映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「リアルペイン」 ジェシーアイゼンバーグ&キーランカルキン

2025-02-04 21:22:52 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「リアルペイン」を映画館で観てきました。


映画「リアルペイン」ジェシーアイゼンバーグ自ら主演監督脚本を務める新作だ。ポーランドでナチス迫害の痕跡を辿るツアーに従兄弟と参加する数日間の体験を追っていく。ジェシーアイゼンバーグと言えば「ソーシャルネットワーク」でFacebookのマークザッカーバーグを演じた時の早口言葉が頭に刻み込まれている。正統派俳優とは違うキャリアを歩んでいる。ポーランドが舞台となると、第二次世界大戦中あるいは戦後を扱う作品が多い。なので現代ポーランドのことはよくわかっていない。多分一生行くことのないこの地をよく見てみたい気になる。

ニューヨークに妻子と暮らすデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)といとこのベンジー(キーラン・カルキン)は、亡くなった祖母の祖国ポーランド第2次世界大戦の史跡ツアーに参加する。ツアーには英国人のガイド。定年間もないアメリカ人夫婦に、離婚したばかりの女性。ルワンダで虐殺を経験してユダヤ教徒に改宗した男性が参加している。


変わり者のベンジーは自由奔放な発言と自分勝手な行動で周囲を惑わす。ワルシャワからナチスドイツに迫害された人々の旅路を体験するというツアーを巡りユダヤ人の収容所で絶句して祖母の住んでいた家まで訪れる。

短編小説のような味わいの映画で飛び抜けて何かあるわけではない。
欧州らしい街並みを観ているのは気分がいい。名所を闊歩する俳優たちも楽しそうだ。移動する列車から見た車窓の景色もよく日本では無くなった食堂車もある。バックで流れるのはショパンのピアノ曲だ。おなじみのピアノソナタが流れ続ける。ワルシャワの空港はショパン空港というらしい。初めて知る。


ただ、映画を見ているうちに、いとこのベンジーが勝手な発言をしたり、団体行動なのに突飛な行動でムカついてくる。なんだコイツと思うと、映画を観ていて腹立たしくなる。ベンジーは一等車の移動なのに、辛い思いをした先人の気持ちを味わえないと座席の移動をしたり、到着駅に着いたのにわざと寝ているいとこを起こさない。ツアーガイドにも、観光名所を回るのはいいが、現地のポーランド人との触れ合いがないとやたらクレームをつける。

なんだ空気の読めないやつだと思った。でも、なんといとこのベンジーを演じたキーラン・カルキンが今年のゴールデングローブ賞で助演男優賞を受賞した。アカデミー賞でも候補だ。映画見終わって知り驚く。観客の自分をむかつかせるほどのパフォーマンスが受けたのではなかろうか?直近に睡眠薬事件も起こして心に痛みのある現代人の憂うつも表現したとも感じる。最後の空港でいとこと別れた後の場面に哀愁を感じた。


このベンジーの発言は脚本のジェシーアイゼンバーグが感じたことを代弁している気もした。ポーランドにルーツを持つジェシーはたびたびポーランドに行っているようで、同じような体験をして感じたことを映像にしているんだろう。ポーランドのユダヤ人収容所の場面は観ていて心が痛む。ポーランドはソ連とドイツの挟み撃ちで両国にいいようにされた。ジェシーアイゼンバーグ「ソーシャルネットワーク」で初めて彼を知った時と同様の早口言葉が健在だった。
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映画「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」ペドロ・アルモドバル&ティルダ・スウィントン&ジュリアン・ムーア

2025-02-02 17:15:29 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「ザ ルーム ネクストドア」を映画館で観てきました。


映画「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」は毎回欠かさず観ているスペインの鬼才ペドロアルモドバル監督の新作である。2024年ベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した。待ちに待った新作で英語圏では短編映画「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」はあっても長編は初めて。初日に映画館に向かう。ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアの2人の大物女優を起用して、末期がんで死に向き合う女性と付き添う女性を中心に映し出す。ペドロアルモドバルらしい奇抜な発想を期待する。

作家のイングリッド(ジュリアン・ムーア)は、友人からかつての親友でNYタイムズの戦場記者だったマーサ(ティルダ・スウィントン)がガンであることを知らされる。早速彼女のもとへ駆けつけ、長く会っていない時間を埋めるように病室で語らう。


自らの意志で安楽死を望むマーサは、人の気配を感じながら最期を迎えたいと願い、「その日」が来る時に隣の部屋にいてほしいとイングリッドに頼む。マーサにはベトナム戦争退役後に幻覚に囚われた若き日の恋人との間に生まれた娘ミシェルがいた。結婚せずにシングルマザーとなって育てたが、娘への愛情がなく距離を置いて暮らしている。


当初はためらったがマーサの最期に寄り添うことを決めたイングリッドは、マーサが借りた森の中にある小さな家の隣室に移り住む。そして、マーサは「ドアを開けて寝るけれどもしドアが閉まっていたら私はもうこの世にはいない」と告げて最期の時を迎える彼女と暮らす。

ペドロアルモドバル作品らしく赤や緑の原色を基調にした色彩設計は完璧である。死に向かうという陰湿さと悲壮感が抑えられている。
不安を増長するアルベルト・イグレシアスの音楽も映像にマッチしてすばらしい!


インタビュー記事(ユリイカ2月号)によると、これまでペドロアルモドバルにはアメリカから企画が何度も持ち込まれたようだ。当然だろう。ペトロアルモドバルは「英語で映画を作るのに適した題材を見つける」ことを待ち望んでいた。今回原作となるシーグリッドヌーネスの小説を気に入り、それならとアメリカで撮影することとなる。

死と向かいあう主人公にはティルダスウィントンを指名して快諾を得られる。それと同時にティルダスウィントンに相手役の指名を依頼して、ジュリアンムーアが共演することになった。この2人の大女優がペドロアルモドバルの期待に応えている。そして高いレベルの作品になった。

色彩設計の美しさには定評のあるペドロアルモドバル作品でも、今回はこれまで以上に赤の使い方が上手い。移動する車が赤いトラックだったり、室内のインテリアでも赤のドアが使われる。補色となる緑などの色を対比させて衣装、調度品、美術に最高峰のレベルで臨む。ティルダスウィントンによれば、お互いの衣装に触発されるし、テンションもあがる。色合いは演技にもいい影響を与えているようだ。


ビビったのはティルダスウィントンが死を覚悟して服を着替える時、イエローのセーターを着て真っ赤な口紅を塗った時の色合いの美しさ。表情はクールだ。歳を重ねても自分もこんな原色で派手な感じに身を包み死に向かいたい欲望が出てきた。

女性色の強い映画でもワンポイントで男性を登場させる。
ゲイをカミングアウトするペドロアルモドバル作品では必ずホモセクシャルの話がでてくる。ここではイラク戦争にマーサがNYタイムズの戦場記者としていくシーンで、一緒に同行する記者と現地人男性との関わりがでてくる。

死後の処理で要らぬ疑いが起きないようにイングリッド(ジュリアンムーア)が旧知の男性に会う。ジョンタトゥーロが演じる。自殺幇助に関わったと警察から疑われるのを予測してイングリッドが周到に手を打つ。死を見守る受け身の立場だったイングリッドが見せた積極性である。そしてその後クライマックスに向かう。


若干ネタバレだが
ラストに向けてはマーサの娘ミシェルが満を持して登場する。髪は長く、メイクは華やかで女性的だ。アレ?ティルダスウィントンの娘って女優だったのか?とふと思うくらい似ている。振る舞いは母親同様クールで落ち着いている。これって1人二役だったの?と映画の終わりかけに気づく。結果そうだった。似たような人物を映画に放って観客を惑わすペドロアルモドバル流だと気づき感嘆する。
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映画「ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた」 ケイシー・アフレック

2025-02-01 10:38:41 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた」を映画館で観てきました。


映画「ドリーミンワイルド」は実在のミュージシャンの実話をもとにしたアカデミー賞俳優ケイシーアフレック主演の音楽を題材にしたドラマだ。監督脚本は「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」ビル・ポーラッドである。ビーチボーイズのブライアンウィルソンの紆余曲折を描いた「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」は自分の大好きな作品で、ケイシーアフレック蓮實重彦先生お気に入りのデイヴィッドロウリー監督作品をはじめとして自分には相性がいい。これは早速行くしかない。モデルとなったドニー&ジョー・エマーソンのことは初めて知る。

1979年、ワシントン州の農場に生まれ育った10代半ばすぎのドニー(ノア・ジュプ)と兄ジョーの音楽デュオが父(ボー・ブリッジス)が広大な敷地内に建てたスタジオで1枚のアルバムを完成させるも世間からは見向きもされなかった。兄は実家に残り、弟はミュージシャンとして故郷を離れた。


2011年、妻のナンシー(ズーニーデシャネル)と音楽活動を続けるドニー(ケイシー・アフレック)のもとに兄ジョー(ウォルトン・ゴギンズ)から実家に来るよう連絡がある。アルバム「ドリーミンワイルド」が、コレクターの間で人気となり、再発盤リリースのためにレコード会社が来訪するというのだ。昔の不人気を思いドニーは疑心暗鬼だったが、両親は大喜びだ。その後ラジオ番組に出演したり、NYタイムズの取材も受け、シアトルの有名会場でのライブ開催も決まる。全米ツアーの話も舞い込む。しかし、ドニーは封印していた過去と向き合い葛藤する。

アメリカの郊外を舞台にした胸に沁みるいい映画だった。よかった。
30年前にだしたアルバムが突如脚光を浴びるシンデレラストーリーなのに、主人公ドニーはどうもスッキリしない。しかも、今は売れないミュージシャンだ。長い間苦労して音楽活動をしてきたのに、評価されるのは昔の曲だけ。一緒に組む兄は長年演奏とは無縁だった。プロから見ると相棒として物足りない。色んな葛藤が脳裏をよぎる。

⒈ケイシーアフレック
ケイシーアフレックは孤独で風変わりな男を演じると実にうまい。落ちぶれたミュージシャンで、脚光を浴びるのはうれしいがジレンマが残るドニーを巧みに演じる。アカデミー賞主演男優賞を受賞した「マンチェスター・バイ・ザ・シー」での元妻役のミッシェルウィリアムズとの掛け合いが強く印象に残っている。変人を演じる時のうまさがここでも引き立つ。


⒉お人好しの父と兄
きわどいビジネスを扱うアメリカ映画も好きだが、広大な草原が映像に映る田舎が舞台もたまにはいい。ここでは役柄としての主人公の父親と兄に感動する。2人とも日本でもよくいる田舎のお人好しだ。映画の途中まで普通のシンデラストーリーかと思っていたら、主人公とお人好しの家族との葛藤があった。葛藤といってもカリカリしているのは弟だけである。

⒊資産売却で支えた父親
父はワシントン州の郊外で広大な敷地の農場を経営してきたのに、音楽の才能がある息子たちのために敷地を切り売りして1700エーカーの敷地が今では65エーカーだ。ちなみに。1エーカーは1200坪でとんでもない敷地を持っていた。映画の最初で売地の看板が映像に映し出されてなんだと思ったらそういうことだった。

そんな父を演じるのは大ベテランであるボーブリッジスだ。自分が大好きなジェフブリッジスの兄貴だ。名作「恋のゆくえ」で弟ジェフブリッジスと兄弟デュオを演じていた。その時もミッシェルファイファーの女性ヴォーカルが加わり3人トリオになる。こんな名作が今回のボーブリッジスの起用に影響しているのかもしれない。


⒋寛容な兄貴
10代の頃、兄弟で売り出してきたけど、才能のあるのは弟だ。それは十分わかっているので兄貴が出しゃばらない。性格も温厚だ。弟のソロデビューの話があっても嫌な顔をせずに兄は快く受ける。兄貴と再結成して再デビューをしようと練習を始めても弟から厳しいことを言われ続ける。この映画のキーポイントになるライブのあとの弟の撹乱も同様だ。この兄貴はいい奴なんだなと映画の間思っていた。


ネタバレになるけど
色んな葛藤があった後で最後にライブハウスでの演奏シーンでラストを迎える。メンバーは兄弟と弟の長年の相棒の妻ナンシーだ。いい感じだと思っていたら、実在のエマーソン兄弟の演と代わっていく。エマーソン本人の通った声がいい。観ているうちに、家族内の葛藤シーンが脳裏を遮り涙がこぼれ落ちる。
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映画「トワイライト・ウォリアーズ」

2025-01-30 21:22:54 | 映画(中国映画)
映画「トワイライトウォーリアーズ」を映画館で観てきました。


映画「トワイライトウォリアーズ」は1980年代後半の香港九龍を舞台にした香港アクション映画である。香港での興行収入はよかったようだ。直近ハードなアクション映画を避けることが多かった。監督ソイ・チェンに加えて、日本から谷垣健治がアクション監督となると期待できそうだ。無数の黒社会が野望を燃やし、覇権を争っていた九龍城砦をセットで再現する。香港ロケの映画「エマニュエル」「ゴールドフィンガー」に引き続き映画館に向かう。平日に行ったが、女性陣も意外に多く、これまでの香港映画ではないかなりの観客数に驚く。

1980年代の香港、中国からの不法入国者陳洛軍(レイモンド・ラム)は黒社会のボス(サモ・ハン)にさからって追われ廃墟のような九龍城砦に逃げこむ。そこでは理髪店店主の龍捲風(ルイス・クー)が無政府状態の九龍城砦を仕切っている。最初は城砦内で痛めつけられた陳洛軍が結局龍捲風にうけいれられ、その弟子信一(テレンス・ラウ)ら3人の仲間と固い絆で結ばれる。


その昔の激しい抗争で敵の殺し屋、陳占(アーロン・クォック)をたおして制したのが龍捲風だった。陳占に妻子を殺された秋兄貴(リッチー・レン)は、九龍城砦にいて陳洛軍の父親である陳占に恨みを持っていた。過去の因縁と現在の利害関係は複雑である。香港返還を控えた中で政府から立ち退きの利権を確保しようと黒社会も絡んだ抗争が激しくなっていく。


半端でない凄いアクションが続き感動!
久々にキャラクターでなく、生身の人間による躍動する格闘を観た。

アクション監督谷垣健治を知ったのは佐藤健主演の「るろうに剣心」シリーズだ。初めて今までの時代劇と違うアクションシーンをみた時にそのスピード感に圧倒された。今回も谷垣健治の名前に惹きつけられたが、ワイヤーアクションを含む期待を裏切らない強烈なシーンが続く。いわゆる東映のヤクザ映画のように昨日の敵が今日の味方になったりする。


出演俳優は香港映画では何度も見る面々だ。女性は主要人物にはほとんどいないに等しい。現代香港には志穂美悦子のような格闘系はいないのか?設定の人間関係はかなり複雑だけど、だんだん目が慣れていく。その登場人物の誰もがむちゃくちゃ強いのがこの映画のミソだ。オジサンから若者までそれぞれの人物に格闘の見せ場をつくる。狭い九龍城砦の中、空間を存分に使ってカンフーの妙技を見せてくれる。単純なカンフー技でなく、技を組み合わせ変化をつけるし狭い空間にオートバイまで走らせる。まさに技のデパートだ。まとめる編集にも優れる。


映像はあくまで九龍城砦が中心だが、香港市街地のシーンもある。直近では少なくなった猥雑な九龍の街の路上に大きくはみ出す看板を見るとウキウキする。市内の二階建バスで窓ガラスを破ったかなり強烈な格闘シーンが用意されている。天后や沙田競馬場も映し出されるし、大きな牌での麻雀シーンもある。

香港好きの自分も結局九龍城砦には行かなかった。もっとも見学ができたのだろうか?わからない。無政府状態といわれ、警察も簡単には手を出せない場所だ。1998年まで存在した啓徳空港に近い場所に位置する。これがなつかしい。啓徳空港に着陸前の飛行機が九龍城砦の真上を飛ぶシーンがある。初めて香港に行った時、エアインディア航空に乗った。飛行機が空港に近づきビル群スレスレに飛んで着陸した後で、欧米人から拍手が起きた記憶が鮮明に残る。

続編も作られるという。楽しみだ。
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映画「オークション ~盗まれたエゴン・シーレ」

2025-01-27 20:32:25 | 映画(フランス映画 )
映画「オークション ~盗まれたエゴン・シーレ」を映画館で観てきました。


映画「オークション ~盗まれたエゴン・シーレ」美術オークションの世界を取り上げたフランス映画。画家エゴン・シーレの作品が長い月日を経て発見された実話に基づいている。監督は「美しき諍い女」などの脚本でむしろ名高い「カイエ・デュ・シネマ」出身のパスカル・ボニゼールである。公開館が少なく時間調整ができず後回しになってしまった。会場でのオークションとは無縁だった自分は、リアルなディール場面が楽しめるかと期待する。

パリのオークションハウスで競売人として働くアンドレ(アレックス・リュッツ)のもとに、画家エゴン・シーレのものと思われるカンバス画の鑑定依頼の手紙が弁護士を通じて届く。ここ30年程市場に出ていないので贋作と疑い気乗りしなかった。ところが、元妻で相棒のベルティナ(レア・ドリュッケール)とフランス東部のミュルーズに絵を見にいったところ、ナチスに略奪されたエゴン・シーレの作品と判明。化学工場で夜勤労働者として働く青年マルタンが、母親とふたりで暮らす家の壁に飾られていた。
この絵をどのように扱うのか、現在の所有者、元の持ち主、オークションハウスなどの思惑で揺らいでいく。


フランス映画らしい簡潔な展開で美術オークションの世界を描き好感をもつ。
映画のストーリーは比較的単純明快である。競売人とその秘書と秘書の家族、元妻で競売人の相棒の女性、現所有者である夜勤労働者とその母、仲介に入る弁護士、元々の所有者の末裔など登場人物は多彩にわたる。それぞれのキャラクターに変化を持たせて、現所有者の青年以外はくせ者が多く性格が良くない。かみ合わない会話が目立つ。

もともと単純な話に変化をつけるのがポイントだ。あえて欲のない青年の性格の良さを際立たせるつもりなんだろう。青年は巨万のカネを得ても何もなかったように夜勤労働者に戻る。


オークションの緊迫感も見どころである。オークション的な商取引の経験は当然あるが、会場での経験がない。事前にいくらまでという準備はするにしても反射神経がついていけない気もする。オークションする前の事前段階で価格設定に駆け引きがあることも示す。値段を下げようと悪いウワサを流したり、偽情報で金儲けする人がわざとマイナス面を強調する動きもある。単なる絵画の周囲に色んな人がいておもしろい。

長すぎる上映時間の作品が目立つ中、こういうフランス映画は自分には心地よい
コントロールのいいピッチャーが少ない投球数で無四球試合をするような感覚だ。
競売人の秘書役だったルイーズ・シュビヨットが自分の好みのタイプで性格の悪い役なのに引き寄せられた。
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映画「ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件」トニーレオン&アンディラウ

2025-01-25 18:54:22 | 映画(中国映画)
映画「ゴールドフィンガー巨大金融詐欺事件(金手指)」を映画館で観てきました。


映画「ゴールドフィンガー巨大金融詐欺事件(金手指)」は香港の2大スターであるトニーレオンとアンディラウ「インファナルアフェア」以来久々に共演する70代から80年代の香港を舞台にした作品だ。監督は「インファナルアフェア」の脚本を手がけたフェリックス・チョン。香港好きの自分からするとこの共演は楽しみにしていた。『インファナル・アフェア』3部作とは真逆の配役である。

1980年代に起きた金融詐欺事件「キャリアン事件(佳寧案)」をモデルにして映画化している。実話の事件の主犯格ジョージ・タン(陳松青)は1970年代にシンガポールから無一文で香港に渡ってきた福建系華人で巨大コングロマリットのキャリアン・グループ(佳寧集団)をぶち上げたという。自分はその事件を知らなかった。

1970年代の香港。マレーシアから香港に来た野心家の男、チン・ヤッイン(程一言)(トニー・レオン)は、徐々に香港に足場を築いていく。1年で100社もの会社を設立し、悪質な違法取引を通じて自社株価をつり上げる。資産100億ドルの嘉文世紀グループ立ち上げに成功して無一文から大富豪に成り上がる。一方、汚職対策独立委員会廉政公暑(ICAC)のエリート捜査官ラウ・カイユン(アンディ・ラウ)は、チンの陰謀に目を付け、その後15年間にも及ぶ粘り強い捜査への道のりを歩み始めていた。


期待ほどではなかった。
映画のテンポに頭がついていけない。映像を視線がずっと追っているのであるが、意味がよく理解できない。ちょっと前までマレーシアから来た職にありつけない土木技師だったのに、次から次へと色んなジャンルの会社を設立していく。あれよあれよという間に香港証券取引所に上場して株価がどんどん上がっていく。
「え!これってどういうこと?」

何でこんなにわからないのか?要は普通の日本人の想像を絶する商いをやっているので理解できないことに気づく。

途中まではやりたい放題で巨万の富を築く。でも、最終的には株価もどんどん下がり、主人公のパフォーマンスが虚構だとわかっていく。そして、口止めに殺されていく人たちが多数出てくる。アンディラウ演じる捜査官も家族とともに命を狙われる。きわどい話になっていく。いくつかの解説を読むと、香港では有名な事件で80年代香港バブル崩壊で資産を失いそのトラウマに囚われる人もいるらしい。実際の手口がわかっている香港人にとってはすんなり理解できるので現地でヒットしたのだと思うが、自分にはよくわからない内容だった。


英中の返還交渉が始まったとか、中国銀行がビル建設用に土地を確保したとかのニュースはいかにも時代を象徴する。香港証券取引所番号のつけた赤チョッキを着た取引員が右往左往する姿はその昔ニュースでよく見た光景だ。今や日本と同じく場立ちはいない。香港人にとってはラッキーカラーレッド&ゴールド、金ピカのインテリアも目立つ。ペニンシュラでロケもしてしまう。70代から80年代を再現した街中の感じもいい。


高層ビル群の中の豪華なオフィスでガラス越しに横のビルを見ながら取引をする場面が香港らしくていい感じだ。トニーレオンが数字の11は凶数と言ったり、168は商売繁盛の数字だとするのが数字にこだわる香港人らしい。

香港GDPの対中国比は1994年には24%だったのが2015年には2.9%になったそうだ。香港の没落というより大陸が伸びたということかもしれない。資本主義の殿堂香港の存在感が急激に薄れた。1997年の返還前後まで香港に行くと大陸の人は垢抜けていなかったので、一目で分かった。2000年過ぎたあたりから見分けがつかなくなり、今はどうなんだろう。

パシッと決めた服装に身を包む印象が強いトニーレオンは詐欺師でいつもと違うタイプの役柄だ。アンディラウはいつも通りで違和感がない。サイモンヤムなど香港映画の常連が大勢出てきて今回はエキストラも多そうだ。ストーリーというより昔の香港の雰囲気を味わうのは悪くはない。
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映画「MR JIMMY レッドツェッペリンにすべてを捧げた男」

2025-01-24 18:34:51 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
ドキュメンタリー映画「MR JIMMY レッドツェッペリンにすべてを捧げた男」を映画館で観てきました。


映画「MR JIMMY」は「レッド・ツェッペリン」のギタリスト、ジミー・ペイジになりきることをライフワークとするジミー桜井を追ったドキュメンタリーだ。われわれの世代の男性はみんなジミーペイジへの想いは強い。無器用な自分はギター習得にはすぐさま脱落して聴く専門だけであった。高校の文化祭などでツェッペリンやディープパープルのコピー演奏は定番だった時代だ。

予告編でジミーペイジのコピーをしている男のドキュメンタリーが公開されるのがわかり興味を感じた。何せ本家本元のジミーペイジが自ら来日時に見に来た予告編映像を見てそれだけですごいと思う。とはいえ、よくあるコピーバンドの1つの話だと思ったら大違いだった。こだわりの強い昔ながらの職人気質の日本人の物語だ。ピーター・マイケル・ダウド監督がメガホンをとる。映画制作費でスッカラカンになったそうだ。

新潟県十日町生まれの桜井昭夫はレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジに惹かれる。やがて呉服店の営業マンや旅行会社の添乗員として働きながら、夜は音楽ライブハウスでペイジのギターテクニックを披露する「ジミー桜井」として音楽活動を続けていた。

ある夜、ウワサを聞いた来日中のジミーペイジ本人が桜井の演奏会場を訪れ賞賛される。桜井はサラリーマンの仕事を辞め、家族を置いてロサンゼルスに移住しレッド・ツェッペリンのコピーバンド「Led Zepagain」に加入する。しかし、徹底的にディテールにこだわる桜井の考え方と他のメンバーとの相違が生まれていくのだ。


すばらしいドキュメンタリーだった。感動した!!
単なるコピーバンドだと思ってはいけない。70年代にレッドツェッペリンが行った歴史的ライブでのジミーペイジのギターソロを徹底的にコピーする。原曲は同じでもそのライブによって、ギターのフレーズが違う。しかも、ギターの音源、アンプ、衣装の刺繍なども当時を再現するためにこだわる。それぞれの分野の職人と討論しながらリアルなジミーペイジを再現する。


ロックなどの音楽アーチストのドキュメンタリーは増えて映画館で見る機会も多い。故人の生前演奏映像などやゆかりのある人へのインタビューが中心だ。それ自体おもしろいけど、ここまでこだわりの強いアーチストを追った映像は見たことない。ジミー桜井の情熱に感動する。ジミーペイジが実際に演奏を見にきて喜ぶシーンを見ると感激してしまう。でも、それがこの映画の締めではなかった。そこから海外進出となる訳だ。


レッドツェッペリンの4枚目のアルバムまではロック少年必聴で細かいフレーズまで頭にこびりついている。聴き始めは中学生なので「immigration song」や「Black dog」などポップ調のなじみやすい曲に最初惹かれたが、次第にブルース調の曲に馴染んでいくようになる。1枚目の「Dazed and confused」、3枚目「Since I’ve been loving you」はこの映画でも繰り返し流れていたのもうれしい。

当然ロバートプラントのボーカルも重要で、コピーバンドで一緒に組むアメリカ人とリアルに迫るため徹底的に練習する。ただ、そのこだわりが葛藤と対立を生む。中盤からそういったシーンが増えていく。


ジミー桜井の葛藤が見ていて辛い。しかし最終的にはLed Zeppelinの関係者からものすごいオーダーが来る。それを見て本当によかったと思う。しかも、この映画にあたって破格の条件でリストアップした30曲すべてに使用許可が下りたという。普通で考えると、ものすごく高いもんね。

「映画を観たツェッペリンのメンバーが、音楽を真剣に追求している姿勢を評価してくれたと聞きました」(作品情報より)映画「スクールオブロック」で移民の歌 をジャックブラックのバックで流す時もやっと許可がおりたらしい。本当によかったね。
往年のロックファンには必見の映画である。

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映画「アプレンティス ドナルドトランプの創り方」セバスチャン・スタン

2025-01-23 08:22:28 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「アプレンティス ドナルドトランプの創り方」を映画館で観てきました。


映画「アプレンティス ドナルドトランプの創り方」は2度目の大統領職に就任するドナルドトランプの若き日を描いた作品。レーガン大統領時代の1980年代初頭までさかのぼる。いよいよ大統領就任で今までと真逆な政策も打ち出しているドナルドトランプが敏腕弁護士ロイコーンと出会い、トランプタワーを建設する頃が題材だ。

監督は映画「聖地には蜘蛛が巣を張る」のイラン人監督アリ・アッバシである。イランでの凶悪殺人事件を追う女性ジャーナリストを題材にした作品で自分にはおもしろかった。日本ではマスコミのトランプ嫌いが極端すぎると考える自分だが、とりあえず観てみる。

20代のドナルド・トランプ(セバスチャン・スタン)は危機に瀕していた。不動産業を営む父の会社が政府に訴えられ、破産寸前まで追い込まれていたのだ。そんな中、トランプは政財界の実力者が集まる高級クラブで、悪名高き辣腕弁護士ロイ・コーン(ジェレミーストロング)と出会う。大統領を含む大物顧客を抱え、勝つためには人の道に外れた手段を平気で選ぶ冷酷な男だ。

そんなコーンが“ナイーブなお坊ちゃん”だったトランプを気に入り、〈勝つための3つのルール〉を伝授し洗練された人物へと仕立てあげる。やがてトランプは数々の大事業を成功させていく。(作品情報 引用)


映画としては普通、若き日にこんなことあったのねとして観るだけ。
この映画は現在のドナルドトランプの原型を映し出す。トランプが上映差し止めに動いたとの宣伝ほどには過激ではなかった。まだ青二才のトランプが管理している賃貸の入居者の部屋に行って督促をするシーンまである。

その後ハイソサエティの人たちの会員制クラブに入会して敏腕弁護士ロイコーンに出会う。ドナルドトランプは卑劣な手段も辞さないロイの教えに従う。きわどい弁護のおかげで訴訟に逆転勝利をして会社の危機を乗り越える。その後、自力でアトランティック・シティーのカジノ買収やトランプ・タワーの建設を成し遂げていく。最初の妻との関係や落ちぶれていくパイロットの兄の死などを取り上げる。ドナルドトランプの兄についての情報は初めて知った。


⒈日本マスコミのトランプ嫌い
ドナルドトランプは接戦の下馬評を覆して圧倒的な強さで当選した。日本人的感覚では信じられないと思う人が多いようだ。朝日などの左翼系新聞やリベラルという名で金儲けしている評論家が出るサンデープロジェクトなどのTVが悪口を言うのは仕方ない。直近では日経新聞の論調にもトランプ嫌いがにじみ出る。映画の宣伝文句も似たようなネガティヴ系の話が目立つ。実際にはイメージが先行している気もする。

⒉大統領就任式のメンバーにビックリ
大統領歴任者夫妻が列席するのはカーター大統領国葬と同じで別に驚かない。Facebook、Amazon、Googleのおなじみ3人のTOPにイーロンマスクが前の方で並んでいる映像には驚く。AppleのCEOもいたようだ。テック企業のオールスターメンバーが勢ぞろいすることってないでしょう。大統領就任にあたり多額の献金があったニュースは知っていたが、今回の揃い踏みにはビックリだ。日本からはソフトバンクの孫正義も出席していて、トランプ承認のもと兆単位のAI系の投資を米国ですることで今日のソフトバンクの株は10%以上の急騰だ。

この映像を見て、ホッとしたのは日本人投資家たちだろう。NISAで今年投資する一般投資家からは、オールカントリーを含む外国投信へのウェイトが90%を超えるらしい。オールカントリーであっても米国株のウェイトは60%程度と高い。今回大統領就任式に出席した企業の株式は当然その中に入る。AmazonにしてもGoogleにしても当局から制約を受けるニュースが続く。トランプ大統領によってそれが覆されれば万事安泰で株価もこれまで通りじり高が続くだろう。

トランプがUSスチールなどの伝統企業を応援するだけでなくテック企業も応援する意思表示が全世界にされた意義は大きいと感じる。すばらしい!

企業献金で大騒ぎする日本の野党のみなさんと左翼胆っ玉小さいねえ。
日本人が外国に投資するのは日本の資本主義を信頼していないからだ


⒊NHKスペシャルと民主至上主義
1月2日に何気なくNHKでトランプ就任にあたっての特集番組「新トランプ時代」を見た。これがものすごく良かった。NHKだけにトランプ嫌いの面々のコメントが続くと思ったら賛否両論を取り上げていた。番組を見てアメリカでトランプ支持者が多い理由を理解できた。内容的には批判的な立場のコメントと同時に、イーロンマスクが政府の規制を減らす小さい政府を主張している話で展開した。その後で登場したトランプを支持する女性政治学者エミリーフィンリー(フィンレイ)博士のコメントがわかりやすかった。感銘を受けた。「民主至上主義」という著書はすぐさま購入した。

イメージ的に好戦的に思われているドナルドトランプが実は真逆で、民主主義を守るという理由で他国の余計な争いに介入するなというのだ。米国民は誰もが戦争に関わりたくないからトランプを支持する。これまで世界の警察のように介入してきたアメリカと違う立場だというのだ。驚いた。共和党のブッシュ政権のイラク戦も本では批判する。

ウクライナについても、当事者同士の問題なので介入せずが正しいとの立場だ。最初にトランプが当選した後で、いわゆる知識人が当選を批判したこと自体、民主主義の選挙で選ばれた大統領を否定するのがおかしいとの立場だ。異端な意見を排除するインテリへの目がきびしい。久々に腑に落ちた発言だった。

どうも民主党がインテリ党のようになってしまったのが大統領選挙敗因との説もある。フランスのピケティが新著で知識人を「バラモン左翼」と偉そうと指摘する。知識人のうぬぼれは微妙な状況だ。
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映画「満ち足りた家族」ソルギョング&チャンドンゴン

2025-01-21 20:07:05 | 映画(自分好みベスト100)
映画「満ち足りた家族」を映画館で観てきました。


映画「満ち足りた家族」は韓国の人気スターソル・ギョングとチャン・ドンゴンが兄弟役で共演するサスペンスタッチのドラマだ。ホ・ジノがメガホンを持つ。4人並んで食卓を囲む写真からは内容が類推できない。ここのところハズレの韓国映画を観ることが多かった。自分と相性のいいソルギョングがでているので気になり映画館に向かう。想像を超える濃厚でドロドロとした作品だった。

兄ジェワン(ソル・ギョング)は金銭を積まれたら危うい殺人者の弁護も引き受ける敏腕弁護士だ。 再婚した若き美人妻ジス(クローディア・キム)には赤ちゃんが生まれて高校生の娘とともに豪華マンションに住む。一方、弟のジェギュ(チャン・ドンゴン)は良心的な小児科医だ。 老いて認知症気味になった母と同居して年長の妻ヨンギョン(キム・ヒエ)と高校生の息子と共に住んでいる。

兄弟2人は、それぞれの妻を伴って高級レストランの個室でディナーを共にして母親のことなどを相談するが、両親不在の時に兄の娘と弟の息子が夜遊びにでて、酒を飲んでしまう。その時にホームレスの住処で起きた2人の未成年の過ちが両家族の問題になっていく。


韓国映画の久々によくできた傑作だ。
ラストでは思わず映画館の席で驚きの大きな声をあげてしまった。柔道の試合できれいな技で一本決まったような感覚を持つ。良かった。

セレブの食事会的な食卓を囲むスチール写真とは想像もつかないドロドロとした展開になる。韓国映画得意のひねりの効いた脚本は見事だ。

いきなりクルマ同士のトラブルで人が轢き殺される場面が出てくる。いかにも韓国映画らしい強烈な場面だ。主要出演者ではないようだ。結局は金持ちのボンボンが滅茶苦茶な運転をやって逮捕されて、その弁護をソルギョング演じる弁護士が引き受けるということを示すためだ。金の亡者に見せたかったのか。しかも、ソルギョングの妻がずいぶんと若くてセレブっぽい。高校生の娘がいて継母との折り合いは微妙なようだ。複雑な家庭環境だというのを示す。


弟は医師だけど、交通事故に巻き込まれて負傷した女の子の手当てをする。兄が加害者の弁護をして、弟が被害者の担当医師なんて微妙な関係だ。自宅では引きとった夫の母親が痴呆も入っているようだが、ともかく破茶滅茶で嫁の言うことを聞かない。自分の息子に怒られると少し静かになる。嫁の負担が大きい。年下の兄嫁をいびるのは、いかにも韓国らしいネチっこさを繰り返し見せつける。


こんなプロフィールを映画ではそれぞれの子どもたちも含めて掘り下げていく。キャラクターづくりに成功している。しかも、観終わってこの映画のストーリーにピッタリあったキャスティングだなあと感心する。責任感のある医師の弟が善で金のためなら誰でも弁護する兄の方が悪の立場と途中経過までは進む。事件が起きてしばらくした時点でお互い彷徨う。それぞれの妻だけでなく両方の子どももサイコスリラーにも見えるこの映画では全員主人公に近い存在感がある。

どんな話なのかの先入観を持たずに映画館で見て欲しい。


(これからはネタバレに接近)
この映画の主題は、兄の娘と弟の息子が一緒に悪さをしてしまうのだ。具体的にはダンボールで寝ているホームレスの浮浪者を悪酔いして蹴ってしまう。それが行き過ぎで浮浪者は重体だ。2人は逃げて帰る。この行為が防犯カメラに残っていて公表される。2人の行為と気づかれていない。

公表した映像を見て親たちが自分の子供がやった行為だとわかってしまう。警察に自白するべきなのかどうか?子供たちは受験戦争のど真ん中である。事件をめぐる両親4人の葛藤がこの映画のテーマだ。浮浪者は生きるか死ぬかの瀬戸際だ。死んでくれた方がいい。さあどうなる?

そんな心理描写を巧みに誘導する脚本が上手い。しかも俳優がいい。
フルボディのワインにも似た重厚感を感じる傑作だと思う。
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映画「サンライズサンセット」 菅田将暉&井上真央

2025-01-20 08:16:27 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「サンライズサンセット」を映画館で観てきました。


映画「サンライズサンセット」楡周平原作の「サンセット・サンライズ」を菅田将暉主演で映画化。宮藤官九郎が脚本を手がけ、岸善幸監督がメガホンを持つ。東京の企業に勤務する釣り好きの男性が、コロナ禍によるテレワークを機に、三陸海岸の格安物件に移住する。キャストはそれなりに豪華。宮城女川出身の中村雅俊が地元の言葉が使えて楽しそうだ。

新型コロナショックの2020年春、南三陸の町役場に勤める関野百香(井上真央)は空き家プロジェクトの担当に任命される。船頭の義父関野(中村雅俊)と相談して率先して空き家を賃貸にするため4LDK・家賃6万円でネットに募集広告を出す。すぐさま東京勤務で釣り好きの晋作(菅田将暉)がリモートワークで使えると反応して三陸に内見にくる。広くて家具家電付きの家を気に入るが、とりあえずお試し移住となる。
ところが、コロナ禍でよそ者を嫌がる地元民は晋作が住み移ることに反発する。晋作は上司である社長(小日向文世)からこの事例を全国で成功させようと厳命を受けるが、地元民との小競り合いが起きてしまう。

途中緩慢で時間も無駄に長くなり予想ほどにはいいと思わなかった。
詰め込みすぎなのかな?ムダな場面が多いのか、編集が悪いのか?もったいない気もする。何度も行った三陸の海を見れたのはうれしい

三陸の海辺の景色は美しい。ただ、暗黒のコロナショックで日本中が震撼する時期である。神経質な日本人がコロナを恐れて、次から次に行動が制限される。地方では都会からの侵入を拒んだ。みんながマスクを強要されるその時代を皮肉りながらストーリーが進む。もともと過疎化がひどいこのエリアでは空き家が目立つ。外部からの受け入れに関しての町の人々の気持ちは矛盾だらけである。

また、東日本大震災で大きな津波の被害を受けたエリアが舞台である。家主の百香は津波で夫や家族を失っている設定で、一緒に暮らす義父(中村雅俊)とは血が繋がっていない。そんな百香には地元の男たちにファンが多いけど、移住した晋作が徐々に百香に近づいていく設定だ。ヘラヘラした菅田将暉はいつも通りだが今回は特筆すべきところは少なく普通。井上真央は最近出番が少なくなったけどまだまだかわいい


好かないのが地元民がたむろう酒場での地元民の閉鎖的態度だ。わざとだと思うけど、竹原ピストルも池脇千鶴も面倒だなと思わせる言葉を連発する。それにしても池脇千鶴は太ったね。脚本の宮藤官九郎はこういうのが東北人の悪いところだというセリフも出す。でも、わかっていても竹原ピストルの店主が営む居酒屋の雰囲気にはどうものれない。「サバカン」の時は良かったけどなあ。

移住先の隣家に住む白川和子の使い方はうまかった。往年の日活ロマンポルノでの団地妻で名を上げた時代を知っている人も少ないだろう。本当におばあさんになったけど、映画にはこういう年寄り役も必要だ。「恋のいばら」「春画先生」にもでてきて独特の味を出す。ここではパチンコ好きのおばあさんで、パチンコを打ちながらあの世に行ってしまい、その家が空き家になり1つの物語になる。

先日身体に発疹があり病院に行って待合室で座っていたら、隣にいたおばあさんがものを落としたので「おばさん落ちたよ」と言って顔を見たら反応がない。目がうつろで意識がない。その時の症状と白川和子が意識を失う場面とまったく同じだった。結局救急車で運ばれて行ったが、人間が死ぬのはこんな感じなんだと思った。


中村雅俊がノッテいる。地元だもんね。女川町生まれの石巻高校出身で漁師たちが身近にいた環境で育ったのでうれしかったんじゃないかな。ネットを見て小日向文世が付き人だったのを初めて知る。船上のパフォーマンスはいつもと違う海の男だ。自分は東北金華山に3回行けば一生カネに困らないと言われて実際に実行した。鮎川港から金華山にいくのが通常だが、震災前に女川町から船で行ったこともある。その時に女川の海辺にある中村雅俊記念館にも行った。それも津波で流されてしまったのは悲しい。
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