映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」 ケイシー・アフレック&ミシェル・ウィリアムズ

2017-05-14 17:29:33 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」を映画館で観てきました。

今年のアカデミー賞主演男優賞と脚本賞を受賞している作品だ。さらっとストーリーを知って映画館に向かう。日本映画「追憶」で冬の寒々しい景色を映像で見た後で、ここでもマンチェスター・バイ・ザ・シーという町の光景に目を奪われる。ベンアフレックの弟ケイシー・アフレックを今まで意識したことはない。


時間軸をずらす映画である。最初のうちは回想なのか、そのまま動いている事実なのか?強い説明はないのでよくわからない。兄が生きている映像と死んだ映像と重なり合い、一瞬「うーん」と思っているうちに眠くなる時間帯もあった。甥の面倒をみるのもなんでなんだろう。兄が生きているときに一緒に病状の説明を兄の妻が一緒に受けたじゃないかと思いながら、少しづつカットが重なり合い、ああこういうことなのかということがわかってくる。

でもこの映画のクライマックスは最後に残されている。この場面だけは強く印象に残る。

アメリカ・ボストン郊外でアパートの便利屋として働くリー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)のもとに、ある日一本の電話が入る。故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーにいる兄のジョー(カイル・チャンドラー)が倒れたという知らせだった。
リーは車を飛ばして病院に到着するが、兄ジョーは1時間前に息を引き取っていた。リーは、冷たくなった兄の遺体を抱きしめお別れをすると、医師や友人ジョージ(C・J・ウィルソン)と共に今後の相談をした。兄の息子で、リーにとっては甥にあたるパトリック(ルーカス・ヘッジス)にも父の死を知らせねばならない。


ホッケーの練習試合をしているパトリックを迎えに行くため、リーは町へ向かう。見知った町並みを横目に車を走らせるリーの脳裏に、過去の記憶が浮かんでは消える。仲間や妻ランディ(ミシェル・ウィリアムズ)家族と笑い合って過ごした日々、美しい思い出の数々——。

兄の遺言を聞くためパトリックと共に弁護士の元へ向かったリーは、遺言を知って絶句する。「俺が後見人だと?」兄ジョーは、パトリックの後見人にリーを指名していた。弁護士は、遺言内容をリーが知らなかったことに驚きながらも、この町に移り住んでほしいことを告げる。「この町に何年も住んでいたんだろう?」弁護士の言葉で、この町で過ごした記憶がリーのなかで鮮烈によみがえり、リーは過去の悲劇と向き合わざるをえなくなる。なぜリーは、心も涙も思い出もすべてこの町に残して出て行ったのか。なぜ誰にも心を開かず孤独に生きるのか。(作品情報 引用)

映像に対する説明は少ない。理解力を観客に求める映画である。本当は2回以上見ないとわからないのかもしれない。回想と現実とが入り乱れて、その分別をテロップで示すわけではないから、容易に見れる映画には思えない。

1.主人公リー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)
主人公はボストンの特定のアパートで配管がおかしいなどのクレームを一手に引き受けている便利屋だ。その入居者たちにおべっかを使うことができない。そのクレームを親分が受けてしまうこともある。孤独に暮らす彼はバーで飲むのが唯一の楽しみのようだが、すぐキレる。ちょっとしたことで赤の他人をすぐさま殴りつける。遠くからこっちを見ている。背中がちょっと触れたぐらいでいちゃもんをつける。最後までキレる場面がいくつも用意されている。このキレ具合も尋常ではない。


割と特殊な役柄をやった人がアカデミー賞主演男優賞をもらうことが多い気がするが、ケイシー・アフレックの場合ちょっと違う。どこにでもいるような孤独な男である。孤独な男はよく映画に出てくるが、ここまでキレやすい男はいないし、他人との接触が得意ではない。そんな彼も大きな傷を背負っている。その傷は今後も癒されないだろう。そんな姿が気になってしまう。

2.元妻ランディ(ミシェル・ウィリアムズ)
投資の世界ではあまりに有名なラリーウィリアムズの娘である。私自身も父上の本は愛読したし、ミシェル・ウィリアムズ自身がトレーディングのコンテストで優勝したこともある。そんな彼女が出演したテイク・ディス・ワルツ」も「マリリン7日間の恋は好きである。テイク・ディス・ワルツで見せたヌードは熟女ものAVを見るがごとくの映像で、素敵というわけではないが親しみが持てた。

今回は出番が少ない。いきなり病気だという妻のところにべったりするリー・チャンドラーの姿を映し出した後に、リーがランディから妊娠したのと言われるシーンがでてくる。え!これってどういうことと思ってしまう。時間軸をずらしているのでおやっと思う。そして元妻の再婚相手に会うシーンとか用意される。リーがまたキレてしまうのでは心配するが、この映画の最大のクライマックスがそのあとで訪れる。ここでのミシェル・ウィリアムズの情感のこもったケイシー・アフレックに向かう場面が素敵である。これには世の離婚経験者の男たちはみんなジーンと来るんじゃないかしら?


3.マンチェスター・バイ・ザ・シー
これが地名だということを映画を観る前に知っている人はどのくらいいるのであろうか?当然自分は知らない。ロケ地の雰囲気がよく、ここはどこなんだろうと調べようとしたら、実在の小さい町がマサチューセッツ州にあるらしい。人口5000人ほどの町にはサイディング張りのコロニアル様式の住宅が立ち並び、港の景色が美しい。
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映画「追憶」 岡田准一&降旗康男&木村大作

2017-05-07 18:04:23 | 映画(日本 2015年以降)
映画「追憶」を映画館で観てきました。


岡田准一の新作である。それだけではこの映画見に行かない。監督降旗康男と撮影木村大作という老大家による久々の作品というのだ。気になってしまい、映画館に向かう。降旗康男監督作品は高倉健の遺作「あなたへ」以来である。

富山県警の刑事四方篤(岡田准一)の私生活は荒れていた。行き過ぎた捜査で警察幹部から叱責を受けるばかりか、妻(長澤まさみ)とは別居し、生活が荒れている母(リリィ)からはいつも金をせびられている。その四方が富山の街で旧友川端悟(柄本佑)とばったり出くわし、飲みに行く。


川端が経営するガラス屋は経営難で従業員の給与も支払えないほど金策に困り、輪島で土建業を営む2人の旧友田所啓太(小栗旬)のところへ金を借りに行く途中であると川端は言っていた。痛飲した後川端は町のサウナに泊まるといって四方と別れた。

むかし親に捨てられた3人は涼子(安藤サクラ)が営む喫茶店に常連客の光男(吉岡秀隆)とともに身を寄せていた。ところがいたたましい事件が起き、離れ離れになっていたのだ。


四方は殺人事件が起きたという一報を受けて、港に向かう。その死体を見て驚く。なんと川端だったのだ。しかし、同僚には自分の知り合いだということは何も言わない。そして、旧友の田所のことが気になってくるのであるが。。。

現代映画界を代表する豪華スターによる映画である。当たり役に恵まれている岡田准一を見に来ているファンも多いだろう。でも自分みたいな連中もいるのでは?ここのところ若手とともに老けに老けた降旗康男と木村大作が宣伝を兼ねてテレビ画面にでるのが気になっていた。

2人のコンビでの最高傑作は高倉健主演「夜叉」であろう。いかにも降旗康男監督作品らしい荒波の海岸で映る映像は美しく、ビートたけしのチンピラやくざ役が冴え、妖艶な色気をもつ田中裕子が絡まる。元やくざの役の高倉健がいざこざの中で刺青姿を一瞬見せるところがこの映画のポイントだ。もちろん木村大作のキャメラも冴えわたる。

降旗康男の映像というと、冬の寒々しい映像を連想する。それをわかっているがごとく、北国の荒々しい波が打ち寄せる雪景色を冒頭の回想シーンで出して、我々のような降旗、木村ファンの期待に応える。それはそれでうれしい。また、日本海に沈む夕日を俳優のバックに巧みに映し出したり、日本海の荒波を追いかけ合う車のバックに映すシーンなど粋なキャメラワークと映画構図を観るだけでこの映画を見てよかったと思う。エンディングロールの最後に撮影者で木村大作とともに岡田准一のクレジットがある。これもすごいよね。


音楽の千住明は自分の知人の同級生だったが、ここでは降旗、木村コンビの映像に昭和テイストで絡む。それはそれでよかった。


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