映画とライフデザイン

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タンポポ  伊丹十三

2011-08-23 17:36:16 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「タンポポ」は伊丹十三監督の「お葬式」に続く85年の作品だ。これはロードショウで見た。

当時、ラーメン屋版「シェーン」なんてこと伊丹が言っていた気がする。ダメレストランをはやるレストランに変身させるテレビ番組に心動かされてつくられた映画である。山崎努、宮本信子のいつもながらのコンビに加えて、若き日の渡辺謙、役所広司が出演、世界的俳優のルーツのような顔が見れる。
この映画最初に見た時はなんか不思議な映画だな?と思ったけど、何度も何度も見てしまう中毒になる映画だ。歴史的名場面というべきシーンも盛りだくさんにある。見るたびごとに新鮮な発見がある映画だ。


ある雨の降る夜、タンクローリーの運転手の2人こと山崎努と渡辺謙は、来々軒というさびれたラーメン屋に入った。店内には図体の大きい男こと安岡力也とその子分達がいて、態度のでかい恰好をしていた。言い合いが始まり、チンピラ連中と山崎努が乱闘になる。ケガをした山崎は、店の女主人タンポポこと宮本信子に介抱された。彼女は夫亡き後ひとり息子を抱えて店を切盛りしている。

でもラーメンの味が今一つとの山崎努と渡辺謙の言葉に、宮本信子は弟子にしてくれと頼み込む。他の店の視察とスープ作りの特訓が始まった。宮本は他の店のスープの味をこっそり覗いて真似ようとするが、なかなかおいしいスープがつくれない。山崎はそんな宮本を食通の乞食集団と一緒にいる医者くずれのセンセイこと加藤嘉という人物に会わせた。“来々軒”は“タンポポ”と名を替えることになったが。。。。

上に述べたような基本ストーリーが普通に流れる。でも併せて小さい小噺のような話が同時並行で映しだされる。これが実に楽しい。
いろんな人物が登場するが、主要なメンバーは役所広司扮する謎の男とその情婦黒田福美だ。
いまや日本を代表する俳優になった役所もまだ若い。人相が今と違う。韓国通で有名になった黒田福美も20代でものすごい色っぽいヤクザ?の情婦を演じる。

2人がホテルで戯れるシーンは、日本映画史上に残る名シーンだと私は思う。
高級中華の料理「酔蝦」という料理がある。我々は「酔っぱらいエビ」なんて言っている。その昔香港のハイアットリージェンシーの凱悦軒の周中シェフが得意にしていた。紹興酒の中に生きた元気のいいエビを入れて暴れさす。大暴れである。そのエビを沸騰するお湯の中に入れて食べる広東料理の神髄だ。いかにもグルメで名高い伊丹だけに、彼の理想とするシーンを映し出す。


ホテルのスウィートにいる役所と黒田のところに、ルームサービスのワゴンが運ばれる。ワゴンには様々な食材があり、それを黒田福美の裸体を使って食べていくのである。圧巻は「酔蝦」だ。
紹興酒の中で暴れるエビを黒田の裸のおなかの上でまさに踊らせる。これこそ真のエビのおどりである。最初にこれを見た時、黒田福美の裸体の美しさに目を奪われたが、何度も見るとすげーシーンだと思った。2人が生卵をキスしながら繰り返し口移しするシーンもすごい。洞口依子が海女になって、カキを役所に食べさすシーンも印象深い。これもすげー!

なんてシーンが書ききれないほどある。
ブラックコメディの色彩が強い作品だが、「遊び人」伊丹十三の真骨頂というべき映画だ。

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