映画「ラストレター」を映画館で観てきました。
岩井俊二監督の新作である。「love letter」と「リリーシュシュ」が特に好きである。「love letter」の冬の小樽を舞台にした透き通った色合いが好きで、一方で「リリーシュシュ」は自分の中学時代にダブる部分もあり強いインパクトがあった。その2作の印象が強く先入観を持たずに映画館に向かう。中年の夫婦が目立つ館内である。途中までは何これっていう展開で期待外れかと思ったが、小林武史の音楽も情感を高めていて中盤からは徐々に深みがでてくる。
夏の仙台、姉未咲の葬儀に出席していた祐里(松たか子)は未咲の娘鮎美(広瀬すず)から姉に届いた同窓会通知を見せられる。祐里は受け取り、自分が通知しておくと伝える。姉の欠席を伝えるために同窓会会場に向かうと、しばらく音信不通だったこともあり周りから姉未咲と間違えられる。会場には見覚えがある乙坂(福山雅治)の姿があった。
スピーチまでさせられたあとで、早めに帰ろうとしたバス停で乙坂に呼び止められる。きみのことは今も思っていると言われ、今は小説家になっていると名刺を渡される。何度も誘われたが、帰りを急いだ祐里に対して小説のことについて聞いてきた。祐里は小説というのが何のことだかわからないまま帰宅を急いだ。
その後祐里は乙坂に未咲の名前でもらった名刺の住所に手紙を書いた。差出人未咲の名前だけで自らの住所を書かずに送った。その返信が実家に送られてくる。夏休み中だったので、祐里の実家にいる鮎美のことを思い、祐里の娘である颯美(森七菜)がしばらく滞在していた。送られてきた手紙をみて2人は驚く。
一方で祐里は腰を痛めて療養中の姑(水越けい子)から姑の恩師波戸場(小室等)への連絡を頼まれていた。何度も波戸場の元を訪れているうちに乙坂への手紙の送り元住所を波戸場宅にしていた。すると、突然乙坂がその家を訪ねてきて、玄関先に出た祐里は驚くのであるが。。。
1.ありえない序盤
主人公祐里(松たか子)は平凡な漫画家の夫をもつ主婦である。姉の欠席を伝えるために行った同窓会で姉に間違えられ、何も言えなくなって姉のふりをするという話がある。いくらなんでも、それはないでしょう。少しでも話していれば昔の想い出につながってばれちゃうもんね。しかも、松たか子と広瀬すずは全く似ていない。
あとは認知症気味かと外出する姑を追いかけて、姑が男性と一緒のところを見つけて、尾行するシーン。これも変だな??こんな感じの話が続き、しかも姉のふりををする祐里のパフォーマンスすべてが不自然に感じられ、このストーリーたいしたことないのかと思ってしまう。
2.中盤からの逆転(中盤戦の軽いネタバレあり)
起承転結の「承」というべきあたりから、急展開して引き締まってくる。手紙を受けた乙坂が仙台にもう一度やってきて祐里と再会するあたりからぐっとよくなる。そして回想の青春シーンもよく見えてくる。乙坂は実は亡くなった未咲でなく祐里が同窓会に来ていたことに気づいていたのだ。もともとは、転校生として生物部に所属することになった乙坂の後輩に祐里がいたのだ。未咲よりも先に妹に会っているのである。
これからがラブストーリーとしての深みが出てくる。途中で美人の姉未咲を紹介し、一気に乙坂が惚れ込むのに妹祐里も乙坂に好感を持つというはかない恋の物語がある。祐里はクラブの先輩後輩で乙坂にあこがれているのに、みんなのアイドルである姉に好意を持たれるのを恐れる。そうやって過去の話が青春モノとして複雑化する。
中盤戦から、広瀬すずと森七菜の瑞々しさで青春の輝きを映し出す過去と現在の交差が頻繁になるとともに、松たか子&福山雅治がよくみえる。特に松たか子に安定感を感じる。ナレーターなども時折やっている松たか子はあせらずじっくりと言葉を選んで話す。全般的に早口でなくわれわれにわかりやすいように会話を重ねさせるのがいい。岩井俊二の力量を感じる。
3.意外性のある登場
乙坂がむかし便りをもらって知っていた未咲の住所をめざす。猥雑な飲み屋が建ち並ぶエリアだ。ドアをたたくと元亭主のあたらしい恋人がでてくる。中山美穂である。主力出演者以外のクレジットは見ずに映画館に向かったので思わずうなってしまう。おおこう来たかと。自分の脳裏には「love letter」の透明度の高い映像になじむ中山美穂が目に浮かぶ。飲み屋の女という設定、ギャップに一瞬戸惑う。もうすぐ50歳になる。
そのあとでてくるのが豊川悦司である。久々にトヨエツを見たかもしれない。存在ある芝居を見せてくれる。これから先の場面は映画にとって重要な部分であるので、言及は避けるが、まさに適役といった感じである。岩井俊二は豊川悦司の役柄に自分自身を重ね合わせているのではないか。この2人の登場はスパイスのように効いてくる。
あとはエンディングロールで小室等と水越けい子の2人の名前を見つけ驚く。それが姑とその元恩師とわかりビックリだ。フォーク全盛時代の自分より上の世代でもわからなかったんじゃないだろうか?
ちょっと違うんじゃないかなと思ったのは、広瀬すずが姉の高校時代を演じていた場面で、64回卒業式となっていた場面。この数字って絶対おかしいよね。どんなに伝統のある学校でも旧制中学と新制高校は分けているはずで、創立何周年は戦前からトータルで計算しても、あくまで戦後の新制高校の年数でやっているはずだから時代考証は×だと思う。
岩井俊二監督の新作である。「love letter」と「リリーシュシュ」が特に好きである。「love letter」の冬の小樽を舞台にした透き通った色合いが好きで、一方で「リリーシュシュ」は自分の中学時代にダブる部分もあり強いインパクトがあった。その2作の印象が強く先入観を持たずに映画館に向かう。中年の夫婦が目立つ館内である。途中までは何これっていう展開で期待外れかと思ったが、小林武史の音楽も情感を高めていて中盤からは徐々に深みがでてくる。
夏の仙台、姉未咲の葬儀に出席していた祐里(松たか子)は未咲の娘鮎美(広瀬すず)から姉に届いた同窓会通知を見せられる。祐里は受け取り、自分が通知しておくと伝える。姉の欠席を伝えるために同窓会会場に向かうと、しばらく音信不通だったこともあり周りから姉未咲と間違えられる。会場には見覚えがある乙坂(福山雅治)の姿があった。
スピーチまでさせられたあとで、早めに帰ろうとしたバス停で乙坂に呼び止められる。きみのことは今も思っていると言われ、今は小説家になっていると名刺を渡される。何度も誘われたが、帰りを急いだ祐里に対して小説のことについて聞いてきた。祐里は小説というのが何のことだかわからないまま帰宅を急いだ。
その後祐里は乙坂に未咲の名前でもらった名刺の住所に手紙を書いた。差出人未咲の名前だけで自らの住所を書かずに送った。その返信が実家に送られてくる。夏休み中だったので、祐里の実家にいる鮎美のことを思い、祐里の娘である颯美(森七菜)がしばらく滞在していた。送られてきた手紙をみて2人は驚く。
一方で祐里は腰を痛めて療養中の姑(水越けい子)から姑の恩師波戸場(小室等)への連絡を頼まれていた。何度も波戸場の元を訪れているうちに乙坂への手紙の送り元住所を波戸場宅にしていた。すると、突然乙坂がその家を訪ねてきて、玄関先に出た祐里は驚くのであるが。。。
1.ありえない序盤
主人公祐里(松たか子)は平凡な漫画家の夫をもつ主婦である。姉の欠席を伝えるために行った同窓会で姉に間違えられ、何も言えなくなって姉のふりをするという話がある。いくらなんでも、それはないでしょう。少しでも話していれば昔の想い出につながってばれちゃうもんね。しかも、松たか子と広瀬すずは全く似ていない。
あとは認知症気味かと外出する姑を追いかけて、姑が男性と一緒のところを見つけて、尾行するシーン。これも変だな??こんな感じの話が続き、しかも姉のふりををする祐里のパフォーマンスすべてが不自然に感じられ、このストーリーたいしたことないのかと思ってしまう。
2.中盤からの逆転(中盤戦の軽いネタバレあり)
起承転結の「承」というべきあたりから、急展開して引き締まってくる。手紙を受けた乙坂が仙台にもう一度やってきて祐里と再会するあたりからぐっとよくなる。そして回想の青春シーンもよく見えてくる。乙坂は実は亡くなった未咲でなく祐里が同窓会に来ていたことに気づいていたのだ。もともとは、転校生として生物部に所属することになった乙坂の後輩に祐里がいたのだ。未咲よりも先に妹に会っているのである。
これからがラブストーリーとしての深みが出てくる。途中で美人の姉未咲を紹介し、一気に乙坂が惚れ込むのに妹祐里も乙坂に好感を持つというはかない恋の物語がある。祐里はクラブの先輩後輩で乙坂にあこがれているのに、みんなのアイドルである姉に好意を持たれるのを恐れる。そうやって過去の話が青春モノとして複雑化する。
中盤戦から、広瀬すずと森七菜の瑞々しさで青春の輝きを映し出す過去と現在の交差が頻繁になるとともに、松たか子&福山雅治がよくみえる。特に松たか子に安定感を感じる。ナレーターなども時折やっている松たか子はあせらずじっくりと言葉を選んで話す。全般的に早口でなくわれわれにわかりやすいように会話を重ねさせるのがいい。岩井俊二の力量を感じる。
3.意外性のある登場
乙坂がむかし便りをもらって知っていた未咲の住所をめざす。猥雑な飲み屋が建ち並ぶエリアだ。ドアをたたくと元亭主のあたらしい恋人がでてくる。中山美穂である。主力出演者以外のクレジットは見ずに映画館に向かったので思わずうなってしまう。おおこう来たかと。自分の脳裏には「love letter」の透明度の高い映像になじむ中山美穂が目に浮かぶ。飲み屋の女という設定、ギャップに一瞬戸惑う。もうすぐ50歳になる。
そのあとでてくるのが豊川悦司である。久々にトヨエツを見たかもしれない。存在ある芝居を見せてくれる。これから先の場面は映画にとって重要な部分であるので、言及は避けるが、まさに適役といった感じである。岩井俊二は豊川悦司の役柄に自分自身を重ね合わせているのではないか。この2人の登場はスパイスのように効いてくる。
あとはエンディングロールで小室等と水越けい子の2人の名前を見つけ驚く。それが姑とその元恩師とわかりビックリだ。フォーク全盛時代の自分より上の世代でもわからなかったんじゃないだろうか?
ちょっと違うんじゃないかなと思ったのは、広瀬すずが姉の高校時代を演じていた場面で、64回卒業式となっていた場面。この数字って絶対おかしいよね。どんなに伝統のある学校でも旧制中学と新制高校は分けているはずで、創立何周年は戦前からトータルで計算しても、あくまで戦後の新制高校の年数でやっているはずだから時代考証は×だと思う。