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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「夏の砂の上」オダギリジョー

2025-07-09 08:39:31 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)

映画「夏の砂の上」を映画館で観てきました。

映画「夏の砂の上」は長崎を舞台にしたオダギリジョー主演の物語。原作は90年代後半に作られた長崎出身の松田正隆の戯曲で、監督脚本は玉田真也である。オダギリジョーは妹から突然17歳の娘を預けられ共同生活をはじめるリストラされた男を演じる。2005年に長崎を舞台にした「いつか読書する日」という田中裕子主演の傑作がある。坂の多い長崎の町を自転車でさっそうと走る田中裕子が強烈なインパクトを残した自分の好きな映画だ。どうしても比較して観てしまう。

 長崎の雨が降らない夏。幼い息子を亡くし、妻・恵子(松たか子)と別居中の小浦治(オダギリジョー)は、勤めていた造船所の職を失ったあと無気力な日々を送っている。そんな彼のもとに、妹・阿佐子(満島ひかり)が17歳の娘・優子(髙石あかり)を連れて訪ねてくる。福岡でスナックを任せられる話があり、優子をしばらく預かってくれというのだ。姪との突然の同居生活が始まります。

優子は高校に通わず、スーパーのバイト先で年下の先輩・立山(高橋文哉)と親しくなる中、治との生活にも慣れていく。しかしある日、優子は恵子と治が言い争う場面に遭遇する。

映画としては普通。オダギリジョー演じる主人公の男の哀しさが根底に流れる。

直近では長崎に造船所がある三菱重工の株価も最高値を更新して絶好調のはずだけど、この映画では造船所がつぶれて主人公が職を失う。現代の設定にすると少し違和感はある。

ひょうひょうとしたオダギリジョーには味がある。元の同僚に妻を奪われる情けない役だ。それなのに妻の浮気相手の奥さんから詰め寄られるシーンは気の毒。これでもかというくらいツキがない

高石あかりは醒めた変わった女の子の役柄だったのに、おじさんの面倒は私がみると言い切るダメ男のおじさんに情を移すセリフは印象に残る。松たか子はわざとだと思うがこれまでになくどん臭く地味だ。満島ひかりは最初と最後だけベラベラしゃべって台風のように去っていく。いかにもあっている役柄だ。

⒈時代を経てもかわらない長崎の町

長崎には3回行ったことがある。市電と坂が印象的な造船所のある町という印象が残る。長崎が舞台の「いつか読書する日」と同じ長崎の坂道、階段、細い路地、約20年たっても見た目はほとんど変わっていない。細い路地の奥だと重機も入らないので坂の途中にある主人公の家は再建築が難しいのではないだろうか。結果として古い家のまま住み継ぐしかないのだ。町並みとしては大きくは変わらない。坂道や路地の雰囲気で長崎の空気感が味わえるだけでも映画を観た甲斐がある。

⒉いつか読書する日との比較

田中裕子牛乳配達とスーパーのレジ打ちを掛け持ちで働いていた。預かった姪もスーパーでバイトしている。田中裕子が坂を駆け巡る姿に躍動感を感じた。一方でオダギリジョーは逆でいかにも無気力感が強い「いつか読書する日」岸部一徳が川で溺れた子を助けようとおりていった階段で、高石あかりがたたずむシーンに2人に共通する去っていく感覚をおぼえた。顔に哀しさが感じられる高石ひかりに大物の素質ありと感じる。

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映画「桐島です」 毎熊克哉&高橋伴明

2025-07-07 08:51:22 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)

映画「桐島です」を映画館で観てきました。

映画「桐島です」は過激派による爆弾事件で長きにわたり指名手配されていた桐島聡の物語である。桐島聡の指名手配のポスターは誰もが見たことがあったであろう。高橋伴明監督がメガホンをとり毎熊克哉が主演で桐島聡を演じる。自分は学生運動世代の後の世代だけに活動家は学生時代から嫌いな人種である。現在でもリベラルという名で金儲けする左翼人はひたすら嫌い。それなのに指名手配にも関わらず長い間逃げ切っていた桐島聡に強い関心を持っている。

今年3月に足立正生監督古舘寛治主演で「逃走」と言う作品が作られ鑑賞した。どちらも「逃走中の真実は完全には分からない」ことを前提に、証言や想像で空白を埋める。映画館には70代前後と思しき男性が大半で、思ったよりも観客は多い。その中で夫婦で来ているカップルの女性は元活動家のような鋭角的風貌の顔つきだった。同じ桐島聡を巡って2作連続で映画ができた。前作も観ているので、比較をしながら映像を追う。

(作品情報を引用して桐島聡の末路を確認)

2024年1月26日、衝撃的なニュースが日本を駆け巡った。1970年代の連続企業爆破事件で指名手配中の「東アジア反日武装戦線」メンバー、桐島聡容疑者(70)とみられる人物が、末期の胃がんのため、神奈川県内の病院に入院していることが判明した。

男は数十年前から「ウチダヒロシ」と名乗り、神奈川県藤沢市内の土木関係の会社で住み込みで働いていた。入院時にもこの名前を使用していたが、健康保険証などの身分証は提示しておらず、男は「最期は本名で迎えたい」と語った。報道の3日後の29日に亡くなり、約半世紀にわたる逃亡生活に幕を下ろした。

桐島聡は、1975年4月19日に東京・銀座の「韓国産業経済研究所」ビルに爆弾を仕掛け、爆発させた事件に関与したとして、爆発物取締罰則違反の疑いで全国に指名手配されていた。最終的に被疑者死亡のため、不起訴処分となっている。

桐島聡の人間味に焦点を合わせる作品だった。

女性の梶原阿貴との共同脚本だったせいか元活動家の高橋伴明が作るにしては足立正生監督作品に比較して思想的な肌合いは抑えられる。いきなり「実話に基づく」という文字が映る。逃走中の空白期間と孤独を描くために、80年代〜90年代〜2010年代と細かく時代を追う。空白を断片的な証言によるショットで埋めていく。女性目線が入ることで観客層が男中心でも男の論理に閉じなかった構造になる。工務店時代や宇賀神証言の小さなエピソードが人間の優しさを醸しだす。

⒈連続爆破のきっかけ

1974年9月の三菱重工爆破事件の負傷者を搬送する実録フィルムがいきなり映る。大道寺将司を始めとした連続爆破事件の首謀者たちが喫茶店でダベリ合うシーンに移っていく。大道寺はここまで死亡者をだす酷いことになると思っていなかったという。強烈な違和感を感じながらその会話を聞く。その中の1人が桐島聡と相棒宇賀神寿一(奥野瑛太)の親玉黒川芳正だ。

黒川の首謀で鹿島建設の作業所を狙った後に間組本社と大宮工場の爆破を計画し実行した。映画のセリフによると、理由は戦時中の中国での建設会社の土木作業員への扱いについてだ。戦後30年経って経営幹部はとっくに切り替わっている。なんでまた戦前の話を持ち返すのか、鋭角的に話をする首謀者黒川の話は聞いていて、ひたすらむかついてしまう。

それにしても、学生運動をやってた連中はなんてクズなんだろう。自分の同世代に近い佐藤優や百田尚樹の本を読むと、当時同志社ではまだ学生運動が残っていたようだが、我が母校ではその気配はほぼなかった。

⒉桐島の思想に関する中途半端さ

「逃走」足立正生監督自身の学生運動の経験を踏まえた強い思想性が感じられる。逆に同じ題材なのに、桐島の思想の薄さと戻れたはずの道を選ばなかった不器用さを感じさせる。結局、桐島は「思想が強かったから逃げ切った」のではなく、むしろ思想の空白と中途半端さがあったからこそ逃げ切れたと自分は感じる。 

ただ、桐島聡が亡くなった時元の盟友宇賀神「桐島は公安に勝った」と言った。高橋伴明監督も宇賀神が古い思想の物差しを最後まで持っていた人物とする。刑を受け出所した宇賀神のこれからの居場所を確保するかのように当時の行為を完全に否定しない。謎の女を演じる高橋恵子がのたまう言葉も似たような余韻を残すものだった。



⒊桐島がライブバーで知り合った女性像
桐島聡がライブバーに通っていたという証言をもとに両作品で親しくなった女性が出てくる。「逃走」では謎めいた優しさをもった美女だ。桐島の正体を知っていると匂わせるセリフがあった。結果的に結婚詐欺の常習犯だったと伝えられる。「桐島です」ではギターで「時代遅れ」を弾き語りをする女性ミュージシャンのキーナ(北香那)だ。ミュージシャンのキーナは桐島に惹かれるが、桐島が自ら繋がりを断つ。彼女は桐島の正体を知らない。周囲にこんな女性がいたのであろうか?

⒋女性目線の入った脚本

女性脚本家梶原阿貴の視点で「ささやかな人間味」をひろっているのがいい。思想と優しさが同居する人物像には女性脚本家の視点が生きている。桐島聡が大学時代の恋人(高橋伴明恵子の孫)からふられるシーン「あなたは時代遅れよ。私は普通に上場企業に就職したい」という現実の声がでてくる。そこで桐島は「労働者の搾取を救う」と一応言うが、実質言い返せないのだ。こんな場面は「逃走」ではなかった。

一時期行動をともにした仲間の宇賀神寿一の証言を引き出す。2人が離れる前に金欠の宇賀神に桐島が仕送りの一部を引きだして渡した優しさあふれるエピソードだ。また工務店生活での逸話も生活者としての桐島を強調するものだ。いい奴だったんだなと自分に思わせてくれるのは良かった。キネマ旬報によると梶原阿貴活動家の娘だったらしい。桐島聡の指名手配の写真の隣に父の顔があったと知ると驚く。この映画には適切な起用だったと感じる。

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映画「中山教頭の人生テスト」 渋川清彦&佐向大

2025-06-26 08:34:12 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)

映画「中山教頭の人生テスト」を映画館で観てきました。

映画「中山教頭の人生テスト」渋川清彦演じる主人公の中山教頭の奮闘を通じて、現代の小学校が抱える多様な課題と、そこで働く人々のリアルな姿を深く掘り下げた作品である。監督脚本は「夜を走る」佐向大だ。個人的には、この作品は2022年の日本映画では上位に入る評価をしている。予測不能な展開で実に面白かった。スクラップ工場で働く工員が夜に面倒なことに巻き込まれる話だが、周辺業界や裏社会を丹念に取材していた形跡がよくわかる快作であった。

その佐向大が新作を作ることへの期待、渋川清彦の渋い演技が楽しみたいという思いで映画館に向かう。公開館が少なくすべり込むように観たけどよかった。

山梨県のとある小学校。教頭の中山晴彦(渋川清彦)は、教員生活30年を迎えた教育現場のベテランで誰に対しても物腰柔らかく接する。校長(石田えり)と教員との間で、教頭の立場は板挟みだ。校長への昇進を目指しているものの、日々の忙しさから受験勉強はうまく進まない。

それなのに、晴彦は5年1組の臨時担任を務めることになる。子供たちと真正面から向き合うことで、浮き彫りになってくる問題の数々。児童、教師、保護者、そして自身の家族といった、さまざまな者たちの思惑が複雑に絡み合う

一見の価値があるよくできた作品だ。

現代の小学校が直面する課題をこれほど多角的かつ人間的に描きだした作品はないだろう。「夜を走る」が題材にするダークな社会とは真逆の世界だけど、同様に綿密な取材を重ねているのがよくわかる。

エピソードが盛りだくさんだ。多くても消化不良にならない。中山教頭の日常に起こる出来事を丁寧に積み重ねていく。子どもたちの小さなトラブル、保護者からの連絡、教員たちの悩み、そして教育長や校長とのやりとりなど、それぞれは独立したエピソードだ。実は「何気ない」と思っていた一つ一つのシーンが最後に向けての伏線になっており、さまざまなことが繋がっていて伏線を回収する。妙に腑に落ちる。先日映画「親友かも」でも同じように感じたけど、この辺りの佐向大監督の手腕は見事だ。

1. 中山教頭のリアルな苦悩と多忙な日常

教頭という中間管理職の立場が、校長(石田えり)と現場の教師の間で板挟みになり、日々多岐にわたる業務に追われる様子を詳細に描いている。授業準備から生徒指導、保護者対応、近隣住民のクレーム対応、事務作業、さらには本来用務員や保健の先生が担うような業務にまで関わる。これは大変だ過酷な労働環境と精神的負担がリアルに伝わる。中山教頭の奮闘をより人間味あふれるものにしている。

2. 個性豊かな子どもたちの描写

登場する子どもたちは、それぞれ異なる家庭環境や内面を持つ個性豊かなキャラクターとして描かれる。水商売をするシングルマザーの娘、学校にクレームをつける中小企業の社長の息子、気の弱いいじめられっ子、そして優等生に見えても実は裏がある内面を持つ子どもなどがいる。あまりの意地の悪さに閉口してしまった。多様な背景を持つ子どもたちの人間関係の複雑さが、巧みに脚本化されている。

3. 教育長の示唆に富む描写

風間杜夫演じる教育長は、教育行政のトップとしての権威と、女性蔑視が強いよくいるおじさんの一時代前の価値観を併せ持つ人物として巧みに描かれている。この小学校の前校長で教頭の元上司だ。彼の立ち居振る舞いからは、教育行政の奥深さや、世代間の価値観のギャップが感じられる。個室の割烹でくつろぐ姿は交際費がふんだんにある民間の役員と似たようなものだ。教育長という役職を理解することができた。

4. 映画が提起する社会問題

映画は現代日本が抱える深刻な社会問題に光を当てている。教員の過重労働や待遇への不満、モンスターペアレンツの存在が教職のなり手不足につながっている現状、そして公務員全体の給与水準が民間企業に比べて見劣りする問題など、教育現場の課題が社会全体の問題と密接に結びついていることを示唆している。

ただ、物語の終盤の一部の展開(校長の不祥事に関する描写など)にありえないと思い、現実との乖離や不自然さを感じる点はある。何かを意図したとしても監督の勇み足だった気がする。それでも、現代教員事情や「現代小学校のリアル」これほどまでに伝えてくれる作品はない。

個人的には自分のベスト作品に出演している「遠雷」でスーパーバディを披露した石田えり「異人たちの夏」風間杜夫の健在が確かめられたのはうれしい

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映画「父と僕の終わらない歌」寺尾聰

2025-05-24 17:47:03 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)

映画「父と僕の終わらない歌」を映画館で観てきました。

映画「父と僕の終わらない歌」は、寺尾聰が認知症の老ミュージシャンを演じる小泉徳宏監督の新作。親の面倒をみる息子を松坂桃李が演じる。予告編でいかにも寺尾聰らしいボーカルが聞けて、認知症を描く映画にしてはノリが良さそうだ

今の若い人は、寺尾 聰「ルビーの指輪」の記録的大ヒットは知らないだろう。自分の高校の部活仲間が、大ヒットする前に寺尾 聰のシングルをピックアップして教えてくれた。残念ながら60歳を手前にして亡くなってしまった。その友人を思い,彼の代わりのつもりで早々映画を観に行く。意外に年齢層の高いおばさんが目立つ。

横須賀で楽器店を営む父間宮(寺尾聡)は妻(松坂慶子)と暮らしている。かつてレコードデビュー寸前まで行った父は地元商店街のイベントで歌声を披露している人気者だ。商店街の若い仲間が結婚するにあたり、東京でイラストレーターをしている息子(松坂桃李)が戻ってきた。ところが、運転しているのに、帰りの道がわからないと言う父親の様子がおかしい。医者(佐藤浩市)に行って診てもらうとアルツハイマー型認知症のようだ。息子はしばらく横須賀で過ごすことになる。

地元のステージで歌うために練習している認知症の父親を、息子がインスタグラムに歌う親父の姿をアップするとバカ受けする。テレビに出演したり,レコード会社からも注目を浴びたのに、本人が行方不明になったり急に様子がおかしくなる。

寺尾聰がまさに適役でノリノリで楽しく見れる映画だった

ビールのCMで有名な「Volare」寺尾聰自らがアレンジして歌う曲が抜群に良いヤシの木が立ち並ぶ道路をぶっ飛ばすシーンは最高だ。認知症の老人を描く映画は多い。その中でも抜群の明るさだ。

横須賀でもどぶ板通りなどのロケ地選びに成功して、お店や部屋などの美術も雰囲気良くしている。登場人物が営む「アルフレッド」は、どぶ板通り商店街に実在するダイナーである。寺尾聰が息子とアメ車のライトバンを走らせる椰子の木が立ち並ぶ馬堀海岸も雰囲気がいい。そのバックに寺尾聰の曲が流れれば明るい気分になれる。

横須賀が舞台の映画といえば「豚と軍艦」が飛び抜けていた。あえてモノクロの映画で同じ場所でも逆に暗いムードもある。まだ小学生の頃、父と久里浜に車で釣りに行った。横浜を抜けて横須賀の街に入ると、道路沿いに英語の文字の大きな看板がある店が並んでいた。突然異国のような雰囲気になっていた。映画を観る限りではそのムードは薄らいでいるのかもしれない。それでも横須賀をロケ地に選んだのは大正解だ。

⒈寺尾聰

こんな音楽好きの不良親父を演じられるのは他にいない。しかもノっている。寺尾聰は70を大きく過ぎて父親宇野重吉に似てきたのかもしれない。宇野重吉が癌に侵されている晩年に気を張っていろんな作品に登場した覚えがある。寺尾聰は先日見た「金子差入店」にも出演していた。多作になったのは親父の影響かな。主演作で好きなのは「雨やどり」だ。これは本当に良かった。剣が絡む時代劇なのにこの映画のもつ居心地の良さはなんとも言えない。

ノリノリの親父が突如訳のわからないことを言い出す。レコード会社にInstagramのコンテンツを認められて良い方向に向かうと急に脱線する。認知症が治るわけではない。家の物置の物を投げつけたり奇妙な動きもする。ボケの演技ができるのもさすがベテランの味だ。

寺尾聰の歌をカラオケのオハコにしている人は意外にいる。「ルビーの指輪」だけでなく、この映画と同じようなテイストを持つ「HABANA EXPRESS」の歌もよく聴く。不良オヤジを自認している連中だ。

高校の時の部活仲間とは大学はお互いライバル校に行ったが、よくお互いの家に遊びに行っていた。レコードプレーヤーで寺尾聰の歌を聴いた。これいいんだよと薦めていて、しばらくして「ルビーの指輪」が空前の大ヒットをした。晩年がんに冒されて余命少ない時にそのプレイヤーを聴いた部屋で2人であった。キツそうだった。その時の想い出が脳裏に浮かぶ。

⒉松坂慶子

太ったなあという印象。初めて松坂慶子を見たのは、末期の大映でデビューした当時の岡崎友紀主演TV「おくさまは18歳」であった。当時の小学生はみんな見ていた。一世を風靡した「愛の水中花」バニー姿の頃は本当に美しかった。その昔お世話になったおじさんたちは多いだろう。「蒲田行進曲」などの深作欣二作品でも活躍したし、「男はつらいよ」でもその美貌を披露した。今回はわざと太って肝っ玉母さん振りを見せようとしたのか?同一人物には見えない。 70歳を越え、自分の立場を踏まえた登場の仕方である。

⒊三宅裕司&石倉三郎

三宅裕司は以前に比べるとテレビで見る機会は減った。約20年前に池袋の劇場スーパーエキセントリックシアターを見に行ったことがある。当時TVのギャラを舞台に注ぎ込んでいると言われていた。あの舞台はもともと喜劇役者を目指していた彼にとっての生きがいのようだ。

石倉三郎は京都祇園のラウンジで一緒になったことがある。撮影の後、静かに飲んでる雰囲気だった。萩原健一主演のTV「課長サンの厄年」が好きで,思い切って「あの時の石倉さんが大好きです」と声をかけたら、相手にしてくれてうれしかった

そんな2人が、寺尾聰の友人役で出てくれるとうれしい。映画の中では友人にすぎず存在感が強いわけではないが、2人がいるだけでうれしい。

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映画「金子差入店」丸山隆平&真木よう子

2025-05-22 18:55:45 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)

映画「金子差入店」を映画館で観てきました。

映画「金子差入店」拘置所の横で収容者のための差入品を販売する店の店主家族を描く古川豪監督の作品。今までの人生、運よく拘置所に絡んだことがなく、差入店があること自体初めて知った。拘置所の中と外をつなぐ重要な存在である。刑務所と拘置所の違いは、裁判で有罪が確定した受刑者がいるのが刑務所で、逮捕後判決がなされる前拘置所である。この映画では東京小菅の拘置所のそばに差入店がある設定だ。実際に店があるらしい。

丸山隆平主演で助監督としてのキャリアを積んできた古川豪監督の下、真木よう子、寺尾聰、名取裕子、岸谷五朗のベテランに加えて、直近では主役が多い北村匠海と主演級の俳優が脇を固める。かなり豪華な俳優陣だ。週末主演作がある寺尾聰をはじめとしてよく出たなと思うようなラインナップを集めれたのはすごい。主役の丸山隆平はこれまであまり知らない俳優だったが、健闘している。

東京拘置所の近くで、金子真司(丸山隆平)は妻の美和子(真木よう子)と差入店を営んでいる。伯父の星田(寺尾聡)から引き継いだ住居兼店舗で、引退した星田と10歳になる息子の和真と一緒に暮らしていた。真司には実母(名取裕子)がいて、時おりカネの無尽に真司が不在時に妻にたかりに来ていた。

ある日、和真の幼馴染の花梨が何の関係もない男に殺害される。一家が花梨の死から立ち直れないでいた時、犯人小島(北村匠海)の母親(根岸季衣)から差入の代行と手紙の代読を依頼される。金子は仕事を淡々とこなそうとするが、狂気じみた小島の応対に感情を激しく揺さぶられる。

そんな時息子の和真が学校でいじめられていることがわかる。事件に関係ないのに殺人犯とされている。実は真司は暴行で拘置所に入所していたことがあったのだ。

予想よりもよくできた作品で、興味深く観れた

差入店の仕事は収容者への差入品を販売するだけでなく多岐にわたる。衣類などの私物の差し入れや面会も代行している。それなので、極悪犯罪人にも身内から依頼されて代理で会うのだ。

今回は人気絶頂の北村匠海極悪殺人犯である。主人公金子に10歳の息子がいて、その同級生の女の子が残虐に殺される中での依頼だ。これはしんどい。それで一つのドラマができる。今回は北村匠海がいかにも変態ぽい殺人犯の形相で登場する。朝NHKのTV小説あんぱんでの良い人ぶりとは正反対だ。

⒈久々観た名取裕子

主人公金子には母親(名取裕子)がいて男好きで若い男に貢いでいる。その貢ぐためのお金を息子のところに無尽に来ている。対応する息子の妻(真木よう子)が封筒にカネを夫に内緒で渡している。名取裕子に若き日の面影がなくなったわけではない。すっかり貫禄がついた。タバコをぷかぷか吸って声もドスがきいたド派手な服装の水商売の姐さんのような声だ。ボロいアパートに1人住んでいる。

名取裕子は社長夫人のような役柄も十分できる感じがするが、しばらく観ていなかった。健在だということで再度の登場を期待する。

⒉真木よう子

「さよなら渓谷」以来好きな俳優である。前の主演作「アンダーカレント」も好きだ。この映画を観てみたいと思わせるのも、真木よう子が出ているからだ。

最初に拘置所の面会室で、収容されている男と真木よう子が面談する場面がある。男が異様に憤慨して暴れている。それなのに、しばらくすると金子差入店の妻に収まっている。これってどういうこと?と思わせる。時間がたって金子夫婦の素性がわかっていく。拘置所に入っても夫と離婚せず、叔父(寺尾聰)の面倒もみて差入屋もしっかり守る。夫がツラいときも支える。今回の真木よう子の奥さんぶりは好意的に受け止めたい。

息子の子どもの同級生が殺された事件とはまったく関係ないのに、近所の主婦たちからあなたに来られると迷惑だと訳の分からないことを言われる。何それ?意味不明。しかも、息子が殺人犯だといじめられて父親の金子が学校に乗り込む場面まである。何でいじめられるかよくわからない。差入店は大変なんだといいたいのであろうか?

⒊岸谷五朗と高校生

金子が差し入れの仕事で拘置所の面会受付に行くと、毎日のように拘置所を訪れる女子高生と出会う。自分の母親を殺した男(岸谷五朗)との面会を強く求めていたのだ。男は拒否するので、毎回門前払いだ。女子高生はショックで言葉を話せない。何だと思っていたが、母親が娘に売春を強要させていたことが、金子の知り合いの弁護士から聞いてわかる。岸谷五郎はヤクザで勤めを終えて出所したら元の組が亡くなっていたと設定だ。そこでドラマが生まれる。

ヤクザが居場所がなくなるのは最近多い設定である。そこに人情モノの要素を加えてラストに向けて高校生も含めた物語をつくる。こんな話で最後に進む。出来過ぎの設定でも岸谷五朗の世捨て人ぶりは割と適役に見えた。

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Netflix映画「新幹線大爆破」 草彅剛

2025-05-06 18:23:52 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)

Netflix映画「新幹線大爆破」を観ました。

Netflix映画「新幹線大爆破」は、1975年の高倉健主演の同名映画のモチーフを現代に移して、再度脚本を練って作った作品である。前回は東海道新幹線が舞台であったが、今回はJR東日本の東北新幹線を舞台にしている。主たる新幹線の車掌役で乗客の避難をリードする実質主役は草彅剛である。草彅剛は高倉健の遺作「あなたへ」で指名されて共演している。今回草彅剛は高倉健への思いを胸に作品に臨む。監督は「シン・ゴジラ」樋口真嗣監督で, JR東日本の全面的な協力のもとに作品を完成させている。前回国鉄の協力は得られなかったらしい。

新青森駅の定刻通り出発した東北新幹線「はやぶさ60号」に爆弾を仕掛けた電話が入る。身代金は1000億円だ。いたずら電話かと最初は疑ったが、実際に爆破による火災が起きて、JR東日本当局の運転操作室と電車内に緊張が走る。時速100キロ以下になると爆発すると予告した犯人の電話で、運転手(のん)は速度を守る。当局と車掌高市(草彅剛)が連絡を取り合いながら、車両を切り離すなどの乗客救出策を重ねる中から列車は東京に向かっていく。

娯楽作品として観るとおもしろい。結末がどうなるか最後まで気になる。

犯人の姿が見えない途中まで緊張感を保った後で犯人がわかる。ただ、自分は動機に不自然さを感じた。一作目からの流れを引き継いでいた。

いかにもネットフリックスが関わった日本映画としてはお金のかかった映画である。日本の資本だけではここまでのレベルには達しないはずだ。前作は日本よりもフランスなどの諸外国での興行収入が良かったようだ。名作「スピード」の速度が一定以下だったら爆発する設定も前作の影響と考えられる。巨額の製作費がNetflixから出る理由の1つだろう。

列車の連結や切り離しなどのいろんな設定は、普通の脚本家に技術的知識はないはずだ。JR東日本の協力なくしてリアリティーは出せなかったはずである。理論上可能な設定と考えるべきだ。作品情報等のインタビューを読むと、樋口真嗣監督はまず犯人像をどうするかを悩んだらしい。ディスカッションを重ねた上で決めた犯人はいかにもよくできた推理小説の結末のように意外な設定である。でも、その設定自体には本当にそんなことできるのかなあとノレない気分もあった。

登場人物は多い。JR東日本で新幹線運行の指令を出す責任者(斎藤工)などの関係者だけでなく、乗客に有名人が乗っている設定で女性国会議員(尾野真千子)や人気Youtuber(要潤)まで登場させる。女性国会議員にはスキャンダルがあり、要潤はいつもながらチャラい男だ。現代の世相を反映させる脚本でいずれもハラハラドキドキだ。その他にもリアリティーがあると思うシーンが続き飽きずに見れた。

この映画は固有名詞と数字の使い方が上手だと思う。具体的な地名と距離、速度などの数字に時間をからめてリアリティを高める。Netflixには今後も貧乏自慢の日本映画界にカネをばら撒いていい娯楽作品を作ってほしい。

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映画「6人ぼっち」

2025-05-05 08:27:01 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)

映画「6人ぼっち」を映画館で観てきました。

映画「6人ぼっち」は高校のクラスで孤立している生徒6人で修学旅行の自由行動の班を組むことになった青春ストーリーだ。先日観た「今日の空が一番好き。。」友だちがいない大学生の物語だけど、その昔に比較すると孤独な若者が増えているのであろうか?設定を見て気になってしまう。脚本が自分が好きな映画「ハケンアニメ」政池洋佑が担当。宗綱弟監督デビュー作である。

高校2年の自分の修学旅行は中学の時と同じ関西旅行だった。あえて深い想い出をつくる意味で関西を選ぶ教員の意図は正直微妙だが、グループ行動の日程はあった。どうやってメンバーを選んだのかは忘れた。奥京都を散策するのに、思い通りにならないメンバーがふくれていた記憶がある。当時クラス内で完全に1人で孤立する奴っていたかな?とは感じる。期待半分だったけど、バラバラだった仲間が徐々に距離を縮める過程を見るのは悪くない。

 

クラスに一人も友達がいない“ぼっち”の加山糸(野村康太)は、修学旅行前の班決めで、誰とも組むことができずにいた同じ“ぼっち”である5人と同じ班を組まされ、強制的に班長を任されることになってしまう。

メンバーは、自己中で周りから引かれ気味のTikTokerの馬場すみれ(三原羽衣)、ガリ勉タイプで接しにくい新川琴(鈴木美羽)、自慢話ばかりでウザがられている五十嵐大輔(松尾潤)、気が弱く自分の意思を表せない山田ちえ(中山ひなの)、そして何かの理由で不登校になってしまった飯島祐太郎(吉田晴登)、いずれも一癖も二癖もある“ぼっち”の面々だった。

修学旅行の行先は“広島”。みんながヨソヨソしく「友達でもないんだし」と、別々に行動することを提案されてしまい、ギクシャクした中で自由行動がスタートしてしまう。曲がりなりにも班長としての役割を果たそうと奮闘する加山に、渋々従うメンバーたち。

それぞれが行きたい場所を順番に周るという提案に従って行動することになるのだが、広島での修学旅行とは思えない、バッティングセンターや“SNS映え”のためのカフェを巡るうちに、少しだが仲間意識が芽生え始める。しかし、あることをきっかけに誰も予想していなかった事態が起こる・・・。(作品情報 引用)

 

現代高校生の偶像を垣間見れて、想像よりもよかった。

あえて連続して日本の若者の映画を観ている。目線を若者のレベルに落とすのはいいものだ。ほぼ無名な俳優ばかりでメジャーレベルはいない。この映画のストーリーは頭になじみやすい。すんなり入っていける。逆に、感想を残していないが、映画館で観た台湾映画「カップルズ」は若者中心の話なのにさっぱり訳がわからなかった

そのむかし、NHKで「中学生日記」という番組があった。それぞれのストーリーの話題はすっかり忘れているけど、当時のNHKらしい道徳の授業の延長みたいな話が多かった気がする。日曜日の昼いちばんの番組でも、目線があっていたのか意外にクラスメイトは見ていた。この映画で6人の距離が収束するイメージと似ている。

主役の野村康太は長身のイケメンで、誰も友人がいないという設定は不自然にも見える。やったことがないリーダー役になって本を読んだりしながら、思いきって仲間にたどたどしく意見を言うのがいい感じだ。朴訥な雰囲気が良い味を出していている。

自己中女、自慢話が多くうざく思われる男などは、普通だったらクラス内では孤立しそうもない連中だ。ガリ勉の女の子は勉強ができるというだけでスクールカースト上位になるはずだけど孤独だ。あえて言えば、孤立しそうなのは内気で気の弱い山田ちえくらいかな。

まったく6人の呼吸が合わないのに一気に近づくのは中学生日記やその昔の青春ドラマのパターンだ。結末が予測できる時代劇のような気分で観てると気持ちは穏やかになれる。優等生をおとしめる策略を練った時は一体どうなるかと思った。広島が舞台でも、観光案内的になりすぎないところもいい。

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映画「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」 萩原利久&河合優実

2025-05-01 20:14:51 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)

映画「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」を映画館で観てきました。

映画「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」はお笑いコンビ、ジャルジャルの福徳秀介による同名小説を大九明子監督が若手有望株萩原利久と絶好調河合優実で映画化した作品。河合優実が出演しているだけで気になる。主演級ばかり揃う超豪華メンバーのNHK TV小説「あんぱん」にも出演している。普段見ないのに思わず見てしまう。原作の福徳秀介の母校関西大学が実名で全面的に協力しているのが映像でよくわかる。どこにでもいる大学生の物語だ。

冴えない毎日を送る関西大学の学生小西(萩原利久)はしばらく学校休んでから復学する。学内唯一の友人・山根(黒崎煌代)とも再会。京都の銭湯でのバイトも仲間のさっちゃん(伊東蒼)と一緒に閉店後に風呂掃除をしている。小西と同じ講義を受けていた桜田(河合優実)が学食でも1人で食べているのを見つける。気になる存在だ。講義中に桜田の隣に座って、出席カードを代わりに提出してもらうのがきっかけで声をかけて話すようになる。周囲に交わらない桜田に引き寄せられる。なぜか学校外でも偶然に出会って、お互い友人のいない2人が意気投合する。

そんな桜田のうわさをバイト先の銭湯で話していると、さっちゃんは落ち着かない。さっちゃんは小西に恋の告白をしてもう余計なことは言わないと言ったあと銭湯に来なくなる。しかも、小西が約束したのに桜田は待ち合わせに来ない失恋したのか?一気に何もかもうまくいかなくなる。

思いがけずよかった。

普通の恋愛ものだけど、変化球を効かせていて途中からの展開は意外だった。原作者はコメディアンだけに観客を驚かせるのを楽しんでいるようだ。

「花まんま」に引き続きこの映画も関西が舞台。主人公2人は関西人ではないけど、河合優実はこれまで関西舞台の映画に出ていてそんなに違和感を感じない。いかにも関西ぽいおかしな柄の服で登場する。社会の底辺を彷徨う役が続いたのに対して、今度は普通の大学生役だ。「毎日楽しいって思いたい。今日の空が一番好き、って思いたい」というセリフが映画のキーポイントだ。「敵」では立教の学生役で今回は関西大学の学生役と器用にこなす。「さがす」でもうまかった伊東蒼がここでも活躍する。大阪出身で関西弁の映画では映える。

キャンパス内の中に「関西大学」の表示がある。ここまで映画ロケに協力するケースは少ない。関西人は楽しめるだろう。阪急の関大前駅周辺もいい感じで映し出していて、味のあるメニューが並ぶ喫茶店でのやりとりがコミカルで楽しい。主人公小西がバイトする京都の場面もある。主人公2人が水族館で遊ぶ場面があるが、京都水族館のようだ。銭湯も味がある。

 

ネタバレは厳禁だけど

意外な設定には驚いたなあ。そうなる前提がまったくなかったので突然繋がってしまったのはビックリ。長回しが多いのは大九明子監督の得意技だけど、ちょっとしつこいかな?画面分割の手法を効果的に使う。スピッツの曲「初恋クレイジー」の使い方はうまかった。

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映画「花まんま」 鈴木亮平&有村架純&朱川湊人

2025-04-26 09:12:46 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)

映画「花まんま」を映画館で観てきました。

映画「花まんま」朱川湊人の直木賞作品を鈴木亮太と有村架純の主演で監督三浦哲で映画化した作品である。日経新聞で何気なく読んだ朱川湊人が書いたコラムの文章に引き寄せられ、彼の小説を連続して読んだことがある。東京や大阪の下町を舞台にした怪奇じみた現実離れした要素を持つ創作話が中心だ。温かみのある文章が自分に合っていた。今から14年前に「花まんま」を読みブログ記事にupしたこともある。他にも短編集「赤々楝恋」の小説も絶品だ。

それなので、今回の映画化を知り楽しみだった。公開初日に見ようと映画館に向かう。blog閉鎖発表からのれずに映画も観る気がせずにブログ化には戸惑った。

東大阪市に兄加藤俊樹(鈴木亮平)、妹フミ子(有村架純)の2人兄妹で暮らしている。運転手だった父は妹が生まれてすぐなくなり,母親(安藤玉恵)も子供を育てるため掛け持ちで仕事をして早く亡くなった。その後東大阪の工場で働き妹の面倒を見てきた。そんな妹が今度結婚することになり、フィアンセと一緒に承諾を得ようときた。兄がいやいや承諾して結婚式を迎える前々日妹の姿が見えない。連絡はあったけど、その昔の出来事が兄の脳裏に浮かんだ。

妹が小学校に入った時、夜突然嘔吐したり、行方不明になることがあった。ある時は京都まで行ってしまった。そんな妹の自由帳を読むとむずかしい漢字で繁田喜代美という女性の名前が書いてある。まだむずかしい漢字は習っていないころだ。兄がどうしたのかと聞くと、自分の前世はこの女の人だったというのだ。

その後兄は妹から自分が住んでいた滋賀まで一緒に行ってくれないかと頼まれる。母親に言うと心配するので動物園に行くとウソをついて電車に乗り向かった。

小説のクライマックスの場面で思わず大粒の涙を流してしまった。

朱川湊人花まんまは短編小説である。映画化するにあたり、原作を大きく脚色して元々の小説の世界を広げた

短編小説について吉行淳之介がこんなことを言っている。名言だ。

「長い棒があるとしますね。長編は左から右まで棒の全体を書く。短編は短く切って切り口で全体をみせる。あるいは、短い草がはえていて、すぐ抜けるのと根がはっているのとがある。地上の短い部分を書いて根まで想像させるものがあれば、いくら短いものでもよいと思う。」

吉行の言う「地上の短い部分」に関して、朱川湊人が絶妙のタッチで書いた文章に映画は忠実である。それに加えて「根を想像して」現在の婚約が決まった兄妹の世界を脚色している。小説でサラッと流した大学の助教であるフィアンセにも存在感がある。結婚式の場面などのディテールには若干無理のある設定が目立つ。でも目をつぶってもいいだろう。

小説のクライマックスがある。父娘の厚情を示すシーンには弱い。その場面を実像の映像で観ると、泣けて泣けて仕方なかった。加えて小さな弁当箱に食べ物に似せた花が詰まっている「花まんま」も文章でなく実際に見ると感動する。最後まで効果的に使われていた。

実はこの映画を観るまで知らなかったが、主演の鈴木亮平も有村架純も関西出身だ。自分も転勤で5年大阪に住んだ。エセ関西弁はすぐわかるし不自然だ。コテコテの関西を描くには、ネイティブな言葉を話す関西人を起用するかしないかで映画のレベルが変わる良い例だ。2人が住む戸建も小さい頃住んだ文化住宅もいかにも大阪らしい風景だ。古い建物が建ち並ぶ滋賀の風景もよく見える。ロケハンには成功している映画だ。

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映画「レイブンズ」 浅野忠信&瀧内公美

2025-03-29 20:16:26 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)

映画「レイブンズ」を映画館で観てきました。

映画「レイブンズ」は写真家深瀬昌久の破天荒な人生の歩みを描いた浅野忠信主演作だ。レイブンズは鴉(カラス)を意味する。日仏をはじめとした4カ国の資本が入っている作品だ。深瀬昌久についての知識はない。監督、脚本はイギリスのマーク・ギルで、深瀬昌久の妻役はこのところ出番の多い瀧内公美だ。主演級の古舘寛治、池松壮亮、高岡早紀が脇を固める豪華メンバーだ。

浅野忠信の前作「かなさんどー」は愛情に満ち溢れた自分が好きな作品だった。「将軍」でゴールデングローブ賞を受賞してまさに国際派俳優として名をあげた。その一方で「箱男」「湖の女たち」など幅ひろい出演作もある。以前にましていい女になった瀧内公美「敵」で、古舘寛治は指名手配犯「逃走」で、池松壮亮「本心」「ぼくのお日さま」で観てきた。いずれも日本映画界では最も信頼されている俳優だ。エンディングロールのクレジットは英文字で、諸外国のスタッフの人数が多いのに驚く。

1951年の北海道、大学の写真学科に合格して進学したいと父親(古舘寛治)に報告した深瀬昌久は家業の写真館を継ぐには「学」はいらないと怒られる。結局母親からもらったカメラを持って上京して大学で学び、故郷に帰らず写真家を志す。屠殺場の豚を撮ったりユニークな写真を撮るようになる。

1963年昌久(浅野忠信)写真のモデルだった洋子(瀧内公美)と意気投合して一緒に暮らす。勘当同然の関係なので実家には結婚を伝えなかった。洋子を中心に撮ってきた昌久はその斬新な写真を認められるようになっていく。一方で酒に溺れる生活で、洋子も呆れ果てている状況だった。そんな昌久を訪ねて父親が上京してくる。

おもしろかった。浅野忠信がうまかった。

無頼派というべきか破茶滅茶だけど天才的センスを持つ深瀬昌久を演じた浅野忠信が自然体でよかった。タチの悪い飲んだくれ役を連続して演じる。浅野が被写体として写真を撮りまくる相手役の瀧内公美観るたびごとに魅力的になっていく。時代を感じさせる建物でのロケ撮影なので60年代70年代のシーンでもすべてに不自然さを感じない。バックに流れる音楽も時代に応じた適切なチョイスだ。

⒈父と息子の葛藤

北海道の写真館の店主の父親のもと、深瀬昌久は子どものころから写真を学んできた。「写真館で撮る写真には芸術性はいらない」というのが父親の言い分だ。東京の大学へ行くと聞くと合格通知を破ってしまい部屋に閉じ込める。暴力も振るう。暴君のような父親役の古舘寛治ががんこ親父になりきる。そんな時に空想のカラス(レイブンズ)がでてくる。セリフは英語だ。このレイブンズは最後の最後まで昌久の横にいる。昌久の心の中とも言えるし、味方とも言える。

一度は父と息子の心は離れた。それでも父親は上京し、昌久は何度か北海道に行く。そこでも取っ組み合いの大げんか。でも、その父親が亡くなって葬儀が終わった時に、母親が遺品の中から息子の作品が掲載されているカメラ雑誌を見せる。父親が大事に保管しているケースがあったのだ。本当は息子を思う父親の気持ちが伝わるジーンとする場面だった。

⒉ユニークな写真と酒癖の悪さ

屠殺場から移動寸前の肉を撮ったり、流産した子供の写真を撮ったりユニークな写真で名を売った。モデルの洋子と親しくなると、ひたすら洋子を撮りまくる。でも、団地住まいをしながら生活は豊かにならない。一度酒を飲み始めると止まらない。これで大丈夫かと洋子もその母親も心配する。

それで始めたのがCM撮影だ。これがおもしろい。掃除機のCM撮影で、モデルにギターのように持ってよと注文する。それがカタチになっている。そんなユニークさも認められて、昌久の写真がニューヨーク近代美術館(MoMA)に展示されることになる。その時洋子と一緒に喜ぶシーンがいい。ニューヨークで大はしゃぎだ。それでも、深瀬の酒癖の悪さは治らない。破滅への道を歩んでいき離婚だ。

その後しばらくして脚光を浴びた深瀬昌久の展覧会に、洋子がきてくれて喜ぶ昌久に向かって「わたし結婚したの」と告げて呆然とする浅野忠信の顔が最も印象に残る。

⒊新宿ゴールデン街

途中から新宿ゴールデン街と思わせる店の並びが出てくる。あの界隈は昼間閑散としているので、その時間に撮ったのであろう。建物は古いままなので、時代設定を70年代から1992年としてもおかしくない。映画に出てくる店は今もゴールデン街に実在しているようだ。昔は青線だったどの店もカウンターの配置はほぼ似たようなものだ。高岡早紀のママいかにもゴールデン街のママという感じを醸し出す。

ゴールデン街自体、店がいっぱいになって次の客が来たら席をあけて別の店に行く暗黙のルールがある。深瀬昌久はどうだったのであろうか?だいたい一階と二階にそれぞれ店があるので、自分がなじみの二階にある店では酔っていると落ちないようにねとママが声をかけて見張ってくれる。ところが、深津昌久が階段で落ちた時はいつものように酔っているとみなされていて気がつくと転落して頭を打った脳挫傷を負ってしまうのだ。

自分自身あの界隈で酩酊したことがある。飲んだくれた浅野忠信を観ていると自分のことのようで共感する。逆に自戒にもなったシーンであった。

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映画「悪い夏」 北村匠海&河合優実&城定秀夫

2025-03-21 08:04:38 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)

映画「悪い夏」を映画館で観てきました。

映画「悪い夏」染井為人の原作を脚本向井康介、監督城定秀夫で映画化した新作だ。染井為人原作の「正体」が、昨年公開されたばかりだ。主人公の市役所職員を北村匠海、生活保護のシングルマザーを目下絶好調の河合優実が演じて窪田正孝、伊藤万理華、毎熊克哉と主演級の当代人気俳優が脇を固める。城定秀夫監督作品はリズミカルでテンポもよく毎回観るが、前作「嗤う蟲」は村八分の話と聞いて不義理してしまった。この映画もクズとワルだらけの登場人物なんて宣伝文句が気になるけど、早速観に行ってしまう。

市役所の生活福祉課に務める佐々木守(北村匠海)は、生活保護受給者の山田(竹原ピストル)が住む市民住宅を定期面談で訪ねるシーンでスタートする。現状の生活はどうか?求職をしているか?と質問するがヘルニアで仕事は無理だと返答される。でも、とっさに山田はすっと立ち上がれるのだ。

佐々木は同僚の宮田(伊藤万理華)から、職場の先輩である高野(毎熊克哉)に生活保護受給者でシングルマザーの愛美(河合優実)に肉体関係を迫っている疑惑があると聞く。真相を確かめようと愛美の家を訪ねる。愛美は真実を言わずその場は否定する。

しかし、風俗系バーを経営する裏社会の男金本(窪田正孝)の愛人の莉華(箭内夢菜)は愛美の友人で、役所のケースワーカー高野が愛美に迫っていることで脅そうと試みる。しかし、愛美の家に市役所の同僚がきたことがわかり、高野はいずれクビになると察していったん断念する。その後、情がうつった佐々木が愛美の家に再訪するのを知った金本の手下の山田が、愛美を使い誘惑させて佐々木を罠にはめようとする。金本は自分が送り込んだ貧困者の生活保護を承認させて貧困ビジネスで儲けようとしていたのだ。

きわどい話だが飽きずにおもしろく観れる。

シングルマザー、貧困ビジネス、生活保護、裏社会の脅しという題材は聞くだけで暗くなる一方だが、そうならないのがピンク出身でサービス精神旺盛の城定秀夫作品の持ち味だ。直近に観た「35年目のラブレター」は間延びしてテンポが悪かったので、リズミカルにまとめる城定秀夫監督の映画づくりがなおのことよく見える。さすがの職人芸を堪能する。

予告編で役所の職員である北村匠海がぐちゃぐちゃしゃべっている。何かにむかついているようだ。そのシーンは最後に向けて出てくる。真面目な公務員である。生活保護者のことを思い,定期的に訪問する。毎熊克哉演じる同僚が弱みにつけ込んで肉体関係を迫る話を聞いて呆れてしまう。ところが,河合優実演じる生活保護受給者とその娘に情が移ってしまうのだ。主人公は恋愛感情を持ってしまい、気がつくと悪だくみの罠にはまっている。いい加減嫌になってしまうのだ。

⒈河合優実

朝のテレビを見ていたら、NHKの朝の連続テレビ小説「あんぱん」北村匠海と河合優実は共演することがわかる。河合優実は目下絶好調で、日本アカデミー賞の主演女優賞まで受賞してしまった。まさに旬の女優に昇り上がる24歳である。正直本人に欲があるとは思えない。ともかく、先日公開の「敵」のように出演場面は少ない映画も含めて数多く出演している。

往年の山口百恵を思わせる風貌と喋り方が彼女の魅力である。「あんのこと」「ナミビアの砂漠」で演じた役と若干違うけどテイストは同じである。こんな役が似合っている。若くして子を産んだシングルマザー役が適役である。前作では乳首を披露する大奮発であったが,今回は人気も出てきたこともあり適度に収まった。

罠にはめろと言われても、最初は抑える。そんな人の情も持っているところも示すが、結局脅されてワルになる。そんな心のさまよいが読み取れる演技はうまい。

⒉窪田正孝と竹原ピストル

真っ赤な高級スポーツカーに乗って、おっぱいパブのような風俗系バーを経営する裏社会につながった男が窪田正孝の役だ。相手の弱みにつけ込む、いかにもヤクザの動きだ。これが思いのほかうまい。裏社会につながっているから、喧嘩は強い。自分の罠にはまりそうな奴をボコボコにする。直近の裏社会にいそうなタイプだ。

竹原ピストルの役は生活保護受給者である。当然働いてはいないふりをしなければならない。ヘルニアで動けないと言っている割には、窪田正孝が経営する風俗店で遊びまくっている。窪田正孝に裏仕事も頼まれている。こんなチンピラの手下みたいな役柄をコミカルに演じる竹原ピストルがうまい。

⒊万引きをする女

息子と2人きりのシングルマザー佳澄(木南晴夏)を並行してクローズアップする。困窮した生活から万引きに手を染めるのだ。食品加工の会社に作業員として勤めていたが,万引きがばれてしまい、会社をクビになる。公園の立水栓の水をペットボトルに汲んでいる。生活に困っている人がいるんだね。

あまりに困ったので、役所に行って生活保護を申し込む。受付に出てきたのは主人公佐々木だ。裏社会のいいようにされて意識朦朧としている時だったので,シングルマザーに爆発してしまう。ようやく決意をして役所に行ったのに気の毒だ。こういう1人の家族をクローズアップさせることで生活保護受給をうけようとする人の悲哀にも焦点を当てる。

この映画は、登場人物の使い方がうまい。未読だが原作がよく練ってできているのであろう。他にも毎熊克哉と伊藤万理華の使い方など主人公に絡んだ人物をほぼ全員巻き込む思ったよりも重層構造であった。

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映画「35年目のラブレター」 笑福亭鶴瓶&原田知世

2025-03-19 14:53:04 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)

映画「35年目のラブレター」を映画館で観てきました。

映画「35年のラブレター」は読み書きができずに65歳にして夜間中学に通うようになった夫を笑福亭鶴瓶が演じ、その妻を原田知世が演じる人情物語だ。監督・脚本は塚本連平。これも観る予定はなかったが、映画好きの飲み仲間から「この話が実話に基づくというのはすごい」との推薦を受けて観ることにした。観客の笑いをとる笑福亭鶴瓶の演技は毎回うまいし、前作「あまろっく」も良かった。若き日の夫婦を目下絶好調の上白石萌音と重岡大毅が演じている。

 

1999年、奈良で寿司職人をしている西畑保(笑福亭鶴瓶)と長く連れ添う皎子(原田知世)の夫婦には2人の娘がいて保はもうすぐ65歳になる。寿司職人を定年で辞めることになっていた。保は小学校を中退したために読み書きができなかった。

1964年、保(重岡大毅)は職を転々とした後で現在でも働く寿司屋の大将(笹野高史)に引き取ってもらい職人の道を歩むことになった。そして1972年、常連客の勧めで皎子(上白石萌音)とお見合いをすると一目惚れして結婚した。しかし、読み書きができないことは皎子に話をしていなかった。結婚して半年経った時、回覧板に自筆で署名する機会があって、妻に文字が書けない秘密がバレてしまった。保がまずいと思った瞬間に「今日から私があなたの手になる」と助け舟を出してもらいその後幸せな夫婦生活を送る。

2000年、保は地元に夜間中学を見つけて教員の谷山(安田顕)に相談してみる。すると温かく励まされ読み書きから学ぶことになった。寄り添い支えてくれた皎子へ感謝のラブレターを書きたいことが入学のきっかけだった。そして2007年、保はついに妻への手紙をしたためることができるようになる。

いかにも人情モノの題材で、鶴瓶をはじめとした俳優の演技も良かった。ただ、映画の構成は間延びしてしまいムダが多すぎる印象をもった。

近鉄電車の車両とお寺で奈良だとすぐわかる。五重塔や鹿も映し出す。歴史がある町なので道路が狭い。主人公の夫婦は関西特有の文化住宅に住む。奈良が舞台の映画を見るのはめったにないので逆に新鮮だ。

キャスティングは絶妙で、笑福亭鶴瓶はまさに適役だ。関西弁でいつもながら笑いをとる。読み書きができない頃、魚の絵に呼応する鰯(イワシ)の字を表示を見ても寿司職人なのに読めない。魚と弱の字が組み合わさっていると言うと、「イワシは腐りやすい」と鶴瓶が反応する。他の俳優がこのセリフを話すと中途半端になる。辛いの文字に一本線を引くと幸せになるというセリフも良かった。

和歌山の山村の生まれで小学校でいじめに遭い不登校でそのまま字が読めない。若き日の苦しい時代、重岡大毅演じる保が文字も読めず不器用に彷徨う。それでも最愛の妻との出会いと新婚シーンは微笑ましい。一緒に中華料理屋に行ってもメニューの文字が読めないので適当に頼むとスープばかり来てしまうシーンはおかしい。上白石萌音とは「溺れるナイフ」で共演している。この時も重岡はジャニーズ系なのにコミカルなキャラを披露して良かった。鶴瓶と重岡大毅が似てないとツッコむ必要はないだろう。

一方で原田知世の奥さんぶりがいい。ここでは孫もいる役柄だ。役柄では年齢を重ねて70代をゆうに超えている。夫よりも早く亡くなる役柄はこれまでないだろう。「時をかける少女」の頃から見ているので、素敵な大人になったなと感じる。「私をスキーに連れて行って」「彼女が水着に着替えたら」時代のキュートさはないが笑顔に親しみを感じる。キネマ旬報1位だった「ペコロスの母に会いに行く」の娼婦役はあえての挑戦だろうけど合わない。清純で澄み切ったイメージをキープしてほしい。

上白石萌音の持つやさしさが生きる役柄だ。重岡大毅演じる保を懸命に支える。保が働く店のカウンターで握る寿司を食べながらおいしいと微笑む姿がかわいい。父親が字を書けなくて子どもたちが戸惑う時も「お父さんは日本一の寿司職人だ」と言い切る。いかにも浪花のど根性物語にお似合いのセリフだ。

それにしても西畑保さんは65歳にして決意してよくぞ夜間中学に20年も通ったものだ。小学校入学レベルからのスタートは確かに時間がかかる。ラブレターを書けるまでまで7年かかった。山田洋次監督「学校」という夜間中学での教員と生徒のふれあいを描いた名作がある。在日の人や字の書けない中年田中邦衛をクローズアップして、西田敏行や竹下景子の教員が対応する。いい映画だ。古い映画なので映画ファンを除いては記憶に薄いだろう。直近は外国人の移住による多国籍化で夜間中学に通う人は増えているだろう。いい時期に公開された。

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映画「逃走」古舘寛治& 杉田雷麟

2025-03-16 21:37:00 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)

映画「逃走」を映画館で観てきました。

映画「逃走」は長年の逃走生活の末、死ぬ前に自らの正体をカミングアウトした新左翼の元活動家桐島聡に焦点を当てた足立正生監督の新作だ。爆破事件の犯人としてお尋ね者のポスターになっていた桐島聡の顔は誰もが何度も見ているだろう。アカ嫌いの自分でも新聞のニュースで自ら名乗ったとの報道に関心を持った。TVの特集で桐島聡逃亡のドキュメンタリー番組を見た。若松孝二監督の一派だけど、バリバリの元赤軍派活動家だった足立正生監督が今回メガホンをとるのも気になる。早速映画館に向かう。

2024年1月、49年に及ぶ逃亡生活を送った後に末期がんで入院した桐島聡(古舘寛治)の病棟シーンからスタートする。1970年代の日本、新左翼過激派集団「東アジア反日武装戦線“さそり”」のメンバー桐島聡(杉田雷麟)は企業の連続爆破事件に絡んでいた。懸命に追う警察の捜査から逃れるが、重要指名手配犯とされていた。仲間の宇賀神と日時を指定して次に会う約束をして別れた。

桐島は偽名を使い土木作業員として建設会社に住込みで働きはじめる。仲間のいざこざで警察が出動しそうになり身に危険を感じた時には職場をかえる。人手不足の建設業界では身を隠して生きていくことができる。「内田洋」という偽名で潜り込んだ工務店で数十年勤める。やがて、地元のライブバーに通うようになり、親しくなった女性もできた。しかし、桐島に病魔が押し寄せてくるのだ。入院後、身内がいない桐島に直接あとわずかの命との余命宣告がなされる。

題材は興味深いが、映画としては普通だった。

足立正生監督が活動の元メンバーや逃亡中に関係あった人たちなど方々に取材にまわったようだ。でも逃亡生活の真実を本人から聞いた訳ではない。足立正生監督自らの脚本には推測のウェイトが大きい。世の中が大きく変貌を遂げる中での独白は赤軍派の活動家だった足立の視線が強く、偏向したものの見方になってしまうのはやむをえない。わかって観たけどもう一歩のれない展開となった。

企業オフィスでの爆破の規模は活動家のもともとの想定を大きく上回ってしまった。民間人も巻き添いになった。仲間うちでやりすぎたと心を痛める新左翼活動家の場面を見ているとムカつくしかない。東アジア反日武装戦線なんて、逆に戦前の大東亜共栄圏みたいに感じる。それにしても、戦後30年近くたった頃に犯罪企業撲滅だと称しての爆弾破裂とは時代錯誤だ。超法規措置により国外に出る仲間たち、自ら命を絶った者など色々いた。世間に迷惑をかけっぱなしだった新左翼集団の一派が完全になくなっていない。困ったものだ。

映画の中では、桐島聡が建設会社に求職に向かう場面がある。名前だけが書いている履歴書を持参して面談。こんな履歴書見たことないと苦笑する社長も人手不足なので、そんな状態でも大歓迎だ。しかも、会社にくっついて寮があるから住まいは確保できる。気がつくと長きにわたり同じ工務店に勤めていたらしい。世を捨てて逃げ回るにはこういうところで働くのがいちばんの逃げ道だと気づく。

身分証明書もなくBK口座は持てないだろうから給与振込はできない。従業員の給与は経費にするんだろうけど、こういった土木作業員は正式な従業員でなく日雇い外注扱いかな?労災保険も福利関係の費用は当然なしだ。給与は現金で手渡しだったけど、いつもは自分の部屋に大金を隠し持っていたのかな?ずいぶんと不用心だ。病院の治療費として現金250万紙袋に包んでベッドで渡していた。

最後桐島は末期がんと診断され、病院のベッドで生死を彷徨う中で自らの正体をカミングアウトする。病院関係者もビックリしただろうなあ。自分の顔写真がある手配ポスターが長らく街に貼ってあって警察にも悪いと思ったのかな?容疑の一つしか関わっていないと言いたかったのかな?色々と想像してみても桐島の心理状態は藪の中だ。

ただ、主役の桐島聡を演じた古舘寛治と杉田雷麟はいずれもなりきっている感じで良かった。途中で2人が出会うシーンはご愛嬌。全体を通じて山下洋輔などのジャズをバックにしているのも映画にはあっている。夜のバーで仲良くなった女性が桐島聡の正体を見破るシーンは実話なのかな?女性が結婚詐欺の常習犯との話も本当かな?

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映画「トリリオンゲーム」 目黒蓮&シシドカフカ

2025-02-19 17:23:51 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「トリリオンゲーム」を映画館で観てきました。


映画「トリリオンゲーム」稲垣理一郎の原作漫画を映画化した目黒蓮主演の東宝映画だ。監督は村尾嘉昭。いつもTOHOシネマのナビゲーターに出てくる福本莉子も映画ポスターにでかく顔が出ている。普通は観ないタイプの映画であるが、カジノが題材なのは気になる。香港デモとコロナでしばらくマカオに行けていないし、たまにはカジノを扱う映画が観てみたくなる。

融通の利かない日本人のせいで、日本のカジノリゾートができない。残念だ。そのためではないけど、吉本の芸人がオンラインカジノの件で例によってマスコミに傷み付けられている。妻が「競馬が良くてなんでオンラインカジノはダメなんだ」とようやく運をつかんだ吉本の芸人がかわいそうだと怒っている。TVで橋下徹も似たようなこと言っていた。ギャンブル中毒云々などと、とやかく言うやつの話を聞くのはどうかと思う。

とりあえず作品情報を引用する。日本でカジノができたらどうなるのかなあと観てみる。

世界最大企業の時価総額=1兆ドル。1兆ドルあれば、この世のすべてが手に入るーー。天性の人たらしで口八丁な”世界を覆すハッタリ男”のハル(目黒蓮)と、気弱だが心優しい”凄腕エンジニア”のガク(佐野勇斗)。
予測不能な作戦で成り上がってきた二人が、「1兆ドルを稼ぐ」ために手び動き出す。2016年にIR整備推進法案、通称「カジノ法案」が成立。 莫大な利益を生む夢とロマンを秘めた新事業に目を付けたハルは、 未だ誰も成しえていない「日本初のカジノリゾート」開発に乗り出す。野望のために、挑むターゲットは【世界一のカジノ王】!(作品情報 引用)


いかにも漫画チックなドタバタ劇だった。
そもそもTVドラマでやっていたことすら知らない。お調子者の若者とITの才能のある男の2人のコンビの設定は悪くない。一気に這いあがって高層の自社ビルを所有している。でもそんな巨大企業グループのトップに君臨する話自体があり得ない。まさに漫画っぽいなあ。自分の会社までカジノでオールインをして賭けてしまうなんてことは大王製紙の◯川さんだってやらない。フィクションもここまでいくとついていくのはむずかしい。

旧ジャニーズ系目黒蓮は色んな雑誌の表紙などでみるので見慣れてきた。アクションも時折見せるが、死に損なって生き還るのはオーバーだ。紅白歌合戦も韓流の男女ばかりよりもジャニーズ系が出てもいいと考えるので目黒蓮には期待する。マカオの金満カジノ王の石橋凌は英語のセリフも多い。とてつもない金額をポーカーで賭けるのには笑うしかない。


ただ、この映画でピカイチに光ったのがシシドカフカだ。長身でエキゾチックな風貌がカッコいい。顔立ちは范文雀と小池栄子を足して割った感じで似ている。眉毛が濃くボリューミーだ。SM女王的な存在で菜々緒のようなキャラだ。金満カジノ王の秘書的存在なのだが、カジノディーラーとして目黒蓮に対しても色気づいて少しづつ近づいていく。敵か味方かわからないルパン3世の峰不二子のような役をこなす。彼女だけはお見事だ。

観たことあるなと途中で気づく。映画「リボルバーリリー」綾瀬はるかの味方になって狙撃する見たことがなかったエキゾチックな女だ。とりあえず今田美桜と福本莉子が映画ポスターに前面に出ているがシシドカフカと比較すると大きく格が落ちる。俳優は本職ではないようだが、シシドカフカの今後の活躍に期待する。
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映画「MR JIMMY レッドツェッペリンにすべてを捧げた男」

2025-01-24 18:34:51 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
ドキュメンタリー映画「MR JIMMY レッドツェッペリンにすべてを捧げた男」を映画館で観てきました。


映画「MR JIMMY」は「レッド・ツェッペリン」のギタリスト、ジミー・ペイジになりきることをライフワークとするジミー桜井を追ったドキュメンタリーだ。われわれの世代の男性はみんなジミーペイジへの想いは強い。無器用な自分はギター習得にはすぐさま脱落して聴く専門だけであった。高校の文化祭などでツェッペリンやディープパープルのコピー演奏は定番だった時代だ。

予告編でジミーペイジのコピーをしている男のドキュメンタリーが公開されるのがわかり興味を感じた。何せ本家本元のジミーペイジが自ら来日時に見に来た予告編映像を見てそれだけですごいと思う。とはいえ、よくあるコピーバンドの1つの話だと思ったら大違いだった。こだわりの強い昔ながらの職人気質の日本人の物語だ。ピーター・マイケル・ダウド監督がメガホンをとる。映画制作費でスッカラカンになったそうだ。

新潟県十日町生まれの桜井昭夫はレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジに惹かれる。やがて呉服店の営業マンや旅行会社の添乗員として働きながら、夜は音楽ライブハウスでペイジのギターテクニックを披露する「ジミー桜井」として音楽活動を続けていた。

ある夜、ウワサを聞いた来日中のジミーペイジ本人が桜井の演奏会場を訪れ賞賛される。桜井はサラリーマンの仕事を辞め、家族を置いてロサンゼルスに移住しレッド・ツェッペリンのコピーバンド「Led Zepagain」に加入する。しかし、徹底的にディテールにこだわる桜井の考え方と他のメンバーとの相違が生まれていくのだ。


すばらしいドキュメンタリーだった。感動した!!
単なるコピーバンドだと思ってはいけない。70年代にレッドツェッペリンが行った歴史的ライブでのジミーペイジのギターソロを徹底的にコピーする。原曲は同じでもそのライブによって、ギターのフレーズが違う。しかも、ギターの音源、アンプ、衣装の刺繍なども当時を再現するためにこだわる。それぞれの分野の職人と討論しながらリアルなジミーペイジを再現する。


ロックなどの音楽アーチストのドキュメンタリーは増えて映画館で見る機会も多い。故人の生前演奏映像などやゆかりのある人へのインタビューが中心だ。それ自体おもしろいけど、ここまでこだわりの強いアーチストを追った映像は見たことない。ジミー桜井の情熱に感動する。ジミーペイジが実際に演奏を見にきて喜ぶシーンを見ると感激してしまう。でも、それがこの映画の締めではなかった。そこから海外進出となる訳だ。


レッドツェッペリンの4枚目のアルバムまではロック少年必聴で細かいフレーズまで頭にこびりついている。聴き始めは中学生なので「immigration song」や「Black dog」などポップ調のなじみやすい曲に最初惹かれたが、次第にブルース調の曲に馴染んでいくようになる。1枚目の「Dazed and confused」、3枚目「Since I’ve been loving you」はこの映画でも繰り返し流れていたのもうれしい。

当然ロバートプラントのボーカルも重要で、コピーバンドで一緒に組むアメリカ人とリアルに迫るため徹底的に練習する。ただ、そのこだわりが葛藤と対立を生む。中盤からそういったシーンが増えていく。


ジミー桜井の葛藤が見ていて辛い。しかし最終的にはLed Zeppelinの関係者からものすごいオーダーが来る。それを見て本当によかったと思う。しかも、この映画にあたって破格の条件でリストアップした30曲すべてに使用許可が下りたという。普通で考えると、ものすごく高いもんね。

「映画を観たツェッペリンのメンバーが、音楽を真剣に追求している姿勢を評価してくれたと聞きました」(作品情報より)映画「スクールオブロック」で移民の歌 をジャックブラックのバックで流す時もやっと許可がおりたらしい。本当によかったね。
往年のロックファンには必見の映画である。

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