goo blog サービス終了のお知らせ 

映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「怪物」 是枝裕和&坂元裕二

2023-06-04 17:35:12 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「怪物」を映画館で観てきました。


映画「怪物」は是枝裕和監督の新作で、今年のカンヌ映画祭で坂元裕二が脚本賞を受賞した作品である。それ相応の出来は期待できる。予告編では安藤サクラがモンスターペアレントのように学校で文句を言うシーンがクローズアップされる。一方で、教員が謝る場面があって子供の喧嘩がきっかけなのに何で先生が悪いの?という印象を受ける。いずれにせよ、何かしらのトラブルがあるのだろう。そんな先入観で映画館に向かう。実際には、予想とは違う展開で進む。


シングルマザー早織(安藤サクラ)の小学5年生の息子湊の様子が泥だらけのくつを履いていたりして何かおかしい。誰かにいじめられているのではと問い詰めると、保利先生(永山瑛太)に暴言を吐かれて、暴力も振るわれたと告白し、早織は学校に怒鳴り込む。校長(田中裕子)と他の先生が対応する。結局担任は謝っているが、どこかおかしい。

上記場面が展開した後で、保利先生とその彼女にカメラのフォーカスをあてて、クラス内外で起きたいくつかの事実と職員室内部でのやりとりを追いかけていく。実は保利先生もはめられていたのだ。


構成力に優れた作品である。
予告編では子ども同士のケンカがきっかけとなっている。でも、その場面はしばらくは出てこない。息子の様子が変なので、母親が問い詰めて先生のせいだと告白する場面で安藤サクラがエスカレートする。怒鳴り込む母親に謝る教師たちがオタオタしている。でも、何かおかしい。真実は別にありそうだ。


黒澤明の映画「羅生門」を連想するというコメントもあったが、若干違う。「羅生門」のように真相に対して、それぞれの立場で証言を述べるということではない。三船敏郎や京マチ子、森雅之の証言にはウソも混じった部分がある。ここでは、母親と担任の先生それぞれの視線に近い立場から淡々と真実を追っていくだけだ。ウソを言っている人はいる。先生の立場で教育委員会を気にする発言もある。でも映像自体は真実だ。

起きた事実を視線を変えてゆったりと映画の中で追っていく。時間軸をかえて物語の焦点を少しずつずらすのがうまい脚本だ。坂元裕二の脚本には観客に別のことを想像させようとする巧みさがある。

その流れは極めて自然で、脚本の順番は完璧に構成されている。ベースに流れるものは深い。でも、いちばんのポイントはイジメだ。このイジメにも迷彩がほどこされている。いじめられている子と親しいのを隠そうとする行為である。気の合う奴なんだけど、みんなにはそう見られたくない。個人的葛藤が起こる。目線を一気に小中学生時代まで落とすとこんなことあったのかもと思う。映画を観ながら、すっかり忘れていた小中学校生活を思い出した。


安藤サクラがクレジットトップだが、田中裕子含めてさすがの芸達者もこの映画では特筆すべきところがない。あくまで主演は少年2人だ。特に背の小さい子役柊木陽太に好感をもった。いじめられッ子だ。素直な感じがいい。

構成力にはすぐれている作品でも、廃線になった車両で子ども2人だけが遊ぶ時若干長めで緩慢にしすぎと感じた場面もあり、最後に向けてのツメが甘い気もした。これでおしまいと納得できる感じがしない。冒頭にあった火事というのはいくつかの映像で伏線を回収したということなのか?疑いの火の粉は中途半端では?さすがに、カンヌのパルムドールとまでは及ばないとの自分なりの感触を持つ。故坂本龍一の音楽は胸にジーンと響く素晴らしい曲だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「渇水」 生田斗真

2023-06-02 20:50:43 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「渇水」を映画館で観てきました。


映画「渇水」は生田斗真が水道料金の滞納者に取り立てをする水道局の職員を演じる新作である。作家河林満の原作「渇水」をもとに白石和彌監督が初プロデュースを手がける。助監督を務めてきた高橋正弥の初監督作品だ。予告編で気になったのと、好きな門脇麦と尾野真千子が出ているので早速観にいく。

市の水道局に勤める岩切俊作(生田斗真)は、同僚の木田(磯村勇斗)とともに水道料金が滞納する家庭を訪ね、支払わない時は水道を停めて回っていた。岩切は妻(尾野真千子)や子供とは別居生活で家庭はうまくいっていなかった。暑い夏で県内全域で給水制限が発令される中、岩切が行った先はシングルマザーで姉妹を育てる母(門脇麦)の家で、水道料滞納が続いていた。2人の娘を見て期限付きで水道を止めるのを延ばしたが、その後母親も男のところへ転がり込み家を出てしまう。結局水道をとめざるを得ないことになる話だ。


主人公の仕事は料金を払わない家の水道を冷酷に停める因果な仕事である。
群馬県が舞台だ。回収にまわるのはまさに下層社会を象徴するような家庭ばかりである。事前に支払わないと水道停めるよと通知はしている。でも、直談判で支払わないのでいきなり水道を停めると唖然とする。

いくつかの貧困家庭が出てくる中で、門脇麦が母親役の家庭をクローズアップする。中卒でまともな仕事に就けないので、マッチングアプリで男をつり売春まがいの行為で子どもを養おうとしている。周囲に問い合わせがいってはダメと生活保護は受けない。稼ぎが少ないので、結局水道料金も滞納してしまう。


子供にはギリギリの生活をさせる。幼い妹は父親さえ帰って来ればいい生活が過ごせると思っている。でも父親が帰ってくるわけがない。こんな女に言いよってくる男がいる。そこにもぐり込み、幼い子たちが取り残されて2人で暮らす。水道をとめられて、町の公園に姉妹で立水栓から水をくみにいく。姉はスーパーで万引きをする。水道局の職員2人も見るに見かねてという感じだが、冷酷にならざるをえない。ところが、岩切が予想を超えた行動をする。ただ、ちょっと唐突かな?


ビックリするような物語の展開はない。ひたすら下層社会を追っていくだけである。まあこんな家庭って現実にあるのかもしれない。映画としては普通。でも、門脇麦はどうにもならない貧困家庭の女を演じている。「あの子は貴族」の真逆だ。ひいき目かもしれないけど、なぜかいつもよりよく見えた。自分が最近観た3作連続で磯村勇斗が出てきたのには驚く。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「クリード 過去の逆襲」マイケル・B・ジョーダン

2023-05-28 08:17:41 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「クリード 過去の逆襲」を映画館で観てきました。


映画「クリード 過去の逆襲」は「ロッキー」シリーズのアポロの息子「クリード」をフィーチャーしたシリーズ第3作目である。今回、前2作で登場したシルベスタースターローンはプロデューサーの1人としてクレジットに残るが出演していない。主演の「クリード」マイケルBジョーダン自らメガホンをもつ。ロッキーのトレーナーとしての復活は実に衝撃的だった。2作目「クリード炎の宿敵」もロッキーにとっての強敵ドラゴの息子を引っ張り出して、1作目「クリード」ほどの感動はなかったが、水準は高かった。さて3作目はどうなる?予告編では幼なじみと対決するとなっているが。

引退試合と決めた世界タイトル戦に辛うじて勝ったアドニスクリード(マイケル・B・ジョーダン)は、後進の指導とプロモートに専念しようとしていた。ある日、少年鑑別所で一緒だったデイミアン(ジョナサン・メジャース)がアドニスのところに突然来訪する。18年の刑務所暮らしを終えて出所してきたのだ。デイミアンが長いお勤めをするきっかけにはアドニスも絡んでいた。その昔はアドニスにボクシングを教えていたデイミアンがボクシングをしたいというので、ジムを紹介する。ケンカまがいのボクシングスタイルに周囲は困惑する話だ。


予告編では両者の対決が前面に出ているので、ストーリーの展開は予想外だった。バックストーリーがあり、そこでは少年の時にクリードの起こした行為がきっかけでデイミアンが刑務所に長くいたのだ。そのことでデイミアンはクリードを恨んでいない。もともとお互いに対決するつもりもない。ところが、シャバに戻って徐々にエスカレートするデイミアンの行為に奮い立たされるのだ。

ボクシングファイトの迫力はすごかった。クリードのライバルにジョナサン・メジャースを起用したことでこの映画は成功している。
スポーツを題材にした映画には主役をくってしまうほどの強いライバルの登場が必要だ。マイクタイソンを思わせる刑務所上がりの強面が登場する。まずは人相が違う。どう見てもワルだ。不良あがりのケンカファイトをするという映画の設定にジョナサン・メジャースの起用はこれほど適切な配役はないだろう。


もともと第1作目でクリードは少年鑑別所上がりという設定だった。とはいえ、ハングリー精神あふれるという感じが徐々に薄れていく。マイケル・B・ジョーダンエリートの役柄もできる雰囲気をもつ。「黒い司法 0%からの奇跡」で実際に弁護士役をらしく演じている。いい映画だった。ジョナサン・メジャースはどう見ても無理だろう。こんな奴が周りにいたら危ないと観客のわれわれに感じさせる怖さがある。

見どころはボクシングシーンだ。これでもかとハードパンチのシーンが次から次へと出てくる。同時にスピード感もすごい。「あしたのジョー」を思わせるクロスカウンターもきまっている。ボクシングシーンにそれなりの編集はあったとしても、その技術自体もすごいと感じさせる。


「ケイコ 目を澄まして」が昨年のキネマ旬報ベストテン1位をはじめとして映画賞を次々受賞した。三浦友和の悲哀のこもったジムの会長役も含めて人間ドラマとしては良かったと思う。でも、自分は過大評価だと思っている。ボクシングシーンは極めて貧相だった。岸井ゆきのが繰り出すあのパンチでは誰も倒せないし勝てそうに見えない安藤サクラ「百円の恋」ではシェイプアップして颯爽とパンチを繰り出す安藤サクラの役づくりに感動した。試合に勝っても当然と思わせる。ボクシング映画はファイト場面に迫力がないとダメだ


ただ、第1作目「クリード」の感動からは徐々に弱まる。2作目の時も、経済学の限界効用逓減の法則のように感動は薄らいだ。いったん引退した設定のクリードが再びリングに上がったが、もうネタ切れかもしれない。続編はむずかしいだろう。あとは聴覚障がいのある娘のボクサーとしての成長した姿を見せる以外はきびしいのでは?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「最後まで行く」岡田准一&綾野剛

2023-05-20 07:59:46 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「最後まで行く」を映画館で観てきました。

映画「最後まで行く」は韓国の名作サスペンス「最後まで行く(ブログ記事)」の日本版リメイクである。監督は話題作を次々と生む藤井道人だ。韓国得意のクライムサスペンス映画の中でも,波状攻撃のようにハラハラドキドキさせられた作品であった。5分ごとに何かが起こり、窮地にさらされる。さすが韓国のサスペンスだと思った。どのようにリメイクされているか気になるので,公開早々に観に行く。

雨の中、亡くなった母親の病院に車で向かう刑事の工藤(岡田准一)は飲酒運転で運転している。警察署の課長から「暴力団との癒着のカネの問題で県警本部から監査が入る」という知らせが来て慌てているその時に人を轢き殺してしまうのだ。死体を自分の車のトランクに入れて移動すると、警察の検問がある。飲酒運転の工藤はそこで一悶着あるが、たまたま通りかかった県警本部の矢崎(綾野剛)が後で事情を聞くということで見過ごされて病院に向かう。

その後も工藤はひき殺した死体の処置や暴力団との癒着の話の問題で窮地にさらされながら、目撃者からのお前が殺したなという連絡が入りあわてる



登場人物を増やして内容を広げたリメイクであった。
直近で2015年に観た韓国の「最後まで行く」をとりあえず再見した。「パラサイト」の邸宅の主人役やシリーズもの「マイディアミスター」の主役で活躍したイソンギュンが刑事役で、得体の知れない警察官役をチョ・ジヌンが演じた。何せチョ・ジヌンが強烈に気味悪かったし、不死身で圧倒的に強い男だった。さすがにここまでは綾野剛は無理だろうと思ったが、設定を若干変えてそれなりには追いつく。岡田准一はそつなくこなした。

流れの基調は同じである。
飲酒運転中に何者かをひいてしまうこと。母親が亡くなったこと。裏金で監査が入ること。死体を母親の棺桶に入れてしまうことなどなど。5分ごとにハラハラさせる細かいネタは再現されている。日本では死体をそのまま土の中に埋めるなんてことはない。当然火葬する。そのあたりに変更は生じざるをえない。ただ、それだけでなくいくつか設定を変更している。


設定の変更
⒈主人公には妻がいない。妹とその家族の設定だった。離婚寸前の広末涼子の妻と娘がいる設定に変更
⒉裏金をプールという設定では変わらない。暴力団に情報を与えることでカネをもらってそれをプールしていることとした。そこで、柄本明の暴力団組長という設定をつくり強い存在感を与える。
⒊得体のしれない警察官が県警本部の本部長の娘と結婚することにして、本部長から政治家がらみの裏金を回収する特命を与えられていることにする。

話はかなり広がっている。特に政治家がらみの裏金がお寺にストックされている話は全くない。その金に暴力団組長や警察の本部長が目をつけるカネの問題をクローズアップする。ただ、どうしても話が不自然になってしまう気がする。前作にないカネの問題を取り上げてもその決着の仕方には疑問が残る。割とよくできていた「ヤクザと家族」を監督した藤井道人も少しやりすぎかも知れない。


あとはちょっとワルの警察本部長を登場させる。でも、警察本部長ってほぼエリート警察官僚で次々と全国を転勤する人たちだし、のちの天下り先までしっかり用意されている人だ。黒いカネには手を出さないだろう。ヤクザにことを頼ませるなんてことは昭和の昔ならともかく今はありえない。しかも、その地に家庭があって娘と地元の警察官と結婚させるなんてことはまずありえない。良かれと思って広げた話には欠点が多い。脚本家に世間常識の欠如を感じる。この本部長と結婚相手の話に伏線の回収がなされない。

話を広げてうまくいったつもりだろうけど、まとめ方は残念ながら原作の方がスッキリする。原作は得体の知れない警察官をしばらく映像に登場させないでわれわれの恐怖感をあおった。映画を観ている時に感じるハラハラ感は若干劣る気がする。でも、そんなことは考えずに初見の人はそれなりに楽しめるだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「アルマゲドン・タイム」

2023-05-14 07:46:57 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「アルマゲドンタイム」を映画館で観てきました。


映画「アルマゲドンタイム」はユダヤ系のある12歳の少年の思春期物語である。ジェームズグレイ監督自らの体験を織り込んで作品をつくりあげたようだ。アンソニーホプキンスやアンハサウェイなど一流どころの俳優が出演していて、おもしろそうかと選択する。

1980年代前半公立の学校に通う12歳のポールグラフ(バンクス・レペタ)は、教育熱心の母親(アンハサウェイ)と厳格な父親(ジェレミーストロング)と兄の4人家族だ。母方の祖父アーロン(アンソニーホプキンス)が心の拠り所だ。いたずら好きのポールは黒人の少年ジョニーと気が合いつるんでいる。ジョニーは祖母と暮らしているが、実質ホームレス状態だ。悪さががバレて大目玉。結局、兄が通う私立学校に転校することに。それでも、別の学校に移ってもジョニーとの腐れ縁が切れない。

退屈な映画だった。
一流の出演者がそろったので、それなりの水準かと感じた。でもがっかり。表だったクレジットにはないが、ジェシカ・チャステインも出演している。同じように少年時代の思い出を中心に青春を語ったスティーブンスピルバーグ監督「フェイブルマンズ」とは大違いだ。この主人公にはまったく感情移入できない。いたずら好きなのはわかる。でも、何をやっても懲りない少年だ。ここまでいくと単なるバカだ。そんな話には付き合いたくなくなる。

人種差別の問題が言及される。グラフ家もユダヤ系の家族だ。裕福であっても至るところで差別を受けている。それ以上に、黒人少年ジョニーとの落差がひどい。ジョニーもやる気がなく、落第している。この年齢での落第は日本ではありえない。ポールが私立学校に移った後でも、同級生から前の学校で一緒だった黒人と付き合っていることに呆れられる。80年代前半であっても、アメリカの人種差別のレベルはひどかったのであろう。ポールと一緒に悪さをしても、結局黒人少年のせいにされてしまう。


クレジットトップのアンハサウェイは活躍場面がなく終わってしまう。アンソニーホプキンスの祖父役は悪くない。でも、印象付けようとしたセリフは心に残らない。あとは、私立学校に多額の寄附をしたドナルドトランプの父親とトランプの姉がスピーチする場面がある。トランプの姉役はジェシカチャステインで驚く。社会的な優位性をかちとるスピーチだ。レーガン大統領の当選をTVで見てグレイ家では核戦争が始まるといっている。いずれも見どころのつもりだったろうけど、リベラル性を強調するジェームズグレイ監督の悪趣味だ。


結局つまらない話が続いて終了してしまう。
ちょっと選択をミスった。こういうこともあるだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「レッドロケット」ショーンベイカー&サイモン・レックス

2023-04-25 19:05:56 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「レッドロケット」を映画館で観てきました。


映画「レッドロケット」元ポルノ男優のお調子者が別居した妻のいるテキサスに戻って繰り広げるチャラいストーリーだ。監督は「フロリダプロジェクト」ショーンベイカーだ。評判がいいので観てみたくなった作品だ。それにしてもいい加減そのものの主人公のパフォーマンスには呆れるしかない。真面目人間からしたら、途中で呆然としてしまうであろう世界だ。

ポルノ映画界のアカデミー賞を取りそこなったマイキー(サイモン・レックス)が突如テキサスにいる別居中の妻レクシー(ブリー・エルロッド)の家に無一文で戻ってくる。嫌がるレクシーと義母のリルのところへ無理やり住み着く


テキサスで職探ししてもまともな仕事に就けず、マリファナを売って小遣い稼ぎをする。竿師ぶりを発揮して久々にレクシーとメイクラブするとともに関係が少しづつ回復していた時に、ドーナツショップのアルバイトのストロベリー(スザンナ・サン)を見初めてしまう。


ウソで繕った人生をおくる竿師の物語である。
映画はテンポよく進んでいく。舞台は煙突から火を吹く製油工場があるだけのテキサスの田舎町だ。いかにもアメリカンタイプのサイディングの家に住人たちは住んでいる。眩ゆいほどの太陽が輝くその町では、誰もがのんびり暮らしている。そこに似つかないハチャメチャな男を映画に放つ。ハッタリだけで生きている人生だ。サイモンレックスはこの役にピッタリのポルノ絡みのエピソードがあったらしい。典型的な詐欺師タイプを巧みに演じる。ポルノ男優らしい腰の動きも見せる。


そんなクズ男とわかっていても、長期に渡って別居していた妻レクシーもカラダを合わせられるとついつい甘くなる。竿師たるゆえんだ。ただ、出戻りのチャラい男を受け入れるだけだったらストーリーは物足りない。ドーナツショップで働く18才にあともう少しでなる女の子を登場させる。マイキーが夢中になってしまうのだ。

いくら口説いてもくっつくことはないだろうと、映画を観て思っていた。インチキな口説きでもマメほど強いものはない。じわりじわりとマイキーがストロベリーに近づいていく。2人の距離は近づいていく。ストロベリーが付き合っている若者にもお前は付き合うなとばかりに乗り込んでいく。オイオイどうなっちゃうんだろう。


不思議な肌合いを持つ映画だ。後半戦に入ってある事件が起きる。隣家の息子が絡んでいる。さすがのマイキーも頭を抱える。そんな紆余屈折も与えながら、コミカルにストーリーは進む。フランシスマクドーマンドの雰囲気を持つ妻役のブリー・エルロッドがうまかった。とても脱ぎそうには見えなかったスザンナ・サンも気前よくかわいい裸体を見せて良かった。マイキーとの遊園地に行ったり、ストリップ劇場に行ったりするデートシーンがたのしい。年齢より若く見える。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ザ・ホエール」 ブレンダン・フレイザー&ダーレン・アロノフスキー

2023-04-16 10:22:36 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ザ・ホエール」を映画館で観てきました。


映画「ザ・ホエール」はブレンダン・フレイザーが本年のアカデミー賞主演男優賞を受賞した「ブラックスワン」ダーレン・アロノフスキー監督の作品だ。もともと演劇の題材だった作品を映画にまとめる。272kgの巨体の男が主人公だというと、外を容易に出歩くことはできないわけで当然室内劇になる。個人的には閉塞感のある室内劇は苦手だが、話題作なので映画館に向かう。


過食で270kgを超す肥満体になったチャーリー(ブレンダン・フレイザー)は、オンラインで大学の文章講座の講師をしている。ただ、オンラインの画面には自分の姿を見せない。男性の恋人が亡くなったことでより過食に拍車がかかり一層デブになってしまう。恋人の妹リズ(ホンチャウ)が看護師として面倒を見るが、血圧も異常値で死期が近づいているのも実感できる。8才の時に別の生活をすることになった16才の娘エリー(セイディー・シンク)に声をかけて関係を修復しようとする。

特に感動することもなく終わってしまった
やはり、室内劇はあまり得意でないのかもしれない。主人公チャーリーが住むアパートメントの一室に訪れる数名のパフォーマンスとそれに対峙する大デブの男のやりとりが映画の中心だ。主人公はもとより、偶然家に来た宣教師見習いのような青年、元恋人の妹である看護師、別々に暮らす実娘、別れた妻いずれも素晴らしい演技であることは間違いない。元ネタが演劇というのもよくわかる。舞台劇ぽい情感のこもった演技だ。この中でいちばん若い娘役のセイディーシンクにスマホを現代風に使わせて自由奔放に演技させる。


歩行器がなければ、歩くこともままならない。血圧は上が230、下が130。異常値である。自分も血圧が170くらいに上昇した時にめまいがしてまいった。よく生きていられるな。うっ血性心不全だという。血液の循環ができていない。そんなチャーリーも妻子がいる家庭を捨てて別の男と暮らすようになった。娘には申し訳ないとは思っている。でも、声をかけて久々に再会した娘は冷たい。学校の勉強が不出来な娘は父親に課題を依頼する。娘がいるので、父娘の交情の題材はお涙ものになることが多い。ここではそうはならなかった。


ダーレン・アロノフスキー監督の「π」「レスラー」「ブラックスワン」いずれも衝撃を受けた作品だった。特に「ブラックスワン」でのナタリーポートマン演じるバレリーナを精神的に追い詰めるサイコスリラー的な展開には圧倒された。ただ、この映画でも登場人物のキャラクターの深層に入り込もうとする動きは感じた。でも、大きな感動はなかった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「AIR」ベンアフレック&マットデイモン

2023-04-09 16:58:14 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「AIR/エア」を映画館で観てきました。


映画「AIR」は「グッドウィルハンティング」の名コンビであるベンアフレックとマットデイモンが組んだ新作である。ベンアフレックがメガホンを持ち、ナイキがバスケットボールのマイケルジョーダンと組むようになる過程を描く。他のシューズメーカーよりバスケットでは劣勢だったNIKEが這いあがるサクセスストーリーだ。

1984年、バスケットボールシューズのシェアではナイキはコンバース、アディダスに続く17%のシェアだった。CEOフィルナイト(ベン・アフレック)は社員のソニーヴァッカロ(マットデイモン)にバスケット部門の立て直しを命じる。ソニーが目をつけた選手はNBAデビュー前のマイケルジョーダンだった。しかし、ジョーダンにはライバルのコンバースやアディダスも目をつけていた。


おもしろかった。
まさにビジネスのサクセスストーリーだ。こういうのは大好きだ。ナイキ社のジョーダン家へのアプローチを中心に描いていく。1980年代中盤の実際の映像を織り交ぜながら、当時流行った音楽をバックにマットデイモン演じるソニーが切込隊長としてジョーダン家にアプローチする。決定権者は両親で、母親(ヴィオラデイヴィス)の意見が強い。しかも、マイケル本人はアディダス好きでナイキには関心を持っていなかった。ソニーは遠路はるばる西海岸から東海岸へノーアポでジョーダン家を訪問する。

自分も長きに渡り営業をしていたので、こんなシーンを見ると熱き血が流れる。やるね!ソニー。しかも、シューズ製作部門にとっておきのバスケットシューズの試作を用意させる。これこそ、エアジョーダンだ。でも、他社も黙ってはいない。会社をあげてプレゼンをする。簡単には勝てるものではない。ここでのマットデイモンは熱い!でも、ジョーダンの母親から予想外の条件も出される。さあどうなる。


マイケルジョーダン役は面と向かって映像に映らない。背中が見えるだけである。これはこれでよかった。あくまでマットデイモン対ヴィオラ・デイヴィスの構図である。メガホンを持ったベン・アフレックのCEO役もアメリカ人経営者っぽくて良かった。


ナイキ本社近くのオレゴン州ポートランド市には96年に行ったことがある。エアマックスが大流行している頃だ。当時この街で買い物すると消費税がなかった。この映画で富士山のようなフッド山を遠くに見る映像を観て、ポートランドに着く前に飛行機から間近で見たフッド山の美しさを懐かしく感じた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「生きる LIVING」 カズオイシグロ&ビル・ナイ

2023-04-01 19:28:43 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「生きる LIVING」を映画館で観てきました。


映画「生きる LIVING」黒澤明の名作をノーベル賞作家カズオイシグロ脚本を書いてリメイクした。オリヴァー・ハーマナス監督のもとビル・ナイが主人公を演じる。感動の名作「生きる」は何度も観てストーリーのディテイルまで頭に入っている。どんな感じでリメイクしたのか楽しみだ。

いきなり二階建てバスが走る古きロンドンの街が映し出される。映画はオールドファッションスタイルのオープニングクレジットで俳優やスタッフが紹介される。時代背景は1953年の英国だ。

ロンドン郊外から蒸気機関車でロンドンの市役所に通うウィリアムズ(ビルナイ)は日常お決まりの仕事をしている市民課の課長だ。そのウィリアムズが身体の変調を感じて病院へ行くと、がんで余命が短いことがわかる。同居する息子夫婦に告げようとするが、タイミングを逸する。失意のウィリアムズは仕事を無断欠勤して、郊外の街で徘徊するが気は晴れない。偶然街で出会った元同僚のマーガレット(エイミー・ルー・ウッド)とのひと時を楽しむようになる。ようやく職場復帰したウィリアムズは以前役所に来ていた婦人たちの公園開設の陳情に関心を持つようになる。


胸にしみるすばらしい映画であった。
黒澤明の名作と基本構造は同じである。頭にこびりついているシーンがいくつかある。住民をたらい回しにする役所の仕事のシーン、息子夫婦に虐げられているシーン、伊藤雄之助扮する不良作家と夜の町を徘徊するシーン、小田切みき演じる若い娘と遊ぶシーン、そして通夜の場で同僚が故人を偲ぶシーン。いずれもカズオイシグロ1953年の英国にあてはめて再現している。お見事としか言いようがない脚色である。

⒈お役所仕事
黒澤明の「生きる」を観てはじめて、若き日の自分はいわゆるお役所仕事というのはこういうことというのを知った。名シーンである。ここでも市民課に陳情に行ったご婦人方がたらい回しになる。ただ、この映画では新人として市役所の市民課に配属になったピーターがクローズアップされるのが原作と違うところだ。

1953年のロンドンの市役所では、紳士風にドレスアップした市役所員が映し出される。きっと時代考証的にそうだったんだろうけど、この辺りは日本とは違うなあ。英国では役所に育ちのいいエリートが勤務しているという印象を持つ。上司もsirの呼び名で呼ばれている。ただ、お役所仕事の基本は古今東西変わらない。


⒉夜の徘徊
がん宣告されて失意のどん底に落ちた主人公渡辺(志村喬)が夜の繁華街に行き、ストリップ劇場や女給のいる飲み屋を不良男伊藤雄之助と徘徊するシーンが印象に残る。そこではじめてテーマソング「ゴンドラの唄」が流れるのだ。これはどう表現するんだろうと思っていた。歌はスコットランド民謡に変わる。印象的だ。ウィリアムズは仕事をサボって郊外の海辺の街に行く。そこで出会ったサザーランド(トム・バーク)と遊び歩く。海辺のテント小屋でストリップも見るのだ。


黒澤明の「生きる」では怪しげな伊藤雄之助がすばらしい存在感を持っていた。夜の徘徊で圧倒される堅物の主人公志村喬の唖然とした表情が実にうまかった。トムバークに伊藤雄之助がもつ怪しげなムードがない。このシーンは圧倒的に黒澤明版に軍配があがる。

⒊元同僚との逢引き
我々が子どもの頃みんな見ていたチャコちゃんこと四方晴美のお母さん小田切みきが演じていたあっけらかんな若い娘の役は、美女度をグレードアップしてエイミー・ルー・ウッドが演じる。ここでの脚色がうまい。市民課の課長と課員の関係だった2人のつながりを強めにアレンジしたのはカズオイシグロの巧さだ。若い娘に対して妙にしつこいところも違う。しかも、重要な告白場面も用意して、最後に向けてこの映画を際立たせるシーンをつくる。ノーベル賞作家たるうまさである。


初老の域を超えた自分だけに、あとわずかの命とわかった時、自分はどうするんだろう。
そんなことも考えてしまう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「フェイブルマンズ」 スティーヴン・スピルバーグ&ミシェル・ウィリアムズ&ポール・ダノ

2023-03-05 05:59:19 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「フェイブルマンズ」を映画館で観てきました。


映画「フェイブルマンズ」はスティーヴン・スピルバーグの新作。自らの少年から青春時代にかけての自叙伝的ストーリーである。既にゴールデングローブ賞作品賞、監督賞を受賞し、いくつかの部門でアカデミー賞候補にもなっている。実質主演はサミー少年のカブリエルラベルであるが、クレジットトップは母役のミシェルウィリアムズである。 

電気技師の父(ポールダノ)、ピアニストの母(ミシェルウィリアムズ)のもと育ったサミーフェイブルマン少年は1952年に「地上最大のショウ」を観に行き、列車衝突シーンに強い衝撃を受ける。同時に、8mmカメラで撮影するのに関心を持つ。やがてニュージャージーからアリゾナに移ったサミー(ガブリエル・ラベル)は仲間を集め、自らカメラを持って西部劇を撮るようになる。明るい性格で4人の子どもをもった母は、同居している父の仕事仲間ベニーとの仲をサミーから疑われるようになる。


子ども目線での映像が得意のスティーヴンスピルバーグ監督らしい温かみのある物語で、期待どおりにおもしろかった。映画を観ている実感がもてる作品である。サミー少年の撮影することへの興味、幸せだった家庭に亀裂が入る話、ユダヤ少年に対する差別イジメが映画の題材の中心となる。

⒈映画に関心を持つきっかけ
スピルバーグの自叙伝的な要素が確かに強い。おそらく撮影することに関心を持つきっかけを最初の場面で映す。まだ幼いサミー少年が、アカデミー賞作品「地上最大のショウ」での列車衝突事故に強い関心を持ち、鉄道模型を使って事故を再現する。それを8ミリで撮影する楽しみを覚えて、家族やいろんな被写体を撮ったりする。いかにもスピルバーグ映画らしい少年の目線まで落としたわかりやすい映像がいい感じだ。


⒉ミシェルウィリアムズ
クレジットトップのミシェルウィリアムズが抜群にいい。「マンチェスター・バイ・ザ・シー」以来だ。お茶目な奥さんで子どもに愛情をそそぐ。夫婦仲もいい。自分の好きな俳優であるメガネ姿のポールダノとのコンビで映し出されるとまさにゴールデンエイジのアメリカのしあわせな家庭の雰囲気がムンムンする。こんな家庭に悲劇が訪れると誰が予測するのか?母親が夫の同僚との恋に陥るのだ。この場面で一つの緊張感をつくる。大人の世界を知ってしまったサミー少年が戸惑う表現がうまい。


⒊いじめられっ子
アリゾナで西部劇の撮影をして楽しんでいたサミーが父親の異動でカリフォルニアに行くことになる。ユダヤ人が少ないエリアで、背の小さいサミー少年はいじめっ子の標的になるのだ。周囲は身体の大きい男子生徒ばかりで、暴力も振るわれる。ハイスクール時代に受けたイジメの復讐をするが如くにスピルバーグがこの時代を再現する。

でも、みんなの一斉サボり日での海水浴場でのパフォーマンスをサミー少年が撮った映像を映すと、これがフェアウェルパーティでバカ受けだ。少年が本領を発揮するのだ。でも、映像に映るいじめっ子たちが反発する。この場面にも目を奪われる。


⒋デイヴィッドリンチ
エンディングロールでデイヴィッドリンチ監督の名前を見つけて驚く。アレ?俳優として出ていたっけ?そうか、黒い眼帯をしていて片目の巨匠ジョンフォード監督のことかと気づく。サミーがつくった短編映画が認められてきた時に、ハリウッドのスタジオでジョンフォード監督と対面するシーンがある。これが興味深い。映像コンテに映る地平線が中央にあると、おもしろくないというのだ。上部に地平線があるか、下部に地平線があるかどちらかがいいというのである。なるほどとうなずいた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「バビロン」 ブラッドピット&マーゴットロビー

2023-02-13 20:37:53 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「バビロン」を映画館で観てきました。


映画「バビロン」は映画産業創成期のハリウッドを舞台にしたブラッドピット主演の新作である。メガホンをとるのは「ラ・ラ・ランド」でアカデミー監督賞を受賞したデイミアン・チャゼルだ。予告編で映る派手なパーティシーンが気になり、189分という長尺の上映時間に後ずさりしつつも映画館に向かう。

1926年サイレント時代の映画界の人気スタージャック・コンラッド(ブラッド・ピット)に大勢の取り巻きがたむろうド派手なパーティが開催されている。パーティには人気女優に這い上がろうとする新進女優ネリー・ラロイ(マーゴット・ロビー)が入り込む。パーティの見せ物に象をトラックで運ぶイスパニア系のマニー(ディエゴ・カルバ)が気がつくとコンラッドに気に入られて映画コミュニティに入っていく。

やがて、字幕付きのサイレント時代からトーキー時代に移り、映画界の情勢も少しづつ変わっていくという話だ。

個々のシーンはよく考えられて実におもしろい
お金もかかっていて娯楽としての映画の醍醐味を味わえる。しかも、美術、音楽ともに完璧だ。ただ、いかんせん長すぎる!ハーバード出身のインテリ監督デイミアンチャゼルは出世作「セッション」は106分、「ララランド」も128分にまとめた。映画史を振り返る一面があったとしてもあと30分は縮めたほうがいいと感じる。


ブラッドピットほど黒タキシードが似合う男は見当たらない。まったくの適役だ。でも、割と正統派な役柄だけに、今回は自由奔放なマーゴットロビーの活躍がきわだつ。イスパニア系の映画プロデューサーになるディエゴ・カルバにも焦点が徐々にあてられる。


⒈喧騒のパーティー
いきなりド派手なパーティーシーンとなる。まさに酒池肉林だ。ゴチャゴチャしているように見えるが、全体で見ると「木」が「森」になるような均整がとれている。裸の男女が戯れる中でそれぞれのダンスやパフォーマンスがバラバラなのに、不思議とよく見えた。近作ではバズラーマン監督版の「華麗なるギャツビー」がずいぶんときらびやかだった。あの時も、トビーマグワイアがニックキャラウェイ役で出演していた。

トビーマグワイアは今回総合プロデューサーで、かつマフィア役で出演している。うぶなスパイダーマンが気がつくと悪党にというわけでないが、奇妙なメイクをして出てくる。その悪の住処で、ガチンコ格闘技をやっていたり、凶暴なワニがいたり、猿人のような男が出てきたりで「ナイトメアアーリー」の見せ物小屋のような雰囲気を持つ。ともかく、美術には凝っている。


⒉マーゴットロビー
喧騒のパーティーからひたすら目立つ。最終的に落ちぶれる設定のブラットピットよりも目立つ。サイレントからトーキーに移る時代に、TAKE1から8回演技を繰り返すシーンは笑える。上流パーティーに連れて行かされて、場にあわずにキレるシーンの迫力がものすごい。毒ヘビに対峙したり、中国人歌手とキスしたり、この映画はマーゴットロビーのためにあるように見えてしまう。


他にもイスパニア系のプロデューサーもマーゴットロビーとともに活躍させるし、黒人トランペッターにも見せ場を与える。ただ、誰もこれもとちょっと登場させすぎた分長くなりすぎたのかな?これも「ララランド」が当たりすぎて予算がもらえすぎたのかもしれない。デイミアンチャゼル監督はもう一度「セッション」の原点に戻るくらいに次作は調整してほしい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「イ二シェリン島の精霊」コリンファレル

2023-01-29 17:28:02 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「イ二シェリン島の精霊」を映画館で観てきました。


映画「イニシェリン島の精霊」は「スリービルボード」マーティンマクドナー監督、コリンファレル主演のシリアスドラマだ。幸先よく本年のゴールデングローブ賞をいくつか受賞している。アカデミー賞の有力候補という触れ込みに思わず映画館に向かう。

1923年のアイルランド西岸に浮かぶイニシェリン島の狭い人間関係の中で起きた出来事を綴る作品だ。突如友人から絶交を言い渡された主人公が戸惑う姿と、絶交した友人が奇怪な行動を起こすという話である。


残念ながら期待はずれだった。
というよりも、この映画で語られる世界が異常すぎてついていけないというのが本音だ。孤島に暮らす人たちはおそらく古代、中世の世界を引きずって生きてきた訳で、文明開化も進んでいない。宗教的な感覚もわれわれとは違うであろう。

原題The BANSHEES of INISHERINのBANSHEESは人の死を予告するケルトの妖精のことを指すという。この映画では奇妙な老婆が死の予言をしている。イングマールベルイマンの「第七の封印」のような死神の世界にも通じる世界かもしれない。このあたりを理解するのはむずかしい。この映画についてはコメントがきわめてむずかしい。登場人物が何でこんな行動をとるのか意味がわからない。われわれが生きている世界とあまりに違うからだ。

ただ、コリンファレルをはじめとした俳優陣の演技のレベルが高いのは間違いない。舞台劇として見ているような感覚を持つ。レベルの高い演技は堪能できるし、この海を見渡す奇妙な島を映し出すカメラワークも良かった。それでも、ちょっとうーんとなってしまう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ザ・ビージーズ 栄光の奇跡」

2023-01-22 08:51:28 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ザ・ビージーズ how can you mend a broken heart」を映画館で観てきました。


映画「ビージーズ」は一世を風靡したビージーズの軌跡を描くドキュメンタリー映画だ。これも後回しになってしまった。放映終了が近づきあわてて映画館に向かう。あとで触れるけど、ビージーズには子供の頃からの思い入れが強いのだ。でもこれは観て、本当に良かった。いくつかのシーンでは思わずジーンとしてしまう。

子供の頃からバンドを組んでいたアンディ、モーリス、ロビンのギブ家の三兄弟がレコードデビューして一気に「マサチューセッツ」をはじめとした大ヒット曲を連発する。その後一時軽い独立騒ぎのあと、再結成で「傷心の日々how can you mend a broken heart」ではじめての全米ヒットチャート 1位となる。でも、あとが続かない。その後、マイアミで音楽活動をはじめ、ディスコ調のリズムの曲で全盛時代を迎える。

自分の若いころは、色んな面でビージーズの音楽に関わっている。
特に4曲とのつながりが強い。自分を振り返る意味でも想い出に触れたい。

⒈マサチューセッツ
小学校のまだ低学年の頃、兄貴がいる友人にポップスが好きな奴がいた。その影響でビートルズを聴きはじめていた。当時、洋楽を中心に紹介する大橋巨泉司会の「ビートポップス」というTV番組があった。洋風ポップスがスタジオに流れるバックで、小山ルミや杉本エマなんていう混血美人モデルがミニスカートで踊るのだ。大人の世界への第一歩だった。土曜の昼の午後に大人の男性陣はしびれただろう。

その番組で、モンキーズ「デイドリーム」ビージーズ「マサチューセッツ」が流れていた記憶が鮮明にある。親にシングル盤を買ってもらった。ステレオで聴いても「マサチューセッツ」の曲自体は短いので何度も何度も同じ歌を聴くのだ。普通のヒットパレード系のTV番組でも「マサチューセッツ」は日本人歌手も歌ったりして紹介されていた。この頃はまだ自分は深夜放送をはじめとしたラジオは聴いていない。夜9時には寝ていた。

今回1968年4月のオリコンヒットチャートで「マサチューセッツ」が洋楽として初めて1位になっていたことを知った。まあ小学生の自分でも聴くくらいだから、学生運動で騒乱だった世の若者は当然聴くだろう。でも、その時のヒットチャートで2位が伊東ゆかり「恋のしずく」、3位が小川知子「ゆうべの秘密」、4位がテンプターズ「神様お願い」、5位がモンキーズ「デイドリーム」と知り、すごい曲が並んでいるのを知り思わず感動した。


⒉メロディフェアと傷心の日々
「マサチューセッツ」の後しばらくビージーズのことが語られることは少なくなった。小学校高学年から土曜のラジオのヒットチャート番組に興味を示すようになり、気がつくとアメリカの「ビルボードヒットチャート」に強い関心を示すようになる。毎週のヒットチャートをノートに転記するようになったのは1971年の6月ごろだ。

1971年夏の東京では3つの洋画がクローズアップされていた。「ある愛の詩」「小さな恋のメロディ」「エルヴィスオンステージ」だ。「小さな恋のメロディ」の主人公マークレスターとトレイシーハイドは、自分と同世代なので、目線が合いもっとも関心をもった。10代向けの「平凡」や「明星」をはじめとして、あらゆる雑誌で2人の記事が紹介されていた。しかも、東京の至る所で「メロディフェア」が流れていた。


全米ヒットチャートの動向をラジオで確認するようになって、いつ「メロディフェア」がヒットチャートを登りつめるかと思っていた。その時なんとビージーズの別の曲がトップになるではないか。「傷心の日々how can you mend a broken heart」である。実はこの曲は日本ではシングルのB面である。この映画の最初に演奏される。テーマ曲でもある。ただ、この曲の良さがわかるのは自分が大人になってからかもしれない。

⒊ユーシュッドビーダンシング
高校生になる頃ビージーズは忘れられた存在になる。中学も高学年になるにつれて、当初のヒットチャートマニアからニューロック、クロスオーバー、ジャズはたまたクラッシックまで幅広い音楽を聴くようになっていた。

そんな高校時代FMで聴いたディスコ風の曲の声に聴き覚えがあった。ビージーズだとすぐに気づく。「ユーシュッドビーダンシング」である。1976年には日本でもディスコが人気となっているが、まだ不良のたまり場的存在にすぎなかった。中学時代一緒だった連中と新宿のディスコに恐る恐る数回行った。その頃ダンスフロアではみんな同じステップで踊っていた。


それにしても「ユーシュッドビーダンシング」には衝撃を受けた。これはジャイブトーキンに続く1976年9月の全米ヒットチャートナンバーワンだ。久しぶりの復活がうれしかった。今でもダンスフロアでよくかかる「ザッツザウエイ」は1975年11月のナンバーワンだ。この辺りからダンス系ソウルミュージックのナンバーワンが急激に増える。70年代後半はディスコ系の嵐だ。

なんといっても、映画「サタデーナイトフィーバー」でのジョントラボルタの歴史的ソロダンスで流れるのは「ユーシュッドビーダンシング」である。


⒋サタデーナイトフィーバー
日本のディスコを不良の溜まり場から、「普通の」若者とサラリーマンの娯楽場に変えた大きなきっかけが映画「サタデーナイトフィーバー」であろう。1978年大学生だった自分は、東京のディスコでも湘南、伊豆あたりのリゾート地にある臨時ディスコのどこへ行ってもフィーバーしていた。そこではビージーズの曲だけでなく、「シャドウダンシング」などの弟アンディギブの曲も流れている。

映画は渋谷の映画館で観たが、どこだったか記憶にない。その後、videoになってもDVDになっても観ている。ジョントラボルタの能天気な雰囲気が、若者の思想を変えた。ほぼ同世代に近い佐藤優が関西で送った青春時代の話を読むと、自分よりひと時代前の学生運動世代の匂いがする。われわれとはまったく違う青春だ。東京と京都で違っていたのか?

そんな大きな影響を与えてくれたビージーズは常に不死鳥のように蘇った。ただ、流行の狭間で停滞があったことを知る人は少ないだろう。エリッククラプトンのインタビューがあるので、なんでと思ったけど、実は停滞して向かったマイアミ時代に強い縁があったことを知った。そういった意味でも、この映画は意義がある。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「アバター ウェイオブウォーター」 ジェームズキャメロン

2023-01-17 05:11:35 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「アバター ウェイオブウォーター」を映画館で観てきました。


映画「アバター ウェイ オブウォーター」はジェームズ・キャメロン監督による「アバター」の続編である。かなり後回しになってしまった。3時間を超える上映時間に尻込み気味だった。主たる舞台が海になり、前回以上の映像美が楽しめるらしい。期待感を持ち映画館に向かう。

パンドラの星に住み着いて平和に暮らしていたジェイク(サムワーシントン)は先住民ナヴィの娘ネイティリ(ゾーイダルドナ)と結婚して子どもを5人つくり、しあわせな生活をおくっていた。そこにクオリッチ(スティーヴン・ラング)率いる人間を含めた侵入者が現れてパンドラを荒らす。自分が標的とわかり、トノワリ(スティーヴン・ラング)とロナル(ケイトウィンスレット)率いる海辺の部族の集落に向かい身を寄せる。その後子どもたちも海の生活に慣れはじめた時にクオリッチたちが再度襲ってくる


たしかに現代最先端の技術を駆使した映像が美しい。
前作「アバター」は観ているけど、登場人物双方の関係が最初はつかめない。ジェイクの家族が海に向かっていき、アジトを攻めた連中が追いかける頃にようやくアタマが整理されていく。ストーリーは侵略と対抗が基本でたいした話ではない。美しいトロピカル風景を基調にした物語が、途中からは最後に向けては「007」系のアクション映画のように攻守入り乱れた闘いになっていく。

南海で泳ぐ魚がすいすい泳ぐ水族館にいるような大画面の映像でさわやかな感覚を感じる。登場人物が異類の半魚類に乗って気分良く水中から飛び上がるシーンも気分がいい。


一方で、巨大クジラのような生き物を殺したりする画像で気分が悪くなり、海辺の部落で火を放ったりする場面で目を背ける。どちらかというと、快適だった感覚が下降に向かう。その上で殺し合いが始まると粗暴で醜悪なパフォーマンスに神経が刺激され疲れる。


アニメの場合、別に英語のセリフを聞かなくてもいいような気もして日本語吹き替え版を観ることがある。「アバター」ではそれなりの俳優で配役が決まっている。CGで別の姿になっていてもそれぞれの俳優がリアルな演技もするので基本的には字幕版を選択する。メイキング映像で、撮影風景を確認すると人間の姿で演技している。するとやはり感情が入ったリアルな肉声を聞くべきだと感じる。最新の映像技術を駆使するジェームズキャメロンはそれにしてもすごい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ルイス・ウェイン」 ベネディクト・カンバーバッチ

2022-12-04 19:04:28 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ルイス・ウェイン」を映画館で観てきました。


映画「ルイスウェイン」は怪優ベネディクトカンバーバッチが猫の絵を描いて有名だったルイスウェインを演じる新作である。日本育ちのウィルシャープがメガホンを持つ。映画ポスターが猫だらけでイメージが良くない。どうしようかと思ったが、クーリエなどと同様のベネディクトカンバーバッチのドラマ作品だけに見逃せない。映画館に向かう。

ルイスウェイン(ベネディクトカンバーバッチ)は英国の上流階級に生まれた変人だ。当時は虐げられていた存在だった猫の絵を描き名を成す。妹の住み込みの家庭教師できたエミリー(クレア・フォイ)と身分の違いを乗り越えて結婚する。ところが、エミリーは乳がんで早々に亡くなる。その後、猫の絵が大人気となったにも関わらず、絵の版権がなく大勢の女家族を養うために金欠状態が続き、気がつくと妄想癖で精神の安定を崩すという生涯を描く話だ。


思ったよりも良かった。
イミグレーションゲームのように精神を病む天才を演じると天下一品のベネディクトカンバーバッチの安定感が際立つ。ポスターなどで、ひたすら猫が強調されているのはちょっとやり過ぎかもしれない。時代は1880年代から1920年代までさかのぼる。セットもあるだろうが、英国には当時のチューダー調の建物がそのまま数多く残っているのだろう。英国の階級社会を描くにも、バックがきちんと描かれているとリアリティがある。

ルイスウェインとエミリーの不器用な恋は好感が持てる。もともとは理系学問好きの電気オタクで、浮世離れしている男だったのに、エミリーに一目惚れして一気に近づいていく。家庭を支えているのは母親でなく長姉キャロライン(アンドレア・ライズボロー)がすべて仕切っている。周囲から住み込みの家庭教師に狂うルイスのうわさをされて、家族や周囲は反対するが結婚を押し切る。階級社会のギャップを強調するわりには、彼女も高貴な家の家庭教師になる訳で、そんなに下級でもないだろうと思うがどうだろう。


でもこの物語は2人の恋物語が占めるウェイトは小さい。どちらかというと、金銭感覚がないルイスウェインのダメ男ぶりが繰り返し言及される。ギャラの交渉なんてことは出来なかったはずだ。映画でいうように人気画家になったなら、もっと儲けてもいいはずだ。お坊ちゃんだから仕方ない。同時にルイスだけでなく家族が精神を病んだりして、不運な環境にあったことが強調される。エミリーが生きていれば、もっと金を残せたんだろうなあ。


原題は「THE ELECTRICAL LIFE OF LOUIS WAIN」である。日本語解説は猫尽くしだけど、この「電気」というキーワードがあることが重要だと思う。電灯に時代が変わっていく時代を象徴するシーンとセリフが多いのに猫だらけの作品情報の解説はちょっとどうかと感じる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする