映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「マグニフィセント・セブン」 デンゼルワシントン

2017-01-31 20:23:34 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「マグニフィセント・セブン」を映画館で見てきました。


1961年のアメリカ映画「荒野の七人」のリメイクである。「荒野の七人」自体黒澤明監督の名作「七人の侍」を元につくられたのはあまりにも有名だ。しかし、マカロニウエスタン映画「荒野の用心棒」黒澤明監督「用心棒」のまさにパクリであるのと比較すると、「荒野の七人」ユルブリンナーやスティーブマックイーンなどのガンマンをクローズアップして西部劇風にかなりアレンジされている。この映画にも村を守るための要塞作りなど「七人の侍」の要素は入っているものの、まさに「荒野の七人」のリメイクと言っていいだろう。

出演者は「荒野の七人」同様かなり豪華である。前作とちがうのは武器に変化を持たせたことだ。先住民族の弓矢の名手、ナイフ捌きのいい男など一味ちがう。それがまた強い。この時代に東洋人は西部にいるのかな?黒人がリーダーになるのかしら?とも思うけど、考えすぎる必要はないだろう。いわゆる活劇の流れに身を任せて、単純に楽しめればいい。

南北戦争が終了した1865年からしばらくたったころ、金鉱を掘っている悪党バーソロミュー・ボーグ(ピーター・サーズガード)が開拓民がつくった町に押し入り支配しようとしている。町の教会はボーグの一味に焼かれてしまう。もう一度、来るといったボーグの一味に対抗するために、ボーグに家族を殺されたエマ(ヘイリー・ベネット)が中心となって金を集め、助っ人を探している。


そこで出会ったのが賞金稼ぎのサム(デンゼル・ワシントン)、ギャンブラーのジョシュ(クリス・プラット)だ。2人にエマが目星をつけた後で、流れ者のヴァスケス(マヌエル・ガルシア・ルルフォ)、スナイパーのグッドナイト(イーサン・ホーク)ナイフ遣いのビリー(イ・ビョンホン)など荒れ果てた大地にやってきた<ワケありのアウトロー7人>を雇って正義のための復讐を依頼する。

最初は小遣い稼ぎのために集められたプロフェッショナルな即席集団だったが、圧倒的な人数と武器を誇る敵を前に一歩もひるむことなく拳銃、斧、ナイフ、弓矢などそれぞれの武器を手に命がけの戦いに挑んでいく―。(作品情報より)


1.デンゼルワシントン
「荒野の七人」でのユルブリンナーに対応するリーダーである。ただ、「七人の侍」志村喬は剣の達人ということでなく、押し寄せる野盗たちに対抗しようと懸命に策略を練る。それに対して、ユルブリンナーはいわゆる腕ききのガンマンであるところが異なる。デンゼルワシントンはその流れである。しかも、ここでのデンゼルワシントン演じるサムはそつがないといった感じである。


監督とはデンゼルワシントンが自らアカデミー賞主演男優賞を受賞した「トレーニングデイ」で一緒に仕事をしている。しかも、そこでの相棒はイーサンホンクである。


2.対応するモデル
志村喬~ユルブリンナー~デンゼルワシントンという系統と同様の系統がいくつかできる。「七人の侍」ではなかったキャラクターが「荒野の七人」 では「ナポレオンソロ」のロバートボーンで、ここでのイーサンホンクが南北戦争では射撃の名手だったけど、今はPTSDに悩むというパターンで2人は共通する。

あとは宮口精二~ジェームスコバーンという熟練した孤高の剣士、ガンマンに対応するのがイ・ビョンホンということなのかな?


3.炸裂する機関銃
悪徳実業家というべき、ボーグは先に20人以上の腕利きのガンマンを送るが、雇われた7人に徹底的にやられる。このシーンは痛快である。1人かろうじて逃げた男からその話を聞き、ボーグは大勢精鋭をつれて町にやってくる。そこでも、「七人の侍」同様の守りの細工をたくさんつくって迎撃する。 意外にも頑張る町民と7人の助っ人の連合軍だが、敵はすごい秘密兵器を抱えている。機関銃だ。


明治初期を描いた「るろうに剣心」香川照之演じる悪漢が同じ形をした機関銃を撃ちまくっていたシーンを思い出す。この映画の設定と時期的にはほぼ同じである。町の中に攻め込んでいるボーグの味方をも機関銃で撃ってもいいくらいの勢いでボーグの手下が無差別に撃ちまくる。これには7人の助っ人もたまらない。危機一髪の町民だ。

4.最後残るのは
機関銃攻撃で危機一髪になった後、それでも7人の助っ人と町民はがんばる。 でも無差別攻撃にはかなわない。最終は正義が勝つといった展開に持ち込むのは想像できるが、コミカルな展開で小技を効かせて残りを走りぬく。結局残る人数は「七人の侍」と同じである。その人数の墓を見ながら助っ人たちは去っていく。


途中緩慢な展開もあるが、活劇としてはなかなか楽しい。でも「七人の侍」で見れた雨の中の迎撃のシーンのインパクトは21世紀を10年以上過ぎた今でも強い。どんなにハイテクなテクニックを使ってもやはり「七人の侍」にはかなわない。



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映画「この世界の片隅に」 のん

2017-01-25 19:05:55 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「この世界の片隅に」を映画館で見てきました。


2016年キネマ旬報ベスト10の日本映画1位である。アニメは見るのがつい後回しになってしまうが、片手落ちと思っていたら、私の美人部下が「人生ベスト3に入るくらいこの映画はすばらしい。」というではないか。せっかく教えてくれたのに行かない手はない。公開されてから割とたつにもかかわらず、意外に観客で埋まっていた。でも行ってよかった。

戦時中昭和19年に広島から呉に嫁に行った女の子が、家事に悪戦苦闘しながら結婚相手の家族とともに戦火激しい呉の軍港で暮らしていく姿を終戦まで映しだす。歴史上有名な登場人物がいるわけではない。ごく普通の戦前の家庭に嫁ぐ女の子を追いかける。昭和40年前後くらいまでは田舎に行くと見られたような飯炊きのようすをみると、いかに家事がたいへんだったというのがよくわかる。努力する女の子が健気に見えて仕方ない。


その女の子の声は「のん」こと能年玲奈である。これが実にすばらしい。冒頭に流れる「悲しくてやりきれない」の歌を聴きながら感じるやさしさがにじみでている素敵な声だ。

18歳のすずさんに、突然縁談がもちあがる。
良いも悪いも決められないまま話は進み、1944(昭和19)年2月、すずさんは呉へとお嫁にやって来る。呉はそのころ日本海軍の一大拠点で、軍港の街として栄え、世界最大の戦艦と謳われた「大和」も呉を母港としていた。見知らぬ土地で、海軍勤務の文官・北條周作の妻となったすずさんの日々が始まった。


夫の両親は優しく、義姉の径子は厳しく、その娘の晴美はおっとりしてかわいらしい。隣保班の知多さん、刈谷さん、堂本さんも個性的だ。配給物資がだんだん減っていく中でも、すずさんは工夫を凝らして食卓をにぎわせ、衣服を作り直し、時には好きな絵を描き、毎日のくらしを積み重ねていく。ある時、道に迷い遊郭に迷い込んだすずさんは、遊女のリンと出会う。またある時は、重巡洋艦「青葉」の水兵となった小学校の同級生・水原哲が現れ、すずさんも夫の周作も複雑な想いを抱える。

1945(昭和20)年3月。呉は、空を埋め尽くすほどの数の艦載機による空襲にさらされ、すずさんが大切にしていたものが失われていく。それでも毎日は続く。そして、昭和20年の夏がやってくる――。
(作品情報 引用)

1.のん(能年玲奈)
この映画がこれだけ評価される最大の要因は「のん」の声だと私は思う。主人公すずのキャラクターにこれだけピッタリする声は他の人ではだせないだろう。先入観なしに映画を見に行ったので、のんと言ってもまったくピンとこない。解説を見て能年玲奈だとわかり驚いた。


「あまちゃん」で大フィーバーした能年玲奈が独立問題で、仕事がほとんどなくなる事態になっているのはネット上のうわさ話で見たことある。人気俳優が鼻高々に自分でプロダクションをつくってしまって、干されるパターンは芸能界ではい古今東西いくらでもある。でもこの映画を見てその類い稀なる才能をつぶしてしまってかわいそうだと感じた。

素朴ですずがもつやさしいイメージにあったその声は映画の趣をあげているのは間違いない。
すばらしい!!

2.呉の町
昭和20年8月広島市内が原子爆弾の被害を受けて悲惨な状態になったことを知らない日本人はいないだろう。でも同じ広島県でも呉が受けた被害については映画では語られていないかもしれない。自分も呉というと、ついつい戦後間もない呉の修羅場を描いた「仁義なき戦い」を連想する。戦前は軍艦がつくられ、寄港するまさに日本を代表する軍港である。当然相手の軍港に空襲を浴びせるのは、日本が真珠湾攻撃で軍艦を射程にするのと同じような意味合いを持つ。


昼夜問わずこれでもかというくらい空襲を浴びる。主人公はひどい被害を受けるし、そのために広島の被害がさほどでないので帰郷しようとする場面も出てくる。でもここで戻ったら、もっと大変なことになっていたのだ。

呉の語源は9つの嶺に囲まれているからと映画の中にでてくる。3年前旅行で広島に行った時、呉にも行った。生まれて初めてである。そのときの経験で呉の地形はわかっているが、今回は山腹に自宅がある設定である。高い位置から軍港を見渡し、寄港する軍艦を主人公や義姉の娘はみつめている。この海を見渡す映像コンテがこの映画のベースになる。そして、原爆を受けた広島と同じような壊滅的な町の被害を徐々に映しだす。悲劇だ。


3.ムードにあった音楽
いきなりフォーククルセイダーズの名曲「悲しくてやりきれない」の新しいカバーではじまる。この曲は井筒監督「パッチギ」でも繰り返し使われていた。ここでは原曲に劣らずむなしさとやさしさを感じさせるすばらしいアレンジだ。ここでまず胸にしみる曲を聴いたあと、最後のエンディングまで続く音楽のタッチが素晴らしい。やはりアニメにおける音楽の効果って大切な要素だ。

純情な主人公である。姑から闇市で砂糖を買うよう頼まれて街の中を歩いている時に、道に迷って遊郭に紛れ込む。雑踏から突如まわりに人がいなくなり、帰り路のわからないすずは道に座り込む。そのとき、色香著しい娼婦と思しき女性に助けを求める。同郷の娼婦はすずと親しくなるが、そのまま娼館にもどる。すずは彼女のことを娼婦とも思わないし、その建物が遊郭ということにも気づかない。

このシーンが印象に残る。純なまま花嫁になり、出戻りの小姑にいびられながら、つくってもつくっても飯炊きがうまくならない。それでも一心に家事に専念するすずの姿が健気に見えて仕方ない。しかも、空襲でひどい損傷をこうむる。いくつかのコメントを見ると、古きよき時代の映像と書いている人もいるが、そうは自分にはみえない。
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映画「ザ・コンサルタント the accountant」 ベン・アフレック

2017-01-23 05:18:42 | 映画(自分好みベスト100)
映画「ザ・コンサルタント the accountant」を映画館で見てきました。

これは実におもしろい!!
作品情報を見ると、ベンアフレックの新作は会計士を演じているという。めずらしい設定だなと思って映画館に向かうと、なんと自閉症の異常に数字に強い会計士のようだ。それだけじゃない。ちょっとしたイザコザで命を狙われても敵を徹底的に始末する。おいおい、自閉症を取り扱った映画ってダスティンホフマンの「レインマン」をはじめとして色々あるけど、これだけ大暴れする映画はみたことがない。


この主人公はベンアフレックの親友マット・デイモン演じるジェイソンボーンのようにムチャクチャ強いけど、ストーリーも軽い伏線をいくつか置いて、日本人・東研作や芹澤家殺人事件といった「ゴルゴ31」のルーツ物のような描き方をする。自分にはムチャクチャ相性のいい映画であった。

アメリカFBIの幹部(JKシモンズ)が分析官メリー・ベス(シンシア・アディ・ロビンソン)を呼んでいる。彼女は名門大学出のきわめて優秀な分析官だが、捜査官にはなろうとしなかった。それには秘密があるのであるが、それにつけこんで幹部が彼女にある調査を依頼する。麻薬カルテルや武器商売などの裏社会の取引に1人の同一人物の男が絡んでいることが分かる写真が数枚あった。どうやら会計士のようだが、偽名で身元がわからない。その男の正体を突き止めてくれれば女性分析官の過去はもらさないという難しくいやらしい依頼だ。


田舎で開業する会計士クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)が義足を取り扱う大会社から使途不明金の疑いがあり、その会社のCFOから調査依頼を受ける。ウルフは会社側に過去15年分の会計資料を用意するように頼んだ。今回は信頼できる筋からの紹介でもあり、ウルフは社長(ジョン・リスゴー)からも直接頼まれる。資料が整っているはずの会社の会議室によると、徹夜で用意していた経理グループのディナ(アナ・ケンドリック)がいた。ウルフは猛スピードで資料に目を通した。しばらくして、ディナが立ち寄るとウルフから会計数字に関する疑問を打ち明けられる。その場にはCFOとともにウルフに依頼していた社長の妹が来ていてその話を聞いていた。


翌朝前日の続きを再開しようとすると、社長が来て昨夜CFOが死んでしまったので、調査は中断すると言われる。釈然としないウルフとディナであったが、その後ウルフは命を殺し屋グループに狙われる。その襲撃を交わしたあと、襲撃者に依頼者をばらせというと、ウルフとディナを狙えとなっていることが分かる。あわててディナを助けにウルフが向かうのであるが。。。

中東エリアのような猥雑な場所で、いきなり殺し屋が次々と標的を始末するシーンからスタートする。何これ?危機一髪な場面でスタートして、その謎あかしをゆったりするというパターンはよくあるけど、結果的にはこの映画もそのパターンだ。

1.自閉症の主人公
いきなり相手に目を合わせない典型的な自閉症の症状を示す少年が出てきて、大量のピースをてきぱきパズルを組み合わせようとする場面がでてくる。確かに自閉症児はパズルが得意だ。うーんと思って見てみると、続いて出てくる会計士はその少年が大人になった同一人物のようだ。やたらに数字に強いエピソードが出てくる。映画ではダスティンホフマンのアカデミー賞作品「レインマン」で桁数の多い数字の難しい計算やカレンダーに異常に強い自閉症の主人公が全世界に強烈な印象を与えた。ラスベガスのカジノで、弟役のトムクルーズとブラックジャックで勝ちまくるシーンは痛快だった。


2.映画の自閉症エピソード
会計に不正があるとの推測で15年間の会計資料が集められ、調査をはじめる。部屋にこもり、数字をにらみ暗算で計算をしながら、数字を壁に羅列する。マジックで次から次へと書いていくのだ。そしてその数字を見ながら経理グループのディナに不正を疑えるおかしな点を理路整然と説明する。優秀なディナが数カ月かかってもできない分析を一晩でしてしまうのだ。


見ていてしびれるシーンである
「レインマン」
でも一部の自閉症患者が示す驚異的な能力を示すシーンが羅列されていたが、ここでも大きな桁の掛け算を一瞬にしてしまうシーンや、ハードロックの大音響の中で自虐的な行為をするシーンなどいかにも自閉症患者というシーンが次から次へと出てくる。銃が炸裂するアクションシーンもいいが、このあたりを見ている方がおもしろい。

3.ベンアフレック
親友マット・デイモンと組んだ名作「グッド・ウィル・ハンティング」から着実にキャリアアップしている。「アルゴ」でアカデミー賞を受賞し、直近では「バットマンvsスーパーマン」でもかなりハードなアクションシーンをこなした。個人的な好みでいうと、「ゴーンガール」やテレンス・マリック監督の「トゥ・ザ・ワンダー」の方が好きだ。

でもこの映画の方がもっと好き。「アルゴ」は締めくくりが絶対助かると歴史的事実なのでわかるけど、この映画は予想外の展開を含んでいてどうなるかわからないドキドキ度が高い。しかも、意外に湿っぽくなる部分もある。意外だけど、目がうるった場面があった。


4.魅力的な女性
バンパイア映画で名を売りジョージ・クルーニーの「マイレージ・マイライフ」でインテリ女を演じたアナ・ケンドリックも着実にいい映画に出ている若手女優だ。主演の「ビッチ・パーフェクト」は続編もつくられて大人気だけど、あれはちょっと。あとはウルフの正体探しに疾走する捜査官を演じるシンシア・アダィ・ロビンソンは初めてみるけど、アフリカ系としてはかなりの美女ぶりで、頭もよさそう。この子はこれから売れそうだ。


5.JKシモンズ
 

映画「セッション」での鬼ジャズ教師役はすさまじかったし、助演男優賞を軒並みとった。あの演技では当然だろう。


それを思えばここでの存在感はもう一歩、でもベンアフレック演じる会計士が会計調査をした企業から秘密が漏れることを恐れて徹底的に狙われるストーリーが続くのと一方で裏社会で巧みに泳ぐ会計士の存在を追わせる国家機密を握るFBIの動きが別線で続く。そこにはJKシモンズ演じるFBIのボスにとっての重要な秘密が隠されていたのだ。もともとは冴えない捜査官だったボスがある事件をきっかけにツキを取り戻す。その余談もおもしろい。ただでは帰らない。

アルゴ
ベンアフレックがアカデミー賞を受賞


レインマン
自閉症の男の数字能力に驚く、自閉症映画の代表作


ザ・コンサルタント
自閉症の会計士が格闘技にも優れる
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映画「フィッシュマンの涙」 

2017-01-22 20:28:02 | 映画(韓国映画)
映画「フィッシュマンの涙」を映画館で見てきました。


韓国のコメディ映画である。変身願望はだれにもあり、突然若返ったりする映画であれば気分よく見れるが、これはどぎつい。なんと魚に変身してしまうのだ。CGたっぷりのスリラーよりも昭和40年代前半の「忍者ハットリクン」や「ブースカ」のようなタッチの魚君だ。なんと8キロのマスクをして演じているという演技者に思わず感心してしまう。

今も大統領の汚職問題で韓国国内は異様にドタバタしているようだ。この映画に流れるのもそれと似たようなギスギスした欲の塊のような韓国的匂いを感じる。

テレビ局の記者を目指しているサンウォン(イ・チョニ)は、就職面接官の部長から仕事ぶりを見たいという理由で、最近ネットを賑わせている事件を極秘取材することになった。 「恋人が魚の姿になってしまった」と投稿していた女性ジンは、ネットが炎上していてもメゲない強靭なメンタルを持ち、あの日の出来事をサンウォンに語り始める──。


どこにでもいるごく平凡なフリーター青年パク・グ(イ・グァンス)は、新薬を飲んで寝ているだけで30万ウォンの謝礼が出るというカンミ製薬会社の臨床実験に参加。ところが翌朝、謎の副作用で「魚人間」に突然変異してしまう。

臨床実験の責任者だったピョン博士は「体内でタンパク質を無限に供給し、食糧難を解決する実験をおこなっていた」と弁明するが、製薬会社の非道な実態を知った国民の怒りは爆発。


その一方で、魚人間パクを通して明らかになる若年層の過酷な現実にも注目が集まり、就職難で困窮する若者たちのヒーローとなったパクは、社会に対して不満や不信を募らせる多くの人々の象徴と化し、追っかけファンの出現やグッズ発売などの爆発的シンドロームを次々と巻き起こしていく。だが実は、パクの体はますます魚化が進行し、もはや数分おきに大量の水分を補給しないと身がもたない状態に陥っていた…。

一夜限りの関係を持った女友達ジン、熱血漢の新米テレビ局記者サンウォン、息子の為に賠償金獲得を狙う父親、人権派弁護士たちは、それぞれの事情を背負いながらも私欲にまみれた製薬会社に対して真実を明るみに出すべく動き出すのだった――。 (作品情報より)

まあ普通の映画だけど、最後に向けてだけエレジー的な感じがしていいんだよなあ。
「およげタイやきくん」の歌詞を連想し、思わずジーンとしてしまう場面もあり、最後まで目が離せない。
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映画「THE NET 網に囚われた男」 キムギドク

2017-01-10 05:37:14 | 映画(自分好みベスト100)
映画「THE NET 網に囚われた男」を映画館で見てきました。
韓国の奇才キムギドク監督の新作、ヘビー級のパンチをくらったような重さがある傑作である。


系統としてはキムギドクが製作にかかわった北朝鮮の工作員が一般家庭に潜んで活動するという話の「レッドファミリー」と同様に南北朝鮮問題をとりあげている。日本公開では「殺されたミンジュ」に続くが、その間に福島原発事件に関わる話の「STOP」という映画があるらしい。どうもそれは3月に日本公開のようだ。

韓国映画は最終的に「チェイサー」キムギドク監督作品「嘆きのピエタ」など重い題材で、救いようのない結末に流れることがある。これも同様で、南北関係がこうなっている以上結末がハッピーになりにくい。途中どうなるのかハラハラすると同時に、やるせない感じを思った。映画館で鑑賞している周辺の女性はみんな途中からハンカチで目を押え泣いていた。

北朝鮮の寒村で、漁師ナム・チョル(リュ・スンボム)は妻(イ・ウヌ)子と共に貧しくも平穏な日々を送る.その朝も、唯一の財産である小さなモーターボートで漁に出るが、魚網がエンジンに絡まりボートが故障。チョルは意に反して、韓国側に流されてしまう。


韓国の警察に拘束された彼は、身に覚えのないスパイ容疑で、取調官(キム・ヨンミン)から執拗で残忍な尋問を受けることに。一方、チョルの監視役に就いた青年警護官オ・ジヌ(イ・ウォングン)は、家族の元に帰りたいというチョルの切実な思いを知り、次第にその潔白を信じるようになる。そんな時、やはりスパイ容疑で捕えられた男が、チョルにソウルにいる娘への伝言を託して、自ら舌を噛み切り息絶える。やがて、チョルを泳がせようという方針から、物質文明を極め人々が自由に闊歩する、ソウルの繁華街に放置される。街を彷徨う彼は、家族を養い弟を大学に入れるために身を売る若い女性と出会い、経済的繁栄の陰に隠されたダークサイドに気付く。何とか探し出したかの男の娘に伝言を告げ、ジヌが待つ場所に戻るチョル。


ところが、街中のチョルの姿を映した映像が北に流れ、南北関係の悪化を懸念した韓国当局は、チョルを北朝鮮に送還する。資本主義の誘惑を退け、晴れて祖国に帰って来たチョル。だが、彼を待ち受けていたのはいっそう苛酷な運命だった。(作品情報引用)


以下ネタバレありご注意

1.南北の対立
キムギドク「葛藤を抱える韓国と北朝鮮、その2つの国家のなかでひとりの男が苦痛を受け、非情な運命にさらされていく。状況設定がすでに残酷で恐ろしいもの。」
(作品情報引用)としている。本当につらい立場だ。まったく本意でなく国境を渡ってしまうと、脱北者のレッテルを張られてしまう。


主人公は北朝鮮よりも発展しているソウルの町を見るまいと目をつぶる。この設定は日本ではないが、もし先の大戦後ソ連の北海道支配を当時のトルーマン大統領とマッカーサー元帥が阻止しなかったら、現状の北方領土問題でもわかる通り朝鮮半島と同じような状況となったかもしれない。アメリカには感謝しなければならない。

2.公安当局の取り調べ
南北の公安当局それぞれに主人公は取り調べを受ける。南側の取り調べには反抗的な態度をとり、暴力もふるう主人公が一転自国の取調官にはいっさい逆らえないのが印象的だ。ご存じのように北朝鮮の幹部が将軍様の逆鱗に触れ、次々射殺されているのは日本でも報道されている。

それでもキムギドクは南北ほぼ同じような手法で取り調べているように描く。
それぞれの国を舞台にした取調室の光景は印象的だ。ナムチョルを尋問する両国の取調官たちが、まるで合わせ鏡のような態度をとることについて「どちらの国の人間にしろ、権威主義的で攻撃的、卑怯な側面を見せたかった」と述べ「シナリオ執筆段階から意識していたこと」とキムギドクは告白。(キムギドクインタビューより)
いずれも背後から話しかけるような設定で意識的にしている。

南側の取締官が暴力的で何としてでも主人公をスパイに仕立てて自分の手柄にしようというところや南側の責任者が失敗を恐れて強引にスパイに仕立てるのを抑え、マスコミにも注意を払うところが印象的だ。同時に南北両国の取調官にそれぞれ不正がある面を強調する。

3.リュ・スンボムとイ・ウヌ
主人公チョルは映画を見はじめてすぐに以前見たことあることに気づく。「ベルリンファイル」での北朝鮮公安監視員と韓国版「容疑者Xの献身」での主人公の数学者役はいずれもよかった。特に数学者役は日本版が元来二枚目の堤真一を持ってきたのに対し、まさにネクラそのもので福山に対応する探偵役がいない中主人公を巧みに演じた。でもここでの主人公役は南北問題に挟まれ行き場所のない姿になりきっているし、うまい!


イ・ウヌ「メビウス」の一人二役が印象的だ。最初主人公の奥さんの顔を見て気づかなかった。最後にヌードになり乳房をみてアレあの時の?と感じたが、常連になりつつある。最後に向けてずいぶんと切ないシーンだよね。





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映画「山河ノスタルジア」 ジャ・ジャンクー

2017-01-09 06:43:17 | 映画(アジア)
映画「山河ノスタルジア」は2016年日本公開の中国映画


ジャ・シャンク―監督の作品はとりあえず見ているが、世間の評価ほど好きというわけではない。前作「罪の手ざわり」が現代中国の暗部に踏み込んでいる分興味を持ったが、ちょうど頭の回転が悪い時期でブログにアップできていない。今回も気がつくとDVDスル―だけど、前作同様重層的な映画である。

小説にするなら、かなり枚数を割かなければならないものを2時間強にまとめるとなると、セリフもかなり省略しなければならない。観客に類推してもらわねばならないことも多い。いくつかの中国映画をみてもこういうことが多い。とはいうものの映像で状況を示すというわけではない。見ようによってはむずかしく感じる人もいるのではないか。

1999年、山西省・汾陽(フェンヤン)。小学校教師のタオ(チャオ・タオ)は、炭鉱で働くリャンズー(リャン・ジンドン)と実業家のジンシェン(チャン・イー)の、二人の幼なじみから想いを寄せられていた。


ある日、リャンズーの勤める炭坑を買収したジンシェンが、リャンズーに迫る。「タオと距離をおいてほしい」と。リャンズーは答えない。結果、タオは裕福なジンシェンを選ぶ。タオは、リャンズーに結婚式の招待状を届けるが、リャンズーは、静かに汾陽を去る。やがてタオは息子・ダラーを授かる。

2014年。河北省。リャンズーは、炭坑での重労働で体を壊す。妻子ともども、15年ぶりに、リャンズーは汾陽に戻ってくる。タオはジンシェンと離婚し、一人汾陽で暮らしていた。タオとリャンズーが再会する。リャンズーの病はかなり進行していた。
ある日突然、タオの父親が死ぬ。タオは離れて暮らす上海にいるダラーを葬儀に出席するために呼び寄せる。国際学校に通うダラーは、タオを「マミー」と呼ぶが、タオは違和感を隠せない。

2025年、オーストラリア。19歳のダラー(ドン・ズージェン)は長い海外生活で中国語が話せなくなっていた。父親と確執がうまれ、中国語教師ミア(シルヴィア・チャン)との出会いを機に、かすかに記憶する母親の面影を探しはじめる―。


ペット・ショップ・ボーイズの「ゴー・ウエスト」を主役のタオがみんなと一緒になって踊るシーンからスタートする。時代が違うのか、自分にとって「ゴー・ウエスト」ヴィレッジ・ピープルの曲のイメージしかない。まじに映画の終りまでそう思っていた。それが最後の最後まで使われる。何か意味があるのであろうか?わからない。

95年の香港返還のあたりでは、まだまだ香港あたりで見る大陸人は本当にドンくさかった。その名残が残る山西省の生活といった感じだけど、ジャ・シャンク―にとっても想い出深い曲なんだろうか?


1.印象に残ったシーン1

山西省・汾陽でタオは2人の幼なじみと親しい。むしろ炭鉱で働くリャンズ―に好意を寄せている匂いもある。でも結局リャンズ―の勤務先である炭鉱を買収してしまうジンシェンと結婚する。ジンシェンとの結婚式の招待状をタオはリャンズ―に渡す。元々三人は親しいからというわけだろうが、普通はどう考えても行かないでしょう。この場面は複雑な感じを持つ。


その後10年以上たち、別の地で炭鉱夫として働くリャンズ―の体調が思わしくない。美しい妻を得て、子宝にも恵まれたリャンズ―は故郷に帰る。昔住んだ家は荒れ果てたまま残っている。なぜか、タオにもらった招待状が残されている。魯迅の「故郷」を読むような心境になる。入院しようにも金がない。その金は誰かに借りねば調達できない。リャンズ―の妻はタオに借りに行く。タオは快諾して貸す。

ドライな中国人をいつも見ている自分からすると、この設定は意外である。タオの心の奥底に悪いことしたなあという思いがあったのだろう。観客にその思いを想像させるシーンである。

2.印象に残ったシーン2
結局タオは離婚し、男の子の親権は夫になる。タオは故郷にいるが、生活の向きは悪くない。多額の慰謝料をもらったのであろう。99年の場面ではタオはいつも同じ服を着ているが、ここではサンローランの高級バッグを持っている。そんなタオの父が亡くなり、葬儀にタオの息子が飛行機で来る。上海の国際学校へ行っているので英語を話す。母親のことをマミーといい、中国語で話さずにタオに怒られる。でも幾日かの滞在を経て、上海に帰る。


上海への飛行機の切符は父親が購入していたが、タオは拒否して列車で連れて帰ろうとする。中国の列車は時間が不規則だし、時間がかかる。何でこんなにゆっくりなの?と息子は不思議がるが、あなたとずっと一緒にいたいからよと母親が言う。そしていつでも帰っていいからと家の鍵を渡す。この思いはジーンとくる。ジャ・ジャンクー自身が経験した思いがあるらしい。

3.印象に残ったシーン3
大きくなったダラーは、英語しか話せない。中国語を学ぶため学校に通い。中国人教師と親しくなる。
この中国人教師はシルヴィア・チャンである。その昔美人だった彼女も63歳といい年だ。もうババアといってもいい雰囲気だ。でもダラーは好意を寄せ、ダラーと中国人教師がベットで一夜を過ごすシーンが出てくる。でも、ちょっとこれはやりすぎじゃない。


普通、25歳くらいまでの男はいくら上でも30歳前後くらいまでの女しか自分の対象として見ないでしょう。それこそAVでよく見る母子相姦やババアが大学生を誘惑するそんなシーンに見えてしまう。これをやるんだったら、最低でもチャオ・タオよりちょっと上の年齢の女を出演させたらいいのでは?気持ち悪い。

山河ノスタルジア
中国人にも情があったのかと思える作品
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映画「打撃王 ルー・ゲーリッグ」 ゲイリー・クーパー

2017-01-04 05:56:06 | 映画(洋画 69年以前)
映画「打撃王 The Pride of the Yankees」は1942年(昭和17年)のアメリカ映画である。


鉄人と言われたルー・ゲーリッグは2130試合連続出場の記録を長らく持っていたヤンキースのスラッガーである。球聖ベーブルースと史上最強の3,4番コンビを組んでいた。ところが、難病に侵され1939年惜しくも引退、その後1941年に37歳の若さで亡くなった。その余韻がある翌年1942年にこの映画がつくられている。実際のルー・ゲーリッグとゲイリークーパーは似ていると思う。

子供のころから2回この映画は見ている。いつ見ても泣ける。もう一度見てやっぱり泣けた。
ある意味、巨人の王長嶋のON砲のうち、片方が突如難病で引退して、その2年後に亡くなるということを想像してみれば、当時のアメリカ球界でとんでもない大事件だったということがわかるだろう。

1936年にメジャーリーグに昇格したマリリンモンローの元夫としても有名なジョー・ディマジオルーゲーリッグとともにヤンキースの一員としてプレイしている。いまだに56試合連続安打のメジャー記録を持つ彼もルー・ゲーリッグの引退式は本当に泣けたと言っている。その気持ちはよくわかる。


少年時代からルーゲーリッグは類い稀な野球の素質をもっていた。名門コロンビア大学に進学したあとはアメリカンフットボールの選手でもあったが、その打撃センスを新聞のスポーツ記者から注目され、大リーグのスカウトもねらっていた。ドイツからの移民である母親はゲーリッグの叔父が優秀な技師であったことから、ルーを技師にしたいという念願があった。ところが、父親に代わり家計を支えていた母親が突如入院、良い治療をするためには多額のお金がいることで、急遽ル―・ゲーリッグ(ゲイリークーパー)はヤンキースへの入団を決意する。まずはマイナーリーグでスタートとなり、ハートフォードへ向かう。母親は「ハーバード」へ進学するのだと勘違いしていた。

やがて1923年メジャーリーグに昇格しヤンキースの一員となる。近所の人たちは大騒ぎとなり母親にもそのことがわかってしまう。ヤンキースは主砲ベーブルースの全盛期で、ル―は控えで遠征をまわっていた。ところが、正一塁手が目が悪くなり、ルーにチャンスがまわってきた。ル―はそのチャンスをすかさずモノにするのである。シカゴの遠征時ハンバーグ王のお嬢さんエレノア(テレサ・ライト)が見に来ていた。ル―は彼女の前ですってんころり転んだりドジを踏んで失笑をかっていたが、やがて2人の間に恋が芽生えてくるのであった。

1.ルー・ゲーリッグ
自分は少年時代から野球の記録に強い関心を持っていた。戦前の巨人のエース沢村栄治の物語は池部良主演で映画にもなっている。小学生時代にテレビでその映画を見たことがあった。まだ日本のプロ野球が始まる前、1934年日米野球でメジャーリーグのオールスターが来日し、全勝したのはベーブルースの伝記でも読んでいた。その中で、沢村が0対1で惜しくも負けた試合が1試合だけあり、メジャーリーグの超一流の選手から三振を奪ったことが語り草になっている。その1失点はルーゲーリッグのホームランによる失点である。自分がルーゲーリッグの名前を知ったのはその時であった。


日米野球があった1934年ルー・ゲーリッグはヤンキースの不動の4番で三冠王をとっている。まさに全盛時代だ。沢村栄治の好投は今でもいろんなところで語られるが、この格の違いはいかんともしがたい。

2.ベーブルース
映画「打撃王」はルーゲーリッグの追悼ということもあるが、本塁打王ベーブルースが本人役で出演していることに強い意義を感じる。ニュース映像で短時間見るだけでなく、リアルにコミカルにベーブルースが出演する姿を見れるのはすばらしいことである。それだけでも貴重な映像といえるのではないか。子供のころ、偉人伝の全集を読んだが、もっとも関心深かったのが「ベーブルース」の偉人伝である。それだけに最初に「打撃王」を見た時ベーブルースの姿には感動したが、今回久々に見てショーマンシップあふれるベーブルースの演技にはなおのこと胸を打たれる。


有名な引退セレモニーのシーンの時も、あのブルドッグのような顔をしたベーブルースゲイリークーパーがスピーチする場面の一角で映っている。このスピーチは感動的に本当に泣けてくる。

3.テレサライト
この映画の時で24歳、可憐な姿は自分が映画ファンになってからいろんな映画で見ることができる。やはり一番印象が強いのはアルフレッド・ヒッチコック監督「疑惑の影」である。ジェゼフ・コットン扮する大好きなおじさんに殺人者としての疑いを持つ、かわいい姪という役柄はサイコサスペンスとして緊迫感が高い。このときテレサライトの表情があこがれのオジサンを見る羨望のまなざしから殺人鬼として疑う表情に徐々にかわっていく。この演出がピカイチで、オールタイムでこの映画を推す映画ファンも多い


「打撃王」
ではやさしい賢夫人を演じる。なんとこの映画から50年以上たった時始球式に誘われたそうだ。なんせ英題はThe Pride of the Yankeesである。こういう功績を忘れないところがヤンキースのいいところだ。
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映画「モヒカン故郷へ帰る」 松田翔太&前田敦子

2017-01-03 03:33:34 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「モヒカン故郷へ帰る」は2016年の松田龍平、前田敦子主演作品

これはなかなかいける。
予告編は何度かみて、うーんちょっとという感じだったが、主人公の名前が永吉。父親が矢沢永吉好きで息子に永吉と名前をつけたという設定だとわかり見てみたくなった。これから結婚をしようと広島の離島に帰郷したロッカーの息子が、父親がガンにかかっていたとわかりしばし離島にとどまりドタバタするコメディドラマである。


モヒカン頭がトレードマークの売れないバンドマン永吉(松田龍平)。妊娠した恋人・由佳(前田敦子)を連れて、故郷・戸鼻島へ結婚報告をするため7年ぶりに帰る。

永吉たちを待ち構えていたのは、矢沢永吉をこよなく愛す頑固おやじ・治(柄本明)と筋金入りのカープ狂の母・春子(もたいまさこ)、そしてたまたま帰省していた弟・浩二(千葉雄大)の3人。家族がそろったかと思えば、のらりくらりの永吉に治が怒り心頭!

いつもの一家総出でド派手な親子喧嘩が始まる。なんだかんだありつつも、二人の結婚を祝う大宴会が開かれたその夜、永吉は治が倒れているのを発見。病院で受けた検査結果はガンだった――。
(作品情報より)

東京でパンクロックバンドに所属している主人公が故郷に帰ってくる。広島の離島でいかにも時間がゆったり流れているようなところだ。でも人情は厚い。酒屋の息子が婚約者を連れてきたというだけで、酒盛りだ。こんな雰囲気好きだ。


でも永吉のオヤジは末期の肺がんで、あちらこちら転移している。永吉と恋人はそのまま残って看病を手伝うことになる。その後の逸話もハートフルな部分もあっていい感じだ。

1.印象に残ったシーン1
矢沢永吉が大好きな柄本明扮するオヤジは、地元中学校の吹奏楽部でコーチをしている。課題曲はなんと「アイ・ラブ・ユーOK」「広島県民にとってヤザワの歌は義務教育だ」なんて部員に向かって言ういうオヤジだ。これを演奏する中学生たちはいかにもという田舎の中学生の顔をしている。これがまたいい。さすがに吹奏楽で聞くのは自分も初めてだ。中学生がやるには渋すぎると部員たちもぐちるが、映画の中では3度もこの曲をやる。この反復が矢沢好きというキャラを浮き上がらせる。


入院していた病院の屋上から、すぐ目の前にある中学校の屋上にいる楽団の生徒たちに向かって指揮するシーンなんて実に滑稽でおかしい。

2.印象に残ったシーン2
オヤジと息子との関係って年をとると気恥ずかしくなるのか余計な話はしない。息子と恋人が来て、オヤジ夫婦の前で恋人の懐妊を報告する。驚く2人だ。それにしてはだらしないと、オヤジは息子に手を出す。家の中は大騒ぎだ。ところが、急に電話の受話器に向かい息子が帰ってきたと近所に電話しまくり酒盛りだ。このコントラストがコメディらしくていい。この映画は海辺の町の地元民が大勢出演していて、宴会の席のシーンでも素人とわかる近隣住民が大騒ぎである。これっていいなあ。


3.印象に残ったシーン3
このオヤジの自慢は1977年の矢沢永吉武道館初コンサートで、矢沢永吉と目があったということだ。それ以来熱狂的矢沢ファンで酒屋の店の中も昔からのヤザワのポスターと広島カープのポスターが壁中いっぱい貼ってある。そんなオヤジもがんで弱ってきたとき、唯一の願いは何か?と息子とに聞かれ、メモ紙に「エーチャンにあいたい」と書く。ここで本物が出てきたら面白いなあと自分はふと思ったが、結局弱ったオヤジが寝ている時に白い上下のエーチャンスーツを着て、息子の永吉が現れる。


意識もうろうのオヤジは再度「1977年の武道館コンサートで俺と目があったのをおぼえているね」という。うなずく息子の永吉にオヤジは絶叫。このシーンいいなあ。
先日137回目の矢沢永吉武道館コンサートに行ってきた自分からすると、この映画実にいいかんじであった。


あとよかったのは前田敦子、「イニシエーションラブ」では弟の松田翔平と共演だったけど、彼女うまくなってきたよね。初めての妊婦役も無事こなし一作ごとに成長しているのがよくわかる。劇中CARPのTシャツきていたなあ。今回の広島カープの優勝も喜んでいるだろう。

モヒカン故郷に帰る
広島での離島でのハートフルコメディ
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映画「江分利満氏の優雅な生活」 小林桂樹&新珠三千代

2017-01-01 22:09:09 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「江分利満氏の優雅な生活」は昭和38年(1963年)の東宝映画


この年山口瞳がサントリーの宣伝部に勤めているまま「江分利満氏の優雅な生活」で直木賞を受賞した。原作を若干変えて、むしろ山口瞳のプロフィルに近い脚本としている。昭和38年当時のサラリーマン生活が浮き彫りにされるが、大正15年生まれでむしろ戦中派ともいえる江分利満のグータラぶりが見ていて楽しい。オリンピックを控えた東京周辺の住宅地の道路がまだ砂利道だというのもよくわかる。

江分利満はevery manのもじりである。

主人公江分利満(小林桂樹)はサントリーの宣伝部に勤める36歳のサラリーマンで妻夏子(新珠三千代)と子供庄助、父(東野英治郎)と川崎の社宅で暮らしている。どちらかというと、不器用で仕事がバリバリできるというタイプではない。酒好きで週に一度は深酒をしている。その日も夕方5時の退社時間になり、周りの同僚の動きをみて飲みに誘う態勢にはいっているが、新婚の隣人(江原達怡)をはじめ、みなそそくさと帰り支度をはじめている。気がつくと、一人で飲み屋のはしごをはじめて馴染みのママの店で深酒になっている。そんな時、男女2人の酔客(中丸忠雄、横山道代)と意気投合して飲みはじめる。


翌朝、気がつくと婦人画報社の編集者の名刺があり、訪問の約束の電話をすると書いてあったが、江分利はまったく覚えていない。その2人が来ると、江分利に小説を書いてほしいと言ってきた。普段から飲み屋でくだをまいている江分利に注目していて、何か書いてもらおうとしたという。当然拒絶する江分利であったが、とりあえずやってみるかと、自分や親族のことなど書き始めるのだが。。。

1.昭和38年の会社生活
いきなりの映像は会社屋上で社員たちが合唱をしたり、バレーボールをしたり、バトミントンをしたり、ゴルフ練習をしている。地方の人たちに東京都心での会社生活って楽しんだろうなあと思わせるのが主旨だというわけではないだろう。くどいけど、最後まで出てくる。「キューポラのある街」で映るプロレタリア風な会社生活じゃあるまいか。これはよくわからん。


映画の中での江分利満の給料は基本給3万6000円で、手当その他を加えた後税金などを引かれて手取り約4万円だという。資料によれば当時の大卒初任給は平均1万8930円だという。現在の大卒初任給で約20万円~22万円程度だ。当時国鉄初乗り運賃が10円で今は130円、昭和38年の日経平均の平均値が1400円これを基準にすると、現在は当時の13倍くらい。そう考えると給料手取り約50万は越すわけだから、1週間に1回の銀座はしご飲み会はもしかしたら奥さんのクレームにならないだろう。しかも、酒会社は飲み屋向けの販路拡大接待費もあるはず。サントリーは高給なのは今も昔も同じだろうし、この水準は当時としては上級かもしれない。

その数年後、自営業の息子である自分はお年玉1万円もらった。正月あけて小学校の先生がみんないくらもらったと聞いたときに、自分が1万円と答えたら、そんなことありえないと先生がいったのは鮮明に覚えている。

2.小林桂樹
江分利満役を演じるのに小林桂樹以外の人選はありえないだろう。やっぱりピッタリだ。現在演じるなら誰なんだろう?ぴんとこない。社長シリーズの秘書課長とは違うムードでこなす。むしろ画家の山下清役の雰囲気でこなしているのかもしれない。


3.新珠三千代
江分利満の妻役は新珠三千代である。彼女はやっぱりきれいだ。この当時の東宝映画での活躍はすごい。社長シリーズで森繁久彌演じる社長がちょっと浮気しようとする芸者やホステスを演じるのだが、いい女だよね。ここでの奥さん役もさっぱりして好感を持てる。でも小林桂樹と新珠三千代はこのあと「女の中にいる他人」でもう一度夫婦役を演じる。これは若干違うムードだ。新珠三千代が女のずるさを巧みに演じている。このコンビは絶妙だ。


4.東野英治郎
小林桂樹の父親役は東野英治郎だ。それにしてもこの当時彼は至るところに出てくる。映画会社同士の協定がある中で、俳優座に属し演劇系で自由に映画会社を渡り歩く東野英治郎の活躍には驚くしかない。われわれには水戸黄門の印象が強すぎるけど、この当時彼が演じる役は泥臭い。映画「キューポラのある街」での吉永小百合の父親役で星一徹のようにちゃぶ台をひっくり返す鋳物工場の職人役がいい例だ。
会社役員になったり、会社をつぶして借金取りに追いまわされたりというこの役も適役だ。でもそんな男によく金を貸す奴がいるなあという印象を持つ。


5.多彩な出演者
この映画で目を引くのはこのあと3年後に「ウルトラマン」の隊員役になる二瓶正也と桜井浩子江分利満の同僚役で出演していることだ。子供時代にリアルで「ウルトラマン」を見た自分からすると、この2人の存在感はいまだにすごい。というより姿を見てうれしくなる。二瓶正也は多彩な才能があることで有名だったが、ここでは江分利満のお祝いをやるのにくだをまくのにいやいや聞かされて朝までつきあわされるつらい後輩を演じているのが滑稽だ。


銀座を思わせるバーを江分利満がはしご酒をする。いくつかのバーが映るが、その中で若き日の伊丹十三や作家の梶山季之山口瞳本人がお客役で映るのが御愛嬌。名画座で見れば見逃してしまったろうが、DVDだとその後怪優として有名になった塩澤ときがバーのマダム役で、後ろで飲んでいるのが山口瞳本人だとわかる。

 
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