映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「PASSION」濱口竜介

2022-07-27 21:21:18 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
映画「PASSION」を名画座で観てきました。


映画「PASSION」は今や日本を代表する映画人となった濱口竜介監督東京藝術大学大学院の卒業制作でつくった2008年の作品である。名画座の「濱口竜介特集」での上映で、観たことない作品の一つである。もともと東京藝術大学制作となっている作品だけに、Wikipediaにも取り上げられていない。観たことない人も多いだろう。ほぼ満員である。

昔の仲間の誕生日パーティに29才の男女が集合する中、2人が結婚することを公表する。ところが、その2人のそれぞれに関係や好意をもっている他のメンバーがいて、その後飲み直したときにお互いの気持ちを発散して取り乱す3日間の話である。

見応えがある!映画好きの必見作品だ。
卒業制作となめてかかるとレベルの高さに誰も驚くであろう。近年の偶然と想像渋川清彦と占部房子、河井青葉の3人の主要出演者がダブっている。お!出てきたなと思う。いくら監督がよくても演じる人のレベルが低くてはどうにもならないだろう。演技巧者が「偶然と想像」と同レベルの演技をしているのでいい作品になるのは必然だろう。

景色を見ていて横浜が舞台だとわかる。セリフが多く、室内劇的タッチを持つけど、閉鎖的ではない外人墓地付近や煙突のけむりが大量に噴出する場所のロケなどアウトサイドも多い。バスの使い方もうまい。おいおい、これって大学院とはいえ、学生のレベルを超えているよ。こんなすごい映画つくる濱口竜介が、10年以上ごく普通の映画ファンに知られていなかったというのは映画関係者のミスだな。


⒈感情移入できない登場人物
この映画の登場人物もへんなやつが多い。出演している5人の男女がその昔同級生だったとか関係については語られない。でも、まあ理屈っぽい

結婚することになった2人は男が大学の研究室に残っていて、女が中学の数学教師のようだ。見るからに色男なので、四方八方女に手を出しているようだ。一方で、女性に好意を持っている仲間内の男性がいるが、相手にしない。ところが、仲間内に婚約を告白したと同時にいろんなことがもつれてくる。


河井青葉演じる数学教師が、クラスの中で自殺した生徒がいることで、生徒を集めて暴力についてどう思うか?とヒアリングしたりする。でも、河井の論理がこれがまたハチャメチャだ。その屁理屈を聞いているとだんだんムカついてくる。でも、そんな強い女じゃない。偉そうにしていて依存性の強い女だ。こんなシーンを若い素人の生徒たちの協力で作ってしまうのもすごい。

まあともかく、みんな性格は変。
当時はまだ若いのに、こんな変な奴らに似ている連中に若い頃から濱口竜介会ってきたのかな?人生経験が豊富なのかもしれない。

⒉レベルの高い演技
偶然と想像でも個人的にいちばん演技が冴えているのが占部房子である。河井青葉を昔の同級生だと思っていたけど、実は別人だったという話だった。今から14年前の作品だけど、人物的に性格的変人の中でいちばんマシだな。ひいき目はあるが、今回もよく見える。


渋川清彦はいろんなところに顔を出しているよね。「PASSION 」で14年前の姿を見ると、若干イメージが違う。TVをたまたま見たら、CMで配達員の役やっていたっけ、めずらしい伊藤忠のCMだった。「偶然と想像」では柄にもなく大学教授の役柄だったけど、学生にハニートラップをかけられそうになる。そんな感じで、役柄の幅がますます広くなっている気がする。映画界に欠かせない俳優になっている。


この2人はまったく関係ないはずなんだけど、最終に向けて思わずびっくりさせるシーンを用意する。それだけでなく、ビックリするシーンを要所ごとに点在させる。このあたりは驚かせるのを楽しんでいるような濱口竜介のタッチかなと思う。

岡本竜汰というカッコいい俳優が主役級である。演技もわるくない。最近あまり見ないけど、どうしちゃったんだろう。河井青葉はまだ「私の男」に出演する前、美人なんだけど、役柄のせいもあるのか合わないのかも。それにしても、同窓会感覚で10年以上経って出演者を集めて「偶然と想像」濱口竜介がつくってしまうのもすごいよな。
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映画「オカンの嫁入り」 宮崎あおい&呉美保

2014-09-24 18:03:18 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
映画「オカンの嫁入り」は2010年の宮崎あおい、大竹しのぶの共演映画だ。

公開当時はまったくスル―の映画だった。
この9カ月で自分にとっては日本映画№1であるそこのみにて光り輝くを製作した呉美保監督による作品ということで、一度見てみたいと思った。最初は母親が妙な若いあんちゃんを連れてきて変な感じと思っていたところに、ここぞとばかり見せ場がいくつも用意されていた。長まわしで情感を高める手法は次作の「そこのみにて光り輝く」と同じで実にうまい。
中盤から終盤にかけて徐々に映画のムードが高まっていく。


大阪の京阪沿線で、月子(宮崎あおい)と陽子(大竹しのぶ)は、母子2人で暮らしていた。月子が生まれる前に、陽子は夫・薫と死に別れていた。

ある深夜、陽子が酔っ払って若い金髪の男・研二(桐谷健太)を連れて帰ってくる。玄関で眠りこける二人。月子は陽子を引きずり寝かせ、玄関で倒れている研二には毛布をかけてやる。
翌日、ケロッとした顔で陽子が言う。「昨日プロポーズされて、受けることにした。」
様子が違うので見に来た隣に住む大家のサク(絵沢萌子)と月子は唖然とする。しかも、研二は30歳。元板前で料理は上手だが、今は働いていないらしい。


月子は陽子の勤め先である村上医院の村上先生(國村隼)を呼びだした。たまたま研二の祖母が患者だったので2人は旧知の仲だった。研二と月子の会話を聞いて、あきれ返った陽子は家を飛び出し、隣の大家・サクのもとへ移り住もうとする。すると、月ちゃんがいない家に同居はできない」と研二は庭の縁側の下で寝泊りする。


そんな中、陽子に対しても、研二に対しても頑なに心を閉ざし続ける月子に、村上先生は陽子との秘密を告白して月子を驚愕させる。それを聞いて月子は渋々陽子の結婚を了承しようとした。陽子と研二が二人で衣裳合わせに出かける間際、陽子が倒れてしまう。緊急搬送された。問題はないようにみえた次の瞬間、医師から驚嘆の事実を知らされるが。。。。

京阪電車の車両カラーが以前の南海電車に似ていて、一瞬南海沿線かと錯覚したが駅の行き先で京阪とわかる。沿線の駅で撮影したようだ。その電車で大阪のオフィス街に通うのが宮崎あおいである。
彼女のOL時代の逸話でグイッと映画に引き込まれる。

1.宮崎あおいへのストーカー行為
宮崎あおい演じる月子の会社に東京から1人の若い男性が異動してくる。その男性は月子に関心をもち、大阪独特の世界が知りたいと誘い出す。2人は新世界界隈へ行き、たこ焼きを一緒に食べる。その時点では恋に発展する話かとみえるが、その後彼女への誘いがエスカレートする。月子を描いた似顔絵が置いてあったり、嫌がるにもかかわらず帰社のときに追いかけられる。
とどのつまりは駅の自転車乗り場に追いかけてくる。
そこでストーカー男が腹を立て、月子の周辺にある自転車をぶっ潰しまくる。むちゃむちゃだ。

このシーンにはハッとした。一気に目が覚める恐怖を感じさせるシーンである。
でも謹慎したストーカー男が出社する前に、上司が電話してきて、都合が悪いからやめてほしいと誘導する上司の電話には呆れる。月子は出社しようとするが、恐怖のあまり電車がのれない。

この恐怖感を描いた駅ホームでのシーンもうまい。ヒッチコックを思わせるサイコサスペンス的表現である。柔道でいえば「一本!」といううまさだ。



2.医師から母親の余命を聞くシーン
医師より近親者ということで、宮崎あおい演じる月子が説明をうけショックを受ける。
このシーン自分の体験で同じことがあったのでじんわり来た。
自分の母ががんにかかった時、大学病院で医師より個別に説明を受けた。父は存命であったが、心臓疾患でまともな状態ではなかった。医師からあと6か月の命と聞いた時、呆然とした。病室にもどり、母にどうだったと聞かれ、がんなので抗がん剤治療をするといわれたとだけ言った。早めに病室をでたとき、目に涙が浮かんだ。妹とラーメンを食べに行ったが、ラーメンをすすりながら涙が止まらなかった。
この手のシーンには本当に弱い。


3.白無垢披露に向けて
もうあとがないとわかっているので、大竹しのぶ演じる母親が白無垢の着物を着る。
そのシーンに向けて宮崎あおいと大竹しのぶを映すシーンがある。その間合いの取り方がうまい。
長回しも妙に長すぎるとダレる。呉美保監督は適切な時間配分で映画を構成していく。抜群のセンスだと思う。これもいい作品だった。
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リリーシュシュのすべて

2012-06-26 06:12:07 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
感情映画「リリーシュシュのすべて」は岩井俊二監督による青春ものだ。

いじめに遭っている一人の中学生と彼を取り巻くいじめっ子やそのグループとの関わりの話だ。
リリーシュシュは架空のミュージシャンの名前である。劇中には少年犯罪、いじめ、セックス、自殺といった問題が登場してくる。新藤兼人監督が得意だった領域だが、インターネット上での会話の文字を全面的に画面に出すことで現代的な匂いがある。


北関東の栃木と群馬をまたがる両毛地区が舞台だ。
カリスマアーティスト・リリイ・シュシュに憧れた中学2年生が主人公だ。ネット上にリリイの掲示板を張って、見知らぬ人たちとチャットをする。その中でも青猫というハンドルネームのリリイ・ファンとのチャットに心癒されていた。

その彼が仲間の中学生とつるんで集団万引きをするシーンが出てくる。そこには親分格の少年がいる。主人公は自ら望んで盗みを働いているわけではない。ある日主人公はCDショップでリリイ・シュシュのCDを盗もうとして、店員に捕まる。先生が迎えに来たあと母親が迎えに来る。
仲間は自分たちのこともばらされたのではないかと主人公をつるし上げる。

映像は主人公が入学したてのころに戻る。剣道部員として入部した仲間に星野という同級生がいた。秀才の誉れ高き彼の家に遊びに行き、歌手リリイ・シュシュの存在を知った。2人は普通の同級生だった。夏休みに仲間とともに沖縄旅行へ行った。その時までは楽しい日々が続いていた。これで終わっていればと主人公はいう。
帰ってきた後、同じクラスで羽振りを利かせていた悪ガキを星野が打ちのめす。そこからすべてが変わった。子分を従え、万引きで得たお金を上納させたり、同級の女の子に援助交際をさせてお金を巻き上げたりするようになるが。。。。

かなり重い映画である。中学生時代は精神的肉体的にアンバランスになる時期である。その中で登場人物がみんな彷徨っている。主人公だけではない。不良の親分も彼に翻弄される女の子たちもみんなだ。その彷徨う少年たちが一人のアーチストを追いかける。そしてネット上でつながりを持つ。ネット上で気持ちをあらわにするが、現実逃避に近いかもしれない。

岩井俊二というとlove letterの透明感があふれる映像美を思い出す。自分自身大好きだし傑作であったと思う。この映画で取り上げる映像はちょっと違う。ビックリすぎるくらい大胆だ。印象深いカットが幾つか見つかる。特にどぶ川に入り込んでいくシーンは制服とともに汚れてしまう。人気女優蒼井優にとってはデビュー作である。この映画のオーディションで岩井俊二監督から認められて一気にスターになった。


不思議なくらい感情移入してしまった。
何でかというと、主人公の少年が顔も性格も何もかも自分の中学時代に似ているのである。弱々しい主人公の風貌は頼りない。おばあちゃんにかわいがられて身のまわりのことは何でもやってもらった自分も同じような感じだった。あこがれの少女はいるんだけど、告白なんてことは到底できない。おませな女の子にいろいろなことを教えてもらうけど、自分では何もできない。

ロックが好き、音楽が好きで、そのアーチストのファンクラブに参加する。銀座山野楽器やヤマハでよく開催されるロックアーチストのファンサイトによくいったものだ。中学生にもかかわらずシカゴやサンタナのコンサートにも行ったっけ。一緒に行ったのは不良の親分だったなあ。別にこの映画のような話は一切なかったけど。。。


運よく自分は犯罪に手を染めることはなかった。不良グループに近い所にはいたが、それ以上にはならなかった。高校に入ってから麻雀とかは一緒にやったがそれくらいの付き合いだった。よかった。中学の時ある奴にいじめられた時、体育の先生がこいつのこと棒で殴っていいといわれ、腹立ててむちゃくちゃなぐったこともある。主人公の気持ちはよくわかる。
映画をみて妙に中学時代の自分の姿が頭にこびりついて離れない。
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アウトレイジ ビートたけし

2012-06-25 05:03:26 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
ビートたけし監督主演の映画「アウトレイジ」を見た。

まさにやくざ映画というべき映画だ。昨日の味方が今日の敵とばかりに訳がわからなくなる構造は「仁義なき戦い」シリーズと同じようなものだ。あの名作に比べると若干スピード感は落ちるがなかなか良くできていると思う。“全員悪人”をテーマに暴力団組織内部の抗争を描く

サラリーマン風の男がぼったくり飲み屋のポン引きに誘われて180万の勘定に仰天するシーンが最初に出てくる。そんな勘定払えないから自分の事務所に来てくれと付いていくと、そこはビートたけしや若者頭椎名桔平率いる組事務所だった。あっさり逆転で、ぼったくりクラブの店員がボコボコにされる。
そういうシーンからスタートする。
それぞれの組は広域暴力団の下部組織であった。落とし前が付く付かないで相手の組と抗争がはじまる。
これから先は上層組織をからめた抗争に次ぐ抗争である。。。。

(配役の妙)椎名桔平、三浦友和、小日向文世、加瀬亮、北村総一朗というキャストだけを見れば誰もやくざ映画とは思わないだろう。小日向はヤクザに密着した警察官の役であるが、あとは組の幹部役である。椎名や三浦は最近ではやくざスレスレのワルを演じる場面が増えてきている。現実のインテリやくざのイメージから決して遠くない。加瀬亮はビックリかな?オールバックにして、四角くて細いサングラスをかけさせる。得意の英語をしゃべりながらのインテリヤクザに扮した怪演がなかなかいける。だらしない組長の石橋蓮司がうまい。仁義なき戦いのだらしない組長金子信雄を連想させる。同じく組長役國村隼は中途半端なワルの役は得意、「キルビル」でもそうだったがやられ役は苦手でない。
これらの配役の起用にはビートたけしの抜群のうまさと演出の妙が光る。

(カジノ)日本でも導入しようと各地方自治体がいろいろ視察しているようだが、うまくいかない。この映画では治外法権を逆手にとって、ボロい大使館の中でバクチ場を開帳する。ホーそういうやり方ってあるんだななんて思う。でも難しいだろうなあ。シンガポールやマカオの絶好調を横目に見ているだけでは日本の自治体は能がないよ。

(殺し方)かなりこの映画惨忍だ。指詰めは何度も何度も出てくるし、歯医者で診療中の組長の口を無理やりこじ開けて歯科の機械で口の中をぐちゃぐちゃにしたり、舌をべロンと出させてカットしたり、お詫びに来た相手の顔を刃物でギザギザに切りまくったりまあ強烈な表現だ。今のはすべて殺しでない。それに加えて次から次へと強烈な殺し方を見せる。これが凄い。アメリカの映画だと、一発ドンで済ませてしまうケースが多いが、香港やくざのやり方同様相手に生きた心地のしない痛い思いをさせるというやり方がドキドキさせるものだ。

いずれにせよビートたけしのヤクザぶりが一番らしい気がする。
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プリンセストヨトミ 堤真一

2011-12-31 16:31:58 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
「プリンセストヨトミ」は万城目学の原作を映画化したものだ。
万城目学がいつものように奇想天外な発想で大阪の街を描く。今回は京都でなく大阪だ。
今回は大阪城と普通の商店街である空堀商店街がストーリーの核であるが、大阪舞台の映画の定番通りミナミのナンパ橋付近や新世界界隈を映し出す。
超フィクションでもあり、ストーリー自体に不自然さがあるのは仕方がない。でも妙にありえそうな話に思えてくるのは、江戸とは異なる大阪の町民文化の特異性がそう感じさせるのであろう。


東京から大阪に3人の会計検査院調査官がやって来た。
彼らは国家予算が適正に使われているかを調べる役人たちにとっては怖い人たちだ。調査対象を徹底的に追い詰め、怖れられている主人公こと堤真一、その部下女性調査官こと綾瀬はるか、若手男性調査官こと岡田将生だ。
彼らは大阪での実地調査で次々に指摘を重ね役人たちをふるえがらせた後、次の調査団体のある空堀商店街を訪れる。そんな商店街の横に財団法人「OJO(大阪城跡整備機構)」があった。
収支に疑惑はなかったが、主人公は不信な点を感じる。だが、徹底的な調査を重ねるも、経理担当の長曽我部にかわされた。その商店街には、お好み焼き屋「太閤」があった。そこでは店主の真田幸一こと中井貴一と妻こと和久井映見夫婦と一人息子がいた。息子は女の子になりたいという悩みを抱えていた。その幼馴染・橋場茶子が男勝りでいつも大輔を守っていた。そのお好みで食事をしている時主人公は携帯を忘れていたことに気付いた。さっきの調査法人だと思い、主人公は戻った。
しかし、そこには誰もいない。さっきは職員たちがいたはずなのにと思い、彼らの机を開けると何も入っていない。おかしい?そう思いその法人に再度調査を要請する。
その後再調査したが同じ結果、しかも取引先に聞いても不審なことは見当たらないのであったが。。。



そもそもこの手の調査官が携帯を忘れるなんて話があるはずがない。携帯の紛失に関する企業の気の配り方は異常なくらいである。自分の会社でもそうだし、どこでも大変だ。一般企業でもそうなんだから、会計検査院の調査官が携帯を紛失するなんて話があるはずがない。
しかも、調査官が自分の身分証明書を街に落とすなんてこともあるわけないだろう。
そういうありえない話が、ストーリーのカギになるわけだから欠陥の多い脚本といわざるを得ない。
それに加えて途中から語られる壮大な地下帝国のような話は大胆だ。

大坂夏の陣で豊臣家が滅ばされるときに、後継ぎが逃げのびて、豊臣秀吉が好きだった大阪の町民たちがバックアップしていくなんて話はありえそうな話に思えてくる。
大阪の町民たちがみんな集合して、大阪にとって天皇みたいな存在の人を助けるなんて話はあってもおかしくない気もした。しかし、現実的にありえない。なぜなら大阪には朝鮮韓国系の人が他の都市に比べて格段に多い。16世紀朝鮮本土をむちゃくちゃに荒らしまくった秀吉は向こうでは罪悪人である。それを迎え撃つ李舜臣なんて男が英雄扱いされているんだからまあこの映画のようにはならないだろうなあ。

でもそういう欠点ばかりに目を奪われているだけでも仕方ないだろう。
土着の大阪の商店街の映像は楽しめたし、各俳優も悪くはなかった。堤真一はいつも通りのポーカーフェイスだし、東京出身なのに上方お好みの店主を演じた中井貴一もわるくない。綾瀬はるかは食欲満点でかわいい。
まあまあと評価すべきではないか?

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2011-12-29 06:06:09 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
山岳ものである「岳」を見た。
割と楽しめた。

石塚真一による原作コミックを映画化した。日本アルプスを舞台に、山岳救助ボランティアの主人公と仲間たちが繰り広げる。明るい主人公を演じるのは小栗旬。小栗はクランクイン前から厳しい真冬の山岳トレーニングにも励んだようだ。クレパスのシーンは見る方がドキドキする。


北アルプスの雪山で一人の登山者がクレパスに転落するシーンからスタートする。
目撃者の情報が山岳救助隊に入る。隊長こと佐々木蔵之介が隊員たちに指示をする。ちょうど配属されたばかりの警察官こと長澤まさみは来たところである。すぐには遭難場所に行けないので山にいる島崎三歩こと小栗旬に連絡をとる。三歩は、山岳救助ボランティアとして登山者たちの命を守っている。三歩はクレパスに転落している遭難者をいち早く発見救助するのであった。

長澤まさみは、隊長こと佐々木蔵之介や三歩の指導の下、過酷な訓練を乗り越え新人女性隊員として成長していく。だが、実際の救助では自分の未熟さや大自然の脅威により、遭難者の命を救うことが出来ない日々が続くのだが。。。。

救助の逸話をいくつも積み重ねていく。全部うまくいくわけではない。主人公はスーパーマンだが、それだけではないところも見せる。それを演じる小栗旬のキャラがいい。いつもにこにこしながら、難しい救助をこなしていく。スキー以外の雪山経験のない自分からすると、このロケはかなりハードに映る。かなりの危険と背中合わせだ。長澤まさみもよく頑張ったと思う。それぞれの役者魂に雪山を映す撮影の妙が加わりいい作品になった。
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あしたのジョー  

2011-11-27 21:10:16 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
映画「あしたのジョー」は日本漫画界史上の頂点に君臨する名作の映画化である。
主演2人の役づくりが素晴らしい。その精悍な肉体と訓練されたボクシングスタイルに感動した。
ノーガード戦法、クロスカウンターパンチなど少年の時に胸焦がれたジョーの話はなつかしい。実写で見ると、漫画とは違うときめきを感じる。有名すぎるくらい有名なストーリーを脚本家、監督がうまく料理できていると思う。


ストーリーは言うまでもない。
下町のドヤ街の飲み屋で、ボクシングジムの主である丹下段平こと香川照之はやくざ数名にからまれていた。そこを通りかかったジョーこと山下智久がチンピラを素早いさばきで打ちのめす。驚いたのは丹下だ。自分のボクシングジムで鍛えれば、モノになると口説くが相手にされない。でもコテンパンに打ちのめしてジョーは警察に引っ張られる。その後つながりを持つことになる財閥の令嬢白木葉子こと香理奈がその様子を見ていた。
単なるけんかだったが、ジョーには数多くの前科があった。一年の服役を命じられる。
刑務所に入ったジョーにはつわものたちがちょっかいを出していく。そしてコテンパンに打ちのめした。独房に入ったり出たりを繰り返した。そんなジョーの元にボクシングジムの丹下からはがきが届く。そこにはボクシングの心得が書いてあった。いつものように暴れまわっていたときにある男に強いパンチを受ける。他の相手とは違うつわものだ。力石徹こと伊勢谷友介である。訳あって刑務所に入ることになった彼はプロボクサーだ。かなわない。その時、丹下からもらったはがきの言うとおりの動きをする。そうすると力石に数発ヒットする。驚く力石、でもレベルが違う。ジョーはノックアウトされたが、力石も一目置くようになる。
暴れん坊となっていたジョーにボクシングをやらせてみたらどうかと財閥の令嬢白木葉子がやってくる。叩きのめされた力石への復讐を誓うジョーは闘志を燃やしボクシングの練習に励むようになるが。。。


クリントイーストウッドは言う。配役にはその人間にもっともよく似た人間を選ぶべきだと。今回はベストの配役だと思う。そして2人はそれにこたえていると思う。特に力石徹を演じた伊勢谷友介はまさに力石そのものである。究極なまでに身体を鍛えている役作りには敬服するしかない。「ザ・ファイター」を見て役作りに驚いたが、この映画も役作りの面だけをとれば上を行く気がする。

「あしたのジョー」が少年マガジンでスタートした時のことは、つい昨日のように覚えている。ちばてつやは「ハリスの旋風」を連載していたと思う。実はこの漫画が大好きだった。テレビのアニメも好きだった。「ジョー」がはじまったとき本当に暗かった。明るい「ハリス」からの転換にがっかりした。そしてアウトローな世界が続いた。他のスポーツ根性ものに比べ、底辺を這いつくばるような世界が子供の自分には合わなかった。同じマガジン連載の「巨人の星」と比べ慣れるのに随分と時間がかかった。


設定は30年代から40年代といったところであろう。セット作りに時間をかけた印象もある。でもこの時代をカラーで表現しようとすると非常に難しい気がする。他の作品に比べ、時代考証に気を配っている印象があるが、原作が時代並行ですすんだ「巨人の星」と異なり、はっきりとした設定の時期はない。原作が43年にスタートしているだけに、40年代前半と考えるべきであろう。でもその割にはセットに30年代的設定も多いのかな?という気がする。でもそんなことは鍛え抜かれた2人の肉体の前にはどうでもいいことだと感じさせてしまう。この映画の凄さに圧倒されるのだ。

最近「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」という凄い本が出た。素晴らしい本だと思う。この本についてはあとでゆっくり書きたい。でも力道山木村2人の対決を忘れたころに再度クローズアップさせたのは「あしたのジョー」の原作者梶原一騎(高森朝雄)である。梶原一騎は「巨人の星」「タイガーマスク」がそうであったように実在人物と仮想の人物をクロスさせている。それはそれでおもしろいのであるが、「あしたのジョー」はまったく独立している。そしてストーリー作りがもっとも面白いものとなっている。あえて言いたい。日本漫画史上最高のストーリーであると。。。。。
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大奥(男女逆転)  二宮君

2011-09-23 20:57:30 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
大奥を描いた映画作品は昔から数多い。しかし、男女逆転は初めてではなかろうか?
奇病により男子のみ次から次へと死んでいく世の中になり、女将軍が生まれたとの前提だ。
女性天皇復活へは皇室典範の改正というハードルが残り、そう簡単には生まれそうもないが、これから先何が起こるか分からない。ジャニーズ事務所総動員でホストクラブ系大奥を見せる。でも二宮君は比較的江戸弁をきかせる好青年の役柄だ。パロディ映画で遊び心満載だ。


江戸時代、第七代将軍徳川家継の治世。男だけを襲う謎の疫病により、男性の人口が激減した。そんな男女逆転した世にあって、主人公水野こと二宮和也は剣術に打ち込み、武士道を追い求めていた。
彼は、困窮した旗本である家を救うため、恋人である大問屋の娘こと堀北真希への想いを断ち切り、大奥にあがることを決意した。意気揚々と大奥にあがった二宮は、これまで見たこともない程の数多の美男が集められている大奥に驚愕する。徳川の血を絶やさぬため一人の女将軍のもと、3000人の美男が集められたといわれる女人禁制の男の園。日夜、才色兼ね備えた男たちの熾烈な競争が繰り広げられていた。容赦なく様々な嫌がらせの洗礼を浴びせられる新入り二宮であったが、持ち前の度胸で窮地を切り抜けていこうとするのであるが。。。。


本当にこういうことがあったらすごいなあといった感じだ。
大奥の中では新宿3丁目風男が幅を利かせる。男色が日常茶飯事であり、これは大変なことだ。
映画としては今一つだが、柴咲コウが逆に将軍らしく大奥らしい設定にはなっている。リアルな舞台設定も単にセットだけでやったわけでないのが画像でよくわかる。

遠い昔18世紀後半のロシアの女帝エカチェリーナ2世には多数の恋人に加えて、大奥のようなものがあったといわれる。露土戦争などでの領土拡大でも有名で、日本の大黒屋光太夫にもあったといわれる女帝だった。ある意味規模が違う気もするが、あのロシアペテルブルグの大きな宮殿の片隅で同じようなことがあったのであろうか?

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ちょんまげぷりん  錦戸亮

2011-08-27 19:29:53 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
これはおもしろい!予想以上におもしろくて大満足であった。

「ちょんまげぷりん」は「ゴールデンスランバー」の中村監督の作品だ。江戸時代の武士が突如平成の世に出現して、母子家庭の親子とふれあう物語だ。噂は知っていたが、ありえない話で自分にはちょっと?と思っていた。見て予想を上回る面白さに驚いた。ハートフルな話で、そこにお菓子作りという一つの基軸を加えて話を一気におもしろくする。ともさかりえの母親ぶりもらしくてよかった。


舞台は平成の世の巣鴨である。主人公のともさかりえは幼稚園に通う息子の子育てと仕事の両立に悩むシングルマザーだ。仕事ではわがままな顧客の要望をこなしているが、子供を迎えに行くので定時に帰らねばならないジレンマがある。そんなある日着物にちょんまげ姿の男に出会う。初めは俳優か頭のおかしい男だろうと思っていた。
その男の名は木島安兵衛こと錦戸亮。文政11年(1828年)江戸時代からやってきた。振る舞いは本物の侍だった。その晩は帰ったが、行く当てもない安兵衛は、成り行きで居候することになる。食事にありつけた安兵衛は、恩返しに家事すべてを引き受けると宣言する。安兵衛は一生懸命に家事をこなす。しかも、礼儀や男らしさを息子に教え、熱を出せば心を込めて看病する。定時に帰るジレンマも解消され、ともさかは安心して仕事に打ち込み始めた。父親不在に慣れていた息子もなついていく。
そんな中、安兵衛に隠れた才能があることがわかった。息子のために作ったプリンがきっかけで、ケーキ作りを習得したのである。見た目も美しい西洋のケーキを見て、息子の幼稚園仲間のお母さんたちもビックリだ。この才能が埋もれているのはもったいないと、ともさかの友人がお父さんのケーキ作りコンテストに応募してしまう。ためらう安兵衛は説得され参加することになるが。。。。


江戸時代から日本にやってくるなんてことは夢物語のようだが、あとの話が妙にリアルである。巣鴨の場所設定もなるほどと思い、普通の母子家庭の母親や息子が悩むような小さい物語が現実的だ。そういう話がうまく連続的に続くので途中あきることがない。脇を固めるともさかの友人や同僚も独特の個性を持っていて、映画の流れに切れのよいスパイスを効かせる。そして話のオチもなるほどという形に持っていく。
おすすめだ。
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武士の家計簿  堺雅人

2011-08-14 21:31:05 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
「武士の家計簿」は加賀藩に仕えていた経理係の武士一家を森田芳光監督&堺雅人主演で映画化した。剣をふるう場面が出てこない異色の時代劇だ。堺雅人がもつ独特の個性で柔らかいムードで進む。窮地に追い込まれていた加賀藩の財政を救うだけでなく、放漫生活で借金がかさんでいた家の家計の改善も目指すという話だ。女性ぽい気質でケチケチしているようにも見えるが、いやらしさはない。


江戸時代末期、御算用者(経理係)として、代々加賀藩の財政に関わってきた猪山家。八代目の直之こと堺雅人もめきめきと頭角をあらわしていた。父信行こと中村雅俊も同じ所で勤めていた。そろばんを弾き、数字の帳尻を合わせる毎日の直之にある日、町同心こと西村雅彦を父に持つお駒こと仲間由紀恵との縁談が持ち込まれる。

飢饉が続いた後加賀藩の財政もきつくなっていた。主人公は御蔵米の勘定役に任命されるが、農民たちへのお救い米の量と、供出量との数字が合わない。米の配給が少なく農民の不満も爆発寸前だ。主人公は不審に思い、独自に調べ始める。やがて役人たちによる米の横流しを知ったが、その動きを察して輪島への左遷を言い渡される。新婚早々の異動を余儀なくされる。
結局は一派の悪事がわかり左遷の取り止めに加え、異例の昇進を果たす。しかし、家は出費がかさんでいた。付き合いも多く膨大な借金もあった。主人公は家財一式を処分、借金の返済に充てるという決断をする。愛用の品を手放したくないと駄々をこねる母こと松坂慶子も説得していくのであるが。。。。

堺雅人がいい。いつもの笑顔がここでも晴れやかで好感が持てる。「ゴールデンスランバー」がいい作品に仕上がったのも、主人公である彼のキャラによるものが大きい。この映画も別の人が同じ役を演じたら、ケチというよりもシミッタレという雰囲気になって暗い映画になったかもしれない。
脇を固める主演級の演技もいい。中村雅俊、松坂景子、草笛光子いずれもコミカルなキャラである。経理係の家計と言うと固いイメージが強いが、いずれもなおおらかなキャラクターだ。


中村雅俊が今は東大の赤門になっている前田邸の門の建造にかかわる自慢話を何度も話したり、自分が大事にしているものを売りたくないと駄々をこねる松坂恵子の演技など笑える場面がこの映画の全般的な雰囲気を朗らかにしている。そういった意味で倹約推奨のケチケチ映画にならず、堺雅人のキャラらしい映画になっているというのは、いかにも彼が主演級として成長していることを示している。
そんな気がした。
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十三人の刺客  

2011-07-10 18:52:21 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
迫力ある時代劇と前評判が高かった「十三人の刺客」ようやく見ることができた。
劇場で見れなかったことちょっと悔いた。なかなかの娯楽作品だ。ちょっと変だなあ?と思しき場面もあるが、全般的には一流の配役を思いっきり動かして見ごたえある作品にしている。
話は単純だ。明石藩主・松平斉韶は将軍の腹違いの弟という立場に甘んじ、悪行の限りを尽くす。彼が幕府の要職に就く前に闇に葬るよう、御目付役は密命を下される。お目付役は腕の立つ刺客を集め、参勤交代で明石へ戻る道中を狙うという話だ。
個人的には伊勢谷友介や稲垣吾郎の動きに興味を覚えた。


弘化元年3月。明石藩江戸家老・間宮が、老中・土井家の門前で切腹自害。間宮の死は、明石藩主・松平斉韶こと稲垣吾郎の暴君ぶりを訴えるものであった。将軍・家慶の弟である斉韶は、老中への就任が決まっている。事件は時の幕府を動揺させ、このままでは幕府、ひいては国の存亡に関わると判断した土井は斉韶暗殺を決断、御目付役・島田新左衛門こと役所広司にその命を下す。役所は刺客集めに奔走。剣豪浪人や酒と女と博打に溺れる役所の甥・新六郎ら十一人の強者達が役所のもとに集う。

暗殺計画が極秘裡に進められる中、斉韶の腹心・鬼頭半兵衛こと市村正親はその情報を掴んでいた。市村は、かつては役所と剣の同門で御用人の身分であった。役所は、稲垣を襲うのは江戸から明石への参勤交代の道中しかないと判断、襲撃場所を交通の要所の尾張落合宿に決める。斉韶を落合宿に誘い込むため、新左衛門は事の詳細を尾張藩の木曽上松御陣屋詰・牧野靭負こと松本幸四郎に打ち明け協力を求めたが。。。。。

まずは稲垣吾郎の奇行を次々に見せる。さすがに元ネタ話にここまでの奇行はなかったろうと思わせるくらいの奇行だ。そして天下の将軍の親族であっても反抗せざるを得ないということを示す。嫌味な稲垣の役だが、それらしく演じた。しばらくは彼のもとに悪役の依頼が来るかもしれない。

そのあとは十三人が次から次へと集まってくる。はぐれ侍というべき剣の腕には自信のある刺客が集まる。こういう場合はその剣の腕前を披露するのが通常は慣例だ。さすがにテレビの連続ドラマならできるが、十三人全員の腕を事前に披露するほど時間はない。でもそれなりの腕前だとわかる。特に伊原剛志には「七人の侍」の宮口精二のような殺気がある。伊勢谷友介は侍ではない。野人のような姿は特異な存在だ。岸部一徳との関わりが笑えた。でも最後「???」という場面がある。
そうして両者がぶつかる場面に突入する。

宿を買い取った十三人が仕掛けを作る。それがおもしろい。黒澤明の「七人の侍」のような匂いを醸し出す。そして剣での対決だ。十三人それぞれが存在感を持つ。この対決では出演者は非常に体力を使ったと思う。修羅場のような撮影現場ではなかったか。見ている方が大変だなあと思ってしまう。

あとはベテランの存在がこの映画の格をあげる。松方弘樹、松本幸四郎、市村正親、平幹二朗主演級ともいえるこの4人の存在があったからこそ単なるチャンバラ劇に終わらない格を持つことができたのではないかと私は思った。
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メゾン・ド・ヒミコ  オダギリジョー&柴咲コウ

2011-06-19 09:27:04 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
「メゾンドヒミコ」は2004年の犬童監督作品。個人的にゲイというのは肌に合わないが、傑作だと思う。オダギリジョーと柴咲コウの二人が主演だ。ゲイの老人ホームという特殊な設定の中、個性的な男たちを登場させる。主演二人で成り立つ映画ではなく、名脇役の存在がこの映画の質をあげている。全般的に流れているムードはやさしい。ゲイ嫌いが見ても不愉快ではない。


零細企業の事務員柴咲コウのもとに若い男オダギリジョーが訪ねてくる。彼女の父こと田中泯が癌で余命幾ばくもないと言い、父の経営する老人ホームを手伝わないかと誘う。しかしその父は自分と母親を捨て、銀座ゲイバー「卑弥呼」を切り持った男であった。「何で?」という彼女であった。でもお金に困っていた。結局日当3万の日給をちらつかされ、海辺の老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」の門をくぐる。そこには想像を絶する個性的な住人ばかりが暮らしていた

彼女は住人の個性の強さに驚いた。生まれ変わったらバレリーナと相撲部屋の女将になることを夢見る陽気な老人ニューハーフ・ルビイ、洋裁が上手く女性的で心優しい男、元・小学校の教員で今は将棋が趣味の男、ホームのパトロンの元・部下で、家庭菜園に精を出す男、ギターがうまく背中には鮮やかな刺青を入れている男、ゲイバー「卑弥呼」の元・従業員などなど。実の父・卑弥呼は娘との予期せぬ再会に戸惑った。日曜日ごとにホームに出向いた。最初は距離を保っていた。しかし、その裏側に隠された孤独や悩みを知るようになるが。。。。


映画「八日目の蝉」に個性の強い写真館の主が出てくる。映画館で一瞬誰かと気付かなかった。名優田中泯である。そもそもは舞踏家で映画に初めて出たのが「たそがれ清兵衛」である。主演の真田が最後に対決する剣の達人を演じた。まさに凄味を感じさせる演技であった。「メゾンドヒミコ」ではそれとは真逆の「ゲイバー」の元ママ役である。これがまた似合っている。銀座のママというのは独特の貫禄があるものである。そういう雰囲気を醸し出す。なんてうまいんだろうか。田中泯をみるだけでも価値のある映画ばかりだ。


あとの脇役たちで目立ったのはニューハーフ・ルビイである。歌澤寅右衛門という老人俳優が演じる。抜群にうまい。底抜けの明るさに圧倒される。柳沢慎一も久しぶりに見た。40年代くらいまでは良くテレビに出ていたものだ。元教員という役が板にはまっている。そんな連中の中で柴咲コウはスッピンで演じる。みんなに「ブス」なんて言われたことないと思われる彼女が、いかにも色あせた事務員を演じる。OLではない。いわゆる事務員だ。意地っ張りなところがいじらしい。もしかして彼女のベストかもしれない。


そんな連中と横浜のクラブに出かけた時の映像はこの映画の一つのヤマであろう。ダンスホールというべきであろうか?独特のステップに合わせて昔の歌を男女入り混じって踊る。「星降る街角」「また逢う日まで」をいかにも楽しそうに踊る姿は、見ている自分の気持ちも高揚させる。軽快に踊るバックの人たちもいい。オダギリジョーとコスプレの柴咲コウの二人も本当に楽しそうにステップを踏んで踊る。いいシーンだ。

そういう中盤を経て、終盤にしんみりと持っていくところは映画づくりのうまさを感じた。それを支える細野晴臣の音楽もシーサイドのロケーションにもあい素晴らしかった。
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ゴールデンスランバー  

2011-05-23 04:38:43 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
「ゴールデンスランバー」は仙台が舞台だけにちょっとアップしづらかった作品だ。
伊坂幸太郎は東北大出身だけに地の利のある仙台が好きだ。ここでも市内を縦横無尽に主人公を走らせる。他の地に行かないところがミソかもしれない。ほのぼのとした逃走劇でまとまっていると思う。予想よりは良かった。


仙台市内、宅配便ドライバーの主人公こと堺雅人は、大学の旧友こと吉岡秀隆と久々の再会を果たしていた。二人で釣りに行くという話であった。車に乗ると、吉岡の様子がおかしい。彼は言う「妻が浪費かで借金を作ってしまった。それを帳消しにするために依頼を受けた。それはここに君を連れてくることだ」

その時仙台の大通りを首相が凱旋パレード中、突如ラジコンヘリ爆弾が直撃して爆破される。吉岡は「お前はJFK事件のオズワルドのようなものだ。首相暗殺犯に仕立てられるぞ」と主人公に訴える。突然警官が現れ、拳銃を構えた。「逃げろ」と言われてあわてて飛び出す主人公。その直後、吉岡の乗っていた車が爆破される。吉岡の遺言の言うまま、意味がわからないままひたすら走る。
世間では、暗殺現場にいたことを証言する目撃者や、ラジコン店に主人公が居る証拠映像などが次々現れ、身に覚えのない証拠とともに見えない力によって無実の暗殺犯に仕立てられていくが。。。。

予想もしない事件にはめられ、犯人でもないのに逃げ回るパターンはヒッチコック映画によくあるパターンだ。この映画が他と違うのは、真犯人の姿がなかなか見えないこと。通常であれば、真犯人は誰かと追い求めていくパターンが多いが少し違う。あくまで政治の抗争の中で、影の大物が関わっているということにしたかったのであろうか?


超スピード感があるというわけではない。大学の同窓ということで竹内結子や劇団ひとりなどを登場させる。花火のからんだ回想場面も悪くない。主人公がアイドルの女の子を救ったことがあると逸話の混ぜ方もうまい。一つ一つの逸話をうまく一本にまとめていくという感じだ。
俳優的には伊坂作品に以前出た濱田岳がいい味出していた。主人公が窮地になった時、なぜか現れる彼の存在が映画を面白くしている。わざとらしさもなく好感が持てた。永島敏行が銃を持って主人公を追う姿は妙な感じがした。不気味さを出すためかセリフがない。悪役変身も悪くはない。



ビートルズの「ゴールデンスランバー」は想い出深い。「アビーロード」のB面はビートルズのアルバムでもベストだという人もいる。実質的には最終の収録である。ジャケットの4人が横断歩道を歩く姿が印象的、当時メンバーの死亡説がマジに語られた。「ポリシーンパン」からジョンが次は頼むぞとばかり最後の友情の声をかけスタートするポールの「シーケイムインスルーザバスルームウインドウ」への軽快な歴史的メドレーが終わった後、ポールのピアノが流れながらしんみりと奏でる。短い曲ながらビートルズの終わりを告げるような名曲である。
伊坂幸太郎もいい曲選んだものだ。「ソーシャルネットワーク」で最後にビートルズ「ベイビーユアリッチマン」が流れた時も興奮した。同じような衝撃だ。

映画に「必殺技」と称して柔道の大外刈りが出てくる。これもあれっと思った。主人公が以前アイドルを救ったときに、使った裏技の設定である。
これには一言言いたい。右技同士が技をかけあうときはそう簡単には大外刈りは決まらない。力の差がないときつい。なぜなら右利きと同時に右足の方がきき足で強いということがあるからだ。

でも実は高校時代自分の必殺技として相手の左足めがけて入る大外刈りを覚えていったものだ。黒帯をとってまもなく背負い投げに行き詰まりどうしようかというときに覚えた。右足と違って左足に一瞬のすきをついてはいる技が割と決まる。30代に高校のOB会で現役に対して華麗に決まったこともある。設定にもう一工夫あるともっと感激したかも。

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サマーウォーズ

2011-05-11 08:02:39 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
「サマーウォーズ」は細田守監督が描くオリジナル長編アニメーション映画だ。数学が得意だが気弱な高校2年生の健二は、憧れの先輩・夏希に頼まれ、彼女の実家で夏希のフィアンセとして過ごすことになる。健二はネット上の仮想空間OZで起きた事件に巻き込まれ、その影響が現実世界にも波及するという話だ。仮想空間とは正反対の長野県上田市の田舎を舞台にして人情とハイテクの両面を描くアニメだ。


東京の高校2年生である主人公小磯健二は、数学が得意な高校生だ。しかし、数学オリンピック日本代表の座を取りそこないがっかりしていた。夏休みにふとしたきっかけから憧れの先輩、篠原夏希に誘われて長野県の上田市を訪ねた。向かっていた上田には夏希の曾祖母陣内栄がいた。陣内家は室町時代から続く旧家で、栄の90歳の誕生日を祝うため、各地から多彩な親戚が集まってくる。そこで健二は突然、夏希から将来のフィアンセを装うよう頼まれる。健二は困惑しながらも栄のために4日間の滞在をすることになった。



その夜、不審な数学クイズのメールを受け取った健二は、数学好きの虫が疼きだし夜を徹して解答する。翌朝、仮想都市OZに出現した謎のアバター“ラブマシーン”は、完全無欠と思われていたOZ管理棟のパスワードを入手する。健二を始めとする多くのアバターにクイズ形式で解析させていたのだ。OZの心臓部に侵入したラブマシーンは4億人以上のアカウントを奪取、現実の世界を一変させてしまう。緊急通報システムと交通管理システムを麻痺させ、警察や消防署、病院は機能しなくなり、大混乱に陥っていったが。。。。


都市部の風景だけを映すだけのではなく、田園地帯を臨む上田を舞台にしたところがこの映画の成功したところであろう。オタク達だけが登場しての仮想空間での争いという一面では見るものも疲れてしまう。誰もが夏休みにはのどかな田舎で過ごしたいものである。なぜ上田?と一瞬思ってしまうが、真田幸村の反目の戦いという歴史的ルーツを引っかけた部分もあるのであろう。

大学の時、合宿はいつも長野の高原地帯でやっていた。その途中で先輩の出身地である上田にも寄ったことがある。最近は変わったかもしれないが、典型的な田舎だった。
劇中、親戚の一人に上田高校野球部員がいて、高校野球の長野大会をテレビで映し出す場面が出てくる。こういう時は、架空の高校名を出すのが一般的であるが、上田高校、松商学園とリアルな名前をだす。なぜか自分の人生の中で、不思議なくらい上田高校出身者に縁がある。高校の理科の教員が上田高校出身、大学のときにはクラブの1年、2年先輩、1年後輩にも上田高校出身者がいた。クラスメイトに1人いた。会社に入ってからも6年間世話になった支店長が上田高校出身、重要顧客にもいらっしゃった。みんなまじめな人たちだ。大学の時宴会芸で先輩たちが上田高校校歌を歌っていた。これが実にいい歌で、関係ない連中までこの歌を覚えてしまった。真田の戦いを連想させる格調高雅な歌だ。実は今でも僕はこの歌をそらで歌える。奇妙な話だ。自分の出身校以外でさびだけでなく歌詞まで正確に歌えるのはこの歌だけだ。そんなこともあり、この映画に妙に親近感があった。

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KT  金大中事件

2011-05-05 06:55:35 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
73年の金大中事件を題材にした日韓合作の映画作品だ。KTとは金大中のイニシャルだ。
歴史上の事件を再現したので、リアル感はある。当時の時代設定もまあまあよくできていた。けれど佐藤浩市のような存在本当にいたのかなあ。


1971年に行われた韓国大統領選挙で朴正熙の三選が決まった。敗れた野党候補の金大中が予想を上回る得票を得た。朴正熙大統領は金大中をはじめとした反対勢力の存在を疎んじて戒厳令を出し、朴政権に反するものを弾圧した。金大中は日本とアメリカを行き来して亡命を続けて、反朴政権の民主運動を続けている。追われる金大中と追う当局の戦いがはじまっていた。
73年6月、自衛隊のキャリアである主人公こと佐藤浩市は、旧陸軍士官学校に所属した朴とのつながりを持つ上層部からの命令で民間興信所の所長となり、ある任務を受けた。それは、KCIA(韓国中央情報部)による金大中の捜索であった。駐日韓国大使館一等書記官・金東雲らが強くかかわっていた。金らは本国から特命を受けていた。
名付けてKT作戦。しかし、内部の密通者に偽の情報を掴まされてしまうこともあった。
そんな中、佐藤浩市は金大中の取材に成功していた夕刊トーキョーの記者こと原田芳雄に接近し、遂に金大中が8月9日に自民党で講演を行うとの情報を入手。報を受けた金東雲は、それを機に作戦を実行しようとする。ところが、その計画が漏洩し、記者原田芳雄を通して週刊誌にスクープされた。この事態に、KCIAは金大中が8月8日に日本滞在中の民主統一党党首・梁宇東をホテルに訪ねる機会を狙って、強行手段に打って出ることになった。。。


子供のころ、金大中事件は新聞で繰り返し報道されていた。
当時、父親がよく韓国に遊びに行っていた。息子の自分は詳細はよくわからないが、戒厳令になって夜間外出禁止令が出ていたので楽しい思いをしたのであろう??身近な気がした。
現在のインターネット社会だったらこういう事件も起きなかったであろう。なんせKCIAという存在は、すべての日本人にとって脅威の存在だった。日本のホテルから行方不明になって、突如として韓国では発見なんて話はいかにもスパイ映画のようで、そういうことが本当に起こるのかという思いをみな思った。ものすごく怖い存在に韓国の人間が見えたものである。
当時金大中氏がインタビューに答えて流暢な日本語を話していた記憶がある。この映画で金大中に扮する韓国人俳優が話す日本語とは比べ物にならない本物だった。大統領になったあとは、立場上日本語をオフィシャルな場面では使わなかっただろうけど、戦前日本語教育が韓国できっちりされていたことが印象深かった。そういえば朴正熙も日本語がうまかったらしいなあ。映画「大統領の理髪師」で朴大統領が日本語を話す場面を思い出した。不思議な感じだ。



当然歴史上の史実に基づいたとは思うが、この事件に絡んだとされる佐藤浩市扮する自衛官の存在には驚いた。戦前の旧日本陸軍士官学校に朴大統領が所属していたこと自体は、あまりにも有名である。そのつながりで自衛隊の一人の幹部がこのような任務をせおったなんて話は当然当局は否定するだろう。凄い話である。でもこれに近い事実って本当なのかなあ?

映画の出来も悪くはない。阪本順治監督の作品にはずれはない。緊迫感が前半から続き、飽きがこなかった。ただ、「チェイサー」「殺人の記憶」といった出来のいい韓国映画と比較するとパンチがたりない印象もある。
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