映画とライフデザイン

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映画「ザ・マスター」  ポールトーマスアンダーソン

2013-10-14 07:37:49 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「ザ・マスター」は2013年日本公開のアメリカ映画だ。

名匠ポールトーマスアンダーソン監督の新作。日本のみならず、キリスト教の国アメリカにも新興宗教は存在する。戦争終えたばかりの元軍人が本来の職業にうまくなじめないときに、一人の教祖に出会う。その教祖と主人公の触れ合いを描く。
戦争が終わった後に、精神が錯乱して一般社会となじめない軍人を描いた作品は多々ある。これもその一つだが、新興宗教に結びつけるところが興味深い。大きな波や意外性があるストーリーではない。それぞれの場面の映像コンテが非常に美しく、映画の格をあげている。

第二次世界大戦末期。海軍勤務のフレディ・クエル(ホアキン・フェニックス)は、ビーチで酒に溺れ憂さ晴らしをしていた。やがて日本の敗北宣言によって太平洋戦争は終結。だが戦時中に作り出した自前のカクテルにハマり、フレディはアルコール依存から抜け出せず、酒を片手にカリフォルニアを放浪しては滞留地で問題を起こす毎日だった。

ある日、彼はたまたま目についた婚礼パーティの準備をする船に密航、その船で結婚式を司る男と面会する。
その男、“マスター”ことランカスター・ドッド(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、フレディのことを咎めるどころか、密航を許し歓迎するという。フレディはこれまで出会ったことのないタイプのキャラクターに興味を持ち、下船後もマスターのそばを離れず、マスターもまた行き場のないフレディを無条件に受け入れ、彼らの絆は急速に深まっていく。

マスターは“ザ・コーズ”という団体を率いて力をつけつつあった大物思想家だった。独自の哲学とメソッドによって、悩める人々の心を解放していくという治療を施していたのだ。
1950年代。社会は戦後好景気に沸いていたが、その一方では心的外傷に苦しむ帰還兵や神秘的な導きが欲されていた時代であり、“ザ・コーズ”とマスターの支持者は急増していった。フレディにもカウンセリングが繰り返され、自制のきかなかった感情が少しずつコントロールできるようになっていく。マスターはフレディを後継者のように扱い、フレディもまたマスターを完全に信用していた。

そんな中、マスターの活動を批判する者も現れるが、彼の右腕となったフレディは、暴力によって口を封じていく。マスターは暴力での解決を望まなかったものの、結果的にはフレディの働きによって教団は守られていた。
だが酒癖が悪く暴力的なフレディの存在が“ザ・コーズ”に悪影響を与えると考えるマスターの妻ペギー(エイミー・アダムス)は、マスターにフレディの追放を示唆。

フレディにも断酒を迫るが、彼はそう簡単にはアルコール依存から抜けることができなかった。やがてフレディのカウンセリングやセッションもうまくいかなくなり、彼はそのたびに感情を爆発させ、周囲との均衡が保てなくなっていく……。(kine note引用)

新興宗教そのものが、本質的にはデタラメなものである。ただ、宗教に頼らないと精神の安定を取り戻せない人が多い。それだから、オカルトなものであっても意外に続いていくのだ。マインドコントロールで信者を狂わせる映像はここでは多くはない。逆にオカルトだと疑われてもおかしくないわけであるから、新興宗教の教祖を論破しようとする人が必ず出てくる。その時にヤクザの用心棒のように、厄介な出来事を暴力で解決しようとするのがホアキン・フェニックスだ。解決にあたる主人公の猛獣性が印象的。日本における新興宗教がらみのいくつかの事件を連想した。

ここではポールトーマスアンダーソンの映像づくりに関する天才ぶりを見せ付けてくれる。
映像の色合い、コンテいずれもなんて美しいのであろうと思わせる。格調が高い。
プロットというよりも映像そのものに魅かれる。
序盤戦、海辺のシーンでの美しさでうならせてくれるが、もっと凄いと思わせるのは荒野のバイクシーンだ。果てしなく続く、乾ききった荒野でフィリップ・シーモア・ホフマンとホアキン・フェニックスが猛スピードでバイクを走らせる。こんなロケ地はおそらく日本ではない。見ていていつバイクが転倒してしまうのか?とドキドキしながら見てしまう。何気ないようで重要な場面だ。


あとは牢獄におけるホアキン・フェニックスの暴れっぷり。牢屋の柵の中で、便器を蹴って蹴って蹴りまくる。これも印象に残る。


ポールトーマスアンダーソンというと、何よります「マグノリア」のカエル落下シーンだ。これには本当に驚いた。もしかして、驚きの度合いはたくさん見た映画の中でも5本の指に入る。そして、「ゼア・ウイル・ビーブラッド」における猛獣のようなダニエルデイルイスの演技だ。この映画見た後、あまりにも強烈なインパクトでブログ記事まとめようと思っても全然うまくいかない。そのうちに時間がたってしまった。いずれ書こうと思うが、それくらい鮮烈な印象を与えた。それと比べると、衝撃度は薄いが、さすがポールトーマスアンダーソンと思わせる作品だと思う。

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