映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ソウルの春」 ファン・ジョンミン&チョン・ウソン

2024-08-24 18:06:23 | 映画(韓国映画)
映画「ソウルの春」を映画館で観てきました。


映画「ソウルの春」朴大統領暗殺後に軍部主体の政権となるきっかけの粛軍クーデターという実話に基づく韓国映画だ。ソウルオリンピック前の韓国の重要場面の真相に迫る。キム・ソンス監督がスケールの大きい作品に取り組む。

当時KCIAによる金大中拉致事件以来日本では韓国に対して得体の知れない怖さをもつようになった。同時に全斗煥大統領(チョン・ドゥファン)による政権は軍部主体のイメージが強く、学生だった自分から見ても不気味な存在だった。映画でも全斗煥が鎮圧した光州事件など圧政が何度も取り上げられている。粛軍クーデターの真相を知るのは初めてで、隣国の歴史を知る意味でも価値のある作品だ。現代韓国史の重要場面を描いた作品はどれもこれもおもしろい

1979年10月26日、朴正熙大統領が自らの側近により暗殺された。世間では民主化を期待する一方で、陸軍では暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官(ファン・ジョンミン)を中心に粛清を図っていた。陸軍内の派閥“ハナ会”の将校と徒党を組んでいることを参謀総長チョンサンホ(イ・ソンミン)はよく思っていない。東部の司令官に左遷する噂も立っていることに反発してチョンはクーデターの策略を練る。


1979年12月12日、ノ・テゴン(パク・へジュン)らのハナ会の仲間と念入りにつくったシナリオに基づき首都ソウルでクーデターを決行する。まずは参謀総長が逮捕拉致される。一方で、参謀総長の推挙で首都警備司令官に昇進したイ・テシン(チョン・ウソン)は途中でクーデターを察知して司令部に戻り指揮を取る。前線の軍隊がソウル市内に入るのを食い止めるべく各方面に指示する。 

電圧の高い映画で、ビリビリとした体感を感じたままラストまで緊張感を保つ。
現代韓国史の真相に迫る実録モノ映画が次々公開されている。いずれも傑作だ。しがらみでつくれない日本と違うところだ。全斗煥がその後大統領になることは既知の事実である。結末がわかっていてもこの映画がおもしろいのは、クーデターに成功するまでの過程がすんなり行かないからだ。韓国で大ヒットしたのは、この歴史上の事実と同世代に生きた人たちが大勢存命だからだろう。現在のようにハングル文字ばかりの表記でなく漢字表記もまだ残っている時代だ。

TVや新聞に映るクーデターシーンは街の中を軍部の戦車が占拠する完成形だ。結末はわかっても、軍事クーデターってどのように進んでいくのか?われわれは知らない。もともとは軍部を統括する既存勢力による支配をよく思っていない連中による暴力的な反発だ。画面分割の手法を多用して、同時進行している動きを緊迫感あるように見せてくれる。

戦前の日本には五一五、ニニ六と若手将校による政界の大物を殺害するクーデターがあったが、戦後はない。映画には複雑な人間関係と軍部内の上下関係が根底に流れる。詳細をいろんなシーンで見せてくれる。

⒈ハナ会(ハナファ)と全斗煥
ハナ会はセリフにも次から次へと出てくる組織名だ。陸軍士官学校OBによる私的組織で、朴正熙大統領時代から存在した。司令部や前線の各部隊の要職にハナ会のメンバーがいて、全斗煥が彼らと組んで参謀総長率いる既存勢力から権力奪還を目論んだのだ。結局、クーデターで軍部内での権力を握った後はハナ会メンバーで要職を固めたという。


⒉大統領閣下
この映画を観るまで、朴大統領の後の大統領は全斗煥だと思い込んでいた。任期が短い崔圭夏大統領という存在を知らなかった。1979年に朴大統領が暗殺される前の1975年に首相となり、暗殺後大統領代行を経て12月6日に大統領に就任している。このクーデターのすぐ前だ。全斗煥が参謀総長も朴大統領暗殺時に犯人のそばにいたので逮捕する許認可を得るためにクーデターの間何度も大統領の元へ行く。この映画では何度もそのシーンがある。崔圭夏は当然許諾しない。全斗煥はクーデターを成功させ、国防大臣を味方に入れて追認を許容させる。

⒊ファンジョンミン
ハゲのカツラをかぶっていつもながらの派手なパフォーマンスだ。たまたまNetflixで最新作「クロスミッション」を見たばかりだ。アクの強い役柄が得意で正義の味方というより悪の親玉のキャラクターが似合う。全斗煥はこのクーデターで軍部内の権力を奪いとり、最終的には翌年大統領となって独裁者となる。どう見ても、正統なやり方ではない。そこには激しい銃撃戦も絡むし、死亡者も多数でている。前線軍の出動もある。ここまでアクの強い役柄ができるのはファンジョンミン「人には強いものに導かれたい願望がある」と自分の周囲に取り込むチョンを演じる。


⒋チョン・ウソン
クーデターから既存勢力を守る首都警備司令官だ。イ・テシンはこの要職に就きたかった訳ではない。参謀総長からの要請を自分がその器でないと何度も断るシーンがある。ただ、いざ役職につくならしっかりやると映画の中でも要の活躍だ。結果はわかっていても次々とクーデターの勢力に対抗する手段を探るディテールが興味深い。この映画は実在人物の名前をかえている。イ・テシンにも張泰玩(チャン・テワン)というモデルがいる。Wikipediaによると、クーデターで完全に失脚した訳ではなく、その後会社の社長や国会議員にもなったと聞くと意外に思った。


イ・ジョンジェと組んだ「ハント」でも全斗煥大統領の警護活動をする役柄だった。「アシュラ」でも悪徳市長の手下になる役柄でファンジョンミンと共演している。破茶滅茶な殺し合いになった葬儀のシーンが脳裏に残る。女の復讐を描いた「愛のタリオ」は韓国らしいドロドロとした映画で、エロチックなシーンも多いけどチョンウソンが登場する。おもしろい映画だ。もともとは普通の二枚目俳優だったけど、役柄は広がった。
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映画「美食家ダリのレストラン」

2024-08-22 19:58:10 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「美食家ダリのレストラン」を映画館で観てきました。


映画「美食家ダリのレストラン」はスペイン映画。独裁政権に反発してバルセロナを追われたシェフが海辺の街カダケスのレストランで働く話だ。オーナーはカダケスに住む芸術家サルバトール・ダリの狂信的なファンだ。予告編で観るおいしそうな料理に魅かれる。監督はダリのドキュメンタリーを3作撮っているダビッド・プジョルである。セリフの中にダリの功績を織り交ぜる。

1974年、フランコ政権末期のスペイン。バルセロナを追われた料理人フェルナンド(イバン・マサゲ)とアルベルト(ポル・ロペス)の兄弟は、友人フランソワのツテでサルバドール・ダリの住んている海辺の街カダケスに辿り着く。彼らを迎えたのは魅力的な海洋生物学者のロラ(クララ・ポンソ)、そしてその父はダリを崇拝するレストラン「シュルレアル」のオーナーであるジュールズ(ジョゼ・ガルシア)だった。

オーナーは「いつかダリに当店でディナーを」をスローガンに、ダリの家族や運転手にアプローチを重ねるが、こちらに気持ちが傾むいてくれない。(作品情報引用)


海辺のレストランを舞台にしたなじみやすいスパニッシュコメディだ。
スペインの海辺の町カダケスが魅力的である。大画面に映る水のウェイトが多い海上や海辺のシーンが昼夜とも海にいる体感をもたせてくれる素敵な映像だ。料理人がつくる料理も視覚的に美しく、色あい鮮やかに食欲を誘う。ストーリーは別として映像を楽しむために観ておきたい。一生行くことないだろうカダケスの町は観ておく価値がある。


独裁者フランコが亡くなる1年前の設定だ。政府への反発を示すバルセロナのシーンはわずかで、ほとんどがカダケスでのロケシーンだ。警察との対立の場面はわずかだ。警察も賄賂で動くひと時代前の田舎警察だ。

無口な料理人フェルナンドが腕利きで主人公とも言えるが、実際にはレストランのオーナーのジュールズ個性的でセリフもいちばん多い。おっちょこちょいとも言える行動が常に笑いを誘う。コメディアン的存在がいい。
ダリへの思いが強く、レストランの客席にはダリ独特のデザインのオブジェなどが置いてある。料理を持ってダリにレストランに来て欲しいとアピールするが、大金を出せとダリの妻に断られていた。有力料理批評家がレストランで食べたフェルナンドの料理を絶賛する。ところが、ダリに関する悪口を批評家が言うと、ジュールズが怒って店から追い出してしまう。ロックも好きでエピソードが絶えない。


シェフフェルナンドはスペイン人にしては謙虚だ。余計なことは言わない。もともと一流店のシェフだったのに、海辺のレストランで働く時も皿洗いなどの下働きでいいからと受諾する。下働きの時からつくる料理はみんなが絶賛する。基本的にはフランス料理だ。意匠的にもすばらしい。方々からうわさを聞いて食べに来る。地元の海産物を豪快に調理する屋台の影響も受ける。


ただ、フェルナンドと弟はバルセロナでの騒乱で警察に追われている。ビクビクしているのだ。レストランのオーナーがトラブルを知り、クビにしようとしてもブイヤベースを味わいやめる。


男性陣は野暮ったい連中だらけだが、女性陣は美女だらけ。恋物語も用意されている。レストランオーナーの娘クララ・ポンソが魅力的だ。最近屁理屈ばかりで気前のよくない日本映画と違い、しっかりバストトップも見せてくれてうれしい。クリミア半島出身というロシア美人も弟の方と恋仲になる。黄色のワンピースが似合う。夏に観るのがもってこいの作品だ。

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映画「そして僕は途方に暮れる」 藤ヶ谷太輔

2024-08-21 17:17:27 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「そして僕は途方に暮れる」は2023年公開の藤ヶ谷太輔主演のドラマ映画。監督は三浦大輔だ。フリーターの若者が同棲相手とのケンカの後飛び出して、友人や先輩などの家に居候しては飛び出す話だ。公開した時この映画の主人公が滅多にいないだらしのない奴とのコメントを読んで、観るのをやめた作品だ。


Netflixのラインナップに入って何気なく作品紹介を観てこの主人公と自分にある共通点があるのに気づく。ちょっと観てやろうかと思った作品だ。豊川悦司、前田敦子、原田美枝子と脇役はそれなりに揃っている。

フリーターの菅原裕一(藤ヶ谷太輔)は、長年同棲している恋人の里美(前田敦子)に合コンで知り合った女とのLINEのやり取りを見られてしまう。言い合いになり、家を飛び出してしまう。その夜から、同郷の友人、バイト先の先輩や後輩、姉のもとを渡り歩く。

どこへ行っても、ちょっとしたことでキレて飛び出していく繰り返しだ。仕方なく母(原田美枝子)が1人で暮らす北海道苫小牧の実家へ向かう。歓待されるが新興宗教にハマる母にあきれて飛び出す。1人になった裕一が偶然家を飛び出した父(豊川悦司)と久々に再会して誘われて父の家に居候することになる。

いかにもダメ男の物語。同情する要素はあまりない。
でも、登場人物のキャラクターの特徴をうまくつかんでいて割とあきずに観れた。
東京の片隅で暮らす若者と田舎暮らしの老人両方をそれぞれ追っていく。どちらも現実離れはしていない。大きな工場の煙突が目立つ苫小牧の寂れた感がいい。

⒈藤ヶ谷太輔(主人公 裕一)
居酒屋のバイトで暮らすフリーターで恋人名義のアパートで同棲する普通の若者。先輩の紹介の女の子とLINEのやり取りがバレて大目玉をくらって、キレてしまう。そして、一人暮らしの同郷の友人宅に居候させてもらった後も次々と住まいを変える

どこへ行っても、ちょっとしたことでキレる。まったく普通の若者なんだけど、自分のだらしなさを指摘されるとムカついてしまうのだ。荷物をまとめて飛び出してしまう。就職氷河期における非正規雇用の増加で、こんな奴が増えたのかもしれない。人手不足による労働需給の改善で仕事もある現状だけど、正規雇用の安定性とは無縁の若者は今もいる。藤ヶ谷太輔は現代の若者らしく演じる。


⒉原田美枝子(母)
夫が家を飛び出し息子と娘両方とも東京に行ってしまったので苫小牧で一人暮らしだ。クリーニング屋で働いている。冬の北海道は寒い。しかも、リウマチで足が悪い。息子のことを心配してたまに電話する。息子はでない。ところが、息子が実家に帰ってくるとわかるとうれしくて仕方ない。裕一くんは何食べたいと言ってやさしい。姉の話だと、息子はこれまで母親にカネの無尽をしてきたようだ。

そのまま居てもよかったのだろうが、母親はある新興宗教にハマっている。おそらく息子も心の痛手を持って実家に帰ってきたのかと思いあなたも楽になるよと入信を勧める。ありがちな話だ。ヤバイと思って息子は寒い北海道の夜に飛び出す。

原田美枝子は母親役で時おり映画で見かける。認知症の母親を演じた「百花」はよかった。「ぼくたちの家族」でも認知症の母親を演じている。温厚な母親だ。自分と同世代なので、どうしても若い頃のボリューム感あふれるヌードを思い出す。


⒊豊川悦司(父)
妻と別れて一人暮らし。朝から晩までパチンコ三昧で気楽に暮らす。以前カネを借りた人をパチンコ屋で見かけると逃げるように店を出る。偶然あった息子を家に引き込み説教するが、堕落した生活から抜け出す気はまったくない。でも、息子に「電話をすると何かが変わる」と、同棲していた彼女への電話をさせる。確かに変化が生まれる。このいい加減なオヤジとの出会いが何かを変える。この辺りが映画のキモかもしれない。


豊川悦司はいつもながらの長髪姿だ。毎日をパチンコ三昧で暮らす社会の底辺のお気楽男だ。「ラストレター」や「パラダイスネクスト」の役柄が近いかな。先日観たNetflixドラマ「地面師たち」でも同じ長髪だけど、セレブな香りがする。こんな感じで両刀遣いできる俳優も他にいない。昨年の「藤枝梅安」は抜群に良かったな。気がつくと、豊川悦司が出演する映画はほとんど観てしまっている。行きつけの新宿の飲み屋のママが大好きだからというわけではない。演じる役に一貫性がないのもいい。ここでは単なるグータラ男だけど存在感がある。
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映画「フォールガイ」 ライアン・ゴズリング&エミリーブラント

2024-08-17 20:22:34 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「フォールガイ」を映画館で観てきました。


映画「フォールガイ」はアクション映画が得意なデイヴィッドリーチ監督がライアン・ゴズリングをスタントマンにして送り出す新作だ。「フォールガイ」を映画では身代わりと訳していた。監督は元スタントマンなので当人の気持ちはよくわかる。映画監督役でエミリー・ブラントを起用して、アクション中心の映画に軽いラブストーリーを織り交ぜる。いかにもアメリカ映画らしい雰囲気がして観てみたくなる。

腕利きスタントマンのコルト(ライアン・ゴズリング)はアクションスターのトム・ライダー(アーロン・テイラー=ジョンソン)の代役としての撮影中に高所から落下して大けがをしてしまう。1年半以上休んでいてメキシカンレストランでバイトをしてスタントとは遠ざかっている。

そんなコルトに映画プロデューサーのゲイル(ハンナワデンカム)から新作映画のスタントを受けて欲しいと声がかかる。恋人同士だったジョディ(エミリーブラント)の初監督作品ということで受ける。ロケ地のオーストラリアに行き久々にアクションシーンの撮影に加わる。そこでは主役のトムが姿を消していて、探すように依頼を受ける。


これは最高!アメリカ映画らしい痛快なアクションが楽しめる。
いきなりKISSの「ラヴィン・ユー・ベイビー」が流れてきて心がウキウキする。「トップガンマーヴェリック」でイントロの「デンジャーゾーン」を聴いた時と同じ胸騒ぎだ。スタントマンによる難易度の高い代役アクションシーンが次から次へと映りワクワクする。大部分のアクションは本人が演じているわけでないけど、ライアン・ゴズリング「千両役者!」と声をかけたくなる気分だ。エミリーブラントも暴漢に立ち向かって強さを見せる。

正直言って、ストーリーが凝っているわけでもない。若干の緩急はつけながらも、アクションのレベルが高いままに最終局面まで進む。アクションシーンを観て感じる肌感覚が快適だ。映画に携わっている映画人の会話なので名作と言われる旧作の固有名詞が次々と会話に混じるのもいい。まさに娯楽の境地で、俳優ストで新作ハリウッド映画の製作が減ったあとでこういうアメリカ映画が観たかった

⒈スタントによるアクションシーン
ジョディがメガホンを持つ映画はSFラブストーリーだ。いきなりの海岸でのカーチェイスにコルトがスタントをする。コルトは当然自分が来るのをジョディがわかっていると思ったけど伝わっていない。いきなりクルマがド派手に数回転するシーンやコルトが火あぶりになるシーンが続く。難易度が高い。それをコルトがこなしたところでジョディがコルトの存在がわかる。


その後も、シドニー海岸のペントハウスでの日本刀を持った女との格闘シーンや吹抜けの転落シーン火あぶりの船のチェイス、空飛ぶクルマはちゃんと着地するのかヒヤヒヤするし、ヘリコプターにぶら下がったりするシーンなど盛りだくさんだ。手を変え品を変えているので、アクションシーンが多すぎで消化不良になることもない。


⒉KISSとフィルコリンズ
KISSの「I was made for loving you」でウキウキするのも、自分が大学生時代の曲でディスコでもかかるような曲だったからだ。サラリーマン生活に入った後も、2次会でみんなはしゃいで大騒ぎの時に盛り上がる曲だった。アレンジを変え何度も流れる。ロック中心の選曲はこの映画のリズムによくあっている。テイラースウィフトの曲にライアン・ゴズリングが涙するシーンもある。

その後でエミリーブラントのカラオケシーンが映る。選曲はなんとフィルコリンズの「against all odds(Take A Look At Me Now)」だ。自分が大好きな映画「カリブの熱い夜」の主題歌で全米ヒットチャートNo.1だ。映画ではエンディングロールで流れる。エミリーブラントの歌は決してうまいとは言えないが、思わず感動。並行してライアン・ゴズリングの強烈なカーチェイスシーンが流れるので印象的だ。


⒊シドニーロケとカメラワーク
空からの俯瞰映像もあり途中でシドニーロケだと気づくが、オペラハウスを遠くから望むシーンはあっても間近で映すシーンは少ない。シドニー湾やハーバーブリッジでもアクションが繰り広げられる。合成映像もあるだろうけど、自国映画でなくここまでシドニーの街並みを観ることはない。

この映画ではカメラワークが序盤から冴えている。カネがかかっているアクションを大画面で観ると迫力がある。監督として拡声器で演技指導するエミリーブラントを周囲から回転させながら捉えるショットがいい感じだ。画面分割を巧みに利用してライアン・ゴズリングとエミリーブラントを対比して映すシーンもよく見える。


ライアン・ゴズリングが危うく殺人犯になってしまうシーンがある。実際の防犯カメラの映像を顔をすり替えるのだ。こんなことあるとヤバイなと感じた。結局陰謀だった。もっともその陰謀があるおかげで次から次へ楽しめたのだ。よかった。

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Netflix映画「クロスミッション」 ファンジョンミン

2024-08-16 18:02:25 | 映画(韓国映画)
Netflix映画「クロスミッション」を観ました。


Netflix映画「クロスミッション」は韓国の人気俳優ファン・ジョンミンが主演。Netflixのホームを探っていると韓国大物俳優が気になってしまう。やり手刑事の夫として主夫をしているファンジョンミンに妻に隠す特殊工作員としての過去があり、事件に巻き込まれるという話だ。

ファンジョンミンはこのブログでも何回も登場している韓国クライムサスペンスには欠かせない存在だ。泥くさいプロフィールが得意で善悪両刀使いだ。ソル・ギョング、イ・ジョンジェをはじめとしてスター級俳優がNetflixに登場するが、ファンジョンミンの映画は初めてか?興味深いので観てみると一気に観てしまう。

女性刑事のカンミソン(ヨムジョンア)は男刑事たちを従えて難事件を解決する格闘能力もあるやり手だ。家では激務のミソンに代わって主夫のパクガンム(ファンジョンミン)が家事を任されている。

夫のガンムが街に出た時、女性が暴行を受けている場面に出くわす。とっさに助けると旧知のヒジョン(チョンへジン)だった。ガンムは元特殊工作員でヒジュンと一緒に任務に加わっていた。特殊部隊にいたことは妻のミソンには言っていない

2人が一緒にいるところをたまたまミソンの警察の仲間が見つける。報告を受けたチーム長(チョンマンシク)が浮気ではないかと気にしていることがミソンにバレて、ミソンもガンムを密かに尾行する。ガンムはヒジュンの夫が行方がわからないことに犯罪組織が絡んでいると読んで足を突っ込む。

軽めの韓国クライムサスペンスが軽快だ
Netflix映画なのでカネがかかっていてメジャー俳優も揃えられる。コメディタッチな部分もあり、あきずに楽しめる。暇つぶしの娯楽にはいい感じだ。
作品情報を読み込んでいなかったので、ヘラヘラした主夫のファンジョンミンに驚く。男まさりの刑事の妻を支える役だ。いつもとファンジョンミンのイメージと違い、これは普通のドラマかと一瞬思ってしまう。すると、ファンジョンミンらしいアクションが飛び出す。ここでは刑事である妻の格闘シーンも多くW主演に近い存在感を見せる。

⒈ファン・ジョンミン
韓国一級のクライムサスペンスではファンジョンミンの個性が生きる。自分がブログで取り上げた作品でもさまざまな役をこなす。「新しき世界」では華僑犯罪組織の親分、「コクソン」では祈祷師、「アシュラ」では利権をむさぼる市長、「ただ悪より救いたまえ」では引退寸前の殺し屋などでファンジョンミンらしいアクの強さを見せる。「工作 黒金星」ではテイストが違うけど今回と同じ特殊工作員だった。それなのにどうしたんだろうと最初は思う。でも違った。

その昔は特殊工作員で今は違うという設定はリーアムニーソンやデンゼルワシントンが得意とする役柄だ。身内を助けるパターンが多いけど、ここでは刑事である奥様を助けるというか共闘する。過去の映画で見せた破茶滅茶ぶりがここでも発揮される。近日公開の次回作では全斗煥大統領を演じるらしい。楽しみだ。


⒉ヨムジョンアとおなじみの脇役たち
ヨムジョンアが大活躍だ。機関銃をぶっ放す。格闘シーンも多いし、犯人検挙後の打ち上げで酔いつぶれるシーンもある。近作「密輸1970」でも登場して、海女さんのリーダー役を演じる。この映画ではキムヘスが破茶滅茶なキャラだったのに対してまともな海女さんだ。あの映画からはこんなアクションができるようには見えない。ちょっと広末涼子に似ているなと思っていた。

韓国映画を観ていると、こいつお馴染みの顔だなあというのがいつも数人いる。今回は警察のチーム長のチョンマンシクだ。日本公開分だけでも8作を観ている。コミカルなテイストがあるので起用しやすいのであろう。ファンジョンミンとの浮気を疑われるチョンヘジンの途中からの変貌も見ものだ。彼女もいろんな作品で出会う。ふと気がついたのだが、ヨムジョンアもチョンヘジン身長170cm以上ある。韓国人女優は皆長身だ。モデル出身なんだろうか?


⒊バキュームカーでの突撃とカーチェイス
この映画での陰謀は軍の機密費に関わるものだ。行方不明の元同僚の行方を探るために、偽の通行証をつくってバキュームカーでファンジョンミン演じるガンムが軍の施設に入り込む。下水道の完備で最近日本ではバキュームカーを見なくなったので若い人わかるかなあ。

軍の施設から逃走している時に背後から追いかけられる。バキュームカーのホースで後続車を交わすのは最高。というか笑える。そこでのカーチェイスが見ものだ。一般道でこんなクルマのロケができる映画への寛容性韓国社会にあるのかなと感じる。
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映画「幸せのイタリアーノ」 ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ&ミリアム・レオーネ

2024-08-14 18:29:40 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「幸せのイタリアーノ」を映画館で観てきました。


映画「幸せのイタリアーノ」はイタリア版ラブコメディ映画。独身でリッチな49歳のプレイボーイが足に障がいをもつ美女に惚れてしまう話である。予告編でだいたいのストーリーの予測がたってしまう映画だけど、イタリア特有のゴージャスな雰囲気が味わえればと映画館に向かう。

スポーツシューズ会社の社長ジャンニ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)は女性には目のない49歳独身貴族。亡くなった母親のアパートに荷物整理に来て母の車いすに座っていると、隣に越してきた美女が挨拶にやってきた。ジャンニと親しくなった彼女は、実家で下半身不随となった姉キアラ(ミリアム・レオーネ)に引き合わせる。ジャンニはあえて歩けることは言わずに車いす生活を続けていく。徐々に関係が深まっていくが、真実を言い出せずにいた。


イタリア映画らしい明るく笑えるラブコメディだ。
こんな感じになるだろうなと想像でき、ストーリーに目新しさはない。美男美女が登場してイタリアの歴史を感じさせる背景を見るだけで単純に楽しめる。


予告編でお相手役の女性の美貌に目を奪われる。ミリアムレオーネは元ミスイタリアというだけあってものすごい美女だ。妹役のピラル・フォリアーティも負けずに美しい。ここまでは普通美女が揃わない。主人公のピエルフランチェスコ・ファヴィーノはイタリア映画ではおなじみだ。今回はいかにもイタリア風軟派系だけど、マフィア映画の強面の演技も得意だ。

イタリアらしいシャープな設計の建物やインテリアデザインが楽しめて目の保養になる。ゴージャスでゆったりした間取りの主人公の自宅はミケランジェロアントニオーニの「夜」の豪邸を思い出す。ヴィジュアル面では最高だ。ジャンニは赤いフェラーリを乗り回し、次から次へと美女をものにするプレイボーイだ。スポーツシューズメーカーのワンマン社長で、会社では周囲の発言が自分の流儀に合わないとクビにしてしまう独裁者だ。二卵性双生児の全く似ていない兄弟がいる。会社の外に出ると遊び放題で軟派系のキャラクターがお似合いだ。


脇役もうまく適切に配置する。ジャンニの女性秘書は昼間社長の面倒をみてテキパキと捌く一方で、夜になると、カラオケクイーンに変貌する。マドンナの「ライクアヴァージン」で脱ぎながら歌うのが笑いを誘う。キアラの実家にいる祖母が個性的で、毒のある言葉をジャンニに投げつける。妹に引き寄せられたジャンニが姉を紹介されたのを見てハメられたね。とジャンニにいう。

こういう2人が笑いを呼ぶだけでなく、ジョークが炸裂で十分に楽しめる。
お気楽でいい。
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映画「#スージー・サーチ」

2024-08-13 20:14:39 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「#スージーサーチ」を映画館で観てきました。


映画「#スージー・サーチ」ポッドキャストの配信をしているアメリカの女子大学生が主人公。未解決事件の推理が好きな女の子カーシークレモンズが演じる。ポップなアメリカンイメージの背景で現代っぽい展開を予告編で感じて選択する。自分はポッドキャストには縁がない方だ。ネットを駆使して謎解きをするイメージを持って観たが予想と違う展開に驚く

孤独な大学生のスージー(カーシークレモンズ)はポッドキャストで未解決事件の配信を続けるものの、中々フォロワーの増えない日々を送っていた。そんなある日、保安官事務所でのインターン中に、インフルエンサーとして絶大な人気を誇る同級生のジェシーが、行方不明になっていることを知る。

ジェシー失踪後1週間経ったころ、独自の調査でスージーは、ポッドキャストの配信中にジェシーを発見する。番組は大きな反響を呼び、一躍脚光を浴びる存在になる。一体スージーはどうやって居場所を見つけたのか?!バズるごとに熱気を帯びる期待と注目。そして誰もが羨む名声を手に入れたスージー。未だ捕まらぬ犯人を追い配信を続ける中、事態は思わぬ方向に転がっていく(作品情報引用)


結果的に自分にはあわない展開だった。
現代ポップ調の映像は悪くない。その映像に合わせて流れる音楽もピッタリあっている。ムードはいい感じだ。スージーは幼児の頃から母親からミステリーの読み聞かせを受けて育っている。ストーリーを少し読んだだけで犯人を当ててしまう能力を持っている。それがスージーにとっての取り柄だ。世間の未解決事件には関心を持っていて、ポッドキャストで次々と自分の推理を発信する。でもイイネがもらえない。ネット上で自己承認がされないストレスを持つ。


そのストレスのせいでよからぬことを考えるのだ。同居する母親は要介護で金がかかる。バイトをいくつもやっているが、それでは足りない。ポッドキャストによる反響でカネを稼ごうと考える。結局は単なる自己顕示欲の強い女子学生の物語に過ぎない。映画の宣伝部門は主人公の無謀な企みをうまく隠したものだ。

ただ、それだけではすまない。危ない世界に陥っていくのだ。もっとやりようがあるのにと思っても、フィクションの世界だ。ツッコミどころ満載の映画だ。なんでそうなるの?と思うことばかり。映画を観ていて、パトリシアハイスミス原作アランドロン「太陽がいっぱい」を連想してしまった。きっと何かバチを受けるだろうと思いつつ最終場面を迎える。たまにはハズレもあるだろう。
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映画「ブルーピリオド」眞栄田郷敦

2024-08-11 10:27:39 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「ブルーピリオド」を映画館で観てきました。


映画「ブルーピリオド」山口つばさの人気漫画の実写映画化作品だ。普通の高校生が200倍もの高倍率の東京藝術大学油絵科を目指す姿を描く。眞栄田郷敦が主人公矢口を演じる。一瞬ピンとこないが、千葉真一の次男だと気づく。予告編を何度も観ていたが、最初デカい文字で東京藝術大学と出てきて驚く。ドキュメンタリーかと一瞬思ったが東京芸大(以下簡略化する)を目指して奮闘努力する話のようだ。若い人が目標に向けて一意専心努力する話は好きで映画館に向かう。

高校2年生の矢口八虎(眞栄田郷敦)は仲間と酒を飲みながら夜更かしするのに成績は優秀な要領のいい高校生だ。母親(石田ひかり)からは家計がきびしいので国立大学に行ってくれと言われている。美術の佐伯先生(薬師丸ひろ子)から「自分の好きな風景」を課題に出されるが、ピンときていない。

そんなある時、美術教室で先輩の女子生徒が描く絵に目を奪われる。絵に関心を持ち、普段明け方までの夜遊びで見慣れた渋谷の朝を課題にして絵を描く。その後、関心が深まりロングヘアの同期鮎川(高橋文哉)が所属する美術部に入部する。年がら年中絵を描くようになり、美大志望を考える。家の家計を考え東京芸大の志望を考えるが実力は遠く及ばない。それでも、こっそり父親に頼み美大入試の予備校東京美術学院に入り、東京芸大受験を目指す。


若者が努力する姿は美しい。おもしろく観れた。
東京芸大が東大とは別の意味で超難関であることは誰もが認めている。「ドラゴン桜」とは違うおもしろみがある。既視感はない。原作者山口つばさ東京芸大出身の才女のようだ。単に取材だけでは描けない漫画だろう。主人公眞栄田郷敦と原作者の対談記事を映画を観た後に読んだが山口つばさは顔出ししていない。男と女と設定変わっているが、私小説的要素はあるだろう。本名は非公開のようだ。

これまでの自分の人生で東京芸大の美術系学科出身者には4人出会ったが、年上で同世代ではいない。出会った人たちが合格に向けてどんな努力をしたかは聞いていない。合格まで努力する話が新鮮だ。

主演の眞栄田郷敦がパワフルだ。父千葉真一も兄も格闘技系できっと本人も元来はアクション系だろう。映画を観て長身の江口のりこを見下ろすパターンは珍しいほど身体も大きい。東京リベンジャーズのような不良映画の方が得意なのかもしれない。でも巧みにこなした感じがする。意外に映画館には若者より自分の年齢に近いような熟年も目立ったが、薬師丸ひろ子と石田ひかりの登場には安心感を覚える。もちろん大ファンの江口のりこの美術予備校の教師もいい感じだ。

⒈高校生の渋谷での夜遊び
もともと主人公の矢口八虎は渋谷のスポーツバーで酒を飲みながら観戦して、その後始発までセンター街付近をウロウロする高校生として描かれる。自分も高校時代から文化祭や運動会の打ち上げで仲間と飲んでいたのでまったく抵抗がないOB含めた飲み会では宴会芸もやらされ飲まされた。この映画の高校生のように嘔吐する連中は自分も含めて多かった。

選挙権を18歳としたにも関わらず、飲酒は20歳のままにしているのは愚策と感じる。今回のオリンピックで体操の代表が飲酒と喫煙を理由に代表から外された。今の50代(40代?)から上は奇妙に思った人は多いだろう。自分たちはコンパなどで散々飲んだわけだから。ネット上などで議論されているが、結局は根本的に選挙権与えたのに飲酒が厳禁という矛盾かなと感じる。もっともこの映画は高校生の飲酒だけど。


⒉魅力的な薬師丸ひろ子
美術教師で生徒に対して気の利いたセリフを言う先生が出てきたなと思って、しばらくして薬師丸ひろ子と気づく。髪型がいつもと違い、これがまた魅力的な美術教師だ。萩原健太郎監督の年齢からすると、当然薬師丸ひろ子の全盛時は知らないはずだ。いい起用だと思う。

昔のながらの専業主婦的なお母さん役が多かった。新垣結衣「ハナミズキ」でも「三丁目の夕日」でも「あまちゃん」でもお母さんだ。今回のようなキャリアのある女性役は珍しい。別にファンというわけでもなかったのに、彼女が出てくると心ときめくのは同年代のよしみなのだろう。「セーラー服と機関銃」紅白歌合戦に出てきた時には涙が出た。


⒊高校の美術室と美術の予備校
高校時代、芸術科目は音楽選択だったので、石膏の像などがある美術教室は中学以来で記憶も薄くなっている。主人公は途中から美術部に入ってひたすら絵を描く。画面分割の手法で対比させる映像もいい。「オレは天才ではないので、天才と見分けがつかないくらい描いて」というセリフには予告編から惹かれる

原作者山口つばさも通っていたモデルになる美術の予備校があるようだ。友人と遊ぶシーンでは渋谷ロケだが、新宿ロケのシーンが増える。新宿に予備校があるのだろう。美大受験のためひたすら課題の絵を描く予備校教室という世界は自分が知らない。教師は江口のりこが演じる。親の収入が少なくて国立大学目指すというが、美術系予備校の学費は通常の文系理系よりはるかに高いだろうし、高くないと予備校は絶対もたないだろう。


4.東京芸大受験
エンディングロールでロケ地が気になっていた。さすがに東京芸大ではないようだ。多摩美や名古屋の芸術系の学校などが列挙されていた。スタッフのロケハンの苦労を感じる。

試験を受ける東京芸大入試の課題も容易ではない。数日間にわたる2次試験の課題の完成は精神的にも肉体的にも限界への挑戦だ。裸のモデルもずっとポーズをとるなら安いモデル料ではワリに合わない。過酷な試験というのは変わらないようです。音楽系は幼児の頃からすごい音楽の先生についてスパルタ教育が前提の世界だが、美術はどうなのかなあ?

ただ、この映画を観て違和感を感じたのは、共通のセンター試験に触れられていないこと。合格配点に共通試験が影響がないのか知識がないが、時間の関係で割愛したのか?と感じる。あとは、試験に受かったのはふり出しで大学入学したあとの方がもっと重要なのにと映画が終わった時感じた。実際には入学以降のことも漫画原作では続いているようなのでそれはそれでよかったと感じる。

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映画「ボレロ」 ラヴェル&ラファエル・ペルソナ

2024-08-10 09:21:14 | 映画(フランス映画 )
映画「ボレロ 永遠の旋律」を映画館で観てきました。


映画「ボレロ 永遠の旋律」は作曲家モーリス・ラヴェルの名曲「ボレロ」の誕生秘話を中心にラヴェルの人生に迫るフランス映画。監督は「ココシャネル」アンヌフォンテーヌ、ラヴェルを演じるのはアランドロン2世と言われたラファエル・ペルソナである。「ボレロ」の名前を知らない人でも、誰もがどこかで聴いたことがあるだろう。古くはホンダプレリュードのCMが有名だ。ラヴェル自身の経歴を知るのははじめてである。

1927年から28年にかけてのパリ、人気作曲家兼ピアニストとして名声を得ているモーリスラヴェル(ラファエルペルソナ)はスランプに陥っていた。評論家からの酷評に頭を悩ませていた。ラヴェルにバレエダンサーのイダ・ルビンシュタイン(ジャンヌ・バリバール)にバレエ音楽の依頼を受ける。別のピアノ曲「イベリア」を編曲して対応する予定がすでに別の編曲作品があり、自ら作曲することに方針変更する。


家政婦が好みの流行曲「バレンシア」をラヴェルがピアノで奏でた時に発想を得て「ボレロ」の主旋律を思いつく。1分間の主旋律を17分にわたり楽器を替えて繰り返して盛り上げる曲の構成を考えて完成させる。この曲の生むセクショナルな響きをバレエに表現したイダのバレエダンスを気に入っていなかったが、公演会場にいやいや向かう。

ボレロ以外にも奏でられるラヴェルの曲が心地よい。1920年代後半のパリの建物やインテリア、上流階級の衣装も美しい映像となって快適に映画を観ることができた。
居住していた実在の建物「モーリスラヴェル博物館」のロケもふんだんに多い。
海辺の別荘地で海岸を歩くシーンも優雅だ。
子供の頃から古典派のベートーヴェンやモーツァルトなどの人生は絵本で知っているし、20世紀のマーラーやラフマニノフも映画などで取り上げられて知っている。その一方でモーリスラヴェルの私生活については知らない。独身を通したラヴェルの人生を少しづつ追っていくのではない。ラヴェルが名曲「ボレロ」を作曲するきっかけから作品発表とそれ以降の経緯を1927年から1928年を中心にして、過去に時間を戻したり進めたりする。

傑作というような展開ではない。ちょっと間延びしすぎかな。フランス映画界で欠かせない存在になってきたラファエルペルソナは絶賛とまでいかないが好演だ。直近では「ジュリア」など自分のブログでも随分と取り上げている。3人の女性はいずれもオバサンでさほど魅力的でもない。でも、バレエダンサーのジャンヌ・バリバールに存在感を感じる。銀座高級クラブの年増マダムのような雰囲気だ。


⒈周囲の女性たちと娼館
映画が始まり、主な登場人物である3人の女性が出てくる。ラヴェルが独身であるということには触れずに映画が進み、この女性たちっていったいラヴェルにとってどういう存在なんだろうと考える。結局、3人がバレエダンサーとラヴェルに親しみを持つ人妻とピアニストだということがわかっていく。恋愛感情と友情の境目で長期間ラヴェルの近くにいる。

バイセクシャルの匂いは映画では出てこない。ラヴェルは男色家ではなさそうだ。エマストーン「哀れなるものたち」にも出てきたゴージャスなパリの娼館に行き、女性を指名するが何もしない。洋服も脱がさない。結局「不能」だったのか、大好きな母親のことが心に引っ掛かるマザコンだったのか真相はよめない。


⒉官能的なバレエシーン
いかにも1920年代のパリを思わせるファッションとメイクのバレエダンサーを映画に放つ。もともとはイダの依頼でつくった「ボレロ」だった。「ボレロ」を奏でるオーケストラを従えて、イダが踊るバレエはいかにも娼婦の振る舞いだ。ラヴェルはそれが気に入らず憤慨する。そんなエロティックイメージで作ったわけではないと。


結局、イダは「ボレロ」を使った創作バレエを発表する。バレエダンサーを演じるジャンヌ・バリバールがメインで男性バレエダンサーとともに官能的なバレエを披露する。圧巻だ。映画を観ていて得した気分になる。もちろん会場は大喝采で、いつもラヴェルをいじめる辛口評論家の評判もいい。バレエをよく思っていなかったラヴェルも機嫌が良くなる。映画の見どころだ。


⒊アメリカでのコンサート活動とジャズ
「ボレロ」が有名だけど、ラヴェルはピアノ曲として「亡き王女のためのパヴァーヌ」などのポピュラーな名曲も残している。バックグラウンドミュージックとしてどこかで聴いたことのある曲が多い。透明な肌あいの聴き心地の良いピアノ曲だ。

「ボレロ」を作る頃ピアニストとして渡米してコンサート活動を行っている。ジャズを聴いた方がいいといわれて、ニューヨークのジャズクラブに入るシーンがある。ニューヨークロケなのだろうか?暗い街路を歩くシーンがいい。そこでは黒人女性ボーカルがサックスをバックにジョージガーシュイン「私の彼氏(The man I love)」を歌う。ラヴェルも思わず気に入ってしまう。ジャズに関する評価も高いコメントをするようになる。1928年あたりでこんなモダンジャズ風に演奏していたのかと思うが、「私の彼氏」は1924年の作曲だった。

⒋認知症になってしまうラヴェル
1937年のシーンではラヴェルは記憶障害を起こしてしまっている。レコードで「ボレロ」を聴いても誰の歌だかわからない。ラヴェルは享年62歳だ。そんな若くして認知症になってしまうの?と思ってしまう。妄想で生きていく。
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映画「時々私は考える」 デイジーリドリー

2024-08-06 19:10:09 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「時々私は考える」を映画館で観てきました。


映画「時々私は考える」はアメリカの小さな港町が舞台のドラマ映画。人気若手スターのデイジーリドリーが主演。女性監督のレイチェル・ランバートがメガホンを持つ。他にはのれそうもない題材の映画が多く、その中からピックアップする。人付き合いも少ない孤独な女の子という設定に惹かれる。

人付き合いが苦手で不器用なフラン(デイジーリドリー)は、会社と自宅を往復するだけの静かで平凡な日々を送っている。友達も恋人もおらず、唯一の楽しみといえば空想にふけること。それもちょっと変わった幻想的な“死”の空想。そんな彼女の生活は、フレンドリーな新しい同僚ロバートとのささやかな交流をきっかけに、ゆっくりときらめき始める。デートを重ねる二人だが。。。(作品情報 引用)


居心地のいい映画だった。
やさしい感触をもつ。魅力的な主人公だ。
ロケーションがいい。海と橋が印象的な坂のある函館を連想する港町という印象を持った。実は海でなくコロンビア川でオレゴン州アストリアだそうだ。街の名前はでない。人口1万人だから確かに小さい。女性社長の小さな会社で働く。得意なのは表計算ソフト、変わらない毎日だ。

退職した女性の後に1人の男性が入社してくる。シアトルから来たようだ。事務用品の購入で質問してきたのをきっかけに付き合いが生まれる。映画に誘われてついていく。でも付き合いは得意ではない。徐々に接近していくがつい余計なことを言ってしまう。


こういう無器用な生き方をする女性が好きだ。恋愛経験はない。フランス映画の「アメリ」のようにいつも夢想している。そんな1人の内気な女の子に焦点を合わせる。女性向きの映画かもしれないが、男性の自分も親しみを覚える。徐々にそれまでの日常から変化が生まれる姿をやさしいまなざしで追う。後味は悪くない。
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