに映る中華料理をみて「恋人たちの食卓」を連想した。中国人は北海道が大好きだけど、同じような感覚でフィンランドのこのエリア好きなんだろうなあ。

ただ、題名が俗っぽくていやだな。こんないい映画なのにもったいない。

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